2024年9月の俳句

  • 秋風を煽ぎ 酢飯を混ぜ返す

    2024.09.30 放送

    作者:橋透水

    お寿司にするため、酢飯をこしらえています。炊き上がったお米をうちわで煽ぎ、お酢を飛ばして艶を出します。涼しくなってきた風に、酢飯の香りがきりりと引き立ちます。さて、にぎやかな食卓へ向けて、もうひと頑張り。酢飯には、秋風の味も少し、混じっているでしょうか。

    (監修:神野)

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  • 風のないときは 乱れてゐる芒

    2024.09.27 放送

    作者:山ア十生

    芒は、動物の尾に似ているところから「尾花」とも言います。秋の七草の一つで、日本の秋を代表する草です。風が吹くと草花は乱れそうですが、なるほど芒は一斉に風の方向に穂を揃えたように傾ぎます。風がない時には、穂を好きな方に向けたまま立っている。 それを「乱れている」と表現しました。奔放な芒の姿もまた、美しいです。

    (監修:谷)

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  • 立山の 秋に腰掛け かりんとう

    2024.09.26 放送

    作者:鶴濱節子

    立山は、富山県の飛騨山脈北部にある山。季節ごとにさまざまな高山植物が楽しめる、登山家にも人気の山です。座っているのはベンチかもしれませんが、「秋に腰掛け」という表現で、紅葉した山の広々とした風景に囲まれている様子が見えて来きます。秋風も吹き渡っているでしょう。頬張るかりんとうの、なんと美味しいこと!

    (監修:谷)

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  • 深海を 覗くむらさき 通草の実

    2024.09.25 放送

    作者:松葉久美子

    秋に十センチくらいまで育つ紫色の通草の実は、甘くて野趣に富んでいます。最近は道の駅などでも売られていますが、山歩きで見つけると、うれしさがひとしおです。紫色の実が縦に裂けて、白い果肉と黒い種が見える。まるで紫色の淵から深海を覗いているような感覚に捉われたのでしょう。通草が、神秘な果実にも思えてきます。

    (監修:谷)

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  • 忘れずに 来る颱風よ 直ぐ通れ

    2024.09.24 放送

    作者:青木月斗

    作者・月斗は、明治十二年に大阪に生まれました。正岡子規門で活躍した俳人です。明治時代も今も、台風に対する恨めしい気持は同じのようです。「忘れずに来る」は、感心しているとも諦念とも取れそう。そして、来るならゆっくりはするな、と命じています。台風を人と同格に扱っているところが面白いです。

    (監修:谷)

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  • 小鳥来る 音うれしさよ 板庇

    2024.09.23 放送

    作者:与謝蕪村

    秋になると、いろいろの小鳥が渡って来たり、山地から平地に降りてきます。ツグミ、アトリ、ヒワなど。その小鳥が、雨避け用の屋根の庇に来てくれました。小鳥の姿は見えませんが、庇を歩く軽やかな足音に、思わず「うれしさよ」と、応えました。蕪村の時代から、小鳥を待つ人の心は変わらないようです。

    (監修:谷)

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  • 枝豆の 産毛柔らか 金曜日

    2024.09.20 放送

    作者:山内佑資(松山市)

    一週間頑張ってきて、やっと迎えた金曜日。お休み前にひと息ついて、一杯頼み、枝豆をつまみます。その枝豆の、産毛が柔らかだというところに気が付きました。指の腹に触れる産毛に、心も柔らかくリラックスしていきます。みなさんも、一週間、お疲れ様でした。どうか少しでも、体と心が休まりますように。

    (監修:神野)

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  • 漫画家をあきらめ 枝豆の甘さ

    2024.09.19 放送

    作者:七瀬ゆきこ(三重)

    将来の夢が必ずしも叶うとは限りません。漫画家を目指して頑張ってきたけれど、もうそろそろと夢をあきらめ、方向転換へ心を促します。ふとつまんだ枝豆が、思いのほか甘く感じて、少しなぐさめられました。人生には、しょっぱさもあれば、甘さもあります。新しい道を進む私も、きっと大丈夫。

    (監修:神野)

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  • 枝豆や ビールの缶の 跡丸し

    2024.09.18 放送

    作者:草夕感じ(京都)

    枝豆といえば、やはりビールがよく合います。缶ビールを開けて枝豆をつまむとき、ふと、机の上にビールの缶の跡が丸くついているのに気が付きました。冷えた缶ビールが外気にあたり、水滴が垂れているのでしょう。小さな発見が、何気ない暮らしの一場面を、くっきりと描き出します。

    (監修:神野)

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  • 枝豆や 郷土の選手 応援す

    2024.09.17 放送

    作者:武井日出子(松山)

    今年はオリンピック・パラリンピックも開催され、スポーツを観戦する機会の多い夏でした。どの競技のどの選手もそれぞれに輝いていましたが、やはり同じふるさとの選手には、親近感を覚えることも。ほっこりと枝豆をつまみ、テレビの向こうで頑張る選手へ、心からのエールを送ります。

    (監修:神野)

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  • 焙烙で 焼く枝豆の 髭黒し

    2024.09.16 放送

    作者:西本 匠(奈良)

    焙烙は、素焼きの平たくて浅い土鍋です。焙烙で焼けば、熱がしっかり柔らかく伝わるので、枝豆の香りも甘みも、ゆたかに引き立つでしょう。焼き上がった枝豆は、産毛がほのかに黒く焦げ、香ばしさが際立ちます。調理の方法や様子を丁寧に描くことで、枝豆の美味しさをたっぷりと引き出しました。

    (監修:神野)

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  • 亡き友の くにの枝豆 甘かりき

    2024.09.13 放送

    作者:茂木りん(東京)

    群馬や山形など、枝豆の産地は各地にあります。亡くなった友人も、生前、酌み交わしながらふるさとの枝豆を自慢したことがあったかもしれません。友のふるさとの枝豆を食べると、じんわりと甘みが広がります。もう会えないその人とのあたたかなやりとりを思い出し、懐かしさを噛みしめるひとときです。

    (監修:神野)

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  • 収穫の 枝豆振つて ゐる子かな

    2024.09.12 放送

    作者:おきいふ(香川)

    子どもが、収穫した枝豆の茎を握り、根っこごと振っています。ふだんは切り離された莢と実の部分しか知らない枝豆の、植物としての全体像が見えるのも面白いのでしょう。振り落とされる土の匂いも、吹いてくる風の匂いも、秋の大地をゆたかに感じさせます。収穫した枝豆、おいしく召し上がれ。

    (監修:神野)

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  • 岩塩を ミルでひと掻き だだちゃ豆

    2024.09.11 放送

    作者:小田 和夫(埼玉)

    だだちゃ豆は、山形県鶴岡市名産の枝豆で、茶色っぽい莢と甘みの強さが特徴です。枝豆は、さっと茹でて塩を振るだけで立派な一品になりますが、その塩にこだわって、岩塩を使いました。ミネラルたっぷりの塩のかたまりをミルでがりがりと挽けば、茹でたばかりの枝豆がきらきらと輝きます。

    (監修:神野)

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  • 枝豆の 注文難し タブレット

    2024.09.10 放送

    作者:近藤義久(松山)

    最近は、居酒屋やファミレスでも、タブレットを使って注文する店舗が増えてきました。とりあえず、まずはビールと枝豆。そう思ってタブレットの画面を探しますが、なかなかうまく注文できません。すぐに出て来るはずの枝豆に手間取るさまは、現代社会のあり方を滑稽にクローズアップしています。

    (監修:神野)

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  • 枝豆の 湯切りに曇る 眼鏡かな

    2024.09.09 放送

    作者:福原あさひ(北海道)

    枝豆は、夏のビールのおともというイメージがありますが、実は秋の季語です。旬の枝豆は甘みが強く、十五夜にお供えすることから月見豆ともいいます。枝豆を茹で、湯切りをするとき、ゆたかに湯気が上がり、かけていた眼鏡が曇りました。生活の一瞬の出来事の中に、枝豆の命の気配が立ち込めます。

    (監修:神野)

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  • 番記者の 短き昼餉 とろろ汁

    2024.09.06 放送

    作者:広渡敬雄

    広辞苑では、番記者とは「特定の政治家などの担当として、常にそばにいて取材する記者」と解説しています。いつも気を張って、大変そうな仕事だなあという印象です。なんだか、ランチもゆっくりとれない仕事のような。それにつけても、自然薯や長芋を擂り下ろしたとろろ汁なら、栄養満点。ご飯や蕎麦と一緒にするすると完食出来そうですね。

    (監修:谷)

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  • 吹けば鳴る 壜の口より 翳る秋

    2024.09.05 放送

    作者:三宅やよい

    そういえば、壜の口に息を吹き込み、ぼぉーっという音が出るのを楽しんだ頃がありました。もちろん当時は、壜の口に翳りなど感じることはなく、ひたすら鳴らすことに無邪気だった気がします。キッチンに立った時にでも、ふっと吹いてみたのでしょうか。大人になった今では、低く響くその音に愁思を感じたのかも知れません。

    (監修:谷)

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  • 配達の のぞいて行くや 秋の水

    2024.09.04 放送

    作者:夏目漱石

    漱石の時代では、「配達」といえば郵便配達夫だったでしょう。現代では、ピザや荷物の宅配の人も想像できます。秋になると、川や池、湖などの水が澄んできて、川の中もよく見えます。配達の途中、バイクにでも乗ったまま魚を覗いてる?。秋の日の一こまを切り取って、ほのぼのとした情景です。

    (監修:谷)

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  • 朝飯を 食うてまた寝る 残暑かな

    2024.09.03 放送

    作者:小森邦衞

    残暑は、立秋以後の暑さのことです。涼しい朝夕もあるので、暑さの戻りが尚更こたえます。舞い戻った暑さに、朝ごはんを食べたものの、活動を早々に断念しました。「食うてまた寝る」に、おかしくも潔ささえ感じます。作者は輪島市出身の漆芸家で、髹漆の人間国宝。英気を養って、漆の仕事に向き合います。

    (監修:谷)

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  • 瓦礫の街は 一枚の空 ハンカチ干す

    2024.09.02 放送

    作者:守田慎之助(今治西高等学校伯方分校)

    第二十七回俳句甲子園で入選に輝いた作品です。戦争や災害により瓦礫となった街は、空をさえぎる高い建物がなくなります。だから、見上げた空は広く、ぴんと張った一枚の布のよう。暮らしが壊されてもなお、その街に生きていこうとする人がいます。干されて風にそよぐハンカチが、その清らかな矜持を物語ります。

    (監修:神野)

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テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

2月のお題は
「薄氷」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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