2017年3月の俳句

  • 花を訪ふ 朝一番の 仕事なり

    2017.03.31 放送

    作者:高田正子

    今年も本格的な桜の季節がめぐってきました。桜は花のなかの花。俳句では「花」というだけで、桜を指します。花見といえば、桜の花を見にゆくことです。桜は、花のなかで最も華やかな存在であり、日本の四季の花すべての代表でもあるのです。作者は、今が盛りの「花」を見にゆくことこそ、朝一番の大切な仕事だと考えています。

    (監修:池内)

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  • 帰るとは また来ることや 鳥雲に

    2017.03.30 放送

    作者:小西昭夫

    日本で越冬し、春に北の繁殖地へ帰って行く渡り鳥が、雲にまぎれて見えなくなる様子を「烏雲に」といいます。鳥たちを見送り、名残を惜しむ心の感じられる季語です。渡り鳥たちは、毎年こうしてはるばる日本と北方を往復しています。今帰った鳥たちは、秋にはまたやって来るはずです。作者は松山市にお住まいの俳人。「子規新報」編集長です。

    (監修:池内)

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  • 踏青の諸手は 手ぶらなるが良し

    2017.03.29 放送

    作者:古賀雪江

    春、芽生えた青草を踏みながら、野原で遊ぶのが「踏青」。旧暦三月三日に行われる、中国の宗教的な風習が日本に伝わり、訓読みで「青き踏む」としても季語に用いられます。日本では、ピクニックのような行楽として親しまれます。春の野原に豊富な、芹、蓬、土筆などの摘草を楽しむためにも、踏青は手ぶらで行くのが良い、と作者は明言しています。

    (監修:池内)

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  • 挿木して 己が余生を 思ひをり

    2017.03.28 放送

    作者:大串章

    木の枝を切って、じかに土に挿して根を生えさせて苗木を作るのが「挿木」。挿す枝をよく「挿穗」といいます。葡萄、茶の木などによく行われる繁殖法で、彼岸前後から八十八夜頃までに行うのがよいといわれます。作者は何の木を挿木したのでしょうか。挿木をしながら、この木が成長するまで自分は生きられるだろうか、などと考えているようです。

    (監修:池内)

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  • あたたかや 会釈返して 名を知らず

    2017.03.27 放送

    作者:ながさく清江

    春に「暖か」と感じるのは、気温が15度ぐらいになった時だといわれます。春が来た喜びをいう挨拶が「暖かくなりましたね」であるように、「暖か」は春を表す代表的な季語です。すれ違いながら会釈を交わし、行き過ぎてから名を知らない人であることに気がきました。こうした心理的な暖かさを含んでいるのが、「暖か」という季語なのです。

    (監修:池内)

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  • 老木の 根方に噴いて 初ざくら

    2017.03.23 放送

    作者:西嶋あさ子

    春、初めて咲いた桜の花を「初桜」あるいは「初花」といいます。この季語には、桜の開花を待ち焦がれ、待ちに待った花にめぐりあえた、日本人ならではの心情がこめられています。この句の初桜は、老木の根本のあたりから噴き出るように一輪咲いたもの。桜の木の生命力とともに、意外な位置に初桜を見つけた作者の喜びも伝わってきます。

    (監修:池内)

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  • 蛇穴を出て 長過ぎる身と思ふ

    2017.03.22 放送

    作者:福井隆子

    地中で冬眠していた蛇は、三月下旬頃になると地上に姿を現します。俳句では「蛇穴出る」といいます。穴から出初めは動作も鈍く、とぐろを巻いていますが、やがて蛙や鼠などの餌を求めて活発に動き始めます。これは、穴を出たばかりの蛇。まだのろのろとした動きをしながら、身が長過ぎて動くのに不自由だ、と思っているのかもしれませんね。

    (監修:池内)

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  • 逃水を 追ひゆくごとし 遍路ゆく

    2017.03.21 放送

    作者:松林朝蒼

    弘法大師が巡られたという四国八十八か所を巡拝する「遍路」は、徒歩だと40日もかかる大旅行です。春は、遍路笠と白装束を身にまとい金剛杖を持つお遍路さんによく出会う季節です。「逃水」とは、道に見えた水溜りが近づくと消えてしまう、一種の蜃気楼。逃水を追いながら歩いているようだ、というのがいかにもお遍路さんらしいですね。

    (監修:池内)

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  • 閼伽桶に 水たっぷりと お中日

    2017.03.20 放送

    作者:長尾光風

    きょうは春分の日でお彼岸の中日。この句のように「お中日」ともいいます。春分には太陽が真西沈むので、仏教でいう西方浄土と結びつき、彼岸の法要が営まれるようになりました。きょうは、お墓参りをされた方も多いのではないでしょうか。水をたっぷりと入れた閼伽桶を手に先祖の墓へと歩む人。お中日らしい、うららかな気分の感じられる一句です。

    (監修:池内)

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  • つばめ来る 駅に改訂時刻表

    2017.03.16 放送

    作者:田辺レイ

    そろそろ燕がやって来る季節です。その春、初めて姿を見せる燕をいう季語が「初燕」あるいは「燕来る」。南方から飛んできた燕は、家の軒先などの巣で子育てをし、秋にはまた南へ帰って行きます。「燕来る」は、益鳥でもある愛らしい燕を歓迎する心の感じられる季語です。これは駅に巣を作っている燕でしょう。燕の来る季節は、列車の時刻表が改訂される時期でもあるようです。

    (監修:池内)

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  • おくつきに 隣れる田より 打ちはじむ

    2017.03.15 放送

    作者:黛執

    稲刈りの済んだあと、静かに冬を越していた田を、ふたたび田植えができるように打ち返す作業を「田打」あるいは「田返し」といいます。耕耘機の普及で作業は楽になりましたが、機械の入らない棚田などでは、今も人が鍬を振るって土を起こし砕く作業が行われています。作者は、奥津城すなわち先祖のお墓に隣接している田から、田打ちの作業を始めています。

    (監修:池内)

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  • 蜷の道 力を抜きて 曲がりけり

    2017.03.14 放送

    作者:浅井陽子

    蜷は細長い巻貝で、長さ3センチほど。俳句によく詠まれるのは、川や池、水田などに棲む川蜷です。川蜷は春になると動きが活発になり池や川の底を這いまわります。這った跡が道のようにはっきりと見えることから、「蜷の道」という季語が生まれました。この蜷の道、曲がり角がゆるやかなのは、曲がるときに蜷が力を抜いていたせいのようです。

    (監修:池内)

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  • 風よりも 低く膝つき 摘む土筆

    2017.03.13 放送

    作者:山元志津香

    春の野に顔を出す「土筆」は、杉菜の胞子茎。愛媛での「ほうしこ」という呼び名も、そこから来ているのでしょう。蕨とともに春の摘草として人気があります。摘んだ土筆は袴をとって茹で、煮物や和物にして味わいます。まだ少し風の野に出て土筆を摘む人。「風よりも低く膝つき」という上五中七の表現によって、土筆摘みの季節感が如実に描かれた一句です。

    (監修:池内)

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  • 初蝶は 茶色でしたよ 虚子先生

    2017.03.10 放送

    作者:大久保白村

    その年の春に、はじめて見かける蝶を「初蝶」といいます。種類は問いませんが、紋白蝶や紋黄蝶などの淡い色であることが多いようです。高浜虚子に<初蝶来何色と問ふ黄と答ふ>という有名な句があります。虚子一門の俳人でもある作者は、「虚子先生、私が見た初蝶は先生がご覧になったのとは違って、茶色でしたよ」と天国の虚子に語りかけています。

    (監修:池内)

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  • この家の みなとのやうな 春炬燵

    2017.03.09 放送

    作者:大島雄作

    春になっても、まだしまわずに使われている炬燵を「春炬燵」といいます。昼間は暖かくても、朝晩は冷えることもあるので、手足を温めるのに便利です。春炬燵には冬場とは違う、どこかもの憂いような雰囲気も感じられます.家族が頻繁に出たり入ったりする春炬燵を、作者はまるで色々な船が出入りする港のようだと見立てています。

    (監修:池内)

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  • 春泥の 雀の足に 乾きゐる

    2017.03.08 放送

    作者:西山睦

    春雨や凍解け、雪解けなどでできたぬかるみが「春泥」。舗装されてない道路や、公園などの人の通る道で見られます。人々が歩くのに難儀するいっぽう、子供たちはわざわざぬかるみに踏み込んで遊んだりします。春ならではの季節感の一つでもある春泥。この句は、ぬかるみに降りて餌をあさる雀の足についた春泥を、クローズ・アップしています。

    (監修:池内)

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  • 正座とは かくのごとしや 落椿

    2017.03.07 放送

    作者:青柳志解樹

    早春を彩る椿は『万葉集』の昔から日本人に愛されてきた木の花。椿は花びらが散るのではなく、花がまるごとポトリと落ちるのが特徴です。その風情を愛でる季語が「落椿」。落花が地面に立てる音も、椿ならではの情緒です。この句は、地面に落ちた椿の姿に注目しています。次々に落ちた椿の花は、まるで正座している人のように、整然と居並んでいます。

    (監修:池内)

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  • 彩さきに 出でてうろうろ 地虫出づ

    2017.03.06 放送

    作者:田中水桜

    きのうは二十四節気の「啓蟄」でした。啓蟄とは地中に冬眠していた虫が穴から出てくること。つまり「地虫出づ」は、啓蟄と同じ意味の季語なのです。地虫とはコガネムシ科の幼虫ですが、俳句では蟻などこの季節に這い出すあらゆる地中の虫を指します。這い出すとまず色彩が目につき、地面をうろうろしている虫とは、一体どんな虫なのでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 雛の目の みなまつすぐに 笑みたまふ

    2017.03.03 放送

    作者:宮田勝

    三月三日は雛祭。愛媛では月遅れの地方もありますが、今日は全国的に雛人形が飾られています。桃の節句と呼ぶには、やはり旧暦か月遅れの方がぴったりかもしれません。この句は、飾られている雛人形の視線に注目しています。こう言われてみると、内裏雛も、三人官女も、五人囃も、お雛さまはみな正面を見て微笑んでいることに気付かされますね。

    (監修:池内)

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  • 古沼の 水照り止まず 揚雲雀

    2017.03.02 放送

    作者:水見壽男

    野原や麦畑に巣を作る雲雀は、最も親しまれている春の小鳥。羽の色は地味な褐色で斑があります。繁殖期に縄張宣言をするために、雄はピーチュル、ピーチュルと盛んに囀りながら空高く舞い上がります。これを「揚雲雀」といいます。上空でしばらく囀ると、今度は一直線に降りてきます。これが落雲雀。この句の雲雀は、日当たりのよい古沼のほとりから、勢いよく舞い上がりました。

    (監修:池内)

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  • 山笑ふ 雲も笑つて 通りけり

    2017.03.01 放送

    作者:大串章

    春になって木々が芽吹き、明るい日に照らされている山の姿を、朗らかに笑っている人の姿になぞらえたのが「山笑ふ」という季語です。中国北宋時代の画家が四季の山の姿を表現した言葉によるもので、夏は「山滴る」、秋は「山粧ふ」、冬は「山眠る」となります。笑う山の上を流れる雲も引き込まれて、ともに笑っているようです。

    (監修:池内)

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