2022.09.30 放送
夏から冬のはじめにかけ、赤や黄色の鮮やかな花を咲かせるカンナは、育つと2mにもなります。存在感のあるカンナの花も、地面を歩く鶏からはどう見えるのでしょう。鶏の視点を想像することで、私たち人間に見えている世界も、危うく不確かなものに思えてきます。秋の不安が静かに屹立する一句です。
(監修:神野)
2022.09.29 放送
大根や蕪は密集して芽生えますが、風や光がゆきわたらないので、間引きをします。間引いた成長途中の葉は、お浸しや味噌汁にしていただきます。いろいろな菜っ葉もすべて「間引き菜」と括られるように、人間も、その他大勢に括られることで、かえって気負わず自由に生きられるかもしれません。
(監修:神野)
2022.09.28 放送
みのりの秋、柿のおいしい季節になりました。よく熟れただいだい色の果実を切ると、断面がつやつやと輝きます。果肉が黒く透けて見えるところも、いっそう甘くておいしそう。「澄む」という言葉が、熟した柿をリアルに描き出し、水や大気の澄みわたる秋の季節感をも伝えてくれます。
(監修:神野)
2022.09.27 放送
みのりの秋には、果物の季語がたくさんあります。いちじくも、そのひとつ。柔らかく割れば、しっとりと真っ赤な果肉が現れました。すべて平仮名で書かれたことで、意味を離れてぼんやりと、秋の気分が漂います。少し翳りを含んだ秋の昼の明るさに、いちじくの暗い赤が、静かに輝きます。
(監修:神野)
2022.09.26 放送
野菊は、白や黄色、紫など、秋らしい色合いの花を咲かせます。野菊の咲く野山に、雨がしとしと降っています。ただでさえ静かな雨音が、さらに細かくなって、可憐な野菊の花びらに降りかかります。聴覚を鋭く尖らせながら、秋らしい雨の風景を、繊細に詠み上げました。
(監修:神野)
2022.09.23 放送
余生の過ごし方はさまざまですが、愛媛に暮らせば、観光ガイドとして正岡子規の魅力を伝えるという余生もあるのですね。手話なら、より広く多くの人に届きます。そうして語った子規の生きる力は、これからを生きる人たちを励ましてもくれるでしょう。過去から未来へ橋渡しをする、子規忌の今を見つめました。
(監修:神野)
2022.09.22 放送
正岡子規は肺結核を患い、34歳の若さで亡くなりました。病気を悪化させたのは、日清戦争従軍とも言われています。大陸へ渡る船の上で、あるいはふるさと伊予の浜辺で、潮風を大きく吸い込み、肺を満たしたときの感覚。「うるむ」ととらえたひとことに、生きる命がにじみます。
(監修:神野)
2022.09.21 放送
病気のイメージが強い子規ですが、元気なころは野球が大好きでした。新しいスポーツだった野球の用語を翻訳し、「野球」と書いて「の・ぼーる」というペンネームも使いました。空き地で野球をする子どもたち。勢い余って、近所の窓硝子を割ってしまいました。規格外のホームランが、子規の器の大きさを髣髴とさせます。
(監修:神野)
2022.09.20 放送
糸瓜忌は子規忌の別名です。子規はあんパンが大好きでした。パン屋さんで人気のあんパンが、二時に焼き上がります。香ばしい焼きたての香り。おいしいあんパンを子規さんにも食べさせたいと思うとき、子規は近寄りがたい文豪ではなく、私たちの友人として、にっこり笑ってくれるでしょう。
(監修:神野)
2022.09.19 放送
今日、9月19日は子規忌です。子規は獺祭書屋主人と称し、カワウソと自分を重ねました。お祭りのように魚を並べるカワウソの習性は、まるで病床に資料を並べ文学に打ち込む自分のよう。子規は牛乳にココアを入れて飲むのが好きでした。温めた牛乳の膜をつまみとるとき、子規にもこんな瞬間があっただろうかと、彼の日常に思いを重ねます。
(監修:神野)
2022.09.16 放送
獺祭忌とは、子規忌のことです。子規は甘いものが大好きだったので、当時は珍しかったシュークリームも、弟子が届けてくれました。「シュー」という音が花火みたいだと喜んだ手紙も残っています。オーブンで今、シュー生地が香ばしく焼けてゆきます。子規さんの気持ちで待てば、ささやかな出来事も、幸せのかけらとして輝きます。
(監修:神野)
2022.09.15 放送
スポイトで理科の実験をしているのでしょうか。水を吸い上げるそのとき、ふと、子規忌だと頭をよぎりました。子規も、言葉によってさまざまな実験を試み、新たな時代を切り拓いた人です。科学も文学も、実験精神が大切。子規忌の水と思えば、その一滴にも、何か特別な力が宿るかもしれません。
(監修:神野)
2022.09.14 放送
子規は亡くなる十数時間前、糸瓜を詠んだ三句を書きつけました。糸瓜水は痰切りの薬になるので、子規の庭でも育てていました。この糸瓜にちなみ、子規忌を糸瓜忌とも呼びます。子規の周囲には多くの人が集まり、議論を交わしました。そんな子規の忌日なら、喧嘩しても両成敗、ラーメン食べて仲直り。明治の若者たちの明るい声が聞こえてきそうです。
(監修:神野)
2022.09.13 放送
正岡子規は健啖家で、食べるのが大好きでした。病床の日記「仰臥漫録」には、毎日の献立が記されていて、病人とは思えない食事量に驚かされます。中でも好きだったのは、くだものと菓子パン。何気なくパンをかじる瞬間、ふと、パンが好きだった子規を思い出しました。光る前歯に、生きている私の今が輝きます。
(監修:神野)
2022.09.12 放送
9月19日は、松山市出身の俳人・正岡子規の忌日です。若くして結核を患った子規は、病臥でも旺盛に執筆を続け、34歳で亡くなるまで、俳句や短歌に打ち込みました。夜明けにひびく産声は、革新をもたらした子規のエネルギーを髣髴とさせます。赤ちゃんも、子規のように、未来をたくましく切り拓いてくれることでしょう。
(監修:神野)
2022.09.09 放送
作者は、俳句で正岡子規の指導を受け、実業家としても地元の農業経済に大きく貢献した人物でした。霽月邸の近くの垣生小学校のすぐ側には、伊予絣の創始者鍵谷カナを讃えた八角堂があり、この句碑が立っています。鵙がしきりに鳴く朝から夕方まで、盛んに伊予絣を織りすすむ音が聞こえていた当時が偲ばれます。
(監修:谷)
2022.09.08 放送
「みんなで渡れば怖くない」と、いうフレーズが流行った時代がありましたが、この人たちはおしゃべりに興じて道を間違えたのでしょうか。あるいは家々の塀越しに見える薔薇の実や道端の秋草、そして雲などに見とれていたのかもしれません。みんなで間違えたのが可笑しいです。高く澄んだ秋空では、引き返す道が苦にはなりません。
(監修:谷)
2022.09.07 放送
ひとりだけの、広々とした昼餉です。家族が出かけて、料理をしなくて済む秋の昼には、自分が好きな果実だけあれば充分満足です。いや、もしかして、今誰かが居て「ひとりだったらなあ」と、澄んだ窓の空を見て思っているのかも。秋は果物の豊かな季節。無花果、葡萄、梨、柿などをひとりで楽しむのは、贅沢な時間に思われます。
(監修:谷)
2022.09.06 放送
踏切で活躍する遮断機が「大きな腕」だと表現しました。腕は腕のことです。電車が来るのを知らせる警笛が鳴ると、ゆっくりと降りてきて、私たちが渡るのを遮断します。急いでいるときは憎らしい気がします。でも、遮断機が、人通りがなくなった夜中に月を盗って楽しんでいると思えば、なんだかいとおしいものに見えてきます。
(監修:谷)
2022.09.05 放送
愛媛では「いもたき」と呼ばれて親しまれている「芋煮会」。河川敷で、友だちや家族、同僚などと大きな鍋を囲んで秋の日を楽しみます。主役は地元の里芋。家でも作りますが、野外で食べる美味しさはひとしお。コロナで中止されていたものの、今年は各地で再開されるようです。いちばん橋で待ち合わせましょう。
(監修:谷)
2022.09.02 放送
秋の月のさやけさを讃えて、古来月を秋の季語としています。俳句では単に月といえば秋の月のこと。きょうの句は「人にすみっこひとずつ」が、とてもすてき。誰もときどき膝を抱いて、潜んでいられる場所を持っていたいのかもしれません。すみっこは影みたいですが、すぐそこに月の明かりが来ています。
(監修:谷)
2022.09.01 放送
空気が澄み渡った秋の空を「天高し」あるいは「秋高し」と言います。そんな窓の青空と、手元のちいさなホッチキスとの対比が面白いです。留めようとしたホッチキスがから打ちすると、こんな悲しいことないくらいがっかりします。でも、今はちゃんと針が満ちている。このささやかなことに、心も満たされます。
(監修:谷)
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