2017.08.31 放送
「赤とんぼ」と呼ばれる体の赤い蜻蛉には、いくつかの種類がありますが、日本にいる代表的なのは「秋茜」です。秋茜は六月ごろ、水辺で羽化し、高い山へ移動して夏を過ごします。涼しくなり始めるこの季節には、赤くなってもとの平地へ降りてきます。作者が今年初めて見た赤蜻蛉は、お寺の三重の塔にとどかないくらいの、低空を飛んでいます。
(監修:池内)
2017.08.30 放送
残暑の続く中で、目から秋の訪れを感じさせてくれるのが「木槿の花」。アオイ科の落葉低木で種類も多く、庭などによく植えらています。花は朝開いて、夕べには萎んでしまうので<槿花一朝の夢>と、はかないものの喩えにもなっています。真夏に比べてかなり早くなった日の入り。日が沈む頃には、木槿の花も萎み、やがて落ちてゆきます。
(監修:池内)
2017.08.28 放送
宇宙塵と呼ばれる物質が地球の大気圏に飛び込んで、摩擦で光を発する現象が「流星」。特に秋は大気が澄んでいて多く見られます。(八月のペルセウス座流星群、十月のオリオン座流星群などが知られています。)都会を離れて、夜空の澄んだ旅先で見る流星群はとりわけ印象深いもの。作者は、流星を見るためにも旅に出るべきだとお考えのようです。
(監修:池内)
2017.08.25 放送
天文学者のガリレオ・ガリレイは「数学は神様が書いた、世界の設計図だ」といいました。数式は、闇を照らし出す光のように、世界の構造を明らかにします。真っ白な百合も、夏の日差しを浴びて、まるで光そのもの。美しさとは何かという問いに答える、哲学的な一句です。
(監修:神野)
2017.08.24 放送
心中を選ぶほど思いつめていたのに、いざ満天の星空を仰ぐと、なんだかどうでもよくなったのです。生きる道を選びなおした瞳に、銀河は惜しみなく輝きます。人を愛すること、生まれて死ぬということ、自然の中で生きること…大切なテーマが詰まった、青春の一句です。
(監修:神野)
2017.08.23 放送
蟷螂・かまきりは、危険を感じると、体を伏せて警戒します。突っ伏した体の下に隠れて、最大の武器である鎌が見えません。「見えず」と否定形を使ったことで、かえって、鎌の存在感が強まりました。かまきりのリアルな緊張感を、言葉で正確にデッサンした一句です。
(監修:神野)
2017.08.22 放送
誰しも、心の中に忘れられない思い出があります。作者は、水もまた、あの日そばに咲いた百合のことを一途に記憶しているのだ、と想像しました。百合は、姿も立派で香りも強い花です。つぼみだった百合が花ひらくとき、人間も、百合を映す水面も、その美しさに心奪われるさまが表現されました。
(監修:神野)
2017.08.21 放送
今年の俳句甲子園の最優秀賞に選ばれた俳句です。旅人が、空ゆく雲を仰ぎつつ、秋の花野を歩いてゆきます。(歌人の西行も俳人の松尾芭蕉も、旅を愛し旅に生きました。)いつの時代も旅人は、雲に追い抜かれ雄大な自然に圧倒されながら、新しい言葉を求め、遥か彼方を目指します。旅という大きなテーマを、正面から詠んだ普遍性が評価されました。
(監修:神野)
2017.08.18 放送
青々としていた桐の葉が、風に誘われるようにふわりと落ちる風情に、秋の訪れを感じる。古くは中国の唐の時代の詩にも詠まれた伝統的な情趣が、俳句では「一葉落つ」「桐一葉」という季語として定着しました。この句は、「ゆつくりと落ちて来るなり」という素直な表現に、桐の葉の大きさや色まで見えて来るような気がします。
(監修:池内)
2017.08.17 放送
俳句では、単に「涼し」といえば夏の暑さの中で感じる涼しさのことです。これに対し、立秋を過ぎてから感じる、夏とは違うしみじみとした涼しさを「新涼」「涼新た」といいます。厳しい夏が過ぎて、やっと秋が来たという安堵の思いも込められた季語です。野川の流れに漬けて洗われる鍬にも、新涼の季節らしい風情の見える一句です。
(監修:池内)
2017.08.16 放送
きょうはお盆の送り火の日です。この世に戻って来ていた先祖の霊を、彼岸へ送るために焚くのが「送り火」。家の門前で芋殻などを焚き、精霊が帰るための道筋を照らすものです。作者は、迎え火も送り火も、お子さんと二人だけでひっそりと焚いています。寂しさの中にも、しみじみとした情趣の感じられる盂蘭盆の情景です。
(監修:池内)
2017.08.15 放送
8月15日は日本が無条件降伏し、第二次世界大戦が終わった日。72年前のあの日、戦争が終わったというより日本は負けたのだ、ということを忘れまいという思いのあふれる一句です。(あたかも天の川の美しく輝き始める頃。)敢えて「天の川」を季語とすることで、日本の8月15日を鮮やかに浮かび上がらせています。作者は松山市にお住まいの俳人です。
(監修:池内)
2017.08.14 放送
俳句では「踊」といえば「盆踊」のこと。あの世から帰ってくる先祖の霊を慰めるために、この世の者が集まって踊る盆の供養です。地域により様々な唄や踊りの振りが伝わっていますが、徳島の阿波踊りなどは、いまや一大観光行事となっています。これは静かな村の盆踊でしょう。踊子とともに行きつ戻りつしているのは、ご先祖の影かもしれません。
(監修:池内)
2017.08.11 放送
あさってから月遅れのお盆です。盆は正月と並ぶ大事な年中行事で、その用意にもしきたりがあります。「盆用意」はお墓の掃除や盆道の草刈り、さらには仏壇の清掃や精霊棚の準備など多岐にわたります。山里にお住まいの作者は、お盆を前に仏間を開け放って山からの風を入れながら、諸々の盆用意に精を出しています。
(監修:池内)
2017.08.10 放送
お墓参りは季節を問わず行われますが、季語となっているのはお盆の「墓参り」です。まず先祖の墓を洗い、墓への道を清掃することから、「墓洗ふ」も秋の季語です。作者はお父さんの眠る墓を洗いながら、何かにつけてお父さんに厳しく叱られたことを懐かしんでいます。なろうことなら、もう一度叱られたい、などと考えているのかもしれません。
(監修:池内)
2017.08.09 放送
芙蓉はアオイ科の落葉低木で、朝開いた花は夕方には萎んでしまいます。花の色は白、薄紅などがあります。「酔芙蓉」は朝の咲き始めは白く、午後にはピンクに染まり、夕方にはさらに赤くなります。美女が酒に酔った姿を連想させるような名前ですね。まだ真っ白な花が、時間とともにだんだん濃い色に染まって行くことを予見している一句です。
(監修:池内)
2017.08.08 放送
黒みを帯びた褐色の体に透明な翅を持っている蝉が「蜩」。(森や林に多くいて、)明け方や夕暮れにカナカナカナと澄んだ美しい声で鳴きます。梅雨のころから鳴き始めますが、声の音色に秋の情趣を感じて、秋の蝉とされています。お盆休みに帰ったのでしょうか。久々のふるさとで聞く蜩の声は、帰ってきた甲斐があったと思わせるものでした。
(監修:池内)
2017.08.07 放送
今日は、二十四節気の「立秋」。まだ厳しい暑さの中にも、忍び寄る秋の気配が感じられる頃です。季語では「今朝の秋」「秋立つ」といいます。大きくうねる男波のように湧き上がる夏の雲に対し、低くおだやかな女波を思わせるのが秋の雲。そんな女波のような形の雲の動きに、作者は秋のきざしを見ているようです。
(監修:池内)
2017.08.04 放送
八月四日は「夕爾忌」。俳人木下夕爾の命日です。夕爾は広島県福山市生まれ。若くして詩人として世に出、戦後久保田万太郎に師事し、詩情豊かな句で注目されましたが、昭和40年、50歳で亡くなりました。秋近しを思わせる雲の流れに、敬愛する夕爾を偲んでいる一句。作者は松山市にお住いの俳人です。
(監修:池内)
2017.08.03 放送
晩夏、日中はまだ猛烈に暑いのに、夜になると、どこからか秋の兆しが漂ってきます。これが「夜の秋」。夏の夜に感じられる秋の気配という意味で、秋の夜ではありません。ようやく夏も峠を越えた、という安堵の気持ちも感じられる季語です。これは、丁寧に縒った紙縒の会心の出来栄えが、夜の秋らしい気分を感じさせる作品です。
(監修:池内)
2017.08.02 放送
「晩夏」は文字どおり夏の終わりを表す季語です。まだ厳しい暑さの中にも、秋のきざしが感じられる頃であり、私たちの暮らしの中には、夏の疲れや倦怠感がただよう季節です。そんな晩夏に伊予路を訪れた作者は、伊予の人々のゆったりとした話し方に、この地の晩夏らしい風情を感じとっています。
(監修:池内)
2017.08.01 放送
夏は日が西に傾いてからの日差しが特に強烈で、いつまでも沈まずに強い光線を送り続けてきます。「西日」が夏の季語となっているのはそのためです。家の西側の窓には西日をさえぎるための葭簀などが欠かせません。これは、ゆっくりと走る鈍行列車に差しこむ西日。この時間帯はどの座席にいても、強い西日から逃れることはできないようです。
(監修:池内)
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