2021年10月の俳句

  • 張り替へて 障子の息に 囲まるる

    2021.10.29 放送

    作者:柘植史子

    冬を迎える仕度の一つに、障子の張り替えがあります。古い障子を剝がし、新しい紙に張り替え、寒さに備えます。張り替えたばかりの障子は真っ白で、光をまぶしく通します。そのいきいきとしたさまを、障子が息をしていると、生きもののようにとらえました。息をする障子に囲まれて落ち着かない心地も、秋の終わりの生活実感を伝えてくれます。

    (監修:神野)

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  • カンナつぎつぎ 秒針に刈られをり 

    2021.10.28 放送

    作者:五十嵐秀彦

    カンナは秋の季語ですが、七月ごろから冬のはじめまで、長い期間を咲く花です。まっすぐに立つ茎の先に、赤や黄色など鮮やかな筒型の花を咲かせます。カンナの長い茎を、まるで時計の秒針がなぎ倒してゆくように、秋の深まりはカンナを衰えさせます。刻々と冬の近づく焦燥感を、独特の把握で表現しました。

    (監修:神野)

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  • 一人づつ タイムカードを 押して霧 

    2021.10.27 放送

    作者:柏柳明子

    仕事を終えてタイムカードを押し、家路につく……そんな当たり前の日常を、霧が隠します。社員が見えない霧に呑まれるさまは、ひとりひとりの個性を奪う、現代社会のシステム化を象徴しているようです。目を凝らして見つめれば、霧に消える一人ずつにも、それぞれの人生があるはず。秋の季語である霧が、社会への不安を募らせます。

    (監修:神野)

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  • 鹿よぎる夜や 製本の美しき 

    2021.10.26 放送

    作者:北山順

    秋は鹿の恋の季節です。雌鹿を求める雄鹿の鳴き声は、さびしく切実に響きます。一方、製本とは本の作りのことです。美しく手の込んだ本を手にするとき、ふと鹿のイメージがよぎりました。本のデザインと取り合わせることで、鹿のフォルムの美しさが引き出されます。孤独な夜の幻想を秘めた一句です。

    (監修:神野)

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  • 八方に撥ねる 檸檬を洗う水 

    2021.10.25 放送

    作者:杉浦圭祐

    秋は林檎や葡萄、柿や栗など、みのりの多い季節ですね。レモンもまた秋の季語に分類されています。料理に使おうとキッチンでレモンを洗うとき、蛇口の水が撥ね、勢いよく飛び散りました。八方に撥ねるのは、レモンの形がふっくらとしているから。その勢いに、新鮮さや鋭い酸味、レモンの命を感じます。

    (監修:神野)

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  • 新藁に残るみどりを 綯ひにけり

    2021.10.22 放送

    作者:広渡敬雄

    今年とれた稲を扱いたあとの藁を「新藁」あるいは「今年藁」といいます。独特の甘い香りがあり、まだうっすらと緑色が残っていることもあります。以前は新藁を屋根裏などに大切に保存し、俵、筵、縄などを作りました。畳の材料にも使われました。そんな新藁で、さっそく縄を綯っている光景。「残るみどり」が、まことに新鮮に感じられる一句です。

    (監修:池内)

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  • 快晴の 空気を割つて 木の実落つ

    2021.10.21 放送

    作者:高橋正子

    秋に熟する樹木の実のうち、いわゆる果物を除いた櫟、樫、椎、椋、杤、榎などの実、いうなればどんぐりの類が「木の実」です。椎の実のように食べられるものも、食べられないものもあります。熟した木の実が落ちて来る情景を「木の実降る」「木の実落つ」といいます。よく晴れた空から、澄み切った空気を割るように木の実が落ちる風情を、ずばりと詠み切った気持のよい一句です。

    (監修:池内)

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  • 絶叫の様に刺されて 鵙の贄

    2021.10.20 放送

    作者:宮田正和

    鵙は日本全国にいる留鳥ですが、秋には特にかん高く鋭い声で鳴きます。餌場を確保するための縄張宣言と考えられます。鵙は小鳥ながら猛禽で、分不相応なほど大きい生餌を捕食します。蛇、蜥蜴、蛙など、捕えた餌を木の枝などに突きさしておく習性があり、これを「鵙の贄」といいます。刺される際、大きく口を開けて絶叫したままの姿で置き去りにされている鵙の贄。何やら哀れな感じがします。

    (監修:池内)

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  • 水門の まだやはらかき ゐのこづち

    2021.10.19 放送

    作者:土肥あき子

    今の季節、野道などを歩いていると、ズボンの裾に棘のある小さな実が刺さっていることがあります。「ゐのこづち」というヒユ科の多年草の実です。秋に緑色の目立たない花をつけ実を結びます。実にある棘で人や動物の体について運ばれて繫殖するのです。この句は、まだ棘が固く尖ってくる前のゐのこづちに注目しています。水門に生えたゐのこづちは、まだ柔らかく青々としています。

    (監修:池内)

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  • 柿剝いて 半分こです 仏さま

    2021.10.18 放送

    作者:由利雪二

    赤く熟れた「柿」が山野を彩る季節です。柿は日本の果物の中で最も古くから栽培されてきたもの。古くはすべて渋柿でしたが、鎌倉時代に甘柿が現れたといわれています。今年85歳になられた作者も、柿がお好きなようです。剥いた柿を二つに切って、半分を仏壇にお供えし、半分を味わっています。仏さまに語りかける口語表現が、独特の味わいを醸し出しています。

    (監修:池内)

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  • まんじゅしゃげ咲いた まちわびる産声

    2021.10.15 放送

    作者:そまり(新居浜市)

    曼珠沙華は、彼岸花や死人花とも呼ばれます。秋のお彼岸のころ、墓地の近くに咲くことなどから、あの世を連想させる花として捉えられてきました。この句では逆に、その曼珠沙華を、生命誕生の産声と取り合わせました。産声を待ちわびる切実な思いに、過去から未来へ、繋がれてゆく命のリレーを思います。

    (監修:神野)

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  • 義仲の 火牛走るや 曼珠沙華

    2021.10.14 放送

    作者:新濃健(東京都)

    木曽義仲は、倶利伽羅峠における平家との戦いで、戦力の差を埋めるため、奇策を実行したという話があります。それは、数百頭もの牛の角に松明をくくりつけ、夜間に突撃させるという「火牛の計」です。真っ赤に燃えるたいまつの炎を、曼珠沙華の花の緋色に重ねました。歴史の厚みを大きく抱きこんだ一句です。

    (監修:神野)

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  • 門限は近し 月夜の曼珠沙華

    2021.10.13 放送

    作者:栗田修次(松前町)

    昼間の曼珠沙華もきれいですが、夜の曼珠沙華はさらに妖しい美しさをまといます。そろそろ門限の時間だと思いながら、ふと道端に目をやると、曼珠沙華が咲いていました。月光に照らされたその姿は、きっと時を忘れてしまうほど、美しく闇に輝いていたでしょう。意外な時間設定で、曼珠沙華の魅力を引き出しました。

    (監修:神野)

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  • 眼帯の 取れて真向う 曼珠沙華

    2021.10.12 放送

    作者:中矢長宗(松山市)

    眼の治療を終えて眼帯から解放された視界に、曼珠沙華の真っ赤な色が飛び込んできました。治ったばかりの眼に、曼珠沙華の赤さは、やや刺激が強いかもしれません。立体的に蕊を広げる存在感に圧倒されつつ、「真向う」という強い姿勢に、人間の生命力もあふれます。

    (監修:神野)

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  • 曼珠沙華 赫く一輪 珈琲舘

    2021.10.11 放送

    作者:堀池正海(松山市)

    曼珠沙華は、秋の田畑や畦に咲く真っ赤な花です。秋のお彼岸のころ、墓地の近くに咲くことなどから、彼岸花とも呼ばれます。国道沿いなどの古い喫茶店に、曼珠沙華が一輪、赤く咲いているのを見つけました。建物のまとう懐かしい雰囲気に、曼珠沙華の郷愁が、静かに寄り添います。

    (監修:神野)

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  • 水底を 水の流るる 寒露かな

    2021.10.08 放送

    作者:草間時彦

    一年を二十四の季節に分けた二十四節気、今日から「寒露」です。朝夕ずいぶん寒くなり、草や葉に宿る露も冷たく感じられるころです。川の水を覗きこめば、底を流れてゆく水の動きが見えました。この水に触れればきっと、冷たく肌をさすでしょう。ある水は露となり、ある水は川となり、この世界を構成します。季節をめぐる水の姿を捉えました。

    (監修:神野)

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  • 芋の葉の よく翻る 日なりけり

    2021.10.07 放送

    作者:菅美緒

    俳句で芋の葉というと、里芋の葉っぱを指します。映画「となりのトトロ」で、トトロが傘として持っていた、あの大きな葉っぱです。里芋畑に育つ芋の葉が、風にあおられ翻るさまは、なかなか迫力があるでしょう。秋は台風も来るので、強い風が吹く日もあります。風景をたっぷりと見つめ、いちにちの印象をシンプルにまとめました。

    (監修:神野)

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  • 饅頭の中に 大きな栗眠る 

    2021.10.06 放送

    作者:長谷川櫂

    秋はみのりの季節ですが、栗ももちろんそのひとつです。蒸かして食べたり、栗ご飯にしたり、そのほくほくした甘みは、なつかしさも感じさせます。この句は、立派な栗饅頭ですね。饅頭の皮に包まれて、大きな栗がひとつぶ、食べられるときを待っています。堂々と詠むことで、栗饅頭という日常の素材にも、秋のみのりを代表する存在感が備わりました。

    (監修:神野)

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  • 白露の 即ち君と ゐる如く

    2021.10.05 放送

    作者:赤間学

    ひんやりとした秋の朝には、草木の葉っぱに露ができます。朝の日に白く輝くので「白露」とも呼ばれます。日差しとともに消えてしまう姿は、はかない恋や命のたとえに使われてきました。白露を見つめていたら、まるで君といるような心地だよ、と呼びかけています。君がここにいない淋しさと、いてほしい願望の切なさとが、静かに震えています。

    (監修:神野)

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  • 木蠟の 町の空過ぐ 秋つばめ

    2021.10.04 放送

    作者:大澤保子

    ハゼやウルシの実から作った樹木由来の蝋を、木蝋といいます。古くから木蝋づくりを営んできた町には、昔ながらの家並みが残っています。どっしりした土壁も多いので、燕も安心して巣作りができるでしょう。そんな燕も、子育てを終えた秋には、日本を去り、暖かい南へ帰ります。燕を見送った町の淋しさを、燃えるようなハゼの紅葉が彩ります。

    (監修:神野)

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  • 白鷺の 一身立たせ 水澄めり

    2021.10.01 放送

    作者:二ノ宮一雄

    秋になると川や湖の水が澄みわたって来ます。澄んだ水に映る空の色や山の姿も、すがすがしく感じられます。水温が下がり、水を濁うせている水中の生物が減ることが、水が澄む原因と考えられます。秋の深まりとともに、清らかに澄みわたる水には、自然の営みの神秘さが感じられます。澄んだ水に降り立った一羽の白鷺。長い脚と真っ白な体が、澄んだ水にくっきりと映っています。

    (監修:池内)

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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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