2024年12月の俳句

  • 花売に そぼふる雨や 年の市

    2024.12.25 放送

    作者:松永鬼子坊

    年の市は、正月の飾りや品物を売るために立つ市です。かつては松山銀天街にも年の市が立ち、人波が続いたそうです。作者鬼子坊は現在の東温市生まれ。大正四年に、松根東洋城の「渋柿」に参加しました。しとしと降る冷たい雨に、年の瀬の哀感が募ります。でも花が目に入ると、心が和み来年への期待も膨らみそう。そういえば、以前に花をいっぱい積んだリヤカーを銀天街入口でみかけたことがありました。年の市の名残だったのかもしれません。

    (監修:谷)

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  • 子へ贈る 本が箪笥に 聖夜待つ

    2024.12.24 放送

    作者:大島民郎

    今日は聖夜。クリスマス・イブです。街ではイルミネーションがピークの輝きを放って、イブを楽しむ人たちを彩ります。一方、家の中では、子どもたちへのクリスマスプレゼントがひっそりと出番を待っています。箪笥の本は、絵本、図鑑、偉人の伝記でしょうか。特別な本に思いを巡らすと、なんだか夢が膨みます。

    (監修:谷)

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  • いつも雪 たんたんめんを 食べるとき

    2024.12.23 放送

    作者:木村輝子

    担担麺は中国が発祥の辛味の利いた麺で、日本でも馴染みです。担担麺を食べる時には、必ず雪が降るなあという句。いかにも辛そうな汁の赤さと白い雪の対比が鮮やかです。ニュースで雪国の過酷さを目の当たりにしながらも、温暖な土地に住む者は雪に憧れ、雪を待っているような気がします。担担麺を食べてみようかなあ。

    (監修:谷)

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  • キッチンは 記憶の棲家 蕪を煮る

    2024.12.20 放送

    作者:杉野 祐子(松山)

    私たちは毎日、ごはんを食べます。だからキッチンには、日々の思い出が積み重ねられ、ふとした瞬間に懐かしさが漂います。たとえば実家に帰ったとき、キッチンの暗がりにふと、あの人、この人が生きていた日の明るさを思います。過ぎ去りし時間を切なく顧みつつ、やさしい記憶を灯して、今夜の蕪を煮ます。

    (監修:神野)

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  • 蕪洗ふ 大統領が誰であれ

    2024.12.19 放送

    作者:竹本桂子(久万高原)

    十一月、アメリカの大統領選挙があり、保守派のトランプ氏が選ばれました。また、十二月には、韓国の尹錫悦大統領が宣言した「非常戒厳」に、議会や国民が抵抗しました。誰が大統領になっても、私は蕪を洗い、生活を繋がねばなりません。ぶれずに生きる庶民の愚直が、政治をも変える力に繋がることを願います。

    (監修:神野)

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  • 今夜の僕 クリームシチューの 蕪くらい

    2024.12.18 放送

    作者:伊予素数(神奈川)

    蕪はよく煮えるので、シチューの具の中でも、人参やじゃが芋に比べて、すぐに崩れます。そんなクリームシチューの蕪みたいに、今夜の僕は、ぐずぐずと今にも溶けそう。仕事で疲れたのかもしれないし、幸せで満たされているのかも。やさしい甘さと楽しい例えに、ほっとあたたかくなる一句です。

    (監修:神野)

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  • 蕪茹でて 製氷皿へ 離乳食

    2024.12.17 放送

    作者:堀川絵奈(西予)

    蕪は甘くて柔らかいので、赤ちゃんの離乳食にも重宝します。冷凍庫で氷を作る製氷皿は、料理にも大活躍。出汁やスープなど、製氷皿で凍らせれば、必要な分だけ使えるので便利です。茹でた蕪を製氷皿で小分けにして、離乳食に使います。忙しい中の育児のライフハックが、さらりと一句になりました。

    (監修:神野)

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  • ひかりふる やうに塩振る 蕪かな

    2024.12.16 放送

    作者:高尾彩(三重)

    お漬物にするのでしょうか、グリルするのでしょうか。適当なサイズに切った蕪に、塩を振ります。そのとき、塩の粒がまるで光のように、きらきらと輝きました。蕪の肌もまた、白い光を放っています。日差しの弱まる冬だからこそ、蕪や塩粒の白が眩しく、尊く感じられます。

    (監修:神野)

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  • 蕪の葉をばさり 彗星の尾をばさり

    2024.12.13 放送

    作者:澤田 紫(埼玉)

    蕪は葉っぱをいきいきと茂らせるので、その葉をばさりと切り落とすときも、存在感たっぷりです。手に伝わる実感を、まるで彗星の尾を切ったようだと、ダイナミックになぞらえました。夜空を駆ける彗星の勢いが、蕪の生命力をゆたかに伝えてくれます。さて、今夜の空には、どんな星が輝いているでしょう。

    (監修:神野)

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  • 武蔵野の 昼の明るさ 蕪汁

    2024.12.12 放送

    作者:石塚彩楓(埼玉)

    武蔵野は、東京と埼玉にまたがる台地で、歌枕として詠み継がれてきました。その風景は、かつてはどこまでも広がる野原として、近代以降は散策する林として、文学の中に登場します。自然の残る武蔵野の土地でとれた蕪でしょうか。木々を洩れ、空へ広がる明るさに、かつての武蔵野の風景を思います。

    (監修:神野)

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  • うちぬきや 丹念に蕪 洗ひたる

    2024.12.11 放送

    作者:梶原菫(松山)

    西条市は、地下水の噴き上がるうちぬきがそこここにある、水のゆたかな町です。冬の青空の下、湧き水にしゃがみ、とれたばかりの蕪を丹念に洗います。泥を流せば、蕪の白く明るい肌が冬の日差しに輝きます。大地とともに生きる素朴な暮らしの日常が、簡潔に写し取られた一句です。

    (監修:神野)

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  • 蕪の葉の みどりを朝日 ごと刻む

    2024.12.10 放送

    作者:祐宇(富山)

    蕪は、その葉や茎も食べられます。細かく刻み、漬けたり炒めたりすれば、ごはんのおともにぴったりです。朝の光の満ちる台所で朝食の準備をしています。蕪の葉にも、たっぷりと朝日が。その光ごと刻めば、あおあおと香り立ち、断面がみずみずしく輝きます。すがすがしい冬のひと日の始まりです。

    (監修:神野)

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  • くくりたる 藁しつとりと 小蕪買ふ

    2024.12.09 放送

    作者:加田紗智(高知)

    冬は根菜の季節です。中でも蕪は、みずみずしい甘みが嬉しい、身近な野菜です。煮てもよし、漬けてもよし。汁物に入れるとほっこりと柔らかく、葉や茎も刻んで食べられます。葉つきの蕪の束が、藁にくくられて売られているのでしょう。触れれば藁は蕪の葉にしっとりとして、その湿りが蕪の命を感じさせます。

    (監修:神野)

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  • 冬同じ色に ポストと消防車

    2024.12.06 放送

    作者:三橋鷹女

    木々も枯れきって寒々しく、荒涼となる冬。そんなさみしい風景に、赤を象徴する二つのものを並べた一枚の絵のような一句です。シンプルかつ大胆に描きました。「冬同じ色に」というリズミカルな詠いだしもまた、明るい赤を引き出すのに効果的です。ちなみに空気の乾燥で起こりやすい「火事」は冬の季語。自ずと消防車が活躍します。

    (監修:谷)

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  • 鳶鳴いて 耳がとんがる 冬の波

    2024.12.05 放送

    作者:山本純子

    「冬の波」は季節風が強いために海岸で大きく打ちつけ、冷たい飛沫をあげます。湖や川、池などの波も荒れます。波は、冬の波らしくたまたま高く上がったのですが、とんがった耳のように思えたのです。鳶のピーヒョロロという親しい鳴き声に、反応したのだと。海に耳があるなんて、詩人でもある作者の楽しい発想です。

    (監修:谷)

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  • 寝違への 首のいちにち 大根煮る

    2024.12.03 放送

    作者:杉浦典子

    こんな一日、あります。寝違えは、寝ている間のむりな姿勢が原因。筋肉痛の首や腕が自由にならないことを、目覚めて初めて気付きます。苦しい首の一日が始まります。夕飯どきも、なお。でも、大根を煮ていると、冬の味覚のいい匂いに、固まった首がだんだんほぐれてくる気がします。

    (監修:谷)

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  • 牡蠣打ちの 妻の姿を 遠まもる

    2024.12.02 放送

    作者:佐野まもる

    牡蠣の肉はとても美味で滋養に富み、酢牡蠣、どて鍋、牡蠣フライなど、冬の食卓を豊かにします。家族の夕飯に思いを巡らせながら、岩にひっついている牡蠣を、夢中で採っている妻です。「遠まもる」は、離れた場所で見つめている夫の、妻への思いの籠った言葉のように思われます。作者が昭和二十一年から約二年間、伯方島に滞在した時の俳句です。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

2月のお題は
「薄氷」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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