2017年6月の俳句

  • こまごまと 大河の如く 蟻の列

    2017.06.30 放送

    作者:深見けん二

    女王蟻を中心に、雄蟻と生殖能力のない雌の働き蟻がいて、秩序ある社会生活を営んでいるのが「蟻」の世界。(蜜蜂にそっくりですね。蟻はハチ目アリ科の昆虫で、蜜蜂と同類なのです。)日に灼けた地面に働き蟻が列を作って、せっせと巣に餌を運ぶ姿は、まさに夏を感じさせます。作者は、長い蟻の列を大河のようだと見ています。

    (監修:池内)

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  • 隙間とは 油虫には非常口

    2017.06.29 放送

    作者:大久保白村

    ゴキブリ科の昆虫をひっくるめて「油虫」といいます。夏になると台所などに出没する嫌われものであり、食品を汚染し、病原菌を媒介する害虫です。貴重な木製のお椀を噛るので、御器噛りと呼ばれたのがゴキブリの語源だそうです。夜行性で狭い隙間に好んで潜り込みます。ちょっとした隙間は、油虫にとってはまさに非常口なのかもしれません。

    (監修:池内)

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  • 黴の書の 過去ことごとく 愛しかり

    2017.06.28 放送

    作者:安部和子

    菌類のうちで、茸以外のものをひっくるめて「黴」といいます。黴の中には酒や味噌、醤油などの素になる麹菌や、ペニシリンの青黴のような有益なものもありますが、多くは食物、衣服、書籍などに発生する嫌われものです。ことに梅雨どきは、黴のうっとうしい季節です。作者の蔵書の数々。生えている黴も、長く愛読している標しなのでしょう。

    (監修:池内)

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  • おつとどつこい 飼馬桶より羽抜鶏

    2017.06.27 放送

    作者:小笠原和男

    鳥類は、夏になると冬羽から夏羽へと抜け替わります。(人に身近な)鶏の場合、六月、七月ころに全身赤裸の「羽抜鶏」となり、鶏小屋には抜けた羽毛がびっしりと散らばっています。羽抜鶏は滑稽で愛嬌があり、どことなく哀れを誘います。飼馬桶から不意に現れた羽抜鶏。作者は「おっとどっこい」とばかりに、驚きと親しみをこめて見つめています。

    (監修:池内)

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  • くちなしの花の 終りの雨しづく

    2017.06.26 放送

    作者:今井肖子

    香りのよさではベスト5に数えられるのが「くちなしの花」。アカネ科の常緑低木で、この季節に六弁の香りのよい花を咲かせます。花は咲き始めは清らかな白で、しぼむ頃には薄い黄色に変色します。(八重咲きもありますが、清楚な一重の方が好まれるようです。)この句は、しぼみ始めながらも、雨雫とともに甘い香りを放っているくちなしの花です。

    (監修:池内)

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  • 夢の中で 夢を見てゐし 明易し 

    2017.06.23 放送

    作者:福神規子

    今日の松山の日の出は午前4時59分。今は一年で最も夜明けの早い、すなわち夜が最も短い季節です。このことを夜に重点を置くと「短夜」、夜明けに重点を置くと「明易し」といいます。いずれも、明け易い夏の夜を惜しむ心の感じられる季語です。この句、夢の中で夢を見ていたという措辞が、「明易」の季節感を巧みに表しています。

    (監修:池内)

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  • 魂のまだ残りゐる 蛇の衣

    2017.06.22 放送

    作者:川口襄

    蛇は成長して体が大きくなると、脱皮して抜け殻を残します。それが「蛇の衣」。蛇は脱皮を繰り返しながら大きくなってゆきます。これから梅雨明けにかけては、蛇の衣が目立つ季節です。蛇の衣を財布に入れておくと、お金が貯まるともいわれます。これは、脱皮したばかりの蛇の衣でしょうか。作者はまだ魂が残っているようだと感じています。

    (監修:池内)

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  • なだらかな 雲の流れの 夏至の天

    2017.06.21 放送

    作者:深谷雄大

    今日は二十四節気の「夏至」。一年でもっとも昼が長い日です。北半球では太陽が天のいちばん高い所にありますが、日本は梅雨の最中なので実際の日照時間は短いようです。この句は、ゆったりと流れる雲に覆われた夏至の日の空。曇ってはいても、日がなかなか暮れないのが、夏至の日の黄昏なのではないでしょうか?

    (監修:池内)

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  • 草矢など 戯れ打つも 旅の興

    2017.06.20 放送

    作者:平子公一

    芒、茅、葦などの葉を縦に裂いて、指にはさんで飛ばす遊びが「草矢」。青々とした長い葉を矢に見立て、大空に向かって高さを競ったり、水平に飛ばして飛距離を競ったりします。懐かしい子供の遊びですが、この句のように大人になっても、旅先などで童心に返って草矢を打ってみるのも、また一興かもしれません。

    (監修:池内)

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  • 鴎外の墓にも詣で 桜桃忌

    2017.06.19 放送

    作者:高橋龍

    6月19日は「桜桃忌」。作家、太宰治の命日です。青森県生まれの太宰は、戦後間もなく(『斜陽』『人間失格』『桜桃』などを発表し、)流行作家として活躍しましたが、昭和23年のきょう、愛人と東京の玉川上水に入水し、自ら命をたちました。太宰の墓がある三鷹市の禅林寺には森鴎外の墓もあります。桜桃忌に、明治と昭和の二人の大作家を偲んでいる作品です。

    (監修:池内)

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  • 日出づる國の赤なり ゆすらうめ

    2017.06.16 放送

    作者:大木孝子

    「ゆすらうめ」は、バラ科の落葉低木。春、梅に似た白や薄紅の花を咲かせます。六月頃に紅色に熟する直径一センチくらいの実は甘く、もの懐かしい味がします。「ゆすら」という名は、風に揺れやすいこと、枝を揺すって実を落とすことが由来です。「日出づる国の赤」という表現が、ゆすらうめの澄んだ紅色を端的に表しています。

    (監修:池内)

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  • 植えし田に しみじみと 雨降る日かな

    2017.06.15 放送

    作者:増田河郎子

    田植えが終わったばかりの田を「植田」あるいは「早苗田」ともいいます。水をたっぷりと張った田に、隅々まで整然と植えられた苗がすがすがしく感じられます。田の隅には束のままの余り苗が置かれています。そんな植田に降りしきる梅雨の雨。日本の農村ならではの、しみじみとした情感のあふれる光景です。

    (監修:池内)

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  • 公園の 日時計錆びぬ 濃紫陽花

    2017.06.14 放送

    作者:轡田幸子

    「紫陽花」は梅雨の花ともいわれ、梅雨に入るころ咲き始め、梅雨明けのころに咲き終わります。花の色ははじめは緑ですが、しだいに藍や薄紅に変化するので「七変化」とも呼ばれます。花びらのように見えるのは実は四枚の萼で、その中心に小さな花が一つずつあります。これは公園に咲いた紫陽花。古びた日時計を覆い隠すように咲き誇っています。

    (監修:池内)

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  • 子燕の 待ちくたぶれし 喉かな

    2017.06.13 放送

    作者:広渡敬雄

    燕は夏の間に二度産卵します。一度に五羽ほどずつ生まれる「子燕」は、それぞれ一番子、二番子と呼ばれます。子燕は親燕から餌をもらって成長し、やがて飛行の練習に励むようになります。これは家の軒にかけられた巣で親を待つ子燕。おなかを空かせてしまい、喉を大きく膨らませて餌を待っている姿が何とも愛らしいですね。

    (監修:池内)

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  • 掌の螢放つ もう逢ふこともない

    2017.06.12 放送

    作者:たむらちせい

    水のほとりを明滅しながら飛び交う「蛍」。日本には十数種類の蛍がいますが、いちばん大きいのは源氏蛍で、清流に多く見られます。やや小さい平家蛍は、池や沼などにいます。蛍の光は求愛の信号。まず雄が飛びながら明滅し、草むらの雌が答えると求愛成功です。やさしい作者は、捕えられて掌で明滅していた蛍を、名残を惜しみながら放っています。

    (監修:池内)

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  • あけがたの 雨がからまる 茄子の花

    2017.06.09 放送

    作者:鈴木八洲彦

    茄子紺という言葉のように、茄子はつややかで美しい色をしていますが、「茄子の花」は茄子紺を淡くしたような薄紫の味わい深い色の花です。夏から秋にかけて咲き続ける茄子の花は、一つの無駄もなく実を結ぶといわれます。明け方からまた振り出した雨粒が、花びらに宿っています。梅雨どきの茄子の花らしい風情です。

    (監修:池内)

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  • 青嵐 ますらを振りの樟欅

    2017.06.02 放送

    作者:成井侃

    緑の草や木をなびかせて吹く強い夏の風が「青嵐」です。この「青」は緑色のこと。この季節に吹く風はやや強い南風で、時には湿気を含んでいます。しかし「青嵐」という季語は、激しさの中にも明るく爽快なイメージをともなっています。この句は、そんな青嵐の中に堂々とした風格を見せている樟と欅の大木です。

    (監修:池内)

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  • 鮎の竿 蒼穹ふかく 投げ下ろす

    2017.06.01 放送

    作者:矢地由紀子

    六月一日は、ほぼ全国的に鮎漁解禁の日。(愛媛県内の川でも「鮎」が獲れ始めました。)春に川を上ってきた鮎は、夏には川の深みに居つきます。その鮎を、友釣りや鵜飼いなどの方法で捕えます。鮎は川魚の王者といわれ、夏料理の食材として貴重な存在です。これは鮎の縄張性を利用した友釣りの情景。青空へ大きく振りかぶった鮎の竿が印象的です。

    (監修:池内)

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