2018年8月の俳句

  • をりをりの風に 真萩の吹かれやう

    2018.08.31 放送

    作者:山田閏子

    萩は日本の秋を代表する花。『万葉集』でも秋の七草の筆頭です。といっても草ではなくマメ科の灌木で、野山に自生するほか、庭にもよく植えられています。松山地方では八月中旬に咲き始め、風に揺れる風情が昔から愛されています。「真萩」は萩の美称で、こう呼ぶと風に吹かれる萩の花が、いっそう美しく見えてきます。

    (監修:池内)

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  • 身ぶるひをして 新豆腐しづみけり

    2018.08.30 放送

    作者:黛執

    収穫されたばかりの新大豆でつくった豆腐が「新豆腐」。秋の収穫を待ってつくられるだけに、新鮮な味覚とともに稔りの秋を喜ぶ気分の感じられる季語です。輸入大豆が豆腐の原料の多くを占める現在、地元の新大豆でつくられた新豆腐は、まことに貴重です。この句、水に浸されるとき、身ぶるいをして沈む新豆腐が、まことに新鮮に感じられます。

    (監修:池内)

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  • 天窓を 星流れゆく 山家かな

    2018.08.29 放送

    作者:井上閑子

    宇宙塵と呼ばれる物質が、地球の大気圏に突入して光を発する現象が「流れ星」です。大部分は燃え尽きてしまいますが、大きいものは地上に落下して隕石となります。流れ星は一年を通じて見られますが、大気の澄む今の時期にもっともよく目にするので秋の季語となっています。この句、山里の家の天窓を通して見る流れ星が、まことに印象的です。

    (監修:池内)

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  • 蒼穹を 群れて奪ひし 秋茜

    2018.08.28 放送

    作者:笙鼓七波

    いわゆる赤蜻蛉にはいくつかの種類がありますが、日本の秋の空をいろどるのは、主として「秋茜」です。秋茜は六月ころ水辺で羽化し、山の中へ移動して夏を過ごします。秋らしくなるころには、また平地へと下りて来て、空を群れて飛びます。秋の深まりとともに赤い色も濃くなります。この句は、青空を覆い尽くすほど群れをなして飛ぶ赤茜です。

    (監修:池内)

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  • 月光へ 八重の花閉ぢ 酔芙蓉

    2018.08.27 放送

    作者:小川玉泉

    芙蓉は、朝咲いて、夕方にはしぼんでしまう花。花の色は白、薄紅、紅などがあります。「酔芙蓉」は八重咲きで、咲き初めは白だった花が、一日のうちに酔ったように少しずつ濃い紅色に染まってゆきます。こうして酔芙蓉が花を閉じるころ、空には月がのぼり、紅に染まった花びらをやさしく照らしています。

    (監修:池内)

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  • 噛み砕く胡瓜 頭蓋に海のある

    2018.08.24 放送

    作者:済美平成中等教育学校(愛媛)田原匠

    今年の第21回俳句甲子園、優秀賞の一句です。ばりぼりと胡瓜を噛み砕くとき、頭蓋の中に、ゆたかな海のたゆたいを感じたのです。頭や脳といわず、頭蓋という体の部位を示したことで、海をより肉感的に、なまなましく感じます。胡瓜も人間も海も、おおかたは水でできています。小さな胡瓜から、地球規模の大きな連想をはたらかせた、大胆で詩的な作品です。

    (監修:神野)

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  • 腸柔し 鵙に裂かるる ものはみな

    2018.08.23 放送

    作者:愛光高校(愛媛)中井望賀 

    今年の第21回俳句甲子園、優秀賞の一句です。鵙は小鳥ですが肉食なので、蛙や蛇などの小動物を捕らえて命を繋ぎます。望賀さんは、鵙に食べられるものはみな、柔らかい腸を持つという共通点を見出しました。内臓の柔らかさは、命のもろさを象徴し、さっきまではたしかに生きていたぬくもりも示します。残酷な動作に、生きて死ぬ命の本質を見た作品です。

    (監修:神野)

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  • 平成の残暑 真つ只中に俺

    2018.08.22 放送

    作者:今治西高校(愛媛)藤原豪士

    今年の第21回俳句甲子園、優秀賞の一句です。終わりゆく時代のただなかに、俺は今たしかに生きているのだと、自らの矜持を語りました。残暑の「残」の一字が、時の流れに取り残されそうな焦燥感を駆り立てます。秋になっても厳しい残暑の中、だらだら汗をかきながら、熱くまぶしく、平成最後の一年をかみしめています。

    (監修:神野)

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  • 草笛を 吹けぬ大人に なつてゐた

    2018.08.21 放送

    作者:宇和島東高校(愛媛)高橋 恵美彩

    今年の第21回俳句甲子園、優秀賞の一句です。幼いころはよく、野原で草笛を吹いて遊んでいたのに、大人になって久しぶりに試してみたら、うまく吹けなくなっていました。草笛の吹き方や、かつての純粋な心。私たちは大人になる途中で、気づかないうちに、大切な何かを失い続けているのかもしれません。草の香りの風の中に、立ち尽くすばかりです。

    (監修:神野)

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  • 滴りや 方舟に似て あなたの手

    2018.08.20 放送

    作者:興南高校(沖縄)桃原康平

    今年の第21回俳句甲子園、最優秀賞・文部科学大臣賞の一句です。夏の季語「滴り」は、山道の岩をぽたぽたと伝い落ちる雫のこと。滴りを受けようと、まあるく差し出されたあなたの手が、方舟のかたちに似ていると感じました。人々が生きづらさを抱える平成の終わり、ここではないどこかへ連れていってくれる方舟として、あなたの手に救いを見出したのです。この手を信じていいかしら……誰も知らない未来への期待と不安がきらめく一句です。

    (監修:神野)

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  • 深海魚 群れて眠りぬ 遠花火

    2018.08.17 放送

    作者:みさと(松山市)

    深海魚と遠花火、一見意外な組み合わせですが、いずれも遠く触れられない闇の中で、静かに息づくものたちです。海の底で眠る深海魚にとっては、はるか海の上にあがる美しい花火もまた、知るよしのない遠花火なのかもしれません。そして、私たち人間も、遠花火に孤独な耳を傾けながら、群れを作り身を寄せ合って、この世界に生きているのです。

    (監修:神野)

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  • 花火師の 抱えし竜の 卵かな

    2018.08.16 放送

    作者:奈良香里(松山市)

    夜空にひらく打ち上げ花火は、花火師が球体に火薬を詰めて作ります。花火玉には、大小さまざまなサイズがありますが、一尺玉だと直径30p、三尺玉だと1m近くになります。作者はこの花火玉を、竜の卵のようだと見立てました。その卵は、ときが来れば夜空の真ん中で孵化し、竜のように激しく、光をほとばしらせるのでしょう。

    (監修:神野)

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  • 彼女です 花火帰りに 連れて来る

    2018.08.15 放送

    作者:渡部茂由子(久万高原町)

    花火に出かけていた息子が、なんと彼女を連れて帰って来たのです。「母さん、紹介するよ」。はじめて対面する息子の彼女は、さてどんな子なのでしょう。浴衣にポニーテールなのか、Tシャツジーパンのさばさばした雰囲気なのか。ちょっぴり緊張するおまけのついてきた、にぎやかな花火の夜です。

    (監修:神野)

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  • 村老いて 半額シールの 花火かな

    2018.08.14 放送

    作者:霞山旅(宮城・仙台)

    高齢化する過疎の村に、ぽつんと立つ小さな店。花火を買って遊ぶ子どもや若者も少なくなり、売れ残った花火には、半額のシールが貼られています。本来はみんなでにぎやかに楽しむ花火だからこそ、活気を失った村のさびしさが際立ちますね。今、日本のそこかしこに、現在進行形で存在する風景に、しずかに向き合いました。

    (監修:神野)

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  • 一瞬の 草の薫りや 遠花火

    2018.08.13 放送

    作者:砂山恵子(西条市)

    花火にまつわる季語に「遠花火」という言葉があります。花火大会へは足を運ばず、遠いところで花火の音を聞いている、少しさびしい距離を含んだ季語です。遠くで花火が上がった瞬間、足もとの草の薫りが、強く濃く感じられました。世界が一瞬、あざやかに迫ってくる繊細な感覚。花火の音や草の薫り、五感をとおして、夏の空気感が伝わります。

    (監修:神野)

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  • 鳴き止みしときの風向き 法師蟬

    2018.08.10 放送

    作者:星野高士

    ジーで始まり、ツクツクホーシ、ツクツクホーシと何回も繰り返し、最後にジーと鳴き終る。松山地方でも「法師蟬」の鳴く季節です。鳴き声からつくつく法師とも呼ばれる法師蟬は、蟬の仲間で最も遅く姿を現します。鳴き止んだときの風向きで探し当てた声の主は、3センチほどの細身の体に、透明な翅を持っていました。作者は高浜虚子の曾孫にあたる方です。

    (監修:池内)

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  • 十人の 句座の黙禱 長崎忌

    2018.08.09 放送

    作者:西山常好

    八月六日の広島忌に続いて、きょう九日は「長崎忌」。昭和二十年のこの日、長崎に原子爆弾が投下され、多くの犠牲者を出しました。歳時記では、どちらも「原爆忌」ともいいます。作者は長崎県の方。この日十人の句友が集まって聞かれた句会では、会を始める前に、まず全員が揃って原爆の犠牲者へ黙禱を捧げています。

    (監修:池内)

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  • 提げ来る風呂敷 西瓜と見てとれり

    2018.08.08 放送

    作者:渡邊孤鷲(松山市)

    今では真夏のうちから冷やして食べられていますが、本来「西瓜」は秋の季語で、立秋を過ぎてから出回るものでした。瓜類の中でも群を抜いた大きさも、南アフリカ原産と聞くと、なるほどと思われます。客人がお土産にと提げて来た風呂敷包み。大きさと形ですぐに西瓜と見て取れます。作者は松山市にお住まいの俳人。俳句雑誌「渋柿」主宰です。

    (監修:池内)

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  • 立秋や 老いて伴侶のいる幸せ

    2018.08.07 放送

    作者:山本嘉郎

    今日は「立秋」。まだまだ暑い盛りですが、季節は秋に入りました。昔から日本人は、目に見えるものよりも耳に聞こえる風の音に、秋の訪れを感じてきました。そして忍び寄る秋の気配に、ふと一抹の寂しさを覚えたりするものです。この句の作者は87歳の方。この歳になっても夫婦そろって元気でいられる幸せを、立秋の日に改めて実感しているようです。

    (監修:池内)

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  • ゆく夏や 林に入れば 風の見え

    2018.08.06 放送

    作者:櫨木優子(大洲市)

    暦の上では、夏もようやく終り。明日は立秋です。俳句では「ゆく夏」「夏の果」「夏終る」などといいます。厳しい暑さもやっと終るという安堵感のある季語です。夏が去り秋の近づく気配を、まず感じさせるのが風。林に入ってみれば、木々のさゆうぎなどの風情に、去りゆく夏を目からも感じることができます。作者は大洲市にお住いの俳人です。

    (監修:池内)

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  • 睡蓮を 揺らす波 その返し波

    2018.08.03 放送

    作者:広渡敬雄

    「睡蓮」は沼や池に自生する多年草が、観賞用に品種改良されたもの。水底の泥の中から水面に光沢のある円い葉を浮かべ、夏には花茎を伸ばして水面に直径20センチあまりの赤、白、紫などの美しい花を咲かせます。蓮に似た形の花が昼に咲き、夜は閉じるので睡る蓮と名づけられました。寄せて来た波が睡蓮の花を揺らし、返す波が再び花を揺らしてゆく風情が描かれた一句です。

    (監修:池内)

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  • 閉づるたび メモのはためく 冷蔵庫

    2018.08.02 放送

    作者:阪西敦子

    「冷蔵庫」は季節にかかわらず一年中使われますが、特に夏は飲み物を冷やしたり氷を作るなど、盛んに利用します。電気冷蔵庫が普及する以前は、氷を入れて冷やす木製の冷蔵庫が夏の間だけ使われていました。いまや生活に欠かせない冷蔵庫は、大事な予定など、日常のメモを磁石で留めておくにも便利な場所。開け閉てするたびに、何枚ものメモがはためいています。

    (監修:池内)

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  • 紙魚走る 一兵父の軍歴書

    2018.08.01 放送

    作者:淵脇護

    「紙魚」は一センチもない小さな昆虫で、細長い体は銀色の鱗におおわれ、翅はありません。製本に使われる糊などを好んで食べます。本や書類などを虫干しして風を通すのは、紙魚に食われないようにするためでもあります。あの太平洋戦争を、一人の兵士として戦ったお父さんの軍歴を記録した書類も虫干しされています。その上を一匹の紙魚が走ってゆきました。

    (監修:池内)

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2月のお題は
「いぬふぐり」 です

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(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます)

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