2025.03.28 放送
紫雲英は蓮華草の呼び名でも親しまれ、古くから緑肥や牧草として栽培されました。花が咲けば一面がピンクの絨毯を敷き詰めたように染まります。この人は、花咲く前のふかふかとした深緑の田んぼに心惹かれました。柔らかい草の波が足もとに打ち寄せます。作者・古郷に師事した石田波郷は「おほらかに山臥す/紫雲英田の牛も」と、詠みました。
(監修:谷)
2025.03.27 放送
季語「鳥曇」は、春になって渡り鳥が北へ帰る頃の曇り空をいいます。鳥は飛び去り、どんよりとした空だけが残っています。クリップだって飛び去りたい。弾けて外れたのは、紙を止めてばかりいるのに飽きたから。そしてもし箱の中のクリップが減っていたら、「逃避願望」を叶えたのだと、にっこりやり過ごせるでしょう。
(監修:谷)
2025.03.26 放送
春はウキウキする季節ですが、一方でふっと掴みどころのない憂いを覚えることがあります。季語「春愁」です。物思いに耽って、例えばインク壺の蓋をし忘れたりします。手紙を書こうとして、瓶の中が乾いてしまっていることに気付く。あるいは、瓶を倒して辺りが汚れてしまうと、さらなる春愁の深みにはまりそう。
(監修:谷)
2025.03.25 放送
俳句では「花」とだけ言えば、桜のことを指します。桜の開花予報が賑やかになってきました。今年のお目当ての桜のもとを目指します。今の時代、人の数だけ電話、即ちスマホが歩くと言い切って過言ではない気がします。財布以上に大事なものになっている様子です。人よりもスマホが主役となって歩く花の道。可笑しくも、どこかシュールな光景です。
(監修:谷)
2025.03.24 放送
春告鳥という異称を持つ鶯。製茶会社にも春がやって来ました。事務処理をしながら、鶯の声を楽しんでいるのでしょうか。ホッチキスのカチッの音と「ホーホケキョ」がリズミカルに呼応しているかのようです。古来「梅に鶯」と親しまれてきましたが、鶯とホッチキスの意表を突く取り合わせが、現代風です。
(監修:谷)
2025.03.21 放送
遥か彼方まで広がる宇宙も、生まれたばかりのころはもっと小さく、もしかしたらこの草餅くらいのサイズだったのかも、と想像しました。草餅は、柔らかくて丸くて、ぽってりと手のひらに重たいです。宇宙のはじまりのような草餅を、ぱくり。春風ごとかじれば、地球の草の香りが、ゆたかに広がります。
(監修:神野)
2025.03.20 放送
葬儀を終え、四十九日を過ぎたら、納骨のときがやって来ます。その前夜、まだここにあるその人のお骨に、草餅を供えました。明日には、お骨を家から運んで、お墓に納めます。さらにその人の気配が遠のいてしまうようで、家で過ごす最後の時間を、静かに向き合います。
(監修:神野)
2025.03.19 放送
四個目で止められたということは、もうすでに草餅を三個たいらげているのです。よほど草餅が好きなのでしょう。それを知っているから妻も目をつむっていたけれど、さすがにストップがかかりました。体のためにもほどほどに。夫婦のあたたかな関係性が、ユーモラスに書き留められています。
(監修:神野)
2025.03.18 放送
シングルノットは、ネクタイの結び方の一つです。新社会人となり、スーツを着て出社するのでしょう。まだネクタイに慣れなくて、結び目もなんとなく決まりません。対して、ぱくりと食べた草餅は、柔らかくて優しい甘さです。草餅のぬくもりによって、新生活への緊張が、ふっとほぐれます。
(監修:神野)
2025.03.17 放送
鍵盤ハーモニカの上に、草餅がのっています。どこかへ集まって、わいわい演奏したり、おやつを持ち寄って食べたりしているのでしょう。子どものときに親しんだ鍵盤ハーモニカの懐かしさが、草餅のまとう郷愁とよくなじみます。食べ終わったら、また鍵盤ハーモニカを弾いて、春をたっぷり味わいます。
(監修:神野)
2025.03.14 放送
幕末に活躍した坂本竜馬は、新時代を切り拓く革命的な存在でした。そんな竜馬に憧れつつ、自分自身はなかなか行動的にはなれません。私の中の平凡を自覚しつつ、草餅にかぶりつきます。野の香りの懐かしさ、ほのぼのとした甘さが、物足りない気分を、やさしくなだめてくれます。
(監修:神野)
2025.03.13 放送
草餅を、パクリといただきます。でも、はじめのひとくちには、まだあんこが含まれていませんでした。期待していたので、ちょっと物足りないなと思いつつ、餅部分をもぐもぐ食べます。ぽってりした厚みが、いかにも草餅らしいですね。次のひと口で、あんこに到達できますように。
(監修:神野)
2025.03.12 放送
スフィンクスは、神話に登場する怪物です。ライオンの体と人間の顔を持ち、ときには謎かけを出すことも。でも、そういえば、スフィンクスの声って、誰も聞いたことがありません。高いのか低いのか、しわがれているのか若いのか……好奇心が楽しく刺激されます。草餅ののどかさに、想像が明るく広がります。
(監修:神野)
2025.03.11 放送
熊本の阿蘇にある根子岳は、侵食によって山頂がギザギザです。自然がむき出しになった、なまなましい姿。その山頂を「頭」と呼ぶことで、なんだか山にも命が宿っているような、不思議な親しさが滲みます。阿蘇の草千里で摘んだ蓬ならきっと、香りゆたかで美味しい草餅が出来上がります。
(監修:神野)
2025.03.10 放送
草餅は、野に摘んだ蓬の新芽を、餅につき込んで作ります。草の香りや色がゆたかにこめられた、昔ながらの春のお菓子です。草餅の作り方を習うとき、台所ではなく、まずは野原に入るところから。蓬の見つけ方や摘み方を教わって、たっぷりと、野の春の息吹を取り込みます。
(監修:神野)
2025.03.07 放送
春先は寒暖を繰り返し、気候が不安定なためについ風邪を引いてしまいがちです。気分は滅入りますが、冬に引く風邪とは違って、どこか艶っぽい雰囲気を醸し出している気がします。バーゲンがあるともなれば、底力を出して風邪を押し返しそう。鼻水はマスクでかくして、春の日差しに引かれるように、おしゃれもして。
(監修:谷)
2025.03.06 放送
昨年採っておいた種か、今年になって種物屋さんで買った種袋の種か。春には金魚草、ペチュニア、撫子などの種を蒔きます。待望の季節なのに、好調に進んでいた事柄が、また振り出しに。気を取り直すように、花種を蒔いているでしょうか。この種は順調に育ちますように、と。春はもしかしたら振り出しに戻る季節、リスタートの季節かもしれません。
(監修:谷)
2025.03.05 放送
啓蟄は二十四節気のひとつで、三月五日頃にあたります。地中に籠もっていた虫たちが地上に姿を現すという意味です。虫の苦手な人もいますが、でも、春の蠢きだと思うと気分がそわそわします。屋根の端っこが光ったのは、たまたまです。啓蟄とは関係ないのですが、まるで出て来た虫に反応したかように、きらっと輝きました。
(監修:谷)
2025.03.04 放送
春雨は「春に特有の艶なる趣を添えるもので、木の芽を張り、草の芽をのばし、花を咲かせる雨」と、歳時記で解説されています。書庫はなんとなく薄暗いイメージ。その奥に、なお木の階段が続いている。上ってみたい気持ちにかられます。階段の上の未知の空間も、春の雨と取り合わせると、胸の内にある希望のような何かが待っていそうな気がします。
(監修:谷)
2025.03.03 放送
今日、三月三日は桃の節句。雛祭りです。愛媛では、月遅れの四月三日に行う地域が多いようです。昔ながらの雛壇には、内裏雛、官女雛、五人囃子、矢大臣、三人の仕丁が並びます。昼間には見えなかった彼ら一ずつの影が、まるで命の証のように、健気にもくっきりと灯りの中で生まれました。
(監修:谷)
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