2020年5月の俳句

  • We are here We are here 夏鴬

    2020.05.29 放送

    作者:小川弘子

    春には拙い声でケキョケキョと鳴いていたウグイスも、夏にかけて、ずいぶん歌が上達します。山々をこだまする、美しい「ホーホケキョ」。作者はその声を、「We are here」、私たちはここにいるよ、と告げているように感じました。ウグイスも人間も、誰かと一緒に、どこでもないこの場所で、同じ夏を生きているのですね。

    (監修:神野)

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  • 散歩から 帰つてくれば 豆御飯

    2020.05.28 放送

    作者:村松二本

    えんどう豆を炊き込んだ豆御飯は、夏の季語。あざやかな豆の緑が、初夏の食卓を彩ります。ぐるりとそのへんを散歩して、家に帰ってきたら、ちょうど豆御飯が炊けていました。おなかもすいたところ、ほっこり優しい匂いが食欲を誘います。感染防止で遠出のはばかられる今、散歩して食事をする当たり前の日常が、あらためて大切に感じられますね。

    (監修:神野)

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  • ネモフィラの青へ 大空帰ってゆく

    2020.05.27 放送

    作者:乾佐伎

    ネモフィラは、まだ歳時記には載っていませんが、春の終わりから夏のはじめに咲く、明るいブルーの草の花です。地面を這うように広がるので、最近では、ネモフィラを一面に咲かせた丘や野原が、あちこちで見られますね。大地の青と空の青。大空すら吸い込んでゆくほどに、ネモフィラのスカイブルーは、深くやさしく、風の中を輝きます。

    (監修:神野)

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  • 緋牡丹や 片くづれして 咲きこぞり

    2020.05.26 放送

    作者:鈴木花蓑

    牡丹の花は、豪華絢爛なさまから、「花の王様」として愛されてきました。清らかな白牡丹もよいですが、あざやかな緋色の牡丹は、他を圧倒する迫力に満ちています。今が盛りと咲きほこるそばから、ほろほろと花びらが崩れてゆきます。牡丹が見せる、滅びをはらんだ美しさを、五七五の韻律に、ゆったりと写し取りました。

    (監修:神野)

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  • 星の窗 新樹の窗と となりあふ

    2020.05.25 放送

    作者:藤田哲史

    同じ部屋の、隣り合う二つの窓でも、映す景色は案外違うものです。ある夜、ふと室内を見渡せば、一つの窓からは星空が、もう一つの窓からは若葉の枝が見えました。まるで美しい二枚の絵を見ているよう。世界の中で静かに輝き合う、星と新樹。調和のとれたみずみずしい五月の夜です。

    (監修:神野)

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  • 捩花の 秩序正しく ねぢれけり

    2020.05.22 放送

    作者:櫨木優子

    「捩花」は草原や田の畦などに自生するラン科の多年草で、高さは30センチほど、根本に数枚の葉があります。夏に茎の上の方に螺旋状に捩れた穂を出し、ピンク色の愛らしい花を咲かせます。その姿から「捩花」と呼ばれますが、「文字摺草」という別名もあります。「秩序正しく」という中七によって、捩花の捩れ方を映像的にも鮮やかに描いた一句。作者は大洲市にお住まいの俳人です。

    (監修:池内)

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  • 得度せるさまに 玉解く芭蕉かな

    2020.05.21 放送

    作者:八染藍子

    芭蕉はバショウ科の大形多年草。初夏のこの時期に大きな葉を堅く巻いたような新芽を出します。これを「玉巻く芭蕉」といいます。やがて伸びほぐれて二メートルもある若葉となります。この状態を美しく表現する季語が「玉解く芭蕉」。芭蕉が最も美しく見える頃です。そんな玉解く芭蕉の姿を、悟りを開いて涅槃の彼岸に達した境地と見做した、味わい深い一句です。

    (監修:池内)

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  • 麦秋の野を 大河のゆつたりと

    2020.05.20 放送

    作者:川内雄二

    麦が黄金色に染まり、刈り入れも近い頃が「麦秋」。訓読みで「麦の秋」ともいいます。秋といっても、これは収穫の時季という意味で夏の季語です。黄色く熟した麦畑がどこまでも連なる中を、たっぷりと水を湛えた大川がゆったりと流て行きます。まことに気持ちのいい日本の初夏の情景です。作者は松山市にお住まいの俳人。俳句雑誌「紅日」主宰です。

    (監修:池内)

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  • 牡丹の 崩るるときも 気品あり

    2020.05.19 放送

    作者:星野椿

    初夏を豪華に彩る「牡丹」は、中国原産の落葉低木で、平安時代に薬用植物として渡来し、おもにお寺に植えられました。江戸時代には鑑賞用に数々の品種は作り出され、広く栽培されるようになりました。華麗さと気品の高さで花の王ともいわれる牡丹の散り際の、はかなくも気高い姿に注目した一句です。高浜虚子のお孫さんとしても知られる作者は、今年90歳になられました。

    (監修:池内)

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  • 草笛の 不協和音を 野に広げ

    2020.05.18 放送

    作者:千原叡子

    草の葉や木の葉を唇に押し当てて吹き鳴らすのが「草笛」。吹く息の強弱や葉の当て加減で音程を変え、メロディを吹きます。簡単なようでなかなか難しく、初めはピーッとしか鳴りません。唇の使いようや呼吸に馴れると簡単な曲が吹け、この季節ならではの楽しみとなります。一人で吹いているのに不協和音のように聞こえる音が野にひびくのも、草笛ならではの風情かもしれません。

    (監修:池内)

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  • 読み直す カミユの『ペスト』 夜の蟻

    2020.05.15 放送

    作者:奈良香里(松山市)

    フランスの作家・アルベール・カミュが書いた小説『ペスト』は、伝染病のために封鎖された街で、不条理と戦う人々の生きざまを描きました。約70年前の作品ですが、コロナウイルス蔓延の現状と重なるとして、今、多くの人に読み直されています。夜の部屋に迷い込んだ蟻も、病におびえる人々と同じ、迷える命のひとつ。朝日が差し、出口が見えるときを、ひたすらに待つ夜です。

    (監修:神野)

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  • 蟻の列 天動説を 疑はず

    2020.05.14 放送

    作者:松田夜市(松前町)

    今、私たち人間は、科学の知識によって、地球が太陽の周りを移動する地動説を信じています。しかし、かつては、地球が宇宙の中心で、太陽のほうが地球の周りをまわっているとする天動説が主流でした。地にはりつき、ひたすらに列をなす蟻たちは、今も大地を信じ、天動説を信じているのかも。素朴に生きる蟻の一途さを掬い上げました。

    (監修:神野)

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  • 出勤の 後のしづけさ 蟻の穴

    2020.05.13 放送

    作者:栗田修次(松前町)

    蟻がみな出払ったあとの巣穴の静けさは、出勤のあとの静けさだと定義しました。人間もバタバタと出かける準備をして、それぞれの職場へ向かいます。残された部屋は、しーんと静まり返っていることでしょう。誰も気にとめない巣穴に焦点をあてたことで、慌ただしく生きる蟻や人間が、小さく遠く感じられます。命をとりまく自然への、畏怖の念が湧き上がる一句です。

    (監修:神野)

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  • 蟻の列 図鑑で見るよりも 速い

    2020.05.12 放送

    作者:あさふろ(富山県)

    子どもは蟻が好きですよね。道ばたにしゃがんで、蟻の列をじっと観察します。あれ、想像していたよりも、蟻ってずいぶん、歩くのが速いんだなあ。図鑑で見る蟻と本物の蟻の違いに気が付きました。子どもの視線で見つめ直してみることで、忘れかけていた蟻の姿を、ありありと思い出させてくれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 歩を止めて 見入る蟻あり 空也谷

    2020.05.11 放送

    作者:安井圭子(松山市)

    お遍路の札所のひとつ、松山市鷹子の浄土寺は、空也上人ゆかりのお寺です。近くには、彼が修行したといわれる「空也谷」があります。散策したとき、ふと足もとの蟻が気になって、立ち止まり、しばし見つめました。南無阿弥陀仏の念仏を世に広めた空也上人。一匹の蟻に歩を止める作者の優しさが、人々に寄り添った空也上人の慈愛と重なります。

    (監修:神野)

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  • 故郷の 野山の彩ぞ 新茶汲む

    2020.05.08 放送

    作者:小路智壽子

    「夏も近づく八十八夜」と唱歌にも歌われているように、八十八夜が茶摘みの最盛期。今日は八十八夜から一週間、新茶が出まわり始める頃です。つまり「茶摘み」は晩春の季語、「新茶」は初夏の季語というわけです。摘みたての茶葉を製した新茶は、何よりも新鮮な風味が喜ばれます。作者も、故郷から送られて来たばかりの新茶を、故郷の野山を懐かしみつつ味わっています。

    (監修:池内)

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  • 葉に艶の たちまち溢れ 聖五月

    2020.05.07 放送

    作者:戸ア千代子

    黄金週間に始まる五月は、若葉の月、そして風薫る月です。今年はコロナの影響で沈鬱な気分が漂っていますが、本来は一年で最も心地よい季節です。北国でも花が咲きあふれ、日本全国が緑におおわれる初夏。カトリックではこの月を聖母月と呼ぶことから、俳句でも「聖五月」という季語がよく使われます。木々の葉に見る生命力に注目することで、五月を詠んだ一句です。

    (監修:池内)

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  • 朴の花仰ぐ どの子も未来見て

    2020.05.06 放送

    作者:安立公彦

    朴はモクレン科の落葉高木で高さ20メートルにもなります。初夏に咲く「朴の花」は、黄色がかった白い大輪の花が大きな葉に抱かれているような姿です。葉が風に吹かれると白い花の裏が見え、芳しい花の香りが漂ってきます。子どもたちも朴の花を見るために、のけぞるようにして高い木を仰いでいます。きのうは、子供の未来を祝う国民の祝日・子どもの日でした。

    (監修:池内)

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  • 菖蒲湯を出て ほんのりと若返る

    2020.05.05 放送

    作者:江崎紀和子

    五月五日は端午の節句。この日に菖蒲の葉を湯舟に浸して入浴するのが「菖蒲湯」。菖蒲の精気によって邪気を払い、心身を清めます。湯舟に浮かぶ緑の葉が目にも鮮やかで、健康にもよさそうです。ゆっくりと菖蒲湯に浸かったあとの、ほんのりと漂う菖蒲の香りの中での若返ったような気分を詠んだ一句。作者は東温市にお住まいの俳人。「櫟」主宰です。

    (監修:池内)

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  • さびしいぞ 八十八夜の 踏切は

    2020.05.01 放送

    作者:田中裕明

    今日は八十八夜。立春から数えて八十八日目の夜です。この日を過ぎれば霜も降りなくなることから、種まきや茶摘みを始める目安とされてきました。春から夏へ移り変わる節目の夜に、こちらとあちらを分ける踏切に立てば、そこはかとない寂しさが湧いてきます。朝が来て夏が来れば、寂しさも少しは癒えるでしょうか。来し方とこれからを思う、人生の途上の一句です。

    (監修:神野)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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7月のお題「風鈴」の
応募は締め切りました

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
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