2024年5月の俳句

  • 蛍火の明滅 滅の深かりき

    2024.05.31 放送

    作者:細見綾子

    そろそろ出る頃か、と蛍情報にそわそわする季節です。蛍が無数に集まって飛ぶときを蛍合戦と言いますが、これは生殖のためなのだそうです。私たちの心をとらえる蛍の明滅。闇の中で光ったあと、すーっと消えて残る闇の深さに、吸い込まれそうです。光りを追っていながら、いつの間にか「滅」の神秘に魅せられているのかも知れません。

    (監修:谷)

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  • 乾草匂う 夜目にも愛の自転車立て

    2024.05.30 放送

    作者:鈴木六林男

    乾草は、刈った草を干して、冬の家畜用の飼料などに使います。近年は土手や道端の草を刈ってそのまま干され、後に焼かれることも多いです。乾草の積まれた場所に、二台の自転車が立てられています。見え辛い夜でも、恋人どうしのものと判断したのです。芳しい草の匂いが、甘美な想像を起こさせたのでしょうか。

    (監修:谷)

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  • カルピスの 氷ぴしぴし鳴り 夕立

    2024.05.29 放送

    作者:堀本裕樹

    「カルピス」、「ぴしぴし」の軽快な言葉の響きが、夏の元気と明るさを感じさせます。コップの中で氷に亀裂が入る音「ぴしぴし」に、喉が鳴りそうです。さあ飲もう、というタイミングでやって来た不穏な夕立。氷が鳴っているのですが、夕立に伴う雷も鳴っていそうです。爽やかな飲み物を味わいながらも、緊張感が走ります。

    (監修:谷)

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  • 青あらし 機嫌よき日は 墨磨りて

    2024.05.28 放送

    作者:井上論天

    青葉は、若葉の時間が少し過ぎて緑が深くなった頃の葉をさします。青嵐はその時季に吹く、やや強い風。庭の草木が揺れて、葉擦れの音が爽快感を感じさせてくれる日。身の上にも良いことが起こったようです。いえ、ただよく眠れただけのことなのかも。筆が傍らにある生活に、なんだか憧れます。青葉の季節の贅沢な時空の中にいます。

    (監修:谷)

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  • 谷若葉 ちょっと黙っていいですか

    2024.05.27 放送

    作者:塩見恵介

    若葉は、初夏のみずみずしい新緑のこと。木々に萌え出た新しい葉です。若葉を楽しみにドライブしてきたのでしょうか。心身まで染まりそうな谷間の緑に、言葉が邪魔になる気分、わかる気がします。「いいですか」という丁寧な言葉遣いに、二人の初々しい関係がわかります。ちょっとの沈黙の後で、お互いの信頼関係も深まりそうです。

    (監修:谷)

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  • 葉桜や 今も卵を 抱く化石

    2024.05.24 放送

    作者:桑島幹(千葉)

    化石には、生きものの姿がさまざまに保存されています。近年も、卵を温めたままの恐竜の化石が見つかりました。何千万年も前から卵を抱き続けている化石の一途さに、ぐっと胸が熱くなります。長い時を経て今、この夏の葉桜を、はるかからざわざわと、風が吹き過ぎてゆきます。

    (監修:神野)

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  • 葉桜や 補助椅子を出す 野外劇

    2024.05.23 放送

    作者:吉田みち子(神奈川)

    気持ちのよい初夏となりました。野外劇も盛況で、事前に用意していた座席だけだと足りません。急遽、補助椅子を用意して、お客さんを呼び込みます。葉桜の下で、どんな人間模様が繰り広げられるのでしょう。これから始まる演劇に、夏という季節に、期待が高まります。

    (監修:神野)

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  • 葉桜の 中をトゥクトゥク 傾きぬ

    2024.05.22 放送

    作者:そまり(新居浜)

    トゥクトゥクとは、タイで使われる三輪自動車です。日本でも、観光地の移動手段などに見かけます。葉桜の茂る中を、トゥクトゥクが走ってゆきます。コンパクトで小回りがきく分、カーブに差し掛かれば車体を傾かせて曲がります。すぐそこに葉擦れの音が聞こえてくるようで、そっと耳を澄ませます。

    (監修:神野)

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  • 差入れのコーヒー 見上げると もう葉桜

    2024.05.21 放送

    作者:にいぽん(松山)

    声をかけられ、差し入れにコーヒーをもらいました。苦みに目が覚め、頭上を見上げると、桜の木がみずみずしく若葉を茂らせています。もう花の時期は終わって、葉桜の季節なのだなあ。過ぎ去る時間の早さに驚きながら、コーヒーをひと口。さりげない言葉運びに、リアルタイムの臨場感が生まれます。

    (監修:神野)

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  • 花は葉に 解体を待つ 観覧車

    2024.05.20 放送

    作者:ピアニシモ(松山)

    桜の花が散って葉桜へ変わってゆくころ、営業を終えた観覧車が解体のときを待っています。季節は巡り、街の姿も時とともに変化してゆきます。もう動かない観覧車が初夏の日差しに輝くとき、これまでに重ねられてきたたくさんの思い出も、きらりきらりと輝きます。

    (監修:神野)

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  • 葉桜が濡れて とんかつ揚がりさう

    2024.05.17 放送

    作者:恵勇(千葉)

    雨上がりでしょうか。葉桜がしっとりと濡れ、あおあおと匂います。そのみずみずしい艶を眺めながら、室内ではもうすぐとんかつが揚がりそうな音が。からりと揚がるとんかつと、濡れた葉桜と。質感の対比が効いています。さあ、さくっとひと口、いきいきとした初夏の時間が始まります。

    (監修:神野)

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  • 葉桜の 葉擦れは硬し 盲学校

    2024.05.16 放送

    作者:丹波らる(京都)

    私たちが世界から受け取っている情報は、視覚からだけではありません。音や味、触り心地など、感じ方もさまざまです。吹き過ぎる風に、桜の葉擦れの音が、思いのほか硬く感じられました。目で見るだけでは気づかない、葉桜の質感が言い留められています。みなさんは、葉桜をどんな風に捉えますか?

    (監修:神野)

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  • 葉桜をぼかして ポートレート撮る

    2024.05.15 放送

    作者:小林土璃(神奈川)

    ポートレートを撮るとき、背景をぼかすことで、人物に焦点を絞り、より鮮明な印象を生み出します。最近はスマートフォンのカメラにもポートレートモードがあり、簡単にぼかし機能が使えますね。背景の葉桜をぼかせば、みずみずしいグリーンが、その人の印象をさわやかに彩ってくれます。

    (監修:神野)

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  • 弁当の 自然解凍 花は葉に

    2024.05.14 放送

    作者:堀川絵奈(西予)

    最近の冷凍食品には、電子レンジであたためなくても、凍ったままお弁当に入れられるタイプが多くあります。食べるころには自然解凍され、とっても便利。花が散って葉桜に変わりゆく感慨を「花は葉に」と言います。葉桜の下、お弁当を食べるのでしょうか。いつもの日常をさらりと掬い取りました。

    (監修:神野)

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  • 葉桜や 入部届の(仮)

    2024.05.13 放送

    作者:阿部八富利(東京)

    桜の木は、花を散らせたあと、初夏のさわやかな風に、みずみずしい若葉を広げます。花の盛りだけでなく、葉桜にも感動を見出す視点には、どんな姿も肯定するポジティブな力を感じます。入学して、部活動など学校生活も動き出す時期です。仮入部でまずは自由に挑戦し、打ち込めることを探せますように。

    (監修:神野)

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  • 不定休 いつのころから 麒麟草

    2024.05.10 放送

    作者:二村典子

    「不定休」は、最近になってよく聞く言葉です。お目当ての店をインターネットで検索して「不定休」だと、戸惑います。店の前まで来てわかると、尚更です。「定休日」を避けて来たつもりでした。「いつのころから」に、寂しい気持ちが滲みます。立ち尽くすこの人を、黄色い麒麟草がなだめるように群れていました。

    (監修:谷)

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  • 翅わつて てんたう虫の 飛びいづる

    2024.05.09 放送

    作者:高野素十

    愛らしくて、見つけると思わず屈み込んで手を伸ばしてしまう天道虫。でもなかなか上手く手に乗ってくれません。滑り落ちたり、この句のように飛び去ったり。半球形の真ん中に翅の割れ目があって、まさに翅わってという感じです。「いづる」は広い場所に出ることで、小さな羽音が聞こえて来そうです。今日の句、どの歳時記を開いても出ている「天道虫」を代表する句です。

    (監修:谷)

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  • ゴミ袋 ぼそっと突いて 薔薇の茎

    2024.05.08 放送

    作者:芳賀博子

    ある、ある!と思わず膝を打つ句です。日々を和ませてくれていた華やかな薔薇。その盛りを終えて、花びらを落としながら片付けられてゆきます。棘があるので、袋が破れないようにと、なかなか気を使う作業です。ところが、やっぱり破れた。「ぼそっと突いて」が、薔薇の茎の意思のようで、どきっとするのです。

    (監修:谷)

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  • リラ冷えや 双手は己 抱くことも

    2024.05.07 放送

    作者:柴田佐知子

    ライラックの別名がリラで、六月頃まで芳香を放って咲きます。リラの咲く時期の冷え込みが「リラ冷え」。思わぬ寒さに自分の身体を抱きしめました。その瞬間、自分の双手、すなわち両手に意識がいったのですね。普段は愛おしい誰か、例えば子ども、親、恋人などを抱くための双手が、今は自分のために在る。冷えそうな心も一緒に抱きしめます。

    (監修:谷)

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  • 消火器の こと考えて 今朝の夏

    2024.05.06 放送

    作者:中谷仁美

    昨日は立夏でした。「今朝の夏」とも言って、今朝から夏になったという気持ちを強調しています。消火器と夏が来たことは関係ないのですが、距離のある取り合わせが夏の到来を際立たせます。消火器を買うべきか、あるいは、使い方を頭の中で復習しているのかも。窓辺の向こうは、新緑がきらきらしています。消火器もなんだか輝いてきました。

    (監修:谷)

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  • 憲法に 鋼の勁さ 麦熟るる

    2024.05.03 放送

    作者:宮坂静生

    今日は憲法記念日です。憲法改正の議論もありますが、平和への誓いがこもる現行憲法の骨格の確かさを、鋼のように強いと讃えました。季語は「麦熟るる」。収穫期を迎えた麦が、黄金の穂をそよがせます。憲法は、麦を育てるように地道に暮らす民衆の、平和を護る存在で在り続けてほしいと願います。

    (監修:神野)

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  • まぶしくて うらやましくて 風車

    2024.05.02 放送

    作者:鈴木聡史

    風車は春の季語です。紙やセルロイドで作った羽根が、やわらかな春風にくるくる回ると、いかにもほがらかです。友だちのかざす風車が、春の日にきらきらと輝いています。いいなあ、うらやましいなあ。子どもの玩具を通して、人間に根差す欲望を詠みました。

    (監修:神野)

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  • ライ麦パン苦し 五月の風あまし

    2024.05.01 放送

    作者:井出野浩貴

    今日から五月です。気温も上がり、いよいよ夏の気配が近づいてきます。麦も、もうすぐ収穫の季節。ライ麦パンは、ライ麦から作ったパンで、栄養がいっぱいです。ほんのり苦い風味も麦らしく、その苦みによって、吹いてくる風がいよいよ甘く感じられます。

    (監修:神野)

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テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

11月のお題は
「小春(こはる)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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