2021年9月の俳句

  • 太刀魚の ひかりまるごと 喰ひにけり

    2021.09.30 放送

    作者:上野一孝

    平たく細長い体が、大きいものは一・五メートルにもなる「太刀魚」。銀色を帯びた体形が刀のようだ、というところからこの名が生まれたといわれています。日本沿岸の各地で獲れますが、西日本で特によく食べられ、塩焼き、煮付け、唐揚げなどが美味しい料理法です。「ひかりまるごと」という中七から、この太刀魚の新鮮さがよく分かる一句です。

    (監修:池内)

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  • 霧湧きて 浄土はかくのごときかな

    2021.09.29 放送

    作者:大関靖博

    放射冷却現象によって地面に近い空気が冷やされると、水蒸気が凝結して小さな水滴となって煙のように漂い、視界を悪くします。これが「霧」の正体で、水気の多い雲が地面に接しているような状態です。この現象が春は霞、秋は霧と呼ばれます。湧き出たように広い野原を被い、視界を真っ白に遮ってしまった霧が、まるで西方浄土のように美しく見えています。

    (監修:池内)

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  • いっぽんの 竹伐るために 身を細め

    2021.09.28 放送

    作者:能村研三

    昔から「竹八月に木六月」といって、竹は旧暦八月に伐るものだとされています。秋のこの季節を「竹の春」というほど竹は勢いよく茂って、緑色の太い幹も充実しています。まさに今が伐り時です。竹林の竹の間隔は傘をさして通れるほどがよいそうです。密になった竹を伐るには、身を細くして竹と竹の間へ分け入ることが必要なようです。

    (監修:池内)

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  • 三軒となり果てし村 花すすき

    2021.09.27 放送

    作者:阿部静雄

    秋の七草の一つである芒。芒の穂は尾花ともいいますが、穂の出た芒は花を開いた芒ということで「花すすき」とも呼ばれます。白く蓮けた花すすきが風に吹かれる姿は、何とも淋しくもあり美しくもある光景です。過疎化により、かつては何十軒もあった農家が、三軒にまで減ってしまった集落。秋の深まる中で、花すすきが淋しげに風に吹かれています。

    (監修:池内)

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  • 僕が僕に 道を聞くなり 銀河直下 

    2021.09.24 放送

    作者:マブソン青眼

    価値観が多様化した現代は、答えのない時代ともいわれています。いったいどう生きていけばよいのか、作者は進むべき道を、はるかな銀河の下で、自分自身に問いかけました。ふだんは迷っていることも、澄んだ星空の下なら、クリアに見えてくるかもしれません。一歩一歩、自分の力で歩いてゆくために。雄大な自然を前に、まっすぐに覚悟を詠みました。

    (監修:神野)

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  • 嶺聳ちて 秋分の闇に入る 

    2021.09.23 放送

    作者:飯田龍太

    今日は秋分の日です。だんだん日暮れが早くなり、昼と夜の長さがだいたい同じになる頃です。ここからはさらに夜が長くなってゆくので、昼の光よりも夜の闇に意識がゆくのでしょう。そびえる嶺も、しずかに秋分の闇へと沈んでゆきます。みなさんは、秋分の日のどんな風景に、秋の深まりを感じるでしょうか。

    (監修:神野)

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  • 石の上の 水の厚みよ 澄みてをり  

    2021.09.22 放送

    作者:堀田季何

    秋は大気が澄みわたり、水も清らかに感じられるので、「水澄む」という秋の季語があります。川の風景でしょうか、石の上をなめらかに水が流れ、覗きこめば底まで透明です。分厚い水の透明度に秋を実感した驚きを、「よ」と呼びかけて強調しました。澄んだ水を見つめていると、心まで澄みわたるようです。

    (監修:神野)

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  • 汗ばみてをり 鶏頭の襞のなか 

    2021.09.21 放送

    作者:奥坂まや

    秋の庭を彩る鶏頭は、ニワトリのとさかのように、赤く肉厚の花を咲かせます。花の襞はみっしりとしていて、もし動物だったら、きっと汗ばんでいるほどでしょう。秋の日差しも、思いのほか強いのかもしれません。植物であると同時に、動物的な側面をもつ鶏頭の、生きたエネルギーをつかまえた一句です。

    (監修:神野)

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  • 飴をもらひて 敬老の日と思ふ

    2021.09.20 放送

    作者:後藤比奈夫

    今日は敬老の日です。長年にわたり社会を支えてきた高齢者を敬愛し、長寿を祝う日として、国民の祝日に制定されています。店頭や介護でのサービスでしょうか、それとも子や孫からの気遣いでしょうか。飴をもらったとき、ふと、そういえば今日は敬老の日だと気づきました。さりげないプレゼントに、ほんのり心のあたたかくなる一幕です。

    (監修:神野)

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  • 祖父の牛 名は菊という 鰯雲

    2021.09.17 放送

    作者:徳山千帆(西予市)

    祖父が自分の育てる牛につけたのは、「菊」という名前でした。日本的でゆかしい名前を与えられた菊は、穏やかでゆったりした牛になったでしょうか。鰯雲の季節は、野山に菊が咲くころです。その名にふさわしい秋の風景の中で、菊は堂々と草を食べています。牛を育ててきた祖父の、静かな愛に満ちた一句です。

    (監修:神野)

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  • 洗車機を抜けて 鰯雲の夕べ

    2021.09.16 放送

    作者:柚木みゆき(和歌山県)

    洗車の前に見上げた空には、鰯雲が広がっていました。その白さが、洗車機の中で窓越しに見る泡の白さにつながります。洗車機を抜けて、もう一度現れた鰯雲は、今度は茜色に染まりかけていました。秋の夕陽は、つるべ落とし。この季節の日暮れの速さを、洗車機という日常的な素材を通して再発見しました。

    (監修:神野)

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  • 目薬や 片目に写る いわし雲

    2021.09.15 放送

    作者:たわらご 小濱節子(西予)

    目薬をさそうと思い、まず片方の目に。ふと空を仰ぐと、まだ目薬をさしていない片目の視野に、鰯雲が見えました。どこまでも広がる鰯雲だからこそ、片目で捉えたときに奥行きがどう感じられるか、想像力が刺激されます。片目で見るという発想も、「目薬や」という堂々とした書き出しも、新鮮で独自性がありました。

    (監修:神野)

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  • 接種後の パンの味濃し いわし雲

    2021.09.14 放送

    作者:織部なつめ(松山市)

    新型コロナウイルスのワクチン接種後には、強い空腹感が出る人もいるそうです。接種を終えて齧ったパンに、小麦の味がしっかりと感じられました。免疫力をあげるために、体が栄養を求めているのかもしれません。鰯雲が秋の涼しさを連れてきて、ほっとひと息つく時間。社会にワクチンが行きわたり、安心して暮らせる日々が戻ることを願います。

    (監修:神野)

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  • 猫の飲む 水にさざなみ 鰯雲

    2021.09.13 放送

    作者:酒井じゅん太(新居浜市)

    猫は舌をひらひらと使い、水面を舐めるように水を飲みます。その小さな刺激で生まれたさざなみに、目をとめて詠みました。力強い入道雲の季節は過ぎ、空には鰯雲がうすうすと広がっています。鰯雲は、秋の空を代表する雲です。さざなみの光と、鰯雲の光と。静かに生きる猫の姿を、秋の空気感の中に捉えました。

    (監修:神野)

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  • みみず鳴く螻蛄鳴く やはりみみず鳴く

    2021.09.10 放送

    作者:横澤放川

    秋の夜、地中からジー…という淋しげな音が聞こえることがあります。蟋蟀の仲間である螻蛄が鳴く声です。かつては蚯蚓が鳴く声と信じられ「みみず鳴く」という季語が生まれました。後に蚯蚓には発生器官がなく、螻蛄と混同していたことが明らかになりました。しかし「みみず鳴く」は、空想的で楽しい季語として今も愛されています。敢えて虚実二つの季語を反復することで。この鳴き声の謎に迫った一句です。

    (監修:池内)

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  • 大花野 浄土といふは 欺くやあらむ

    2021.09.09 放送

    作者:豊長みのる

    秋の様々な草花が乱れ咲く野原を「花野」といいます。秋の七草をはじめ、露草、竜胆、吾亦紅など、花野を彩る草花は実に多彩です。よく見るとつつましやかな花が多く、華やかな中にも寂しさを伴い、日中でも虫の音も聞こえ、哀れ深い趣が感じられるのが花野です。これは高原の広大な花野でしょうか。作者は大花野を散策しながら、西方浄土というのはこんな所なのでは、と想像をめぐらせています。

    (監修:池内)

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  • 晩年の更に晩年 鰯雲

    2021.09.08 放送

    作者:深見けん二

    「鰯雲」は気象学でいうと巻積雲。白い雲がさざ波のように密集し、規則的に並んでいます。まるで鰯が群れているように見えます。作者は高浜虚子に師事し、深く情を湛えた写生句で知られ、今年99歳を迎えられました。高い空に広がる鰯雲を仰ぎつつ、俳句ひとすじに生きて来たご自身の人生を省みておられます。鰯雲の奥に見える秋の空のように、澄み切った心境で晩年を生きる作者の心のありようが見えてくる一句です。

    (監修:池内)

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  • 虫しぐれ 中に指揮者のゐるらしく

    2021.09.07 放送

    作者:川口襄

    俳句で「虫」といえば秋に鳴く虫のこと。興梠、鈴虫、松虫、鉦叩など、名前にもそれぞれ味わいがあり、その鳴き声を愛でるのが日本人の心といえるでしょう。そうしたいっせいに鳴くことを「虫しぐれ」といいます。集まった虫たちの鳴き声には様々なリズムや強弱があり、急に鳴き止んだりもします。いわれてみれば、まるで指揮者のいるオーケストラとも思えるのが虫しぐれです。

    (監修:池内)

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  • 風を縫ひ 空を縫ひたる 蜻蛉かな

    2021.09.06 放送

    作者:浦川聡子

    「蜻蛉」は日本の秋を象徴する昆虫。夏のうちから見られるのに秋の季語となっているのは、その姿が澄んだ秋の空に一番似合うからでしょう。古い日本語では「あきつ」が一般的で、「とんぼ」は俗語でした。大型の銀やんまから小型の赤蜻蛉まで、日本には120種類以上もの蜻蛉が棲息しています。風を縫い、空を縫い、蜻蛉が飛んでいるこの国を、昔は「秋津島」と呼んでいました。

    (監修:池内)

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  • 伊予灘や 別れの駅までの銀河

    2021.09.03 放送

    作者:野村隆志(松山東高等学校)

    この夏、開催された第2回「センバツ!全国高校生即吟俳句選手権」で準優勝に輝いた作者の一句です。出されたお題は「天の川」。別れなければならない駅に着くまで、君と私はひととき、空の銀河を見つめています。その下に広がるのは、静かな伊予灘の闇です。やわらかな潮騒に耳を預けて仰ぐ銀河は、やさしく切なく、今この瞬間を輝きます。

    (監修:神野)

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  • 桐一葉 ばさりと 月の濃き夜かな

    2021.09.02 放送

    作者:黛執

    夏が終わり、桐の葉が一枚落ちて散るのを、古くから「桐一葉」と呼び、秋を告げる合図として捉えてきました。高浜虚子に〈桐一葉日当りながら落ちにけり〉という句がありますが、昼の桐一葉を詠んだ虚子に対して、この句は夜を詠みました。ばさりと大きな葉が降って、あとは月が煌々と輝くばかり。「かな」の切れ字の余韻に、秋の夜の闇が深まります。

    (監修:神野)

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  • 黒揚羽 九月の樹間 透きとほり

    2021.09.01 放送

    作者:飯田龍太

    8月も終わり、今日から9月です。まだ暑い日もありますが、吹く風にふと秋を感じる季節です。夏から飛んでいた黒揚羽も、どこか涼しさをまといます。黒揚羽が木々の間を縫って飛ぶとき、樹間を満たす空気が透きとおっているように感じました。澄んだ風と木漏れ日に、移りゆく季節の質感が見えてきます。

    (監修:神野)

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7月のお題「風鈴」の
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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