2018年1月の俳句

  • 湯の町に 湯もみ艾や 日脚のぶ

    2018.01.31 放送

    作者:江崎紀和子

    冬至のころは昼が最も短く、冬至を過ぎると毎日少しずつ日が長くなって行くことを表す季語が「日脚伸ぶ」。日脚が伸びたことを実感するのは、春も近くなった今の季節です。この句は道後温泉の情景でしょうか。店先で売られているお灸の艾にとどいた日脚が、春の近いことを感じさせます。(作者は東温市にお住いの俳人。俳句雑誌「櫟」主宰です。)

    (監修:池内)

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  • 一匙の 煮凝にある 冥い海

    2018.01.30 放送

    作者:上谷昌憲

    寒い冬に煮魚を一晩置くと、煮汁がゼリー状に固まって「煮凝」ができます。鮟鱇、エイなどゼラチン質の多い魚ほど、よく固まり味のよい煮凝になります。独特の風味が、冬の味覚として古くから賞味されています。たった一匙でも、煮凝には海の幸のエッセンスが溶け込んでいるのではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 風花を 序の舞として 能舞台

    2018.01.29 放送

    作者:八染藍子

    冬晴の日に、青空からちらちらと降ってくる雪を「風花」といいます。山岳地帯に降った雪が、強い風に乗って風下の平地まで飛んでくるものです。この句は、能舞台へ舞ってきた風花。開け放たれた高欄のあたりから、橋掛りにまで舞う風花を序の舞として、いよいよ本日の能の演目が始まります。

    (監修:池内)

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  • 寒梅やある夜の夢に星落ちて

    2018.01.26 放送

    作者:正岡子規

    春にさきがけて、寒い中で花を咲かせる梅を、寒梅と呼びます。寒梅を見たある日の夜、夢に流れ星を見ました。花びらのしらじらとした光が、空に弧をえがく星の光と重なったのでしょうか。愛媛でも、あちこちで梅が咲きはじめています。週末は、梅の花を探しに出かけてみませんか。

    (監修:神野)

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  • ジャムパンや 世界たとえば 春を待て

    2018.01.25 放送

    作者:十亀わら

    愛媛県出身の若手俳人の一句です。殺風景な冬の景色を眺めつつ、ジャムパンをかじっています。現代の世界は、単純に解決できない課題であふれていますが、たとえば春を待つ気持ち、そこから始まる何かも、あるかもしれません。ジャムパンのなつかしい甘さに、ふと春が恋しくなります。

    (監修:神野)

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  • 脱落の ランナー雪を 見てゐたる

    2018.01.24 放送

    作者:河野けいこ(砥部町)

    レースを棄権してしまったランナーが、道ばたでぼんやりと、空から降る雪を見つめています。ちらり、ちらり。雪は、ランナーの心をいやすでもなく、ただ無心に降ります。人生もまた、ときに脱落を余儀なくされることも。そんな孤独の時間に、しずかに寄りそってくれる一句です。

    (監修:神野)

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  • ゑがほなり 風邪の子ゑがく 風邪の神

    2018.01.23 放送

    作者:榮猿丸

    風邪をひいた子が、外で遊べないので、部屋でお絵かきをしています。見せてくれたのは、なんと風邪の神さまの絵です。自分を苦しめている風邪の神を、笑顔で書く子どもの優しさに、心がやわらぎます。でも、本当に風邪の神がいて、笑顔で猛威を振るっているとしたら、ちょっと怖いですよね。

    (監修:神野)

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  • 埋もれたる レールの行方 冬ひばり

    2018.01.22 放送

    作者:夏井いつき(松山市)

    別子銅山の風景を詠んだ一句です。かつては現役だった鉄道のレールが、今は使われなくなり、土や草に埋もれています。見えないレールの先は、どこへ続いているのでしょう。レールの行方のように、春への出口もまだ見えません。誰もいなくなった冬の山にヒバリのさえずりがひびきます。

    (監修:神野)

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  • 日を恋うて 日にゆるびたる 寒牡丹

    2018.01.19 放送

    作者:小圷健水

    本来代表的な初夏の花である牡丹を、真冬に咲くようにしたものが「寒牡丹」です。初夏に蕾を摘み取っておくと、牡丹は力を蓄えて冬に咲くようになります。日本人の器用さと風流心が生み出した改良品種といえるかもしれません。藁囲いの中で、冬の日ざしを浴びて鮮やかな色を見せている寒牡丹です。

    (監修:池内)

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  • 寒鯉の 貫禄の影 動かざる

    2018.01.18 放送

    作者:亀田虎童子

    寒中の鯉は滋養に富み、おいしいといわれています。俳句では「寒鯉」として、よく詠まれます。釣師にとっても、釣りにくい寒鯉を釣り上げるのは寒釣りの醍醐味だといわれます。池などの水底に、じっとして動かない寒鯉。その不動の姿を、鯉自体だけでなく、影までも動かない貫禄ぶりとして描いた一句です。

    (監修:池内)

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  • 冬菊や ひとつの墓に 母と父

    2018.01.17 放送

    作者:上野一孝

    油菊を冬に咲くように改良した園芸品種が「冬菊」で、十二月から一月ごろに黄色い花をつけます。俳句では遅咲きの菊が冬になっても咲き残っているものも、「冬菊」あるいは「寒菊」として詠まれています。ひとつの墓にともに眠っている母と父。この季節の献花として、冬菊ほどふさわしいものはないかもしれませんね。

    (監修:池内)

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  • ひとすぢの 血の走りたる 寒卵

    2018.01.16 放送

    作者:加藤瑠璃子

    鶏が寒中に生んだ卵を「寒卵」といいます。寒卵はほかの季節のものより栄養豊富で、貯蔵が利くこともあり、珍重されます。殻を割って中身を落としても黄身が崩れず、こんもりと盛り上がっておいしそうです。殻を割った寒卵の上に発見した一筋の血の色。作者はそこにも寒卵の新鮮さを感じているようです。

    (監修:池内)

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  • 小正月 昔のやうな 火が恋し

    2018.01.15 放送

    作者:前澤宏光

    一月十五日は「小正月」。小正月に餅花を飾って豊作を祈る風習は、各地の農村に伝わっています。また松飾りなどを焚き上げる左義長も、小正月の行事です。農家では餅を搗いたり団子を作ったりして祝います。作者は家族で囲炉裏の日を囲んで小正月を祝った、古き良き時代を懐かしんでいます。

    (監修:池内)

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  • セーターを すとんと着せて 歯抜児よ

    2018.01.12 放送

    作者:松本勇二(松山市)

    子育ての風景です。子どもの頭にセーターをかぶせ、すとんと着せました。セーターから出てきた顔を見ると、あらためて、歯が抜けているのが目立ちます。ちょうど、乳歯から永久歯へと生え変わるころ。着せてもらったセーターで、北風の中、元気に遊んでくるのでしょう。健やかな成長の一句です。

    (監修:神野)

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  • かく小さき お供へなれど 鏡割

    2018.01.11 放送

    作者:片山由美子

    今日は、お正月の鏡餅を割り、しるこや雑煮にして食べる、鏡開きの日です。刃物で切るのは縁起が悪いとして、手や木づちで割るので、鏡割ともいいます。最近は、鏡餅もずいぶん小さくなりましたよね。こんなに小さなお供えの鏡餅でも、ちゃんと鏡割りをしよう……丁寧な暮らしぶりが見える一句です。

    (監修:神野)

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  • つぎつぎに 蜜柑を貰ふ 旅の空

    2018.01.10 放送

    作者:矢野玲奈

    会う人会う人が蜜柑をくれる、アットホームな旅なのです。蜜柑という果物の親しさが、土地の人々のぬくもりを伝えてくれます。この冬、道後温泉が、旅行会社の「女性の一人旅・人気温泉ランキング」で、4年連続1位となりました。作者が仰いだのも、愛媛の空だった、かもしれませんね。

    (監修:神野)

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  • 言訳の できる寒さで ありにけり 

    2018.01.09 放送

    作者:三瀬教世(西予市)

    こんなに寒いのだから、出かけないで少々不義理をしても、先方も納得してくれるはず。約束が果たせなかったことの言い訳に使えるくらい、寒いのです。寒さ極まる今日この頃ですが、ときにはその寒さを言い訳にも利用して、どうかみなさま、ご自愛ください。

    (監修:神野)

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  • 翼の数かぞへ 成人の日の空港

    2018.01.08 放送

    作者:鈴木鷹夫

    今日は成人の日。全国へ散らばっている新成人も、この週末には、成人式に出るため、ふるさとの空港へ降り立ちました。空港には飛行機の翼がいくつも並び、日ざしにまぶしく輝きます。新成人たちも、それぞれの翼を広げ、未来へ飛び立ってゆくのでしょう。若者の前途をことほぐ一句です。

    (監修:神野)

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  • 墨打つて はつつて 手斧始かな

    2018.01.05 放送

    作者:田島和生

    大工さんなど、建築関係の職業の人の新年の仕事始めを「手斧始」といいます。(昔は正月五日に行われるのが恒例でした。)まずお神酒を供えて拝礼し、恵方を向いて材木に墨糸で線を引きます。線にそって手斧を振りかざし、二、三回軽く削り取ります。「はつる」は少しずつ削り取ること。これで一年の仕事の安泰を祈る手斧始は無事終了です。

    (監修:池内)

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  • めでたさの 続きに居りて 四日かな

    2018.01.04 放送

    作者:大橋麻沙子

    お正月も今日はもう四日。俳句では、一月は一日から七日まで、それぞれが季語です。もちろん「四日」も季語。四日は三が日の正月行事が終わり、多くの職場で仕事始めの日とされています。とはいっても、仕事の道具を整えたり新年の顔合わせ程度で、半日で終わる職場もあり、四日はめでたい三が日の続きという雰囲気なのでしょう。

    (監修:池内)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
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