2024.06.28 放送
厳密にいうと季語はない句ですが、誰の目にも夏の海が広がるでしょう。作者・西垣脩は、大阪生まれで旧制松山高等学校に入学しました。ボートが盛んだった高校で、昭和十二年夏、在学中に作った句です。ゴール間近、コックスの合図にピッチをあげます。濡れたオールが光り、瑞々しい青春が光る、真昼の海です。
(監修:谷)
2024.06.27 放送
暑さで消耗した体力を回復させる「昼寝」は、夏の季語です。例えば木陰、電車の中、職場などでの午睡。短くてもぐっすり眠れた時ほど、目覚めたここはいったいどこなのか、頭が混乱することがあります。まるで職務質問に答えたような「現住所」。いかにも昼寝覚めのはっとした、でもとぼけた感じがあって、ユニークです。
(監修:谷)
2024.06.26 放送
今年の四国の梅雨入りは六月九日でした。青葉の頃なので「青梅雨」ともいいます。空梅雨は困りますが、しばらく続く雨を思うと、滅入り勝ち。そんな自分に負けてしまわないように、家事も意思的に明るくこなします。アイロンの切っ先を利かして、リズミカルにシャツを広げていくのです。陰湿な空気をも押しやるように。
(監修:谷)
2024.06.25 放送
青葉の頃の岬を「青岬」と呼びます。四国では、太平洋に突き出る室戸岬、足摺岬、そして愛媛の佐田岬半島を思い浮かべます。海に突き出る半島の先端には、絶え間なく波が押し寄せています。激しく砕け散る波が、あたかも真っ白なフリルのように、青葉の繁る岬を縁取ります。空から俯瞰したような景色で、色の対比が鮮やかです。
(監修:谷)
2024.06.24 放送
木や草に降る雨が明るいのは、そこに蝸牛がいるから、という句。でんでんむし、まいまいなどの親しい名を持つ蝸牛は姿が愛らしく、見過ごせません。雨の中に灯る小さな明かりのような存在なのでしょうか。実は野菜などを食べる害虫なのですが。触れるとひっこめてしまう二対の角のうち、長い方の先端に目があるそうですよ。
(監修:谷)
2024.06.21 放送
青田を一緒に見ていた子がふと、おなかの中にいたときの胎内記憶を話し出しました。青田を吹きわたる風の音の優しさも、胎内で聞いていた音に似ているでしょうか。私たちの生まれるずっと昔から、耕され引き継がれてきた田んぼの風景。青田を見つめていると、根源的な懐かしさにかられます。
(監修:神野)
2024.06.20 放送
青田の中を、鈍行列車がゆっくり進んでゆきます。ブレーキをかけるにも、乗客を驚かさないよう、揺れを抑える配慮を感じたのでしょう。ブレーキのかけ方から受け取った優しさに、心もすがすがしくなり、吹きわたる風も、青田の光も、やさしくきらめきます。
(監修:神野)
2024.06.19 放送
社会が変化する中で、農業の後継者を育てることも喫緊の課題です。田んぼを維持するのが大変で、規模を縮小せざるを得ない農家も、廃業する農家もあります。広がる田んぼのうち一枚は米作りをやめ、その土地にいつの間にかコンビニが建っていました。青田の風景にも、時代の移り変わりが訪れています。
(監修:神野)
2024.06.18 放送
進学や就職などでふるさとを離れ、東京で暮らしはじめた家族や友人へ、あたたかいメッセージです。東京には慣れましたか。こちらは田植も終わり、青田に風が吹きわたっていますよ。ふるさに待つ人がいると思うと、つらいときにも頑張れるものです。夏の帰省を楽しみに、それぞれの場所で、あともうひと息。
(監修:神野)
2024.06.17 放送
一面の青田のその先に、さらに湖の広がる大きな風景を詠みました。「青田」を二回重ねることで、いきいきと景色が広がり、青田の中を進んでゆく臨場感も生まれます。雨の季節、青田に満ちる水の匂いが湖へひらけるとき、世界はゆたかに水の気配で満たされます。
(監修:神野)
2024.06.14 放送
ストレスが蔓延する現代の社会の中では、ふとしたきっかけで、つながりから心を閉ざしてしまうこともあります。今は引きこもっている子どものもとへ、青田風よ、力強く吹いてくれないか。部屋の外に目を向けて、世界は案外自由なのだと気づいてくれたら。青田のすこやかな広がりに、祈りを託します。
(監修:神野)
2024.06.13 放送
原子爆弾の被害で亡くなられた方のお名前を記したのが「原爆死没者名簿」です。八月の平和祈念式典に奉納するため、今年も記帳が始まりました。青田を渡る風がやんだとき、目の前の平和な風景が、今のものなのか過去の記憶なのか、ふと分からなくなります。失われた命を悼み、平和への思いを新たにします。
(監修:神野)
2024.06.12 放送
田んぼにはさまざまな生きものがいます。その中でも、人間の血を吸う蛭は、あまり歓迎されません。青田で農作業を終えて戻ってきた父の足を見ると、蛭がはりついていました。ぎょっと驚く場面ですが、田んぼとともに生きる暮らしのリアルが、なまなましく切り取られました。迫力の一句です。
(監修:神野)
2024.06.11 放送
青田を風が吹き渡ると、稲の穂が水面のように波打ちます。これが「青田波」です。田んぼで農作業をして、持参したおむすびを食べているのでしょう。おいしく炊けたお米のつやも、青田の生む波の心地よさも、日常をしずかに輝かせます。「ぴかぴか」という言葉に、眩しくなり始めた夏の光が弾けます。
(監修:神野)
2024.06.10 放送
俳句では、田んぼにまつわる言葉も多く季語に採用されています。植えた稲が成長し、青々と穂を伸ばした状態を「青田」といいます。青空と青田が一面に広がるさまは、まるでこの世界をゆたかに分け合っているかのようです。天上の青空と、大地の青田。空間がひろびろと展け、たっぷりと風が吹き渡ります。
(監修:神野)
2024.06.07 放送
わざわざ「年金で」と、前置きしているのが可笑しいです。ささやかなぜいたくとして、蜜豆を食べられることに感謝しているのでしょうか。心して食べる、そんな雰囲気です。目の前にある蜜豆もまた、かしこまった感じです。四人組は、どこにでも一緒に行動する仲良し年金組なのでしょう。
(監修:谷)
2024.06.06 放送
庭に瑞々しく咲き始めた紫陽花。青紫や白色など重たそうに咲くのを満足げに眺めていたのではないでしょうか。「家居」ですから、朝からリラックスした部屋着のままです。それなのに、腕時計をきちんとはめている自分に気付いて、苦笑しているようです。気付いたあとも、外さずにいそうな生真面目な横顔が見えます。
(監修:谷)
2024.06.05 放送
喧嘩分かれしたわけではなく、それぞれの生活の変化で解散を決めたバンド。「解散しても会ふ」は、今、誓った言葉ともとれますし、解散してしばらくぶりに会っている場面ともとれます。みんなで食べているのは、蜜豆かかき氷か。いまだ音楽への熱い思いを分かち合うメンバーに、可愛らしい白玉が不似合いなようで、今の若者らしいのかも。
(監修:谷)
2024.06.04 放送
ビールは一年中ありますが、うまさも消費量も夏が突出していますので季語としては「夏」です。解放感に満ちた空間で、仲間との乾杯の瞬間がビヤホールでの醍醐味でしょうか。ビールの追加や、料理を取りに動くたび椅子の背中をぶつけ合っている。ホールの賑わいが伝わります。ぶつける度に「すみません」と、言い合っているのでしょう。
(監修:谷)
2024.06.03 放送
コガネムシは、金属光沢の色をもち、夏の夜の明かりに飛び込んできます。二センチほどの大きさでぶんぶん飛び回るので、かなぶん、ぶんぶんの名もあります。うるさく飛ぶコガネムシを掴み、窓の外へ投げ捨てたのです。煌めいて消えていったあとの、思わぬ闇の深さにしばし立ち尽くしました。今年は、松山生まれの虚子の生誕百五十年にあたります。
(監修:谷)
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