2022年5月の俳句

  • 夏蝶を 立たせてしまふ 靴の音

    2022.05.31 放送

    作者:久下晴美

    蝶といえば春の季語ですが、特に揚羽などの大きな蝶は、夏の太陽の下で大らかに飛び回ります。そんな夏蝶が、草花の陰や道端で、とまって休んでいたのでしょう。しかし、誰かが歩いてきました。その靴音に驚き、夏蝶はハッと飛び立ちます。小さな音にも反応する敏感なさまに、夏蝶の命の繊細さが伝わります。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 初恋と いふ名の薔薇を 接写せり

    2022.05.30 放送

    作者:平松うさぎ

    薔薇の美しい季節です。薔薇の種類は二万以上あるといわれ、花の形も色も千差万別です。中でも「初恋」という品種は、白い花の中心にわずかにピンクがさした、ういういしい花です。魅力的な名をもつ薔薇を見つけ、カメラを取り出しました。近づいて接写するとき、はるか初恋の記憶も、しずかに熱を帯びるでしょうか。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 自粛って ラムネの瓶の ガラス玉

    2022.05.27 放送

    作者:藤田敦子

    「自粛」という、それまでは身近には無かった言葉が、コロナ禍では私たちに重くのしかかりました。でも「自粛」が、ラムネの瓶のガラス玉のようだと思うと、その生活が静謐なもののように感じてきます。少しずつ日常がかえってきていますが、油断せず、瓶を出ないガラス玉の気分で、しばし遠くの世界を眺める日を送ります。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • あっ僕は あやまらないぞ あおばずく 

    2022.05.26 放送

    作者:おおさわほてる

    青葉木菟は、鳩くらいの大きさの鳥で、青葉の頃の夜にホーホーと鳴きます。この人、誰かと喧嘩したのでしょう。「僕はあやまらないぞ!」と口を尖らせたとき、応えるように青葉木菟が鳴いたのか。それとも青葉木菟に向かって言ったのかもしれません。すると「私だって、謝らないわよ!」と、ホーホーと鳴き返したのかも。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 父を呼ばねば 届かぬ高さ 朴の花

    2022.05.25 放送

    作者:水野真由美

    朴の花は、高木の朴に咲くおおきな花です。黄白色で馥郁とした香りを放ちます。この句の朴は、庭に植えているのでしょうか。子どもの頃の思い出が蘇ったのかもしれません。下から見上げただけでは我慢ならず、お父さんに来てほしくなったのです。抱き上げられて、さて朴の花に届いたでしょうか。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • トイピアノ 本気で弾くよ 青嵐

    2022.05.24 放送

    作者:秋月祐一

    青嵐は、青葉の頃に吹く、清爽で少し強い風です。トイピアノは、子ども向けのちっちゃなピアノですが、時に無限の可能性を開く楽器となりうる、と言われています。そのピアノを弾いているのは、子どもではなく大人。本気の高い音色に、窓の外の青葉が一緒になってきらめくようです。トイピアノを買って、弾きたくなります。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 朝顔は まだ二葉なり 二葉なり

    2022.05.23 放送

    作者:勝田宰洲

    芽を出したばかりの朝顔は、黒い種の殻をその先に付けていて、なんとも愛らしい姿。やがて殻は落ち、双葉はつやつやと輝きます。庭か、鉢植えに屈みこんで眺めているのでしょう。「二葉なり、二葉なり」のリフレインが、いかにもいとおしそうです。作者の宰洲は正岡子規の二年後輩で、俳句の手ほどきを受けました。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 小満の みるみる涙 湧く子かな

    2022.05.20 放送

    作者:山西雅子

    一年を二十四の季節に分けた二十四節気、明日から小満です。万物が成長し、命が満ちあふれてゆく時期とされています。何がきっかけだったのか、子どもの目からみるみる涙が湧いて、大粒になってこぼれました。子どもがもつ感情のゆたかさや、涙のみずみずしさが、小満という季節のフレッシュな勢いと呼応しています。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 坊つちやんスタジアム 麦秋の只中に

    2022.05.19 放送

    作者:杉原祐之

    松山中央公園内にある野球場は、松山を舞台にした夏目漱石の小説にちなみ「坊っちゃんスタジアム」と名づけられています。その周辺には麦畑が多く、初夏には熟れた麦の穂が、一面黄金色に輝きます。麦秋とは、麦にとっての実りの季節、つまりこの初夏の時期を指します。麦の穂を吹き渡るさわやかな風の中に、スタジアムもきらきらと輝きます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 雨太く 楝の花に 吹き込める

    2022.05.18 放送

    作者:森賀まり

    楝は、五月から六月に、淡い紫の小花を咲かせる木です。夏になり、雨の降り方もたくましくなってきました。楝の花が房をなして咲くところへ、雨が太く力強く降りこみます。夏の自然をまのあたりにした臨場感が、ゆたかに刻まれました。作者は愛媛県出身。最新句集『しみづあたたかをふくむ』収録の一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 平日の 涼しさに恋 はじまりぬ

    2022.05.17 放送

    作者:津高里永子

    涼しい季節といえば秋の印象が強いですが、実は「涼し」は夏の季語です。暑さの中だからこそ、涼しさも、いっそう心地よく尊く感じます。この句は涼しさの感覚を、平日の淡々とした気分と重ねました。特別な週末ではなく、何でもない平日に、ふと感じた心地よさから、恋を意識したのでしょう。熱い恋に疲れた大人の、涼しい恋の始まりです。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 天上は 皆息災か 田水張る

    2022.05.16 放送

    作者:竹本俊夫

    まだ土の状態の田んぼに水を引き入れる作業を「田水張る」といいます。田植えの準備をしながら、ふと、天に召された家族や友人を思い出しました。今も天上で元気にしているだろうかと、空を仰ぎ心を寄せます。代々引き継いできた田んぼに、今年も苗を植えます。亡き人とともにこれからを生きる姿勢に、過去のぬくもり、未来の光を感じます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 地雷なき国の青野を駆くる子ら

    2022.05.13 放送

    作者:加良太知(中華人民共和国)

    夏野の別名が「青野」です。青々と茂る野の色彩が、よりあざやかに迫って来ます。ほがらかに青野を駆ける子どもたちの姿は、まさに平和そのもの。もし野原に地雷が埋まっていたら、こんなに無防備に駆け回れないでしょう。地雷のある国の困難を思うとき、早く地球のどこの場所でも、子どもたちが安心して遊べる世界になってほしいと願います。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 祖父の畑 今は夏野に 風懐かし

    2022.05.12 放送

    作者:河辺秀稔(宇和島市)

    祖父が人生を通して耕し続けた畑も、後継者の問題などさまざまな事情があり、今はすっかり草が生え、夏野となっています。かつては祖父の畑だった夏野に立てば、吹いてくる風はどこか、懐かしいあの頃の匂いがしました。変わりゆくものもあれば、変わらないものもあります。不変の風のなつかしさに、過去の記憶が押し寄せます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • そつと来る そつと帰るよ 夏野の猫は

    2022.05.11 放送

    作者:高市加世子(松山市)

    夏野には、たくさんの生きものが訪れます。猫もまた、そっと夏野にやって来て、時がくればまた、そっと帰ってゆきます。575の最後が「夏野の猫は」とゆったり字余りしていることで、猫のゆるっとした動きがほのぼのと感じられます。夏野の犬、夏野の鴉、夏野の人間は、どんな風に夏野と関わるのでしょうね。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 剥きたての果皮を 夏野の螺旋とす

    2022.05.10 放送

    作者:ぐ(神奈川県)

    夏の野原でピクニックをしているのでしょうか。林檎などの果実をくるくると上手に剥けば、皮が螺旋状に連なります。作者は、その果物の皮を「夏野の螺旋」として捉えたい、と表明しました。螺旋があるなら、夏野の直線は強い日差し、曲線はそよぐ草なのかも。剝きたての皮が太陽にきらきらと光るとき、夏野に過ごす今この瞬間も、尊く輝きます。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 大夏野 私に翼 あれば舞ふ

    2022.05.09 放送

    作者:岡野未由子(宇和島市)

    夏のまぶしい光の中、青々と草がそよぐ野原を「夏野」といいます。夏野という言葉を見聞きするだけで、心は広々と解き放たれてゆきます。作者は、広い夏野で風に吹かれながら、もし私に翼があったなら、と想像しました。翼を広げ、風に乗って、空を軽やかに舞ってみたい。そんな想像をはたらかせたくなるほど、夏野の風は力強く爽やかなのでしょう。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 畑少し 持ちたる暮し 豆の飯

    2022.05.06 放送

    作者:竜人

    自宅の庭か、あるいは農地を借りた菜園でしょうか。退職をして、ささやかな自給自足を始める人も多いのかも。小さな畑を持つ夢を思い描きながら、勤め上げたのです。この句の豆の飯は、この季節には誰もが食べたくなる豌豆でしょう。莢から豆を取り出す作業もはかどります。炊きあがった白いご飯に、手塩にかけた豆の緑が輝きます。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • なかぞらに 竹の打ち合ふ音 立夏

    2022.05.05 放送

    作者:正木ゆう子

    今日は立夏です。暦の上では夏に入る日です。「リッカ」という言葉の明るい響きに、気持ちが高まる気がします。空に向かってすくすく伸びた竹が、風に吹かれて打ち合っている。カランカランと響くその音がまさに立夏だと、この人は感じました。竹林から垣間見える青空もまた、清々しい夏の色を湛え始めています。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 針穴に 通す絹糸 みどりの日

    2022.05.04 放送

    作者:松本秀一

    今日は「みどりの日」です。この日が作られたことで、3連休となりました。また、文字通りに、自然や緑を大切にする日という意味が込められてもいます。慎重に針穴に通す絹糸は、蚕の繭からとれる繊細な糸。日本刺繍を想像します。糸が、窓に映る新緑に染まって煌めくようです。作者は宇和島市三間町在住の銅版画家です。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 行く春の お好み焼きを 二度たたく

    2022.05.03 放送

    作者:松永典子

    「行く春」は、終わろうとする春を惜しむ気持ちのこもった季語です。そんな感傷的な気分で、お好み焼きを焼いています。最後はお決まりの、ヘラでぱんぱんと二度叩きます。自分にもちょっと気合を入れているようです。そして、今日は憲法記念日です。お好み焼きが作れる日常に感謝しつつ、日本の平和憲法の大切さをかみしめます。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 鶯に ひとりおくれて 朝餉かな

    2022.05.02 放送

    作者:西村泊春

    寝坊をしたのでしょうか。家族はもう、それぞれの活動をしている時分です。一人分の朝ごはんが残されている食卓に座ると、鶯に気づきました。がらんとした部屋で、その澄んだ声を聴いていると、ひとりの朝ごはんがとても贅沢なもののように感じます。作者の泊春は、富沢赤黄男、芝不器男と並んで「南予の青春三俳人」と呼ばれています。

    (監修:谷)

    音声で俳句を聞く/止める

テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

5月のお題「葉桜(はざくら)」の
応募は締め切りました

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

個人情報の取り扱いについて

頂いた個人情報は、優秀句に選ばれた方への事前連絡並びに記念品をお送りする際にのみ使用させて頂きます。

俳句の応募はこちら

メールアドレスからの応募: 応募先メールアドレス

ハガキからの応募:
〒790-8537 テレビ愛媛「きょうの俳句」係

すべての俳句を聞く
掲載されている句がランダムで再生されます
すべて聞く/止める

最新の俳句

バックナンバー

pagetop