2026.08.31 放送
夏の風物詩の一つに、金魚掬いがあります。持ち帰って金魚鉢に入れたら、いつの間にか減っていく金魚。観賞用の美しい琉金や出目金も涼し気です。金魚の尾びれを「しっぽ」と表現したところが楽しいです。どの金魚のしっぽものんびり動いて、他の金魚と闘う気はなさそう。この人の心に兆していた闘争心も消えていそうです。
(監修:谷)
2026.08.28 放送
第29回俳句甲子園、個人優秀賞の一句です。青葉若葉が輝く初夏、風までかぐわしく薫るような日に、一匹の野良猫と出会いました。堂々とした姿につけたあだ名は、なんと「社長」。貫禄のあるたたずまいに、こちらも楽しくなります。さわやかな風をまとって、さて、社長はどこへ出勤してゆくのでしょう。
(監修:神野)
2026.08.27 放送
第29回俳句甲子園、個人優秀賞の一句です。部活帰りでしょうか。空に蝙蝠が飛びはじめる夕暮れ、制服のスカートの下にジャージを履いた格好で、自転車を立ち漕ぎしています。蝙蝠「と」とした助詞の親しさが、蝙蝠と私の距離を友人のように近づけます。昼と夜のあわいを、勢いよく疾走します。
(監修:神野)
2026.08.26 放送
第29回俳句甲子園、個人優秀賞の一句です。兼題は、秋の季語「玉蜀黍」でした。畑にみのるとうもろこしが、ゆたかなひげを育てつつ、にょきっと突き出しています。その先端に朝日が差してきたのを、ひげに朝日がひっかかっていると、大胆に表現しました。とうもろこしの命が輝く、新しい朝の始まりです。
(監修:神野)
2026.08.25 放送
第29回俳句甲子園、個人優秀賞の一句です。兼題は、秋の季語「玉蜀黍」でした。「前歯総出」という表現がユニークですね。前歯をすべて使って、豪快にとうもろこしにかぶりつきます。その場のみんなが黙々ととうもろこしを齧る無言の沈黙に、人間のむき出しの生命力があふれます。
(監修:神野)
2026.08.24 放送
第29回俳句甲子園、個人最優秀賞の一句です。今日という時間も、明日になれば、昨日という過去になります。時間というものは過ぎ去って、二度と戻りはしないのだというこの世の無常に対し、作者は「泳ぐ」ことを選択しました。時間の流れが、波の水圧のようにぐいぐいと押し寄せてきます。もがきながら前進する体を通して、人類普遍の感慨を、今を生きる実感として描き直しました。
(監修:神野)
2026.08.14 放送
河東碧梧桐は、松山出身の俳人です。郷里の先輩・正岡子規の理念を引き継いで、見たまま、ありのままを写し取る俳句を目指しました。暑さを一時的に避け、涼しいところで夏を過ごすのが「避暑」です。高原や水辺などの避暑地には、自然がいっぱい。宿の縁側の沓脱石に、なんとアヒルもやってきました。にぎやかで楽しい夏の時間が、いきいきと描かれています。
(監修:神野)
2026.08.13 放送
高浜虚子は、松山出身の俳人です。正岡子規に俳句を学び、雑誌「ホトトギス」を通して多くの俳人を育てました。虚子は、子規の理念を引き継いで「客観写生」を提唱し、季節の風景やものごとを、見たままに写し取る俳句を追求しました。目に映るものすべてが俳句になるという気づきには、そんな俳句観が反映されています。秋風の淡々とした涼しさにより、眼前の世界がクリアーに見えてきます。
(監修:神野)
2026.08.12 放送
柳原極堂は、松山中学時代の、正岡子規の同級生です。雑誌「ほととぎす」を立ち上げ、郷里の友人として、子規の顕彰に生涯を捧げました。筍はぐんぐん伸びて、いつしか竹になります。風がよく吹く日、若竹がゆさゆさと、涼しげに揺れていました。季節はめぐり、風も力強く吹きわたり、空も青く輝きます。変化してゆくこの世界のみずみずしい一角を、ゆたかに切り取りました。
(監修:神野)
2026.08.10 放送
内藤鳴雪は、松山藩の教育行政に携わり、東京で学ぶ松山の若者の寮「常磐会寄宿舎」の監督になりました。そこで、20歳年下の学生・正岡子規と出会い、弟子として俳句を教わりました。この句の季語は「金魚」です。金魚をもらうとき、適当な入れものがなかったので、茶碗に水を張って持ち帰りました。日常の何気ないひとコマが、親しく写し取られています。
(監修:神野)
2026.08.07 放送
正岡子規は、明治時代に活躍した松山出身の俳人です。新しい時代に合わせて俳句を革新し、病と闘いながら、現在の俳句の基礎をかたちづくりました。8月7日は立秋、「秋立つ」日です。暦の上では秋ですが、まだまだ暑い時期です。そんな、風もなく熱気のこもる日でも、海の音を聞いていると、どこか涼しさが兆します。暑さの中にも秋の気配を感じとる、俳人の感性ゆたかな一句です。
(監修:神野)
2026.08.06 放送
俳人・中村草田男は、松山で育ちました。人間探求派と呼ばれ、人間の存在を見つめる哲学的な作風で、力漲る作品を多く残しました。8月6日は、広島に原子爆弾が落とされた日です。大地に口づけをして祈りを捧げる純粋な心すら、禁止しなければならない世界で良いのでしょうか。かつて草田男が詠んだ俳句は、私たちの今、そして未来のあり方を問いかけ続けます。
(監修:神野)
2026.08.05 放送
石田波郷は、松山市に生まれ育った俳人です。人生や生活を主題とし、俳句を通して生きることと向き合いました。百日紅は、梅雨どきから秋のなかばまで、赤い花を長く咲かせる強い木です。ぎらつく太陽の暑さの中でも、花の鮮やかさは色褪せません。その生命力と呼び合うように、人間である私も、ごくごくと水を飲みます。暑い夏を生きる人間の、シンプルな姿が描かれました。
(監修:神野)
2026.08.04 放送
小説家の夏目漱石は、俳人・正岡子規の親友です。小説家になる前から、子規に刺激を受け、俳句を作りました。天子とは、天下を治める君主です。しかし、無人島には誰もいないので、国民がいません。治めるべき対象のいない天子は、滑稽です。それでも堂々と、島で風に吹かれている姿は、軽やかで自由です。無人島の天子とは、漱石の理想の生き方だったのかもしれません。
(監修:神野)
2026.08.03 放送
富澤赤黄男は八幡浜市保内町出身の俳人です。現実を写し取る従来の俳句に対して、言葉が呼び起こすイメージの世界を重視し、新しい時代の俳句を生み出しました。この句も、現実を超えたイメージが立ち上がります。夏の炎天の暑さと、昏く蒼い氷河の冷たさが、一句の中でぶつかります。その、くらくらするようなせめぎ合いの世界に、向日葵が静かに立っています。
(監修:神野)
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