2023年4月の俳句

  • われのみが ゆあみのあとの 春の暮

    2023.04.28 放送

    作者:下村槐太

    「ゆあみ」は、湯を浴びる、と書いて「湯浴」とう読みます。今ではあまり使わない言葉かもしれませんが、どこか艶っぽくてきれいな響きです。身体を流れる湯の豊かさと、湯の流れの中の人の姿が、垣間見える気がします。春の夕暮れの、そんな湯上がりの、けだるい情景には、女性より男性が似合う気がします。

    (監修:谷)

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  • 錠剤の 色さまざまや 春の昼

    2023.04.27 放送

    作者:金 利惠

    錠剤の色は、まことに様々(さまざま)ですね。ピンク、黄色、青、白、オレンジ、赤、など。この人、昼食を終えてこれから飲むべき薬を並べているのでしょうか。例えば錠剤が白だけだとしたら、寂しい気がします。せめて明るい色が、心を励ましてくれそう。薬に色を付けている一つの理由は、飲み間違いが無いようにとの、配慮からだそうです。

    (監修:谷)

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  • 春の蚊の ぽつんと 宇宙物語

    2023.04.26 放送

    作者:寺田伸一

    春の蚊は、春の終わりの頃、暖かくなって出て来る蚊です。蚊にとっては、まるで宇宙旅行が始まったよう。巨な世界に出て来てしまったのです。まだ仲間も見あたらず「ぽつんと」が、ちょっと心細そう。ちっちゃな蚊と巨大な宇宙の出会いが楽しくもあり、ふと自分が蚊と同化して、深い宇宙を孤独に泳いでいる気分になります。

    (監修:谷)

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  • ひとつずつ 出て一斉に 春の星

    2023.04.25 放送

    作者:田島明志

    一番星が出て、星はひとつずつ増えていきます。夜が更けて空を見上げたら、まるでたった今「一斉に」空に広がったように感じたのです。この句を読み終えた途端、星が出揃った夜空が見えるようです。春の星は水蒸気のせいで、冬よりは見える数は減りますが、潤んだ星の光に包まれるような気分になります。

    (監修:谷)

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  • 外にも出よ 触るるばかりに 春の月

    2023.04.24 放送

    作者:中村汀女

    「外に出てみて!手に届くくらいに、春の月が大きいよ」と、誘っています。こんなふうに呼びかけられたら、思わず立ち上がって、きっと家の外に飛び出るでしょう。家族への呼びかけですが、まるで家に籠っている私たちへの明るいメッセージにも思えます。秋の月とは違う、春らしい朧月の情感が「触るるばかり」に出ています。

    (監修:谷)

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  • 百度目の 新入生や 空へ楠

    2023.04.21 放送

    作者:藤尾裕子(福岡)

    学校の創立から百年目の春なのでしょう。創立百周年、百度目の新入生が入学してきました。校内には、大きな楠の木が、空へ向かって大きく枝をのばしています。百年前にはきっと、ひょろひょろの若木だったでしょう。新入生のみなさんも、楠の木のように、これから大きく成長してゆきます。入学、おめでとう。

    (監修:神野)

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  • 峡深し つひにをらざる 入学子

    2023.04.20 放送

    作者:竹本桂子(久万高原)

    山深い地域では過疎化が進み、子どもたちの数も年々減っていて、ついに、入学する新一年生がいない年が来ました。かつては、子どもたちで賑やかだった学校。新入生のいない春は、やはり寂しいものです。春の日が満ちるしずかな山峡に、在校生の遊び声が響きます。

    (監修:神野)

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  • 入学や 階段は 鍵盤みたい

    2023.04.19 放送

    作者:葉村直(大阪)

    入学式の日、教室へ向かい、校舎の階段をのぼってゆきます。そのとき、階段がまるでピアノの鍵盤のようだと気づきました。ステップを踏むたび、ぽろんぽろんと音符が生まれてくるみたい。楽しい比喩に、入学のフレッシュな心が、いきいきと弾みます。

    (監修:神野)

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  • カップ麺 匂う寮より 入学す

    2023.04.18 放送

    作者:赤尾てるぐ(秋田)

    進学を機に親元を離れ、寮生活を始めました。入学式へも、寮から登校します。自炊するのも大変だから、カップ麺で済ませる学生もいるのでしょう。カップ麺に代表される生活の匂いが、これから私も、ここで自力で生きてゆくのだという、入学の覚悟をうながします。

    (監修:神野)

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  • すり傷もお揃ひ 入学の双子

    2023.04.17 放送

    作者:松田夜市(松前)

    双子なので、入学するタイミングも同じです。ランドセルや制服も、きっとお揃い。そしてさらに、二人揃って、すり傷も同じ場所に作っています。半ズボンやスカートの膝小僧でしょうか。やんちゃな二人の学校生活は、きっと溌溂とした楽しい時間になることでしょう。

    (監修:神野)

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  • 乗り継いで また乗り継いで 入学す

    2023.04.14 放送

    作者:まさし(松山)

    入学する学校が、必ずしも近くにあるとは限りません。街から離れた場所に住んでいると、電車やバスを乗り継いで乗り継いで、やっと学校へ着く子もいます。通学の風景もさまざま。入学する期待を胸に眺めれば、車窓の景色も、春風にまぶしく輝きます。

    (監修:神野)

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  • 入学の 夜も図鑑を 見ておりぬ

    2023.04.13 放送

    作者:平良嘉列乙(千葉)

    学校は、協調性を学ぶために、画一的な行動が求められる場面があります。入学式もその一つ。いつも図鑑を見ている探求心たっぷりの子は、集団行動にまだ馴染めないかもしれません。子どもたちにも、それぞれに個性があります。一人一人が自分の大切なものを育めるよう、見守ってやりたいですね。

    (監修:神野)

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  • 6Bの えんぴつみたい 入学児

    2023.04.12 放送

    作者:げばげば(大阪)

    鉛筆の芯の硬さを測る規格の中で、もっとも柔らかいのが6Bです。絵画のデッサンなどに使われ、書き心地も濃厚でナイーブです。入学した子どもを、6Bの鉛筆にたとえました。にぎやかで、素朴で、脆さとたくましさを兼ね備えた存在。筆箱の鉛筆を使って、これからの日々を自由に描いてください。

    (監修:神野)

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  • 入学の朝 アボカドの 種発芽

    2023.04.11 放送

    作者:杉野祐子(松山)

    食べ終わったアボカドの種は、観葉植物として楽しむこともできます。芽が出るのを待っていたアボカドの種が、ちょうど入学の朝に発芽しました。あんなに硬い種でも、時が来ればちゃんと芽を出すのですから、子どもたちだって、入学で緊張していても大丈夫。きっとみんなこれから、それぞれに良い芽を育ててゆきます。

    (監修:神野)

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  • ポケットに キャラメルふたつ 入学子

    2023.04.10 放送

    作者:忽那大佐(松山)

    四月上旬は、入学の季節です。小学校から大学まで、さまざまな学校で入学式が行われます。ポケットにキャラメルをしのばせているのは、きっと小学生でしょう。「ふたつ」と数を見せたのが、具体的で楽しいですね。きっと、甘いキャラメルがお守りとなって、緊張をほぐしてくれます。

    (監修:神野)

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  • みんなよくはたらく 桜どんどん散る

    2023.04.07 放送

    作者:神野紗希

    日々働く人たちへの賛歌のような句です。さまざまな職業の人たち、例えば学校の先生、工事現場の人、サラリーマン、生保レディなどが時間と闘いながら、地球の上を動いている姿が見えるようです。この句の散る桜は寂しくありません。人々を応援するように、惜しみなくどんどん散っていきます。まるで、働いているように。

    (監修:谷)

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  • 今日ほどに よき海はなし汐干狩

    2023.04.06 放送

    作者:阿部里雪

    春のある一日を、戸外で飲食する習わしが古くからあって、汐干狩もそれに基づく行事の一つです。遠浅の砂浜で、浅利・蛤・馬刀貝などを掘ります。大人も子どもも、この上なく輝く今日の春の海を背景に、無心に、あるいは歓声を上げながら掘り続けます。作者は伯方町木ノ浦に生まれ、俳句を柳原極堂に師事しました。

    (監修:谷)

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  • 猫の子の ちょうど餃子の やわらかさ

    2023.04.05 放送

    作者:近江文代

    猫の子は四季を通じて生まれますが、春にもっとも多く生まれるので、春の季語になっています。猫の子のやわらかさを、餃子に例えているのが可笑しいです。餃子を作っていて、そうだ!っと気付いたのでしょうか。私たちにも、猫の子の柔らかさのほどが伝わります。ぷにょぷにょと触ってみたくなりました。

    (監修:谷)

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  • ゲートルの 子規に会へさう 青き踏む

    2023.04.04 放送

    作者:岡田伊勢子

    ゲートルは、ズボンの裾と脛をおおう脚絆のようなもの。ベースボール姿で映る写真の子規を思い起こします。子規の俳句の弟子、虚子や碧梧桐も、俳句より、まず野球をする子規と出会いました。「青き踏む」は、「踏青」といい、旧暦の3月3日に野山の草を踏んで遊ぶこと。萌出ずる草を踏みながら、この人、子規に出会えた気がします。

    (監修:谷)

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  • ちよいちよいと 味噌溶いてゐる 桜どき

    2023.04.03 放送

    作者:津川絵理子

    桜時とは桜の咲くころ、桜の花が見ごろの時です。その時季の、そわそわうきうきする気分は、日頃やっている所作にも出てきますね。お玉にのせて、箸で味噌を溶く時にも。ちょいちょいが、楽しいです。日本人にとって桜時という特別な時空の中で、味噌を溶くという小さな一場面が鮮やかに描かれました。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題「葉桜(はざくら)」の
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
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