2021.06.30 放送
6月も終わり、1年の折り返し地点を迎えます。今日6月30日は「夏越の祓」の日です。神社の境内に編まれた茅の輪をくぐって、厄を祓い無病息災を祈願します。茅の輪くぐりに訪れると、神社で飼っている鶏が、勢いよく茅の輪を突っ切っていきました。突然のことに驚きつつも、その速さに命を感じ、爽快感が広がります。
(監修:神野)
2021.06.29 放送
夏用の薄い掛け布団のことを「夏掛」といいます。肌触りがよく、軽いので、寝苦しい夏にも、心地よさを連れてきてくれます。眠りながら、少し涼しくなったので、夏掛を手繰り寄せたのでしょう。暑苦しさに目覚めることなく、夢の続きを見ていられるほどには、心地よい夏の眠りです。
(監修:神野)
2021.06.28 放送
清流に棲む山椒魚は、俳句では夏の季語です。数千万年前からほぼ同じ姿だったことから、生きた化石とも呼ばれます。この句は、山椒魚の生息する川の源流を、星々の銀河へ連なっているのだと、想像力ゆたかに捉えました。はるかな銀河の輝きが、山椒魚の生きてきた長い歴史を物語ります。
(監修:神野)
2021.06.25 放送
穂の出る前に青々と茂る夏の芒を、青芒といいます。野山や河原で風に吹かれてなびく姿は、涼しさを呼び起こします。町の景色は刻々と変化し、人も家も移り変わってゆきますが、川の水は昔のままに、いきいきと流れてゆきます。変わらない水の姿を見つめていると、心の底に、静かな懐かしさが満ちてゆきます。
(監修:神野)
2021.06.24 放送
一日を終えた夜、誘い合わせて飲みに行ったのでしょう。もやもやした気持ちを抱えていても、生ビールをぐいっと飲めば、もう笑っている私がいます。自分を客観的に観察したことで、人間という存在について理解が一歩深まりました。憂いを拭う生ビールに、明日への活力を養う夜です。
(監修:神野)
2021.06.23 放送
眠れずに深夜ラジオを聞いているとき、心は静かにたたずんでいます。その感覚を、雨の中で咲く紫陽花にたとえました。小さな萼をさざめかせ、丸く震える紫陽花は、繊細なこころの姿を、見えるかたちで差し出します。俳句甲子園出身の作者がこの春刊行した第一句集『パーティーは明日にして』に収録の一句です。
(監修:神野)
2021.06.22 放送
杏の木は、六月から七月にかけ、丸く甘酸っぱい実をつけます。生で齧っても、ジャムにしても、おいしい夏の果実です。みのるのはちょうど梅雨のころ。雨が続くと鬱々としがちですが、大地や草木にとっては恵みの雨でもあります。すこやかに濡れ、命のゆきわたる大地が、杏の実をゆたかに育てます。
(監修:神野)
2021.06.21 放送
今日は夏至の日です。日の出から日の入りまでの昼の時間がもっとも長く、夜がいちばん短い日です。梅雨の時期で、空気がしっとり湿っています。そんな夏至のころの桃畑に、小さな朱色の櫛が落ちていました。落とし主は誰なのか、想像が駆り立てられます。桃の実も青く膨らみはじめ、ゆたかな夏の気配に満ちた俳句です。
(監修:神野)
2021.06.18 放送
昔の日記を読み返していると、余白を見つけました。日記に余白があるのは、たいした出来事がなかったか、あるいは、日記には書かない大切な記憶があったのかもしれません。遠く過ぎ去った日々に思いを馳せながら、窓の外に目をやれば、記憶の余白に、蛍が静かに飛び始めます。
(監修:神野)
2021.06.17 放送
蛍をそっとつかまえて、手の中に包むと、明滅する光が、てのひらを静かに照らします。蛍が苦しくないように、優しく包む手のかたちは、ふっくらとおにぎりを握るときと、よく似ています。私たちの手は、蛍を包むことも、おにぎりを握ることもできるのですね。おにぎりと並べることで、蛍も、暮らしのそばの、親しい存在に感じられます。
(監修:神野)
2021.06.16 放送
蛍は、水がきれいで自然ゆたかな場所を好みます。転勤先の赴任地は、地方の町なのでしょう。この地に配属されたのは、もしかしたら左遷なのかもしれません。それでも、美しい蛍の光を見つめていれば、心が静まります。どんな場所に置かれても、蛍を見つけ、前向きに生きようとする、希望の見える俳句です。
(監修:神野)
2021.06.15 放送
昼間は美しいメロディを奏でていたピアノも、夜は静かに眠っています。反対に、昼はおとなしかった蛍たちが、闇の中をにぎやかに飛び交っています。ピアノの色を表現した「漆黒」という言葉が、蛍の飛ぶ夜の、闇の深さを思わせます。蛍の一つ一つが音符だとしたら、どんな曲が聞こえてくるのでしょうね。
(監修:神野)
2021.06.14 放送
今の時期、夕方から夜にかけて水辺を飛び交う蛍は、夏を代表する季語です。清少納言も『枕草子』で、夏の夜の風情として、蛍を褒めたたえました。暮れなずむころに飛び始めるのを、夕蛍と呼びます。一日が終わり風呂に入れば、木の湯桶でしょうか、音がやわらかく響きます。蛍の光も、夕暮れの風景に滲み、ゆたかな時間が流れます。
(監修:神野)
2021.06.11 放送
春に種をまいた南瓜は、夏の今ごろ、黄色い花を咲かせます。花が咲けば、次はいよいよ収穫、みのりの予感が満ちてきます。きっと南瓜を植えた畑からも、城山が見えるのでしょう。城山は、町のシンボルとして、人々の生活をふところに抱いています。たくましく暮らしをつなぐ、城下町の活気が伝わる一句です。
(監修:神野)
2021.06.10 放送
今日、六月十日は時の記念日です。時間の大切さを広め、規則正しい生活を定着させるために制定されました。この時期は、時計のかたちをした時計草の花も咲くころですね。空ばかり見ている父母は、時間を贅沢に使っています。何をするでもなく、遠くを見つめる二人の姿に、家族として経てきた時間が思われます。
(監修:神野)
2021.06.09 放送
サンドイッチを作るときなどに、白い部分だけを使うため、パンの端を切ったのでしょう。切った耳は、使い道が難しいので、その場でぱくり。この句の季語は「涼しさ」です。暑い夏だからこそ、日陰や吹き抜ける風の涼しさが嬉しいものです。耳を切り離した白いパンは、たしかに涼しそう。涼しくはない耳をかじりながら、日常に季節を見つけました。
(監修:神野)
2021.06.08 放送
合歓は、六月から七月にかけて咲く、木の花です。薄紅色で、刷毛で掃いたような繊細な花を咲かせます。疲れのたまる一日の終わり、梅雨どきの湿った空気に、肌もなんとなく重たい感じがします。ふっと目をやれば、暮れてゆく空を背景に、美しい合歓の花を見つけました。一句の最後に置かれた季語が、疲労感をふんわりとやわらげます。
(監修:神野)
2021.06.07 放送
成長した稲穂が青々と風になびくさまを、青田波といいます。一面の青田のうねりを見ていると、まさに海の波のよう。次々に生まれる青田波に、ひとつとして引き返すものはありません。後戻りせず、どこまでも吹き抜けてゆく風が、青田波をはるかへ誘い、夏の深まりを予感させます。作者は新潟県在住、最新句集『風雪』の一句です。
(監修:神野)
2021.06.04 放送
漢字では水の馬と表記される「あめんぼう」。じつは体長2センチほどの昆虫で、三対の長い脚を広げて水に浮かび、すいすいと走り廻ります。時には群れをなして空中を飛ぶこともあるそうです。体から飴のような臭いがするので、あめんぼと呼ばれるようになりました。この句は、ひらがなだけを使って、あめんぼの生態を余すところなく描いています。
(監修:池内)
2021.06.03 放送
剣のように尖った緑色の葉の間から茎を伸ばし、紫色の優美な花を開くのが「あやめ」。白い花の「白あやめ」もあります。観賞用に庭などに栽培されるほか、草原に群れをなして自生している光景もよく見られます。この句は、咲き満ちたあやめに仲良く取り囲まれている二軒の農家。さて、どちらが本家で、どちらが分家なのでしょうか。
(監修:池内)
2021.06.02 放送
「青葉木菟」はフクロウ科の夏鳥で、青葉が茂るころに渡って来て産卵します。全長30センチほど、丸坊主のような頭と鋭い嘴が特徴です。神社の森などに済み着き、虫、蛙、小鳥などを捕えて食べます。夜、ホーホーと二声鳴く声が、青葉のころの木の暗がりによく響き合います。作者のお父さんも、よく響く声の持主なのでしょう。青葉木菟の声から、お父さんの呟く声を連想しています。
(監修:池内)
2021.06.01 放送
六月一日は全国の川で鮎漁が解禁されます。春に川を上ってきた鮎は、夏は川の深みで水苔などを食べています。それを友釣りや簗などで捕らえて料理します。鮎は見た目も美しく、独特の香りのよさから「香魚」とも呼ばれます。この句は、流れを遡る鮎の姿でしょうか。「すらりすらり」というオノマトペが、鮎の清楚で気品のある生態をみごとに描いています。
(監修:池内)
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