2023年10月の俳句

  • ちちははは 二階使はず 虫時雨

    2023.10.31 放送

    作者:井出野浩貴

    年を重ね、足腰が弱って、階段をのぼるのが難しくなったのでしょう。両親は、二階建ての家の一階だけを使って暮らしています。かつては、子どもたちも住んでにぎやかだった家。今は、こおろぎや鈴虫の鳴く声に囲まれながら、秋の夜長を静かに過ごします。

    (監修:神野)

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  • 星流れ 豆苗育つ 窓辺かな

    2023.10.30 放送

    作者:吉田祥子

    豆苗は、栄養たっぷりの野菜です。根っこを残して水に浸しておけば、またぐんぐんと育ち、収穫して料理に使えます。日差しがあたるよう、窓辺に置いているのでしょう。今、窓の外には夜の闇。ときおり流れ星が過ぎ、秋の夜長は静かに更けてゆきます。

    (監修:神野)

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  • 漢方の 百の抽斗 十三夜

    2023.10.27 放送

    作者:有馬朗人

    今日は、十三夜です。一か月前の十五夜の後なので「後の月」とも呼び、また、先の芋名月に対して豆名月、栗名月といいます。「漢方の百の抽斗」の百は、多いことを表します。今ではアンティークな箪笥として好まれる、かつての薬箪笥でしょう。漢方薬などを分類するための家具でした。抽斗を開けるごとに、十三夜の月の明かりが差し込むのです。

    (監修:谷)

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  • 晩秋の 木に寄りかかろ ぶらさがろ

    2023.10.26 放送

    作者:川島由紀子

    大きな木、例えば樟や欅などは、傍に行ってその幹に触れたくなります。叩いてみたりもします。なんとなく気持ちが落ち着くというか、あたたかな気分になれます。この句、行く秋の木を惜しむかのように「寄りかかかろぶらさがろ」と、みんなに呼びかけている?。あるいは、呟きながら木に近づいているのかも。

    (監修:谷)

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  • 足もとは もうまつくらや 秋の暮 

    2023.10.25 放送

    作者:草間時彦

    季語「秋の暮」は、まずは秋の日暮れをいいます。急速に落ちることを例えていう「鶴瓶落し」は、日暮れが急な秋の季語として使われています。気付けば「もうまっくら」なのです。この句は、暗さが足もとに集中している表現で、昏倒しそうな不安をもたらします。ふっと、晩年を迎える我が前途と重ねてしまったかもしれません。

    (監修:谷)

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  • 廊下拭く 尻立てなほす 鵙日和

    2023.10.24 放送

    作者:中原道夫

    「鵙日和」とは、キーキーと鋭く鳴く鵙の声が、ひと際よく聞こえる、空気のよく澄んだ秋の日のことです。最近は、雑巾よりもモップが活躍していそうです。かつては、学校の廊下などで、こんな風景を経験、あるいは目にしました。長いと、お尻がへこたれてくるのです。一息ついて、再びお尻を立て直し、ゴールへと邁進します。

    (監修:谷)

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  • いちまいの 皮の包める 熟柿かな

    2023.10.23 放送

    作者:野見山朱鳥

    熟柿は、やわらかくなった柿で、まさにこの句のように、危うく皮一枚に実が包まれています。剥くのは難しいので、ちょっと穴をあけて、あとは唇を寄せて実を啜ります。とても甘くて、トロっと口の中に入ってきますね。種にだけは気を付けて。枝についたままの柿は、ですから、人間より先にカラスなどの鳥の格好の餌になってしまいます。

    (監修:谷)

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  • 母の焼く レモンケーキや 誕生日

    2023.10.20 放送

    作者:星月彩也華(四国中央)

    誕生日に、お母さんがお手製のレモンケーキを焼いてくれます。レモンケーキは、レモンの果汁やピールを混ぜ込みます。キッチンにも、さわやかな香りが満ちているでしょう。手間をかけて焼き上げるケーキには、レモンと母の愛が、たっぷり。人生のぬくもりを感じる一句です。

    (監修:神野)

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  • 瀬戸内の レモンをしぼる 夜の銀座

    2023.10.19 放送

    作者:竹本桂子(久万高原)

    銀座は東京の中心部、言わずと知れた大人の街です。レモンを搾るのは、バーでカクテルを作るひとコマでしょうか。瀬戸内の太陽がもたらした明るいレモンが、大都会の片隅で、疲れた誰かの心を癒します。心地よい静けさの中、ゆたかに更けてゆく、銀座の夜です。

    (監修:神野)

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  • 檸檬投ぐ アインシュタインの光速

    2023.10.18 放送

    作者:村上光朗(鹿児島)

    物理学者のアインシュタインは、光の速度はどの条件でも変わらないと考え、特殊相対性理論を唱えました。投げられたレモンは、まるで光そのもののようで、その放物線を描く速さに、アインシュタインを思い出したのでしょう。宇宙に共通する、瞬間のきらめきを、今、レモンがさわやかに物語ります。

    (監修:神野)

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  • レモン切る 同性が好きとは言えず

    2023.10.17 放送

    作者:鳴海響(神奈川)

    この世界にはさまざまな愛があります。違う性別同士で惹かれ合うこともあれば、同じ性別の人を好きになることも。しかし、現実の社会には、同性愛に偏見を持つ人もいます。自身の指向を無理に隠すことなく、誰もが自由に生きられたら。レモンの爽やかさが、鬱屈を少しでも癒してくれることを祈ります。

    (監修:神野)

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  • 崩れたる トランプタワー 檸檬の香

    2023.10.16 放送

    作者:赤尾てるぐ(秋田)

    トランプをたわむれに積み上げたタワーが崩れる瞬間、レモンの匂いがしました。レモンは、そのフォルムや鮮やかな黄色から、果物の中でもおしゃれな印象をまといます。トランプとレモンの組み合わせも、洗練された雰囲気です。ものの描写を通して、秋の静かな空気感を写し取りました。

    (監修:神野)

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  • 瀬戸内の 廃校に生る レモンの実

    2023.10.13 放送

    作者:藤本加奈子(松山)

    瀬戸内の島でも少子化が進み、廃校となった学校もあります。校庭に子どもたちの声は聞こえなくなっても、レモンの木は変わらず、秋になれば実をつけます。その明るさが、廃校の寂しさをやわらげ、ありし日のにぎやかな学校を、ひととき思い出させます。

    (監修:神野)

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  • 中退や 檸檬は押し付けて搾る

    2023.10.12 放送

    作者:いかちゃん(神奈川)

    通っていた学校を、事情があって中退することになりました。複雑な思いを飲み込みながら、レモンを器に押し付けて搾ると、酸っぱさや苦みもひときわ強そうです。中退を選んだこともその人の個性としてとらえ、これからの可能性を大切に、認め合う社会でありたいものです。

    (監修:神野)

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  • 胎の子五ヶ月 レモンのひとつぶん

    2023.10.11 放送

    作者:風花まゆみ(札幌)

    おなかに宿った胎児は、妊娠五か月ごろには、平均で百から二百グラムほどに育つといいます。レモン一個の重さも、実は同じくらいです。まだまだ軽く小さくて、だからこそ尊い命の気配。てのひらのレモンを通して、まだ触れることのできない子の存在を、たしかに感じます。

    (監修:神野)

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  • 潮風の 通るアトリエ 檸檬の香

    2023.10.10 放送

    作者:杉野祐子(松山)

    海のそばに、絵を描くためのアトリエがあるのでしょう。窓を開ければ、潮風が通り抜け、海の光が寄せてきます。レモンは、絵の題材としてカンバスの向こうにあるのでしょうか。それとも、海沿いにレモンの木が実っているのでしょうか。香りとともに、レモンの黄色の明るさが、まぶしく輝きます。

    (監修:神野)

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  • 見て触れて写メって 初生りのレモン

    2023.10.09 放送

    作者:岩ア久美(松山)

    レモンは秋の季語です。愛媛は、広島に次ぐレモンの産地です。瀬戸内の温暖な気候が、香りゆたかでフレッシュな果実を育てます。レモンは、植えてから実をつけるまでに数年かかります。待って待って、ようやく初めて実ったレモン。見て、触って、携帯電話の写真で撮って、その収穫を喜びます。

    (監修:神野)

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  • 約束を 破る決心 檸檬切る

    2023.10.06 放送

    作者:岡 清秀

    例えば、本を貸す約束とか、明日ワインを飲む約束とか。破ってもそう罪のない約束のような気がするのは、檸檬という爽やかな香りのする果実のせいかもしれません。でもこの人にとっては「決心」を必要とする一大事。その生真面目さが、ちょっと可笑しいです。切ったとたん顔を目がけて、檸檬が酸っぱい汁を放ちそう。

    (監修:谷)

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  • 柿買えば おまけも柿の 真田村

    2023.10.05 放送

    作者:尾崎淳子

    柿を買ったらおまけをくれて、それも柿だった、という楽しい句。でも、この人がうれしかったかどうかは、微妙です。そこを想像して楽しいのです。おまけも柿なら、こんなに買わなくて良かったのに、と思っったかも知れません。もちろん、素直に喜んだかも。真田村は、真田幸村に縁の深い、富有柿で有名な和歌山県久度山町でしょうか。

    (監修:谷)

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  • 灯ともせば 只白菊の 白かりし

    2023.10.04 放送

    作者:内藤鳴雪

    一室に活けた白菊か、それとも庭先かも知れません。灯をともしたら、凛と立つ白菊だけが目に飛び込みました。照らされた白に、はっと胸を打たれて、立ち尽くした感じ。作者は、正岡子規門の長老で、子規より20歳年上でした。子規は鳴雪の句を「高華」と評しました。高尚で華やかというのですが、この句などまさに。

    (監修:谷)

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  • 掃除機を キャサリンと呼ぶ 秋日和

    2023.10.03 放送

    作者:井上曜子

    秋日和は、秋晴れの空が澄み渡った穏やかな日のこと。出かけたいところですが、まずは家の掃除から。「キャサリンお願いね」などと呼びかけながら、一人の掃除を楽しんでいるようです。キャサリンとは、イギリスのキャサリン公妃?あるいは英語塾の先生とか。掃除機にお気に入りの人の名を付けてみると、せいが出そう。

    (監修:谷)

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  • 天の川 息をしづかに 峠越え

    2023.10.02 放送

    作者:川崎展宏

    「天の川」は、銀河系の無数の恒星が帯状に連なるさまを、天を流れる川と表現したものです。峠の空に燦然と横たわる天の川に、息をのんだでしょうか。幻想的な天空に圧倒されながら、ゆっくりと越えて行きます。ちなみに、この峠は、大洲・八幡浜間の夜昼峠。東京在住だった作者が、トンネルが出来る前の情景を詠みました。

    (監修:谷)

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(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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