2022.04.29 放送
今日は昭和の日です。昭和天皇の誕生日として、昭和を顧み、国の将来を考える日とされています。魚拓とは、魚に墨を塗って紙をかぶせ、拓本にしたものです。写し取った魚の墨はてらてらと光り、鱗もなまなましく感じます。もし、昭和という時代を魚拓のように写し取ったなら、悲しみも喜びも、きっとまだまだ、なまなましく輝くのでしょう。
(監修:神野)
2022.04.28 放送
蝌蚪とは、おたまじゃくしのことです。卵から尾を振って飛び出すとき、同時におたまじゃくしの孤独も始まるのだと、哲学的に捉えました。たしかに、卵のときはひとつらなりにかたまって、ゆったり眠っていたのでしょう。孤独と隣り合わせの生へ、それでも躍り出る蝌蚪のたくましさに、人間もまた勇気をもらいます。
(監修:神野)
2022.04.27 放送
白詰草の花飾りといえば、春の野でほがらかに編むものです。ところが作者は、濁流に押し流される花飾りを見つけました。上流で誰かが手放したのでしょう。あるいは、私自身が濁流へ放ったのかもしれません。もみ合う濁りの中で清らかさを保つ白詰草に、命の尊さがきらめきます。松山市在住の作者の第一句集『炎夏』収録の一句です。
(監修:神野)
2022.04.26 放送
日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字と三つの文字がありますが、中でもひらがなはやわらかく幼い印象を与えます。ひらがなで書かれた手紙は、小さな子どもからのプレゼントでしょう。覚えたてのひらがなで一生懸命書いた言葉は、まるで春という季節のぬくもりそのもの。春風とともに、あたたかい気持ちがゆきわたります。
(監修:神野)
2022.04.25 放送
大会に初出場したチームが、なんと初優勝まで果たしました。人知れぬ努力を重ね、つかみ取った結果なのでしょう。「初」を重ねたテンポのよさに、勝ち進んだ勢いが生まれます。取り合わせた季語もフレッシュですね。チューリップの明るさがチームのすこやかさを、花の白が懸命に打ちこんだ一途さを感じさせます。
(監修:神野)
2022.04.22 放送
種は、籾種以外の、春蒔きの種類を指します。野菜や、穀類、草花の種です。いずれ芽生える種は、生命力に満ちています。その種を噛んでみたくなったのです。すると、昨日の緑色だったという不思議な句です。その色は、昨日の未熟な自分でもあるし、ひたむきな自分でもありました。なんだか胸がきゅんとなります。
(監修:谷)
2022.04.21 放送
作者は、和尚さんです。文字通り、坊主頭をしています。春帽子と坊主頭は、なんとなく気が合っている気がします。帽子を洗って干しながら、改めて坊主頭を自覚したのでしょうか。手で頭を触ったりしているような、ちょっと可笑しい一句です。檀家さんを回るときも被るのでしょうか。坊主頭が私たちにも親しく感じられます。
(監修:谷)
2022.04.20 放送
夕焼けは夏の季語ですが、春には空全体を桃色に染めるやさしい夕焼けが広がります。未来図は、未来の様子を描いた町の風景とも、自分の将来のこととも取れます。長引くコロナ禍で、私たちは将来が思い描いたようにはいかないことを、思い知らされました。この句は、未来図はいつだって描き直せるものだと、いってくれているようです。春の夕焼けが、その新しい決意をやさしく包んでくれています。
(監修:谷)
2022.04.19 放送
「まながひ」は、目の前とか、まのあたり、という意味です。草の上や芝生の上に寝ころんでみると、まるで目の前に落ちてくるように、空は思いのほか近く感じられます。噛むと甘い銀白色の若穂を抜いて、手でくるくる回しながら、春の空を眩しんでいるのでしょうか。今日4月19日は、現代俳句を先駆けた郷土の先人芝不器男の生誕日です。27才という若さで亡くなった彼の、青春の一こまです。
(監修:谷)
2022.04.18 放送
磯菜摘は、春の磯で食べられる海藻を採ることで、実用的でもあり春らしい遊びの一種です。以前、梅津寺の浜で見かけたことがありました。海辺の住人でしょうか、女性が海水に足を浸して黙々と摘んでいました。どこかで余震を感じる不穏な間にも、海に囲まれた日本の海岸では、あちらこちらで磯菜摘をしている。そんな長閑な光景に思いを馳せて作った一句です。
(監修:谷)
2022.04.15 放送
連日続くウクライナ侵攻のニュースには、産科病院の爆撃後に生まれた赤ちゃんや、地下シェルターで生まれた赤ちゃんたちの話題もありました。多くの死を目の当たりにする戦場に、新しく誕生する命もあります。太陽に輝くミモザの明るさが、未来の希望のともしびのよう。どうか生まれてくる子どもたちに、平和な地球を手渡せますように。
(監修:神野)
2022.04.14 放送
積まれた荷物を下ろす荷下ろしは、なかなか大変な作業です。そうして働く父のもとに、やさしい春風が吹いてきました。風の吹いてきた先には、ミモザの黄色い花の枝が、ゆさゆさと揺れています。風を形容する「やさし」というひとことに、父への愛情がこもります。
(監修:神野)
2022.04.13 放送
異国情緒をまとうミモザは、外国の素材と相性のよい花です。エイレネは、ギリシャ神話の、平和をつかさどる女神です。平和への祈りをこめて、ミモザの花を捧げるとき、空は真っ青に晴れわたっていました。ミモザの黄色と空の青の組み合わせは、ウクライナの国旗の色でもあります。一日も早く、平和が訪れることを祈ります。
(監修:神野)
2022.04.12 放送
パエリヤは、スペインの米料理です。平たい鉄鍋に魚介や野菜などの具材を炒め、米を加えて炊きます。色付けに使うサフランの黄色が、満開のミモザの花の黄色と、あざやかに呼び合いますね。出来立てのパエリヤがとっても美味しそう。これからきっとにぎやかに、食事が始まるのでしょう。
(監修:神野)
2022.04.11 放送
オーストラリア原産のミモザは、明治初期に日本に渡来しました。ミモザが黄色い花をわっと咲かせると、いよいよ春を実感します。ミモザの咲く頃は、年度替わりの時期でもあります。転勤が決まり、荷物を運び終えたあとの、空っぽの部屋。その窓には、ミモザの花が。黄色い花の明るさが、新生活へ背中を押します。
(監修:神野)
2022.04.08 放送
4月8日はお釈迦様の誕生日です。お寺では潅仏会といって、誕生日を祝う行事がおこなわれます。花をたっぷり飾るので、花祭りとも言われます。春爛漫の花祭りに、地域の子どもたちも、にぎやかに集まってきました。空は春の光に満ちて、よく輝いています。この平和な空がいつまでも続きますように。祝福に満ちた風景です。
(監修:神野)
2022.04.07 放送
まっさらな朝の空を、燕がまっすぐ滑ってゆくとき、私の中に潜む可能性が、強く光り出しました。私とは、いつかはこの世を去る有限の存在であると同時に、どんな未来だって想像できる無限の力も持っています。有限と無限、一見矛盾する二つの言葉を結び付け、今この瞬間を輝かせました。第23回俳句甲子園の優秀賞に選ばれた一句です。
(監修:神野)
2022.04.06 放送
粥腹とは、お粥を食べただけで、力の入らない状態を指します。お粥を食べたあとで花の種を蒔くとき、種は軽いので、気を抜くとかんたんに風に飛ばされてゆきます。体の重心がなんとなく定まらないのと、風にさらわれる花種の頼りなさとが、春のふわふわした感覚を伝えます。
(監修:神野)
2022.04.05 放送
一年を二十四の季節に分類する二十四節気、今日から「清明」です。すがすがしい風が吹き、万物がいきいきと輝く季節です。山椒は日本料理にも欠かせない食材で、木の芽も実もぴりりとさわやかです。春もたけなわの清明のころ、山椒も葉を広げはじめました。清らかな空気がたっぷりと広がる一句です。
(監修:神野)
2022.04.04 放送
4月4日は、あんぱんの日です。明治8年の今日、「木村屋總本店」が、明治天皇に「あんぱん」を献上しました。とはいえ「あんぱん」は、まだ季語ではありません。春の季語は「蛇穴を出づ」。冬眠から覚めた蛇も、穴から出てきます。生きもののあふれるにぎやかな春、あなたと私であんぱんを分け合う、軽やかな愛を描きました。
(監修:神野)
2022.04.01 放送
春、モンゴルや中国北部から大量の砂塵が偏西風に乗って日本にやって来ます。季語では「霾る」「霾ぐもり」といいます。霾ぐもりの彼方の沖を見晴るかすように建つ銅像の主は、子規の親友でもあった秋山真之。松山生まれで、日露戦争の日本海海賊を勝利に導いた名参謀として有名です。松山市梅津寺にあるこの像に出会ったことが、司馬遼太郎小説『坂の上の雲』を執筆する動機となったとも言われています。
(監修:池内)
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