2018年12月の俳句

  • 旧里や 臍の緒に泣く 年の暮

    2018.12.28 放送

    作者:松尾芭蕉

    ふるさとで過ごす年末年始。実家に仕舞われていた自分の臍の緒を、ふと手にとると、父母や幼い日のこと、昔のあれこれが懐かしく思い出され、涙が出てきたという句です。この世に生まれた証である臍の緒を前に、その後を生きてきた年月を思い、年の瀬の感慨にひたります。人それぞれ思いを抱く年の瀬ですが、涙を拭いて、新たな気持ちで、新しい年を迎えられますように。

    (監修:神野)

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  • 引き出しに 飴玉・付箋・ 冬銀河

    2018.12.27 放送

    作者:千倉由穂

    引き出しにいかにもありそうな飴玉と付箋から、時空の異なる冬銀河へと、一気に連想を飛ばしました。飴玉と冬銀河をつなぐのは、キラキラした硬さです。引き出しの中に、実は冴え冴えと冬銀河が広がっているとしたら。寒くて閉じこもりがちな冬の意識がどこまでも外へ広がってゆける、夢たっぷりの一句です。

    (監修:神野)

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  • すみれ色の湯を抜き ボーナス日の終わる

    2018.12.26 放送

    作者:ふづき

    ボーナスは年末賞与ともいい、冬の季語です。ボーナスの出る日は、やはり嬉しいもの。帰宅して入るお風呂も、入浴剤を入れたりして、贅沢な気分で浸かるのです。入浴剤に染まる湯の色を、すみれ色と可憐に表したのも、気分がいいからこそ。とはいえ、ボーナス日は終わるし、ボーナスも使えばなくなります。さて、明日からまた、頑張って働きますか。

    (監修:神野)

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  • 贈り物の 数を尽して クリスマス

    2018.12.25 放送

    作者:正岡子規

    明治時代、開国によって広く楽しまれるようになった文化のひとつに、クリスマスがありました。この句は明治33年の作、たくさんの贈り物を用意して迎えた、クリスマスのゆたかな時間を描いています。当時のクリスマスは、現代のハロウィンのように、珍しく新しい行事でした。子規は果敢に新素材に挑み、時を超える句を生み出したのですね。

    (監修:神野)

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  • 刻かけて 海を来る闇 クリスマス

    2018.12.24 放送

    作者:藤田湘子

    はるか昔から続く聖なるクリスマスの夜が、今年も訪れようとしています。海の彼方から刻々と夜の闇が迫ってくるように、時間は必ず、ゆたかに移り変わってゆきます。キリストが誕生したのも夜でした。何かが起きる期待に弾む人間の鼓動が、おおらかな地球の鼓動と一体となって、世界を包みこみます。

    (監修:神野)

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  • 煤逃の句座 鰻屋の小上がりに

    2018.12.21 放送

    作者:田口風子

    新年の迎えるために、一年間の煤を払って家の内外を清めるのが「煤払」。古くは十二月十三日と決まっており、煤払は正月準備の最初の行事でした。現在は、もう少し押し詰まってからのことが多いようです。仕事などを口実に家の掃除から逃れることを「煤逃」といいます。作者は俳句を口実に煤逃をし、鰻屋の小さな座敷に集まって、忘年句会と洒落込んでいるようです。

    (監修:池内)

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  • 生かされて 生きて九十 牡蠣すする

    2018.12.20 放送

    作者:須並一衛

    「牡蠣」は英語の月の名にRのつく九月から四月まで食べられる、などとよくいわれます。しかし、牡蠣の旬は何といっても冬。寒さが厳しくなるほどおいしくなります。牡蠣フライ、どて焼、牡蠣飯など色々な食べ方があります。この句の作者は生のままの酢牡蠣を啜って、新鮮な味を堪能しています。そして長生きをして、この冬もおいしい牡蠣を味わえた幸せを噛み締めているようです。

    (監修:池内)

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  • 空と湖 自在に占める 鴨の陣

    2018.12.19 放送

    作者:小川晴子

    人に最も馴染み深い水鳥が「鴨」。冬の訪れを告げるかのように、湖や沼へ渡って来ます。一羽二羽でいることは少なく、集団で行動します。これを「鴨の陣」といいます。鴨が人に好まれる訳は、その肉が美味しいことにもあります。幸いこの湖では猟師に狙われることもないようで、鴨たちは空に湖上にと自在に群れをなして、日本の冬を謳歌しています。

    (監修:池内)

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  • 別々のことして愉し 置き炬燵

    2018.12.18 放送

    作者:杉田菜穂

    やぐらと呼ばれる木の枠の中に、火の入った炉を置き蒲団を掛けるのが「置炬燵」。四方から足を入れて暖をとる、昔懐かしい家庭用の暖房です。今は炭火ではなく電気炬燵が主流となっています。一つの置炬燵を囲んで、子供たちは宿題をし、お母さんは編物をしている。そんな情景も、日本の冬ならではの楽しさではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 走り寄る子と母 白息ひとつなす

    2018.12.17 放送

    作者:藤沢紗智子

    朝や夕方など、吐く息が白く見えるのに気がつくと、冬になったことをしみじみと感じます。口から出た息に含まれる水蒸気が、急に冷やされて細かい水滴となって白く見える現象。「息白し」あるいは「白息」といいます。幼稚園へわが子をお迎えに来たお母さんでしょうか。お互いの顔を見つけて走り寄る子と母の吐く白息が、ひとつに溶け合って見えています。

    (監修:池内)

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  • 手袋を外せば シリウスの香り

    2018.12.14 放送

    作者:栗田修次(松前町)

    シリウスは冬の大三角をつくる一等星で、地球から見える最も明るい星です。寒い夜空の下で手袋を外したのは、家の鍵をあけるためか、誰かの頬に触れるためか。素肌が冷気に触れた瞬間、ふと、強く輝くシリウスの気配を感じました。手袋を外したことで、世界と私を遮るものがなくなり、宇宙がぐっと近づいたのです。きりりと凛々しい一句です。

    (監修:神野)

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  • 前髪命 手袋を はめ直す

    2018.12.13 放送

    作者:松本伴子(松前町)

    「前髪命」という若々しい表現から、この句の主人公が青春期の若者だと分かります。たしかに十代のころは、前髪が素敵に決まっているかどうかで、その日の運勢まで左右されるような気分になりました。手袋を外し、吹きすさぶ寒風に乱された前髪を直して、また手袋をはめて。学校へ行く途中の、無意識の瞬間を、いきいきと切り取りました。

    (監修:神野)

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  • 悲しみの 肩に添へたる 黒手套

    2018.12.12 放送

    作者:瀬戸薫(松山市)

    喪服の黒い手袋、お葬式の場面でしょうか。悲しみに暮れる人に、かける言葉が見当たらず、ただ震える肩にそっと手を置き、思いを分かち合います。寒空の下の、悲しみの黒、静けさの黒。「添へたる」というやわらかな表現に、無言のやさしさが滲みます。

    (監修:神野)

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  • 焼き芋を 食べて手袋 忘れけり

    2018.12.11 放送

    作者:井下敏(四国中央市)

    手袋はあたたかさを保つ反面、分厚いので手先が不器用になるデメリットもあります。この人も焼き芋を食べるために、いったん手袋を外したのでしょう。ほくほくの焼き芋に身も心もあたたまり、つい、手袋を忘れてきてしまいました。冬ならではのうっかりミスを軽やかに詠む、チャーミングな一句です。

    (監修:神野)

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  • 電飾の 光をかへす 黒手套

    2018.12.10 放送

    作者:鶴巻貴代美(東京都)

    イルミネーションが彩る街には、冬の装いに身を包んだ人が行き交います。中には、黒い革手袋をはめたおしゃれな人も。つやつやと照る黒革のなめらかな肌が、イルミネーションの光を、きりっとはね返します。都会的な手袋が放つ、寒さの中の美しさに、ハッと息をのむ瞬間です。

    (監修:神野)

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  • 濃き味のすき焼 箸のふれあへる

    2018.12.07 放送

    作者:雨宮抱星

    「すき焼」は冬の代表的な鍋料理。家族や親しい仲間が鉄鍋を囲み、牛肉、葱、豆腐、白滝などを、醤油と砂糖で煮込んで食べます。すき焼という名は、農業用の鋤を鉄板がわりに鳥や獣の肉を焼いたことに由来するといわれます。この句は、味の濃い関東風の牛鍋のようですね。いっせいに鍋の中へ伸ばした箸と箸が触れ合うのも、すき焼の楽しさではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • わが影とゐる 安らぎの 日向ぼこ

    2018.12.06 放送

    作者:田村正義

    日の短い冬に、日当たりのいい縁側や公園のベンチなどで日を浴びるのは、ほっとする楽しい一時です。季語では「日向ぼこり」「日向ぼこ」などといいます。作者は日のあたる庭先にいるのでしょうか。地面には自分の影がくっきりと見えるのは、日がよく当たっているのでしょう。風もなく、文字どおりほっこりとするような、日向ぼっこの光景です。

    (監修:池内)

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  • 白菜を剝いて 一枚ごとの無垢

    2018.12.05 放送

    作者:勝又民樹

    漬物に鍋物に、白菜のおいしい季節です。「白菜」はアブラ菜科の野菜で、中国原産。日本へ渡ったのが明治初期ですが、品種改良を重ねて、今や日本の食卓に欠かせない野菜となっています。生育するにつれて葉が互いに重なり合って来ます。料理するために葉を剝くと、次々に新しい葉が現れます。そんな白菜の清らかな姿を描いた一句です。

    (監修:池内)

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  • 笹鳴きの まことしづかな 間のありて

    2018.12.04 放送

    作者:早野和子

    夏に山で繁殖した鶯は、秋の終りには人里近く下りてきて冬を越します。この時期の鶯はホーホケキョとは鳴かず、チャッ、チャッという舌打ちのような地鳴きをします。この鳴き声を「笹鳴」といいます。鶯の姿は見えなくても、チャッ、チャッという鋭い鳴き声はよく響きます。笹鳴と笹鳴の間の静けさが、その声をいっそう際立たせます。

    (監修:池内)

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  • 脱ぎ捨てて 木は木の形 十二月

    2018.12.03 放送

    作者:廣瀬町子

    「十二月」。一年の最後の月です。年内に片づけなければならない仕事が気になります。月の半ばを過ぎると新年を迎える準備もあります。何かと心せわしい月です。いっぽうで自然はといえば、樹々は葉をすっかり落とし、まるで着ていたものを脱ぎ捨てかのように、幹と枝だけの姿を見せます。そんな木の形こそ、十二月という季節を象徴するものなのかもしれません。

    (監修:池内)

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