2021.07.29 放送
真夏の炎天下でも、木の下や家並に沿ってくっきりと日陰ができます。そんな「片蔭」で、私たちは一休みして汗を拭ったりします。この句は、片蔭に安置された六地蔵さん。見ると、涎掛けだけでなく、コロナ対策のマスクも着けられています。本来マスクは防寒や風邪の予防に使うもので、冬の季語です。季語を逸脱したともいえる「コロナマスク」という言葉に違和感がないのも、コロナ禍の世の中だからなのかもしれません。
(監修:池内)
2021.07.28 放送
梅雨が明けると、いろいろな種類の蝉が一斉に鳴き出します。蝉の声は、日本の夏を象徴するものの一つといえるかもしれません。「みんみん」はミーン、ミーンと繰り返し高い声で鳴く大型の蝉。深山蝉とも呼ばれます。この句は朝早くから鳴いているみんみん蝉でしょうか。朝の蝉の声は、日中と違って涼しく感じられます。遠くからのみんみんを聞きながら、たっぷりと朝寝している作者は、松山市にお住まいの俳人です。
(監修:池内)
2021.07.27 放送
夏は暑さをしのぐために、つい裸になってくつろぎたくなります。エアコンが普及したとはいえ、裸はやはり気分のいいもの。特に愛らしいのは幼い子どもの丸裸でしょう。俳句では「裸子」といいます。やはり上半身裸で、でんと座ったお父さんの胡坐の中へおさまっている幼子の姿です。裸子にとっては、玉座に座る王様の気分なのかもしれませんね。
(監修:池内)
2021.07.23 放送
夏といえば蝉の声です。昼間にわんわんと迫る蝉時雨も激しいですが、夜のしじまに一声、ぢぢぢと鳴くのも耳に残ります。夜更けの蟬の声を、あるいは感電した声ではないか、と捉えました。感電にたとえることで、いきなり声を上げる驚きや、刺激の強い声の質感が、鋭く突き刺さります。
(監修:神野)
2021.07.22 放送
一年を二十四の季節に分けた二十四節気、今日から「大暑」です。太陽もカッと照りつけ、暑さもいよいよ本番です。ペリカンは魚を食べているのでしょうか、のど袋に水を掬っては、嘴からきらきらと噛みこぼします。夏空の青さに、ペリカンの白い翼が、清らかに輝きます。
(監修:神野)
2021.07.21 放送
浴衣を着て、夏祭に出かけたのでしょう。にぎやかな屋台には、おいしそうな食べ物もいっぱい。たこ焼きや焼きそばなどを買って食べたので、歯に青海苔がついています。「ちょんと」のさりげなさがチャーミングですね。歯を見せて笑う明るい表情が、祭の夜の楽しさを物語ります。
(監修:神野)
2021.07.20 放送
青葉を茂らせる夏の蔦を、青蔦といいます。春にはういういしい芽を出す蔦も、夏になるとぐんぐん勢いを増し、家の壁や木々などを覆います。蔦の葉からは次々に新たな蔦の青葉が生まれ、どこまでも自己増殖してゆきます。照りつける夏の太陽の下、青蔦の侵食は、音なく静かに続きます。
(監修:神野)
2021.07.19 放送
今日から、夏の土用です。一年でもっとも蒸し暑い時期なので、力をつけるため、うなぎの蒲焼や泥鰌汁を食べる習慣があります。土用蜆もそのひとつ。産卵期を迎える土用の蜆は、身も大きく栄養たっぷりです。汁物の蜆を吸えば、チュッと応えたように感じました。軽妙な言葉が、人間と蜆との命の交歓を伝えます。
(監修:神野)
2021.07.16 放送
しっとり濡れた鉄の階段を、一歩、また一歩。昇りきって一気にひらけた視界には、大きな滝が、迫力いっぱいに轟いていました。鉄の階段を歩く硬質なひびきと、有機的な滝音とが、力強くぶつかり合います。夏の自然の大迫力に、我を忘れて立ち尽くす一句です。
(監修:神野)
2021.07.15 放送
大切な友人をなくした夏、やり場のない思いを抱え、滝の前にやってきました。かつて一緒に見た、思い出の滝なのかもしれません。持ってきたのは、亡き友から送られた手紙の束です。滝の前で読み返すのか、それとも手紙を抱きしめたまま滝を見つめ続けるのか。滝をこぼれる水のように、思いはあふれ続けます。
(監修:神野)
2021.07.14 放送
滝を抱く森は、生き物たちのゆりかごです。山には可憐な小鳥たちも生きています。滝へ向かって、一羽の鳥が、さっと飛んでいきました。その羽は小刻みに震えています。滝への畏れゆえでしょうか、それとも小鳥本来の繊細な飛び方なのでしょうか。震える命にやさしく目をとめ、丁寧に描写しました。
(監修:神野)
2021.07.13 放送
岩からどうどうと落ちてくる滝を前にすると、その圧倒的な迫力に言葉を失います。大きな滝であれば、なおさらです。ほとばしる飛沫も、まるで重力から解放されたかのように、自由に飛び散ります。見ている私の体も、軽くなってくるかのよう。無重力という言葉によって、地球規模で滝を感じる句となりました。
(監修:神野)
2021.07.12 放送
滝は年中見られますが、暑い夏にも涼しさが感じられることから、俳句では夏の季語となっています。涼を求めて山道を歩けば、滝の音が聞こえてきました。険しい道に設置されていたのは、ワイルドな丸太の手すり。すがれば、滝の気配にしっとりと湿っています。音や手触りといった感覚を通して、山の空気がたっぷりと伝わります。
(監修:神野)
2021.07.09 放送
「睡蓮」は水に浮かぶような姿で咲く花です。日中に花を開き、夕方には静かに閉じます。つまり夜は水の上で眠っている、というところから睡蓮と名付けられました。「未草」は日本に自生する睡蓮で、未の刻すなわち午後二時ごろ花を開くので、こう呼ばれています。この句は、ちょうど今ごろの咲き初めの睡蓮。水の底から伸びた茎が、まだ水面に達しない段階で早くも花が咲き初めています。
(監修:池内)
2021.07.08 放送
「金魚」は鑑賞用に鮒から作り出された変種で、16世紀の初めに中国から伝わったといわれます。色は、紅、白、黒など、さまざまな新種が作り出されています。呼び名も和金、琉金、出目金など多様です。金魚鉢の中をゆっくりと泳ぐ金魚は、何ともいえない涼しさを感じさせてくれます。作者は家族がみなお出掛けした時間を、金魚を眺めながらゆったりと過ごしています。
(監修:池内)
2021.07.07 放送
きょうは二十四節気の小暑。極暑、炎暑、溽暑などとも呼ばれる、真夏の暑さが最も厳しい季節を迎えました。日本の暑さは、ただ気温が高いだけでなく、湿度が加わって蒸し蒸しする暑さだといわれています。この句は、日本の暑さを影の長さという視覚でとらえたもの。真夏は太陽がほぼ真上にあるため、物の影は一年で最も短くなります。「縮み切つたる」の中七が、見た目にも暑さを感じさせます。
(監修:池内)
2021.07.06 放送
ビールは今や季節を問わず盛んに飲まれますが、よく冷えたのを一気に飲み干す快さは、やはり夏にこそふさわしい感じがします。特にさまざまな「缶ビール」が販売されることで、従来よりも手軽に飲めるようになりました。作者は長年病床にある奥さんの介護をしながら、家業に俳句に多忙な日常を送っている方。奥さんが眠りにつくのを見届けたあとの一本の缶ビールが、何よりの息抜きのようです。
(監修:池内)
2021.07.05 放送
「浴衣」は、もともとは入浴のときに着る湯帷子。湯上がりに素肌に着るものでした。やがて真夏の普段着や、ちょっとお洒落な外出着としても着られるようになりました。藍の香の漂う浴衣を、きりっと着こなした女性の姿は、見た目にも涼しげです。いわばバスタオルのような役割から、真夏のお洒落着にまで進化した浴衣の魅力を、しみじみと味わわせてくれる一句です。
(監修:池内)
2021.07.02 放送
夏至から十一日目の今日は、半夏生です。農業ではこのころまでに田植を終わらせる、季節の目安でした。植えた稲が、蛸の吸盤のようにしっかり根付くようにと、半夏生には蛸を食べる習慣があります。夕暮れのときを迎えた野山にも、まだ明るく日差しがゆきわたっています。草木もいきいきと茂る、夏の盛りです。
(監修:神野)
2021.07.01 放送
平成三十年の夏、西日本を大豪雨が襲い、愛媛にも甚大な被害が及びました。この句はその実体験を詠んだものです。吉田町にあった作者の自宅も、浸水の被害に遭いました。災害をもたらす雨も、悲しみの泪も、復旧作業で流す汗も、すべて水です。未曽有の災害を前に、悲しみと向き合い、前を向いて生きる姿が、「汗」という季語に託されました。
(監修:神野)
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