2017年11月の俳句

  • 星消えて 闇の底より 霰かな

    2017.11.30 放送

    作者:藤野古白

    正岡子規の従弟・古白は、清新な作風で将来を期待された、夭折の俳人です。雲が立ちこめ星の光が消えると、夜空の闇の奥深くから、さっきの星の代わりのように、ほの白く霰の粒が降りはじめます。上にある夜空を「底」と反転させた独特の空間把握が、宇宙の底知れなさを物語ります。

    (監修:神野)

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  • 炬燵より 離れてゐたり 反抗期

    2017.11.29 放送

    作者:西山ゆりこ

    こたつのぬくもりが嬉しい季節となりました。こたつは、家族が自然と集まる、冬の団らんの場所ですね。でも反抗期の子だけは、こたつに入らず、家族と距離をとっています。寒さを我慢して、意地を張っているのでしょうか。そのうち素直に、こたつの輪に加われる日が来ますように。

    (監修:神野)

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  • 荒星や 毛布にくるむ サキソフォン

    2017.11.28 放送

    作者:摂津幸彦

    木管楽器のサックスを毛布にくるむのは、車のトランクなどに積んで、どこかへ運ぶためでしょうか。荒星とは、木枯の吹く夜の星のこと。星の光と、サックスの金属の光とが、つめたく輝き合います。荒星も、まるで楽器のように、きいんと響きだしそうな、はりつめた冬の夜です。

    (監修:神野)

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  • ちょつといい 豆腐を買って 木枯しへ

    2017.11.27 放送

    作者:津久井健之

    一年を七十二の季節に分類する七十二候、今日から五日間は「朔風払葉」。冷たい北風が木の葉を吹き払う、木枯の季節です。少しだけ贅沢をして、いつもよりいいお豆腐を買った作者。湯豆腐か鍋か、あたたかな夕食になりそうです。寒さの中でも楽しみを見つけ、前向きに過ごしたいですね。

    (監修:神野)

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  • 水の面に 蒔絵さながら 散紅葉

    2017.11.24 放送

    作者:三田きえ子

    秋の野や山を彩った紅葉は、冬に入ると鮮やかな色のまま散り始めます。(「紅葉散る」「散紅葉」といいます。)真っ赤なままの葉が日ざしを浴びて舞う姿は、極楽浄土を思わせる艶やかさ。ことに川や池などの水面に紅葉が散って行く情景は美しく、見飽きることがありません。この句は、水面に散る紅葉を漆工芸の蒔絵に見立てています。

    (監修:池内)

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  • 菊坂に しぐれ華やぐ 一葉忌

    2017.11.23 放送

    作者:足立公彦

    十一月二十三日は「一葉忌」。明治の作家樋口一葉の命日です。一葉は貧しい暮らしの中で(『大つごもり』『十三夜』『たけくらべ』などの)名作を残し、明治29年のきょう、24歳の若さで亡くなりました。これは一葉が住んでいた東京・本郷の菊坂を訪ねての句。今も残る一葉の使っていた井戸のあたりに降る時雨が、一葉忌らしい風情を感じさせます。

    (監修:池内)

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  • 水際の 松うつくしき 神の留守

    2017.11.22 放送

    作者:しなだしん

    旧暦十月を「神無月」といいます。この月には諸国の神々が出雲に集まって、男女の縁結びの相談をするという信仰から名づけられました。出雲へ旅立ったあとの神社は神様が不在となります。そのことを「神の留守」といいます。この句の神社では、まるで神の留守を守るかのように、水際の松が美しい姿を見せています。

    (監修:池内)

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  • 海の蒼 車窓に過ぎて 惜命忌

    2017.11.21 放送

    作者:藤木倶子

    十一月二十一日は、俳人・石田波郷の命日「波郷忌」。代表的な句集『惜命』にちなんで「惜命忌」ともいいます。波郷は大正二年松山生まれ。(同郷の五十崎古郷に学び、のち水原秋桜子に認められて上京して活躍し、抒情的な作風で人間探求派と呼ばれました。)列車の窓を過ぎる海を眺めながら、長く療養生活を送った波郷を偲んでいる一句です。

    (監修:池内)

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  • いつ見ても 山茶花散つて をりにけり

    2017.11.20 放送

    作者:黛執

    冬の初めの花といえば「山茶花」。この名前は、中国で椿を指す「山茶」という字を借りて作られました。初めはサンザカと読んでいましたが、江戸時代からサザンカと読むようになりました。紅、白、薄紅などの色の山茶花は、椿よりもはかなげに咲き、はかなげに散って行きます。この句は、その姿をいつ見ても散っているようだと捉えています。

    (監修:池内)

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  • セーターを着て日曜はパンを焼く

    2017.11.17 放送

    作者:木田智美

    俳句甲子園出身の俳人・木田智美さんの一句です。仕事着や制服にきっちり身を包む平日が終われば、お休みの日曜は、ファッションも過ごし方も自由。ざっくりとセーターを着て、パン作りを楽しむのも素敵ですよね。小麦の香りが、ああ、いい匂い。みなさんはこの週末、どんな風に過ごしますか。

    (監修:神野)

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  • ボジョレ・ヌーボー ちがうこと思ってるのね

    2017.11.16 放送

    作者:池田澄子

    今日は、ワインの新酒・ボジョレーヌーヴォーの解禁日。ともにグラスをかたむける相手が、心ここにあらずの表情をしたとき、ああこの人はいま違うことを考えているのだな、と気づいたのです。別々の人間同士、わかりあえないさみしさを、フレッシュな新酒のように、さらりと詠みました。

    (監修:神野)

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  • 花嫁を見上げて 七五三の子よ

    2017.11.15 放送

    作者:大串章

    今年も七五三の季節です。この句は、七五三もうでのお宮で結婚式があったのでしょう。着飾った子どもたちが、うつくしい和装の花嫁を、珍しそうにまぶしそうに、見上げます。結婚も七五三も、人生の晴れの場面。二つの幸せが、冬のはじめの日だまりを、ひととき共有します。

    (監修:神野)

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  • はじめての 鮒屋泊りを しぐれけり

    2017.11.14 放送

    作者:夏目漱石

    道後の老舗旅館・鮒屋に、はじめて宿泊したときの句です。漱石は温泉が好きで、英語教師として松山に赴任中も、足しげく道後へ通いました。正岡子規や高浜虚子とも、連れ立って道後温泉を訪れたといいます。きっと男同士、湯船に浸かりながら、文学や日本の未来について、語り合ったことでしょう。

    (監修:神野)

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  • 沖に日矢 十一月の波頭

    2017.11.13 放送

    作者:星野椿

    雲間から差す太陽の光を、日矢といいます。十一月、おだやかな小春日和の海を、雲からこぼれた光が、日矢となって輝かせます。荒い北風が吹き立て、海には白い波がしらが。ひろやかな海の風景から、冬のはじめの寒さや清らかさを、しずかに伝える一句です。

    (監修:神野)

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  • 小春日の 海と並んで 歩きけり

    2017.11.10 放送

    作者:宮崎夕美

    旧暦十月を「小春」ともいいます。暦の上では冬に入っても春のように暖かい、ということを本来の春とは区別していう季語です。(そうした春を思わせる日和が「小春日」「小春日和」です。)この句は初冬の海辺。冬であることを忘れさせるような、穏やかで青々とした海に沿って歩きながら、作者は大好きな海とともにある幸せを満喫しています。

    (監修:池内)

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  • 待つとなき 花柊の香なりけり

    2017.11.09 放送

    作者:雨宮きぬよ

    柊はモクセイ科の常緑小高木。山などに自生していますが、庭木や生垣としてもよく植えられています。冬の初めに白く小さな花を咲かせます。「花柊」「柊の花」は、ぎざぎざの刺のある葉の陰に咲くので、その甘いひそやかな香りで初めて花に気づくことが多いようです。(柊の葉は知っていても、花は知らない人も多いといわれます。)

    (監修:池内)

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  • 長寿より 天寿を希ふ 木の葉髪

    2017.11.08 放送

    作者:高橋悦男

    人の髪は1年を通じて生え替わりますが、冬の初めころは特に抜け毛が多くなります。それを木の葉が落ちるのになぞらえて「木の葉髮」といいます。冬の初めの侘しさ、人生の哀愁にも通じる感じのする季語です。自分の木の葉髪を目の前にして、作者はただ長生きをするのではなく、天から授かった寿命を全力で生きたいと願っています。

    (監修:池内)

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  • よきことのありさうな 冬来たりけり

    2017.11.07 放送

    作者:浦川聡子

    きょうは二十四節気の「立冬」。「冬に入る」「冬来たる」ともいいます。暦の上ではきょうから立春の前日までのおよそ三か月が冬です。「冬来たる」は、厳しい冬を迎えるにあたっての人それぞれの緊張感を伴う季語。作者には、この冬は何かよいことのありそな予感があるようです。緊張感と同時に期感を持って冬を迎えています。

    (監修:池内)

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  • 行く秋や 沖に動かぬ 漁船の灯

    2017.11.06 放送

    作者:加藤憲曠

    明日は立冬。秋も終わろうとしています。「行く秋」は、単に秋が過ぎ去るという意味だけではなく、去り行く秋を惜しむ心のこめられた季語です。巡る季節を旅人になぞらえて「行く」というのは、ふつう春と秋にだけ使われる表現です。この句は夜の海の情景です。沖をじっと動かない漁り火。さらに遥かな沖へ、秋はゆっくりと遠ざかって行きます。

    (監修:池内)

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  • 助手席の 犬が舌出す 文化の日

    2017.11.03 放送

    作者:大木あまり

    今日は文化の日です。自由と平和を愛し、文化を推進する日として、戦後に制定されました。車の助手席に陣取っている犬が、窓から外を眺めています。車もペットも、人間が作り上げてきた文化のひとつ。あかんべえのように舌を出す犬は、人間のふるまいを、静かに見つめています。

    (監修:神野)

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  • 難民の キャンプに轍 天の川

    2017.11.02 放送

    作者:中矢温(愛光高校)

    第19回俳句甲子園、個人優秀賞の一句です。祖国を追われた人のため、仮設された難民キャンプは、今も世界各地に存在します。大地には物資を運ぶ車の轍が、空にはきらめく天の川が、はるか先まで伸びています。不安な夜、難民たちは、天の川を見上げ、何を思うのでしょう。

    (監修:神野)

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  • 木に倚らば 木もよりて来よ 十三夜

    2017.11.01 放送

    作者:金田咲子

    今日は十三夜。十五夜の次に月の美しい夜とされ、仲秋の名月同様、月見を楽しみます。ずいぶん寒くなった夜、月もさえざえと、すさまじい光を放ちます。木の幹にもたれ月を仰ぐ作者は、木のほうも私に寄り添っておいで、と語りかけました。秋も終わりの心細さが、木への呼びかけにつながります。

    (監修:神野)

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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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