2018年9月の俳句

  • オルゴールに 臓器ありけり 月清か

    2018.09.28 放送

    作者:荻野登理(愛光高校)

    今年の第21回俳句甲子園、優秀賞の一句です。オルゴールの機械の部分を、生きものの臓器になぞらえました。「臓器」というグロテスクな言葉によって、うつくしい音色を奏でるオルゴールが、妖しい輝きを放ちはじめます。「清か」とは、明るくはっきりとした様子のこと。あらゆるものの内部まで、透かして照らし出しそうな、秋の澄んだ月光です。

    (監修:神野)

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  • 栗飯の まつたき栗に めぐりあふ

    2018.09.27 放送

    作者:日野草城

    実りの秋、食卓に栗ごはんの並ぶ季節となりました。ほっこりと炊きあがった栗は、やわらかくて、しゃもじを入れるとほろりと崩れるほど。「まつたき」とは、完全な、という意味です。食べ進めると、椀の中に、ごろっと一粒、完全なかたちの栗を見つけました。「めぐりあふ」という運命的な言葉に、ささやかな喜びがあふれます。

    (監修:神野)

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  • 連ドラの終わり 夜長のモヤモヤ感

    2018.09.26 放送

    作者:栗田大愛(松山市)

    テレビの連続ドラマは、三か月で一クール、九月後半に完結するものが多いですね。みなさんはこの夏、どんなドラマを見ましたか?この句は、楽しみに追いかけてきたドラマの最終回がいまいち飲みこめなくて、後味がすっきりしないのです。秋の夜は長く、もやもやした気持ちも続きます。作者は中学生。等身大の言葉が輝きます。

    (監修:神野)

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  • 渡り鳥 船の枕に 陽の匂い

    2018.09.25 放送

    作者:相原左義長

    長い船旅の途中、眠ろうと枕に伏したとき、おひさまの匂いを感じました。きっと、甲板などの日向で、干したばかりの枕なのです。渡り鳥は秋の季語、あたたかい日本で冬を過ごすために、北方から海を渡ってくる鳥たちを指します。空を飛ぶ鳥も、私たち人間も、同じ旅人として、この海の上に生きているのですね。

    (監修:神野)

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  • 嶺聳ちて 秋分の闇に入る

    2018.09.24 放送

    作者:飯田龍太

    昨日は秋分の日でした。昼と夜の長さが等しくなるころで、これ以後は少しずつ、夜が長くなってゆきます。闇に着目したことで、夜の時間の印象が強まりますね。「嶺聳ちて」と、五七五の音節をまたがるリズムも、季節がなめらかに秋へと傾いていくさまを伝えてくれます。そびえる山ごと、世界が暮れてゆく、秋の夕べです。

    (監修:神野)

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  • ここまでが看取り ここから我が夜長

    2018.09.21 放送

    作者:蟇目良雨

    明後日は秋分、そして秋のお彼岸の中日です。秋分を過ぎると、夜は昼よりも長くなります。とくに秋の「夜長」をしみじみと感じるのは夜の更けるころです。作者は、長く病床にある奥さんの介護に明け暮れています。そんな秋の夜更け、ようやく眠りについた奥さんを見守りながら、さあこれからの夜長を、自分の時間として読書や句作りに集中しようと奮い立っています。

    (監修:池内)

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  • 竹伐つて 倒れるまでの 一呼吸

    2018.09.20 放送

    作者:高橋将夫

    昔から「竹八月に木六月」といわれ、竹は旧暦八月ごろに伐るものとされています。秋は竹が勢いよく伸びる季節。春に筍を育んだ親竹もすっかり元気を回復し、伐り時を迎えます。という訳で「竹伐る」は秋の季語です。これは竹のことを知り尽くした、ベテランの伐り手なのでしょう。竹の倒れる空間や方向などを見極めながら、鉈を振るっています。

    (監修:池内)

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  • 手庇に 伊予が見えるよ 獺祭忌

    2018.09.19 放送

    作者:岩岡中正

    今日九月十九日は子規忌。「獺祭忌」ともいいます。明治三十五年のこの日、子規は35年の生涯を閉じました。子規は俳句と短歌の改革者であると同時に、文章日本語の改革者でもありました。今に続く新しい日本語の文体は子規の病床での口述筆記から生まれたと考えられます。作者は熊本の方。掌を額にかざし、九州から伊予を見ながら子規の業績を偲んでいます。

    (監修:池内)

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  • 子規庵といへど 鶏頭多過ぎる

    2018.09.18 放送

    作者:森田純一郎

    「鶏頭」はヒユ科の一年草で、花の色は赤、橙、黄、白などがあります。子規は鶏頭が好きでしたが、この句も東京・根岸の子規庵の風景でしょう。作者の念頭には子規の<鶏頭の十四五本もありぬべし>があり、それに比べて現在の子規庵は鶏頭が多過ぎると感じているようです。明日は九月十九日。正岡子規の命日・子規忌です。

    (監修:池内)

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  • 鍬使ふ時がやすらぎ 敬老日

    2018.09.17 放送

    作者:山下美典

    今日は九月の第三月曜日で「敬老の日」。俳句では「敬老日」「老人の日」ともいいます。高齢者を敬い、福祉に関心を高めようという国民の祝日です。長寿を祝ったり、高齢者に感謝する行事も行われます。作者は今年満90歳を迎える方。そんな行事などよりも、畑仕事こそが何よりの生き甲斐と、今日も元気に鍬を振るっておられます。

    (監修:池内)

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  • 月とブドウ なにもないけど くしゃみした

    2018.09.14 放送

    作者:和田萌花(内子町)

    月と葡萄だけがある秋の夜長に、その静寂を一瞬崩す、くしゃみをひとつ。風邪でもなく、噂をされたわけでもなく、ただ無意味なくしゃみなのです。月があり葡萄があることも、私が今ここに生きていることも、本当は意味などないのかもしれません。すべてのものは、存在するだけで価値がある、そんなメッセージまで読み取りたくなる、新感覚の俳句です。

    (監修:神野)

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  • 月背負って発つ ボランティア休暇の子

    2018.09.13 放送

    作者:竹本桂子(久万高原町)

    ボランティア休暇とは、企業が従業員のボランティア活動を奨励するため、有給休暇を認める制度です。豪雨や地震の被災地では、ボランティアの力が欠かせません。困っている人たちのために、休暇をとって手伝おうとする若者たち。その頼もしさを、月を背負って出発するという力強い表現で、堂々と描き出しました。

    (監修:神野)

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  • 月光の きびしくなりぬ 下り鮎

    2018.09.12 放送

    作者:岩渕晃三(松山市)

    秋になると、鮎は産卵のために、上流を離れ、川を下ります。これが落鮎、別名「下り鮎」といい、秋の季語になっています。同じく秋の季語として、さえざえと照る月の光を受けながら、水面が、鮎の背びれが、銀色に輝きます。産卵を終えた鮎には、死が待っています。そのきびしい運命を、月光の鋭い輝きが、物語っているようです。

    (監修:神野)

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  • カーテンが 鉄条網に なる月夜

    2018.09.11 放送

    作者:松本伴子(松前町)

    カーテンというやわらかい布を、硬く鋭い鉄条網に見立てた意外性が、胸をざわつかせます。鉄条網は、侵入禁止区域を守るために張りめぐらせた有刺鉄線のこと。差し込む月光をカーテンでさえぎり、外界と自分とをシャットダウンして、ナイーブな心を守ろうとする、そんな必死の心理状態が透けてみえる一句です。

    (監修:神野)

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  • 夕月夜 コンクリートの やはらかし

    2018.09.10 放送

    作者:向井桐華(松山市)

    まだ流し込んだばかりのやわらかいコンクリートが、乾くのを待っているうちに、世界はだんだん暮れてゆきます。夕方の空は、すでに月の出。淡くはかない夕月の光が、無機質なコンクリートの肌を、うつくしく照らします。夕月夜という、美意識をまとった季語を合わせることで、現代の風景にひそむ、新たな美を引き出しました。

    (監修:神野)

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  • 一人ゆく この道が好き 草の花

    2018.09.07 放送

    作者:山田貴世

    植物を限定せず、秋に咲くいろいろの草花を「草の花」といいます。秋草のうちの花をつけているものの全てで、多くは野に咲く花です。中には華やかなものもありますが、大方は地味で可憐な花。それこそが、草の花の風情といえるかもしれません。これは作者のお気に入りの散歩コースでしょうか。草の花の咲く道を一人で歩くのがお好きなようです。

    (監修:池内)

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  • 花よりも 日のあるところ 秋の蝶

    2018.09.06 放送

    作者:棚山波朗

    単に蝶といえば春の季語。夏には揚羽蝶など大形で色鮮やかな蝶が見られます。「秋の蝶」は、蜆蝶など地味な色合いのものが多く、秋の気配の深まる中で、どこか力なく飛ぶ姿には秋ならではの風情があります。この句は花の上ではなく、よく日のあたる場所にとまって、翅を休めている秋の蝶。どこか哀れさを感じさせる姿です。

    (監修:池内)

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  • 日本に 広き天あり 鰯雲

    2018.09.05 放送

    作者:塩川雄三

    高い空に小さな雲が密集し、さざ波のようにも見えるのが「鰯雲」。鰯が群れてるように見えるからとも、この雲が出ると鰯がよくとれるからともいわれます。気象学では巻積雲といいます。日本は小さな島国ではなく、北海道から南西諸島まで長大に連なり、その上に広がる天空はまことに広々としています。そんな日本の空に見る鰯雲を詠んだ一句です。

    (監修:池内)

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  • 母留守の 盥に浮かぶ 桃ふたつ

    2018.09.04 放送

    作者:高室有子

    秋の初めごろ出回る「桃」は、味も姿も甘美な果物です。奈良時代から栽培され、中国の思想の影響で日本でも邪気を払う力のある果物とされています。特に晩生種の白桃は、滴るばかりの果汁と柔らかく甘い果肉で人気があり、よく冷やすといっそうおいしいものです。お母さんはお出かけの前に、子供たちのために二つの桃を盥の水に冷やしておいたのでしょう。

    (監修:池内)

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  • 稲の花 日はいつはりもなく満ちて

    2018.09.03 放送

    作者:森川光郎

    秋の初め、稲はいっせいに花を開きます。まだ緑色のまっすぐな穂先に、粉をまぶしたように咲く小さな白い花は、目立ちませんが甘い香りがします。「稲の花」は晴れた日の午前中に開花し、昼前には受粉が終ります。花粉の寿命はわずか二、三分だといいます。稲の開花と受粉という初秋の午前中のドラマを、太陽もやさしく見守っているようです。

    (監修:池内)

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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
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