2020.06.30 放送
氷を削って雪のような状態にしたものに、シロップをかけた「掻き氷」は、最も庶民的な夏の飲み物です。昔は鉋を使って手で削っていましたが、今は器械で細かく削り、お客さんの注文に応じてイチゴ、レモン、メロン、ミルク金時などのシロップをかけます。「氷」の小旗を吊した店先の縁台で、天こ盛りの掻き氷に喉をうるおすのも、暑い夏ならではの楽しみです。
(監修:池内)
2020.06.29 放送
藻には淡水藻と海藻がありますが、花をつけるのは湖や沼などに生える淡水藻です。俳句に「藻の花」として詠まれるのは金魚藻、松藻、梅花藻などの花。春、水底から細い茎が伸びはじめ、夏には水面に姿を現して葉の間に淡い色のやさしげな花をつけます。水面に浮かんだ藻の花には、いかにも夏らしい涼しさが感じられます。
(監修:池内)
2020.06.26 放送
南国の香りゆたかなマンゴー。俳句でも、昨今新しく詠まれるようになった夏の風物です。芳醇な果肉の、明るいオレンジ色を、作者は朝焼けの空の色にたとえました。幸せの色が、甘く甘く、世界に広がってゆきます。鍵和田秞子は、愛媛出身の俳人・中村草田男に師事。今月11日に88歳でこの世を去りました。昨年刊行した最後の句集に、このマンゴーの句が収録されています。
(監修:神野)
2020.06.25 放送
紫陽花の葉にかたつむりが這う姿は、いかにも六月の風景です。庭にかたつむりを見つけ、しばらく眺めていたところ、家の電話が鳴り出しました。その音にハッとした一瞬のすきに、かたつむりの姿が消えています。あんなにのんびり進むかたつむりが、忽然といなくなった違和感に、時間感覚がぐにゃりとゆがみ、異世界の扉がゆっくりとひらきます。
(監修:神野)
2020.06.24 放送
夏の食卓を涼しく彩る料理のことを、まとめて「夏料理」といいます。懐石のような立派なものもありますが、この句の夏料理はもっと日常的なものでしょう。外出先からバタバタと帰ってきて、冷奴や素麺などを手際よく仕上げます。たった五分でも、涼しげな食卓の出来上がり。肩の力を抜いた日常の生活が、いきいきと写し取られています。
(監修:神野)
2020.06.23 放送
そこにある誰かの手を、かつて繋いだことのある手だ、と見つめています。別れた恋人でしょうか。それとも、反抗期を迎えた子どもでしょうか。清らかな白百合が結界のように、二人の心理的距離を生み出しています。世界がまぶしく輝く夏だからこそ、触れられない寂しさが募るのかもしれません。
(監修:神野)
2020.06.22 放送
昨日は夏至、一年でもっとも昼の時間が長い日でした。長い長い一日が終わり、太陽が沈んだあとも、空は水色に暮れ残っています。その仄かな明るさは、まるで水のほとりに佇んでいるかのよう。日中の暑さが落ち着き、吹き過ぎてゆく涼しい風に、ほっと一息つく夏至の日暮れです。
(監修:神野)
2020.06.19 放送
「さくらんぼ」は、みずみずしい味はもとより、見た目の愛らしさが好まれる果実です。西アジア原産の西洋実桜として明治の初めに導入され、日本の風土に合わせた改良が進み、甘くて粒のそろった品種が作り出されました。豊葦原瑞穂の国とは、日本の国を称える言葉。さくらんぼの伝来と改良の歴史を偲ばせ、日本産さくらんぼへの賛歌ともいえる一句です。作者は松山市にお住まいの俳人です。
(監修:池内)
2020.06.18 放送
釣りの餌によく使われる「蚯蚓」。梅雨どきに、よく地面に這い出してくるのを見かけます。蚯蚓は細長い紐のような体が多くの体節に分かれた環形動物。土を食べ、土に含まれる有機物を消化吸収し排泄します。その過程で農業に役立つ土壌改良の役割を果たしてくれています。そして半分に千切られても、それぞれが一匹として生きて行く。そうした蚯蚓の生命力に注目した一句です。
(監修:池内)
2020.06.17 放送
梅雨の長雨が続いたあと、一日か二日、気持のよい晴天が見られることがあります。これを「梅雨晴」あるいは「梅雨晴間」といいます。今では五月の晴天の意味で使われている「五月晴」も、本来は梅雨晴のことでした。梅雨晴の空に浮かぶ雲。実際の白さはふだんと変りないのでしょうが、久しぶりの青空に見る雲の白さに、作者は新鮮さを感じているようです。
(監修:池内)
2020.06.16 放送
「蛍袋」は、山の中や野原などに自生するキキョウ科の多年草。今の季節に咲く淡紅色や赤紫色の花は、先が開いた袋のような形で、昔は捕えた蛍を入れたことから、名づけられたといわれています。一度見ると忘れられない花の姿で、つい何か入れてみたくなります。作者は、ひそかに抱いている将来への夢を、願いをこめて蛍袋の花に託しているようです。
(監修:池内)
2020.06.15 放送
今日の松山での日の出は午前4時58分、日の入りは午後7時22分。昼は14時間半近くあるのに夜は9時間半あまりしかありません。こんな夏の夜を「短夜」或は「明易し」といいます。明易しには、涼しい夜が明けてしまうのを惜しむ心が感じられます。よく眠っていたはずなのに、ふと気がつくと目覚めていました。夏の夜は、それだけ明易いのですね。
(監修:池内)
2020.06.12 放送
今日も一日無事に終わって、いつものように夕餉の支度をします。魚の煮付けと味噌汁と、あとは冷奴があればじゅうぶん。いただきます、と手を合わせれば、遠くからポンポン船のゆく音が聞こえてきました。海は夕映え。暑さもゆるみ、涼しい風が抜けてゆきます。引き継がれてきた海辺の暮らしを、なつかしく思い返す夏の夕暮れです。
(監修:神野)
2020.06.11 放送
居酒屋で、上司の話を聞かされているのでしょうか。気合で何とかなるなんて、精神論は聞き飽きた……心の中で反論しつつ、冷奴をつまみます。真四角というかたちは、どこか生真面目で堅苦しいですね。箸でつつけばほろりと崩れる冷奴のように、融通の利かない人も、どうか歩み寄ってくれますように。日常の食を通して、人間模様を描いた一句です。
(監修:神野)
2020.06.10 放送
日本はまさに地震大国。昼も夜もおかまいなく、いきなり揺れが襲います。ごはんどきに地震がきたとき、食卓に冷奴があれば、やわらかい豆腐が、ふるふると揺れることでしょう。冷奴は、日常を代表する食べ物です。当たり前の生活の中に、地震は突然やってくるのだと、あらためて教えてくれる一句です。
(監修:神野)
2020.06.09 放送
気の合う人ばかりの飲み会なら楽しいのですが、そういうわけにもいきません。いつもなぜか反りの合わない人が、斜向かいに座っています。ちょっと視線を動かせば目の合う距離。ビールを飲みつつ、存在がついつい気になります。涼やかな冷奴は、居酒屋の定番メニュー。ささくれ立つ気持ちを、クールダウンさせてくれればよいのですが。
(監修:神野)
2020.06.08 放送
夏の食卓の定番、冷奴。冷やした豆腐に薬味をかけて頂くシンプルな料理ですが、絹ごしか木綿か、薬味は紫蘇か生姜か、作る人によって個性が出ます。仕上げの醤油も、産地によって甘さや辛さ、風味がずいぶん異なりますね。ふるさとの醤油をかければ、なつかしい味の出来上がり。かつて囲んだ家族との夕餉を思い出しながら、今日のひと日が過ぎてゆきます。
(監修:神野)
2020.06.05 放送
今日は二十四節気の芒種。芒のある穀物、すなわち稲を植えることをいいます。以前の田植は多くの人手が必要で、何軒もの農家が結という組を作って協力しあっていました。最近は家ごとに「田植機」で植えるようになり、歳時記にも田植の項目に季語の一つとして田植機が載っています。静かなエンジンの音とともに、日を躍らせながら進む田植機は、今や夏の風物詩といえるかもしれません。
(監修:池内)
2020.06.04 放送
燕は春に渡って来るので、単に「燕」という場合は春の季語です。四月から七月頃にかけて二回の産卵をし、雛を育てます。その間、親燕はせっせと雛に餌を運び続けます。そんな親燕と、まだ飛び方のおぼつかない子燕。この季節に見られる「夏燕」こそ、燕が最も燕らしく感じられる時期といえるかもしれません。まさに、多忙を生き甲斐としているとも思える、健気な夏燕の姿です。
(監修:池内)
2020.06.03 放送
筍は、生長するにつれて根元から順に皮を脱いでゆきます。季語では「竹の皮脱ぐ」といいます。剥がれかけの竹の皮が風に吹かれる姿など、この季節ならではの風情です。落ちた竹の皮も、以前は草履を編んだり牛肉などを包むのに利用されていました。この句は皮を脱いだ直後の竹の姿に注目しています。「堂々の裸」という表現が、めざましい生長へと向かう竹の生命力を感じさせてくれます。
(監修:池内)
2020.06.02 放送
初夏の頃に吹く、雨を伴うことの多い湿気を含む南風が「ながし」。「茅花流し」は、茅花、すなわち白茅の穂絮がほころびる頃に吹く、湿気を含む南風を指す季語です。この句のご先祖の墓は、田園を流れる川沿いにあるのでしょうか。お墓越しに吹いて来る茅花流しは、梅雨の先触れのようにも思えます。
(監修:池内)
2020.06.01 放送
今日から六月。全国の川で鮎漁が解禁となります。独特の香りから香魚とも呼ばれる鮎は味がよく、川魚の王といわれます。鮎の漁法で最も一般的なのが鮎の縄張り性を利用した友釣りです。この句の釣り師も友釣りをしているのでしょう。なかなか中りが来ないらしく、何度も場所を更えては釣竿を伸ばしています。作者は松山市にお住いの俳人。俳句雑誌「渋柿」主宰です。
(監修:池内)
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