2020年3月の俳句

  • 現世の 恩讐を越え 青き踏む

    2020.03.31 放送

    作者:守屋明俊

    春、野山に出かけて青々と芽生えた草を踏みながら遊ぶのが「踏青」。俳句では「青き踏む」ともいいます。もとは中国の古くからの風習で、初めは禊のような行事だったものが、後に酒盛りをしながら野遊びを楽しむ行楽へと変化したといわれています。この日ばかりは、世の中の厳しい現実から一切解放されたように、春の日を浴びながら野遊びに興じる作者の姿が見えるようです。

    (監修:池内)

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  • 風吹いて 川面にしなふ 桜かな

    2020.03.30 放送

    作者:岩月通子

    「桜」は花のなかの花。日本の四季を代表する花です。日本列島には古代から野性の桜が自生し、春の野山を彩ってきました。私たちは毎年、桜の花を眺めては春の訪れを知り、今年もまた花の盛りにめくり会えたことを喜ぶのです。この句は川沿いに植えられた染井吉野でしょうか。重たいほどに咲き満ちて川面に伸びた枝が、折からの風にゆったりと撓っています。

    (監修:池内)

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  • くちびるに 雨のひとつぶ 初桜

    2020.03.27 放送

    作者:石田郷子

    空模様が気になり空を仰ぐと、ぽつんとひとつ雨粒が降ってきて、偶然くちびるを打ちました。くちびるは、体の部位でも特に敏感な場所。ひんやりした雨粒のみずみずしい弾力が、鋭敏な感覚を通して伝わります。咲きはじめた桜の花びらにも、この雨粒が触れたとしたら。繊細な瞬間を切り取り、桜の季節がはじまる昂ぶりを、静かに言いとめました。

    (監修:神野)

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  • ももいろの 子猫拾ふを ためらはず

    2020.03.26 放送

    作者:工藤弘子

    春には猫たちも発情期を迎えるので、恋猫という季語があります。さらに、恋の結果生まれた子猫も春の季語です。道端で、ももいろの肌が透けた、生まれたての子猫を見つけました。ためらわず拾ったのは、そのまま放っておけないほどに、か弱い存在だったから。頼りなくも尊い命に心を寄せた、優しさあふれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 思ひ出は いつもあたたか スリッパも

    2020.03.25 放送

    作者:山田弘子

    春になって、暑くも寒くもない、ちょうどいい気候を「あたたか」と呼びます。スリッパをつっかけ、リビングの午後の日差しに紅茶など飲めば、懐かしい過去のあれこれが思い出され、心がじんわりあたたまります。日常的なスリッパと並べたことで、思い出もまた、身ほとりにあるぬくもりの一つなのだと気づかせてくれます。

    (監修:神野)

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  • うつむいて 吹いても空へ しやぼん玉

    2020.03.24 放送

    作者:鶴岡加苗

    春らしいのどかな遊びとして、季語になっているしゃぼん玉。いやなことがあって、ついうつむいたまま息を吹いても、しゃぼん玉は風に乗り、空へ飛んでゆきます。「シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ」。つられて私の視線も空へ。春の日差しを受けて輝くしゃぼん玉を見送ると、心の中に明るい光がさしてきます。

    (監修:神野)

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  • 結婚を 菫に契る 男女かな

    2020.03.23 放送

    作者:正岡子規

    結婚を誓うとき、みなさんなら、どんな花の前を選ぶでしょうか。華やかな薔薇や清楚な百合、選択肢がいくつもある中で、このカップルは、春の野に咲く菫の前で結婚の約束をしたのです。誰に認められるわけでなくとも、二人の心が通い合っていればそれでいい。素朴で健気な菫が、互いを信じる愛の深さを証明しています。

    (監修:神野)

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  • 生き死には いづれもひとり 涅槃西風

    2020.03.20 放送

    作者:浅井一志

    お釈迦様の亡くなった旧暦二月十五日頃に吹く季節風が「涅槃西風」。春の彼岸の頃でもあるので「彼岸西風」ともいいます。涅槃とは、一切の煩悩を断ち切った静かな状態。仏教における理想の境地を表す言葉です。涅槃西風に吹かれながら、作者は涅槃という言葉から人の生と死に思いを馳せています。きょうは春分の日。彼岸の中日です。

    (監修:池内)

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  • 薄紅の 一刷毛欲しき 初ざくら

    2020.03.19 放送

    作者:三枝青雲

    春、初めて咲いた桜の花を「初花」あるいは「初桜」といいます。待ちに待った花とめぐり会えた喜びのこめられた季語です。この桜は染井吉野でしょうか。作者は初桜の色彩に注目しています。咲き始めたばかりの花の色は、まだ白さが目立っています。その風情を愛でながらも、花がやがて薄紅を帯びて来るのを待ち望んでいるようです。

    (監修:池内)

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  • 芽柳や 音符のやうな 芽の並び

    2020.03.18 放送

    作者:稲田眸子

    柳にも色々な種類があります。ことに枝垂れ柳の鞭のような細い枝がいっせいに芽吹き始め、風に揺れる姿は春の到来を実感させる美しさです。季語では「柳の芽」「芽柳」といいます。しなやかな枝に連なって並んだ芽柳を、楽譜上の音符に見立てて生き生きと描いた一句。作者は今治市の大三島出身の俳人。俳句雑談「少年」主宰です。

    (監修:池内)

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  • 城址みち 真一文字に 初燕

    2020.03.17 放送

    作者:川崎慶子

    春に南方から日本にやって来る渡り鳥の中でも、最も親しまれているのが燕ではないでしょうか。そろそろ松山あたりにも燕の飛来する頃です。その春初めて見る燕を「初燕」といいます。これは、かつてお城のあったあたりを散策中に出会った初燕。道の上空を迷わず一直線に飛ぶ燕の姿が、春たけなわを感じさせます。

    (監修:池内)

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  • 初蝶に 逢ひたるのちの 蝶の数

    2020.03.16 放送

    作者:高浦銘子

    春が来て、初めて見かける蝶を「初蝶」といいます。種類としては紋白蝶や紋黄蝶などの淡い色の蝶であることが多いようです。目の前に不意に現れる初蝶の姿は、見る人の胸をときめかせ、春の喜びを感じさせてくれます。これから春の深まりとともに、いくつもの蝶を見ることでしょう。しかし初めて逢った蝶の姿は、いつまでも忘れられないのではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 椿咲く 金婚の日の 夫婦箸

    2020.03.13 放送

    作者:伊賀上公子(松山市)

    結婚して五十年目を祝う金婚の日。見慣れた庭にも春が来て椿が咲き、食卓にはいつもの夫婦箸が並びます。椿の赤に、金婚の金。色彩もなんだかめでたいですね。積み重ねてきた日々の確かさを寿ぐように、椿が真っ赤な花を咲かせます。

    (監修:神野)

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  • 椿あかるし ベテルギウスは暗し

    2020.03.12 放送

    作者:北藤詩旦(北海道)

    べテルギウスは冬の大三角の一つ、オリオン座の一等星です。ところが、昨年末から今年にかけて、その光の減少が観測されています。椿を「あかるし」、べテルギウスを「暗し」と対句仕立てにすることで、逆に椿という花のもつほの暗さや、べテルギウスが本来もつ明るさが引き出されました。大地と星空が、闇の奥で呼応する一句です。

    (監修:神野)

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  • 咲き充ちて 幹の冷たき 椿かな

    2020.03.11 放送

    作者:中矢長宗(松山市)

    赤という色はあたたかさと結びつきやすい色です。しかし、作者は赤い花を咲かせる椿の、幹の冷たさに着目しました。椿の咲く春のはじめはまだまだ風も冷たく、ぎっしり茂った葉の奥まではなかなか日差しも届きません。絢爛に咲き充ちた椿の奥に立つ、冷たい幹。その存在に気づいたとき、椿の美しさにさらに、凄みが加わります。

    (監修:神野)

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  • 床の間の椿 陰膳置く上座

    2020.03.10 放送

    作者:二宮香織(松山市)

    陰膳とは、通夜や法事の席で、亡くなった人へ供えるお膳のこと。無事に極楽浄土へゆき、往生できるよう祈願する風習です。床の間に活けてあるのは椿。赤い花びらのほの暗さが、大事な人を喪った悲しみの深さや、癒えない傷の生々しさを物語ります。椿は、華やかな席だけでなく、悲しみの一場面にも、そっと寄り添ってくれる花なのです。

    (監修:神野)

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  • 旅先の 湯籠に拾う 椿かな

    2020.03.09 放送

    作者:藤本ちどり(今治市)

    「椿」は松山の市の花ですから、この旅先はやはり道後温泉でしょうか。浴衣姿で湯籠を提げて散策中、ふと椿の花が落ちているのを見つけました。その美しさに思わず拾い上げ、ひょいと湯籠に入れます。さりげない道端の椿に気がつくのも、旅先で心がほぐれたから。「疲れたら、愛媛」。道後温泉らしいフォトジェニックな一句です。

    (監修:神野)

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  • ふるさとは つくづく遠し 土筆摘む

    2020.03.06 放送

    作者:伊藤伊那男

    春の野原や土手などに顔を出す「土筆」。古くは「つくづくし」と呼ばれました。杉菜の胞子茎であることから松山地方では「ほうしこ」の名がよく使われます。作者は東京の郊外で土筆を摘みながら、遠いふるさとへ思いを馳せています。そういえば正岡子規も、土筆は摘むのも食べるのも大好きで、石手川の堤での土筆摘みを病床から懐かしんでいました。

    (監修:池内)

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  • 草の芽の 一つ一つに 未来あり

    2020.03.05 放送

    作者:大串章

    きょうは二十四節気の啓蟄。地中に冬ごもりしていた虫が出てくる季節です。いっぽう、諸々の「草の芽」も萌え出る頃です、下萌えよりも鮮明な姿となった草の芽は、さらに若草、草若葉へと成長し、緑を深めてゆきます。これまで青いものの見えなかった大地に現れた草の芽は、見る人に春を迎えた喜びを感じさせます。作者はそんな草の芽を、まるでわが子の未来を祝福するような温かいまなざしで見つめています。

    (監修:池内)

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  • たんぽぽをたどれば ローマまで行ける

    2020.03.04 放送

    作者:仲寒蟬

    誰からも愛される春の花が「蒲公英」。キク科の植物で多くの種類がありますが、白い花の日本タンポポと黄色い花の西洋タンポポに二分されます。現在ではヨーロッパから帰化した西洋タンポポが、在来線を駆逐して多く見られるようになりました。こうした西洋タンポポの伝来したルートを溯ってゆけば、まことローマまで辿り着けるかもしれませんね。植物渡来の歴史とロマンに思いを馳せた一句です。

    (監修:池内)

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  • こころもち 向き合ふやうに 雛飾る

    2020.03.03 放送

    作者:仁平勝

    きょう三月三日は雛祭り。女の子の幸せを願う行事です。桃の開花に合わせ、月遅れで祝う地方もあります。しまってあった雛人形を取り出して雛壇に飾ることを表すのが「雛飾る」という季語です。内裏雛、三人官女、五人囃子と、ふつうは正面を向けて置きますが、この句はお雛様同士「こころもち向き合うように」飾りつけています。どこか心やさしく微笑ましい雛飾りの情景です。

    (監修:池内)

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  • 一声も 力抜かざる 揚雲雀

    2020.03.02 放送

    作者:石井いさお

    日本の春を代表する小鳥の一つが「雲雀」。各地の畑や草原など、地上に巣を作ります。繁殖期に雄は縄張り宣言の為、ピーチュル、ピーチュルと声高に囀りながら空高く舞い上がります。これが「揚げ雲雀」。しばらく囀ると、今度は一直線に落下します。これを「落雲雀」といいます。こうした雲雀の行動は、すべて巣の雛を守り子孫繁栄につなげるため。一声といえども力を抜かず、懸命に囀っている雲雀なのです。

    (監修:池内)

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