2024.10.31 放送
ご近所さんか、友だちでしょうか。栗ご飯を炊いて呼んでくれました。栗は秋を代表する食べ物ですが、皮は剥きにくく、面倒です。いざ料理となると躊躇してしまいます。作ってくれた栗ご飯にあずかれる幸せで、月の道をほくほく出かけて行きます。そう言えば、十三夜は栗名月ともいいますから、ちょうどその日にお呼ばれしたのかも知れません。
(監修:谷)
2024.10.30 放送
「我思う、ゆえに我あり」は、哲学者デカルトのよく知られた言葉です。それをたった一文字かえただけの、ギャグのような一句になりました。思わず笑いがこぼれますが、確かにワニのことを思うからワニは存在し、思わない時には、無いものと同じなのかもしれません。秋の暮れには、些末な事にも思いを馳せます。作者は、詩人で直木賞作家、俳人でもあります。
(監修:谷)
2024.10.28 放送
季語「木の実」は、秋に結実する木の実の総称です。団栗などを木の下に見つけるのは、秋の大きな楽しみです。老いた宮司さんが、境内の落葉を掃いていました。そこへ、子どもたちが木の実を拾いに来たので、邪魔をしないように箒の手を止めました。作者は明治三十二年、西条市丹原町で生まれた宮司でした。この句、自画像でしょうか。
(監修:谷)
2024.10.25 放送
人間の体を使った口笛を、楽器ととらえた発想がユニークです。口を尖らせたら吹けるので、たしかに壊れません。口笛は、素朴にして強靭な楽器なのですね。星月夜の下、口笛を吹きながら歩きます。孤独だったとしても、何も持っていなくても、口笛は吹ける。その事実が心を軽くする夜もあるはずです。
(監修:神野)
2024.10.24 放送
子どもの成長は気がかりで、なかなか言葉が出ないのも、心配の種のひとつです。眠れない我が子をあやすため、おんぶして夜を歩きます。子どもも今、満天の星を見て、何かを感じているでしょうか。言葉に変換しない分、まずは心を育てているのかもしれません。星月夜の光が、二人に優しく寄り添います。
(監修:神野)
2024.10.23 放送
標高2450メートル、日本で一番高い駅「室堂」の構内には、立山山頂郵便局があります。ここで葉書や手紙を投函すると、立山の風景が描かれたオリジナルの消印が押されます。立山の山頂で見る星月夜は、ずっと眩しく圧倒的でしょう。葉書も、その星月夜の気配をまとって、静かに運ばれてゆきます。
(監修:神野)
2024.10.22 放送
恋人と一緒に星を見に来たのでしょう。突然、恋人が「えいっ」と空に手を伸ばし、何かをつかみます。つかんだ手をひらくとそこには、満天の星空からひとつぶの星をさらったかのように、きらりと輝く指輪が。「結婚してください」。ドラマのようなシチュエーションを、十七音の短い言葉で書き上げました。
(監修:神野)
2024.10.21 放送
マングローブは、川の河口の真水と海水が混じりあうあたりに生息する樹です。マングローブの林の中を、櫂を操って、舟がゆっくりと進んでゆきます。空は満天の星月夜、なまぬるい風に混じって、水音が静かに響きます。物語の中に迷い込んだような、不思議な高揚感に包まれる一句です。
(監修:神野)
2024.10.18 放送
海や湖へ突き出した桟橋をまっすぐ進めば、そこには水と空だけの世界が広がります。星月夜ならば、天空にも水面にも、無数の星の光が満ちているでしょう。桟橋の果てに寝転がれば、まるで宇宙の真ん中に浮いているかのよう。幻想的なイメージに誘われて、心が自由に解放されてゆきます。
(監修:神野)
2024.10.17 放送
遺影が出来立てだということは、その人が亡くなって間もないことを意味します。まだ喪失を受け入れられないまま、冷たく硬い遺影を抱いて、大切な人を見送りました。葬儀を終え、空を仰げば、いつの間にか満天の星空が。天空に満ちた星々の輝きの中に、その人の懐かしい面影を探します。
(監修:神野)
2024.10.16 放送
いつも優しいママにも、もしかしたら知らない一面があるのかもしれない、と想像しました。ふだんは世を忍ぶ仮の姿で、実は秘密の任務を任されたスパイだったとしたら。輝く星月夜を背に、スマートに活躍するママのシルエットを想像しながら、わくわくどきどき、眠りにつきます。
(監修:神野)
2024.10.15 放送
童話「銀河鉄道の夜」で有名な宮沢賢治は石を集めるのが好きで、「石っこ賢さん」と呼ばれていました。星のきれいな夜に、賢治と石の採集に出かけたら、どんな新しい世界に出会えるでしょう。空の星々も、宇宙の石のかけらです。自然科学も文学も、もっとこの世界を知りたいという純粋な心に支えられています。
(監修:神野)
2024.10.14 放送
秋は大気が澄み渡り、星もきらめきます。星々の光で月が出ているかのように明るい夜を、星月夜といいます。統計のレポートで膨大な数字とにらめっこしていた目を休め、夜空を仰ぎます。星々の無数の光も、統計で把握できるでしょうか。統計というものの見方を介して、星月夜の果てしなさを表しました。
(監修:神野)
2024.10.11 放送
訪問客への断りのセリフが、そのまま五七五の俳句になっているようで楽しいです。訪ねて来る人は、たいてい妻が目当てなので「妻は留守」と念を押しています。栗の皮を剥くのは大変ですから、夫が引き受けているのでしょう。午後二時からと決めて、案外、満ち足りた時間なのかも知れません。
(監修:谷)
2024.10.10 放送
蛇は冬眠するために穴に入るのですが、彼岸過ぎても活動している蛇を「穴まどい」と言います。擬人的な言葉が面白い季語です。まごついている蛇が人間に出くわして驚いています。人間は人間で、涼しくなって蛇のことなど忘れていたから、びっくり。「われ」、「おどろく」のリフレインによって、対面した両者の姿をユーモアたっぷりに描いています。
(監修:谷)
2024.10.09 放送
秋の鬼が、石の上に座って火を焚いているという、非現実的な光景です。鬼には畏怖の念を抱きながら、どこか親しみを覚えるのは、節分の鬼や子供の頃に読んだ童話『泣いた赤鬼』などのせいかも。澄んだ秋空の下で、もしかしたら鬼は送り火を焚いているのかも知れません。新興俳句の旗手として活躍した赤黄男は、愛媛県西宇和郡保内町に生まれました。
(監修:谷)
2024.10.08 放送
零余子は自然薯、つくね芋、長いもなどの葉の付け根にできる珠芽で、一センチ前後の粒で褐色です。この時季、汁の実、炊き込みご飯などにして独特の風味を楽しみます。拾ってきた零余子の数粒を、食べないで本などを置く机に置いてみました。零余子そのものよりも、零余子が落とす濃い影に、いっそうの秋の深まりを感じました。
(監修:谷)
2024.10.07 放送
町中に、白い紙の「垂」を目にするようになると、祭りが近いことを知って、気分が高揚します。祭りの行列の後をついて行ったのでしょうか。ふっと、自分の肩に天道虫が止ったのに気付きました。あるいは、前にいる人の肩なのかも。つぶらな天道虫がもたらした一瞬の心の静寂。しばらく飛び立たないで欲しいですね。
(監修:谷)
2024.10.04 放送
サフランはクロッカス科の植物で、秋、紫色の花を咲かせます。夏は淀んで感じられた空気も、澄んで冷えてくると新鮮な印象に。サフランの花のまとう清らかさが、その周囲の空気までフレッシュに感じさせるのでしょう。散歩するにも心地よい季節となりました。明日はどんな風景に出会えるでしょう。
(監修:神野)
2024.10.03 放送
榠櫨は中国原産の柑橘で、香りがよく、砂糖漬けにしたり、咳止めの薬にしたりします。秋につける黄色い実は、でこぼこと大きく、その形が特徴的です。木から落ちるときも、そのでこぼこによって、どこへ弾むか予想がつきません。偶然の出来事を通して、榠櫨らしさを存分に引き出しました。
(監修:神野)
2024.10.02 放送
秋になると大気が澄み渡り、月もいっそう美しく見えます。ことにひんやりした夜は、さしてくる月の光が、青く清らかに感じられることも。「青き寝息」という詩的な表現が、少年の若々しさを思わせるとともに、ほのかな孤独の気配も漂わせます。少年は今、月光の中で、どんな夢を見ているのでしょう。
(監修:神野)
2024.10.01 放送
現代のスマートフォンには、さまざまな機能がついています。電話やメールだけでなく、ちょっとしたことをメモすることもできます。流れ星を見つけたとき、ひらめいた言葉のかけらを、スマホのメモに書きとめました。詩のアイディアはいつ降ってくるか分かりません。そんなときスマホは頼もしい相棒です。
(監修:神野)
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