2019年7月の俳句

  • 凌霄の きのふの数が 散らばりぬ

    2019.07.31 放送

    作者:朝妻力

    樹木や垣根などをよじのぼるように蔓を伸ばし、まるで炎のような大量の花を咲かせる「凌霄」。鮮やかな朱色で喇叭の形の凌霄の花は、夏の盛りを彩るとともに夏の終わりを告げる花ともいわれます。花の数が多く、散ってもどんどん咲き継ぐのも凌霄。朝の庭に散らばっているのは、きのう散った凌霄の花ですが、とても数えきれないほどの数です。

    (監修:池内)

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  • 欄に凭る橋涼み 見つつ過ぐ

    2019.07.30 放送

    作者:中村与謝男

    この句の季語は「橋涼み」。夏の暑さを逃れて、家の外や水辺などに涼を求めることを「涼み」といいますが、その時間や場所により「夕涼み」「朝涼み」「門涼み」「磯涼み」などのバラエティがあります。橋の欄干に凭れて心地よさそうに涼んでいる人を横目に、作者は急いで橋を渡っています。ゆったりと橋涼みをしている人を羨ましがってるのかもしれませんね。

    (監修:池内)

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  • 村に人 減るばかりにて 田水沸く

    2019.07.29 放送

    作者:大牧広

    梅雨も明けると、連日の強い日射しのもと、田の水の温度が上がってぬるま湯のようになります。これは田に鋤きこまれた藁や草などが腐って、ぷくぷくと泡を立てる状態。「田水沸く」という季語は、この現象を的確に表しています。過疎化の著しい村ですが、水田の稲は順調に育っているようです。作者は、去る4月20日、88歳でお亡くなりになりました。

    (監修:池内)

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  • 土用蜆 母へも少し 買ひにけり

    2019.07.26 放送

    作者:星野麦丘人

    明日は土用丑の日です。土用の時期はとても暑いので、体にいいものを食べて乗り切ろうという風習が残っています。そのひとつが土用蜆。夏の蜆は、産卵期を迎えて栄養豊富です。土用蜆を求めるとき、一人住む母のことを思い出して、母のぶんも買いました。季節の食材を通して、母に元気でいてほしいという願いがこめられています。

    (監修:神野)

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  • 自動ドア ひらくたび散る 熱帯魚

    2019.07.25 放送

    作者:岡田由季

    水槽の中で涼しげに泳ぐ熱帯魚は、夏の季語です。ビルの自動ドアを入ったところに、水槽が据えられているのでしょう。人が通ってドアがひらくたび、熱帯魚たちは驚いてパッと散り、しばらくするとまた落ち着いて泳ぎはじめます。熱帯魚のナイーブな反応に、夏のほのかな愁いを感じつつ、水槽に広がる色彩の美しさに見とれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 小瑠璃飛ぶ 選ばなかつた 人生に

    2019.07.24 放送

    作者:野口る理

    小瑠璃は、全長十四センチほどの、瑠璃色の小鳥です。夏になると南から渡ってきて、日本の山で子育てをします。過ぎゆく日々の中でふと、あったかもしれないもう一つの人生を想像したとき、その選ばなかった世界に、サッと小瑠璃が飛びました。人はときおり、失われた時間をまぶしく思いつつ、私の選んだ人生の日々に戻ってゆくのでしょう。

    (監修:神野)

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  • 暮れぎはも 大暑の欅 ゆるぎなし

    2019.07.23 放送

    作者:藤田湘子

    一年を二十四の季節に分類する二十四節気、今日から大暑です。一年で、もっとも暑さがきびしいころといわれています。太陽がやっと沈む暮れぎわになっても、まだまだ暑さが緩みません。その中で、枝葉を茂らせた大きな欅の木が、ゆるぎなく堂々と立っています。暑さの中でも凛々しさを失わない欅の姿が頼もしいですね。

    (監修:神野)

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  • 睡蓮を わたり了せて 蝶高く

    2019.07.22 放送

    作者:高浜年尾

    睡蓮は、水面に葉を浮かべて咲く花です。画家のモネに愛されたことでも有名ですね。睡蓮の上を飛ぶ蝶が、花咲く池を渡り終え、高い空へと舞い上がるさまを詠みました。夏の午後をうっとりと咲く睡蓮と、ふわりと空へ消えてゆく蝶とが、幻想的な瞬間を作り出します。

    (監修:神野)

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  • 水蒔きの母に 夕風ついてゆく

    2019.07.19 放送

    作者:黛まどか

    夏の暑さ、埃を鎮めて、涼しくするために庭や路地などに水を撒きます。「水蒔き」あるいは「打水」という季語で、俳句にもよく詠まれます。夕方、お母さんがバケツの水を柄杓で撒いています。水を打たれた地面からは、ひんやりと涼気がたちのぼり、心なしか微かな風も感じられます。この現象を、この句は「母に夕風ついてゆく」と捉えています。

    (監修:池内)

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  • 滝落ちて 落ちて白濁 滝壺は

    2019.07.18 放送

    作者:今井妙子

    高い山や切り立った崖の多い日本には、多くの「滝」があります。水しぶきをあげて崖を流れ落ちる滝は、まことに涼しげな夏の眺めですが、季語として俳句に詠まれるようになったのは明治以降のことです。この句は、勢いよく流れ落ちる滝の眺めから、流れ落ちた果ての滝壺に視点を移し、落ちた勢いで白く濁った水をクローズ・アップしています。

    (監修:池内)

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  • 中天に 少しうるんで 夏の月

    2019.07.17 放送

    作者:黒川悦子

    ただ「月」といえば秋の季語。「夏の月」は昼間の暑さからやっと解放された夕涼みの折や、寝つかれない夜中に開けっ放しの窓から見たりする月です。また海や山へ出かけた時に、思いがけない明るく大きな月に出会うこともあります。この句は夕涼みをしながら見上げている月でしょうか。湿気の多い天心にかかる月は、少しうるんで見えています。

    (監修:池内)

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  • 塔頭に沙羅咲き 雨の美しく

    2019.07.16 放送

    作者:安食彰彦

    沙羅はツバキ科の落葉高木で、高さは10メートル以上にもなります。真夏に咲く「沙羅の花」は、椿に似た白い五弁の花。本来の名は「夏椿」ですが、お釈迦様が涅槃に入った沙羅双樹に似ているので沙羅と呼ばれるようになりました。この句は禪寺に咲いている沙羅の花でしょう。沙羅の花に降る雨が、お寺の塔にも美しく照り映えています。

    (監修:池内)

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  • 透きとほる 珊瑚の海や 雲の峰

    2019.07.15 放送

    作者:栗田やすし

    積乱雲、いわゆる入道雲を山にたとえた季語が「雲の峰」です。もくもくと盛り上がって真っ白に輝く入道雲は、まさに夏の象徴といえるでしょう。この句は、珊瑚の群生で知られる海のかなたに湧きあがっている雲の峰。真っ白な雲の峰が、透明な珊瑚の海に美しく照り映えています。そういえば、今日は七月の第三月曜日。海の日ですね。

    (監修:池内)

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  • 流木は 島の子の椅子 夏帽子

    2019.07.12 放送

    作者:中矢長宗(松山市)

    夏帽子をかぶった子どもたちが、浜辺の流木に座って、楽しそうに遊んでいます。島で育つ子たちにとっては、流木も憩うべき椅子になるのだと、そのおおらかな暮らしぶりをとらえました。彼らは海の光を見やりながら、どんな大人に育つのでしょうか。島に流れるゆったりとした時間が、彼らの夏をやさしく包みこみます。

    (監修:神野)

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  • パナマ帽 ひょんとひっかけ 三代目

    2019.07.11 放送

    作者:ぐ(神奈川県)

    夏帽子にも、麦わら帽子やカンカン帽など、いろいろな種類があります。パナマ帽も、椰子に似たパナマソウの葉で作られる夏帽子の一種です。丈夫で軽く、おしゃれな男性がかぶるイメージですね。代々続く店の三代目が、粋にかぶったパナマ帽には、彼の遊び心が表れています。さて帽子をかぶって、日差しの下、どこへ遊びにゆくのでしょう。

    (監修:神野)

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  • 銀幕の 谷へ落ち行く 夏帽子

    2019.07.10 放送

    作者:北原早春(東京都)

    銀幕とは、映画を映すスクリーンのこと。映画館で映画を見ていると、風に飛ばされた夏帽子が谷間へ落ちてゆく、そんな印象的なワンシーンがあったのです。「銀幕の谷」という省略の効いた表現があざやかですね。銀幕も夏帽子も、どこか懐かしさを呼びさますもの。失われた時代への郷愁を駆り立てる一句です。

    (監修:神野)

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  • シーサーの 巻き毛くるりと 夏帽子

    2019.07.09 放送

    作者:松本伴子(松前町)

    シーサーは、沖縄に伝わる魔よけの守り神です。鬼瓦のように、家々の門や屋根などに据えられます。夏帽子を携えて沖縄へ旅をしたとき、シーサーに、くるりとかわいい巻き毛を見つけました。小さな発見も、旅の楽しさの一つですね。シーサーの描写に夏帽子を組み合わせたシンプルな構成で、まぶしい旅の一場面をありありと描き出しました。

    (監修:神野)

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  • 夏帽子 振りて舟呼ぶ 三津渡し

    2019.07.08 放送

    作者:竹本桂子(久万高原町)

    五百年の歴史をもつ三津の渡しは、松山市三津浜を運行する渡し舟です。小さな湾を、舟で向こう岸まで連れて行ってくれる、片道二分の旅。今も松山市の公道として、多くの人が利用しています。向こう岸にいる舟を呼ぶために、かぶっていた夏帽子を脱いで、大きく振ります。夏の日ざしにきらめく瀬戸内海の、やさしい波まで見えてきますね。

    (監修:神野)

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  • 蓮開き切らざる様の 美しき

    2019.07.05 放送

    作者:大橋晄

    インド原産といわれる「蓮」は、食用の蓮根として古くから池、沼や水田で栽培されています。真夏に咲く白や薄紅色の十六弁の花は、夜明けとともに開き、そのときポンと音を立てるともいわれ、それを確かめるため早朝に蓮見に出かける人もいるほどです。この句も早朝に詠まれたものでしょう。まだ開き切ってない蓮の美しさに注目しています。

    (監修:池内)

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  • 風鈴や 芯まで眠る 赤ん坊

    2019.07.04 放送

    作者:柴田佐知子

    夏の暑さをしのぐための工夫の一つが、昔から愛用されてきた「風鈴」です。金属、ガラス、陶器などの鈴を風通しの良いところに吊し、音によって涼しさを楽しむ。人間の脳が風鈴の音色を涼しさに変換しているのでしょう。風に鳴る風鈴は、見た目も涼しげで美しいものです。赤ん坊も、風鈴の音のなかで気持ちよさそうに、ぐっすりと眠っています。

    (監修:池内)

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  • 甘酒を 母の甘さとして啜る

    2019.07.03 放送

    作者:蟇目良雨

    柔らかいご飯やお粥に麹を加え、六、七時間発酵させたものが「甘酒」。「一夜酒」ともいわれ、夏に熱くしたものを飲むと、かえって暑さを忘れさせてくれます。水泳などで冷えた体を温めるのにも飲まれます。アルコール分はほとんどなく、子供が飲んでも大丈夫です。作者は、今もお母さんの温めてくれた甘酒の甘さが忘れれないようです。

    (監修:池内)

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  • 落し文 山頭火から かも知れず

    2019.07.02 放送

    作者:池田琴線女

    「落し文」とはオトシブミ科の昆虫で、広葉樹の葉を丸めて巣を作り、中に卵を産みつけ、枝先にぶら下がったり、時には丸めた巣が地上に落ちていたりします。その様を、公然と言えないことを記し、わざと道などに落としておく文書に見立てた季語です。この句の落とし文は、放浪の俳人種田山頭火ゆかりの地で見つけたものでしょう。もしや山頭火からの文では、などと作者は想像を逞しゅうしています。

    (監修:池内)

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  • それとなく 団扇の風を 遠くより

    2019.07.01 放送

    作者:小原啄葉

    細い竹の骨組に紙を貼り、柄をつけたものが「団扇」。あおいで風を起こす身近な道具です。扇子がよそ行きなら、団扇は家庭用の寛いだ感じで、あおいで涼をとるほか、蚊や蝿を追い払うにも便利です。これは一家団欒の情景でしょうか。寛いでいる奥さんに少し離れた所から、さりげなく団扇の風を送るご主人。優しさのあふれる一句です。

    (監修:池内)

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