2020年11月の俳句

  • 切干の ちぢみはじめの色となる

    2020.11.30 放送

    作者:白岩敏秀

    細かく切った大根を、吊したり筵の上に広げたりして一週間ほど天日に干し、冬の間の保存食とします。これが「切干」です。切干は煮物、酢の物、味噌汁の具、はりはり漬けなど、色々な料理に使われます。干しはじめの切干は真っ白な大根の色をしていますが、日に当たるにつれて縮みはじめ、色もだんだん茶色みを帯びてきます。そうした切干の変化する姿に注目している作品です。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 郷土史に 獺亡滅ぶ 冬の波

    2020.11.27 放送

    作者:橋本直

    愛媛の県獣に指定されているカワウソは、かつては県内にも多く生息していましたが、高度経済成長期の環境の変化により、絶滅したといわれています。川から海へ移り住み、養殖魚を狙って網にかかることもあったとか。冬の冷たい波が、その過酷な運命を物語ります。橋本さんは八幡浜市出身の俳人。今年六月刊行の第一句集『符籙(ふろく)』収録の一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 業務連絡 木枯のドア閉めよ

    2020.11.26 放送

    作者:辻美奈子

    業務連絡というドライな日常の言葉の中に「木枯」という季語がまぎれこみました。たしかに、ひらいたドアから冷たい風が吹き込んだら、「そのドアを閉めて」と言いたくなります。強い命令口調が、凩の厳しさ、寒さへの忌避感を伝えます。この冬は、コロナ対策で換気も必要とのこと。単純に「閉めよ」とはいかないのが難しいところです。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 段畑も 冬の蜻蛉も 乱反射

    2020.11.25 放送

    作者:宮坂静生

    そびえ立つ段々畑に海の光が乱反射して、静かに輝いています。目をこらせば、冬なのにまだ蜻蛉も飛んでいます。きっと、あたたかい土地柄なのでしょう。「乱反射」という言葉からは、風景の立体感も伝わってきますね。生きものたちが息をひそめる冬の季節にも、たしかな光を見出しました。最新句集『草魂』収録の一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 星型の 人参二つ 機内食

    2020.11.24 放送

    作者:渡部ひとみ

    キャビンアテンダントの運んできた機内食に、星型に抜いた人参がふたつ、ちょこんと載っていました。フライトを楽しんでもらおうという心意気が嬉しいですね。人参が冬の季語です。ぴんと張りつめた外気を思いつつ、やさしい甘さに表情がほころびます。渡部さんは松前町在住の俳人。今年九月に刊行の第一句集『水飲み場』収録の一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • つけまつげ外す 勤労感謝の日

    2020.11.23 放送

    作者:三橋瑞恵

    今日は勤労感謝の日です。勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう日として、祝日に制定されました。仕事に行く日はばっちりメイクする人も、勤労感謝の日にはつけまつげを外し、気楽に過ごすのでしょう。人それぞれに、気合いの入れ方、リラックスの仕方があるのですね。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 波郷忌の落葉 かの日もかく踏みき

    2020.11.20 放送

    作者:鈴木しげを

    明日は「波郷忌」。松山生まれの俳人石田波郷は、水原秋桜子に才能を認められて上京。人間探求派と呼ばれる作風で俳壇の第一線で活動し、昭和44年11月21日、56歳で亡くなりました。作者は波郷の愛弟子で、波郷創刊の「鶴」を継承している方。半世紀前に波郷を見送ったあの日と同じように、落葉を踏んで波郷の墓に詣でつつ、偉大な師を偲んでいます。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 冬紅葉 水に映りて 緩びなく

    2020.11.19 放送

    作者:小圷健水

    冬に入っても木の梢などに紅や黄色の葉がびっしりと残っているのが「冬紅葉」です。日に日に風が冷たくなり、霜が降りたりするなかで、寒さに耐えながら色を深めてゆく姿には、秋の紅葉とはちがう凛とした風情が感じられます。これは池のほとりの冬紅葉でしょうか。水に鮮やかな色を映しています。下五の「緩びなく」という表現が、冬紅葉の存在感を際立てているようです。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 好物に がんも牛すぢ 大根も

    2020.11.18 放送

    作者:朝妻力

    冬に入り、おでんの恋しい季節です。おでんは田楽の略称。今は醬油味の汁たっぷりの煮込みおでんで、蒟蒻、はんぺん、竹輪、卵など、食材も多種多様です。作者は、ことに鴈擬き牛筋肉が好物のようです。そして締めはやっぱり大根、というのは誰しも異論のないところでしょうか。敢えて「おでん」という季語を使わないで、おでんの魅力に迫った一句です。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 観音の 臍美しく しぐれけり

    2020.11.17 放送

    作者:岩岡中正

    冬の初めに降る通り雨が「時雨」。降る時間は短く、降る範囲も限られています。古くから歌や俳句に詠まれ、旧暦十月を時雨月とも呼びます。この句のように「しぐれる」と動詞化することもあります。これは野に高く立つ観音菩薩でしょう。観音さまに降りそそぐ時雨が、ことにお腹の中央のあたりを美しく濡らしています。ぱらぱらという時雨の音も聞こえて来そうです。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 浮雲を ひよいと引き寄せ 神の旅

    2020.11.16 放送

    作者:荻原都美子

    初冬の旧暦十月には、全国各地の神々が出雲大社に集まるとされています。これが「神の旅」です。出雲に集まった八百万の神々は、縁結びの談合をしていると考えられています。この句は、雲に乗って出雲へと旅立つ神の姿を想像した、愉快な作品です。神々が出雲へ旅立った諸国では神様が不在となります。そのことを季語では「神の留守」といいます。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 地震の國 なだめるやうに 落葉かな

    2020.11.13 放送

    作者:宍野宏治(松山市)

    日本はまさに地震の国。その大地をなだめるように、落葉が降っていると捉えました。落葉が積もったからといって、科学的に地震がやむわけではありません。それでも、土を覆ってゆたかにする落葉に、特別な力があるような気もしてきます。落葉の再生力に、いくたび地震に襲われても復興へ前を向く、日本人の強さを思います。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 旅券より こぼるるユーロ 落葉風

    2020.11.12 放送

    作者:竹本桂子(久万高原町)

    片付けの途中、ふとパスポートをひらいたら、ヨーロッパを旅したときのユーロ紙幣がひらり。なつかしいなあと旅を思い返しつつ、窓を見れば落葉の季節です。新型コロナウイルスの流行で海外へもなかなか行けない今、日本では使えない紙幣も、落葉みたいなものかもしれません。落葉のまとうわびしさを感じる一句です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 落葉二枚で 爺じも乗れた 縄電車

    2020.11.11 放送

    作者:八木重明(松山市)

    孫たちが、縄電車をしてにぎやかに遊んでいます。じいじもそこに加わろうと、落葉を拾って切符に見立てました。この切符で乗れますか? どうぞどうぞ。落葉二枚で、じいじも晴れて、縄電車の一員となりました。冬のはじめのひだまりの、ほがらかなひとコマです。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 子規の背に 道灌山の 落葉かな

    2020.11.10 放送

    作者:土居信勝(松山市)

    明治28年12月9日、子規は弟子の高浜虚子を誘い、根岸の子規庵からほど近い、道灌山を訪れました。病気で余命を悟った子規は、俳句の仕事を引き継ぐよう頼みます。ところが虚子は「学問をする気はない」と断りました。残された子規の背には、落葉が降りしきります。臨場感のある季語が、歴史の場面をあざやかに再現しました。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 落葉より 箒掘り出す 尼僧かな

    2020.11.09 放送

    作者:霞山旅(宮城県)

    落葉の中に埋もれていた箒を取り出して、また落葉を掃くのでしょう。「掘り出す」という表現がユニークですね。降り積もった落葉の、ゆたかな嵩が見えてきます。掃いては積もり、また掃いては積もり。落葉樹に囲まれた、静かな尼寺の日常です。

    (監修:神野)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 掃き寄する 土のにほひの 冬に入る

    2020.11.06 放送

    作者:梶原美邦

    暦の上では秋は今日まで。明日は二十四節気の「立冬」です。俳句では「冬立つ」「冬来る」「冬に入る」ともいいます。これからは少しずつ日ざしも弱まり、日の暮れるのも早くなります。冬を迎える緊張感を覚えるのも、この季節です。作者は日ごろから土に親しんでおられるのでしょう。掃き寄せた土の匂いに、冬の到来を感じ取っています。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 行く秋や 書きて送らぬ 文ひとつ

    2020.11.05 放送

    作者:宮田正和

    「行く秋」は、ただ秋が過ぎ去るという意味だけではなく、秋の終りを惜しむ心のこもった季語。「秋の名残」「秋の別」ともいいます。四季の中でも、秋は春とともに過ぎ去るのが惜しまれる季節なのです。せっかく書いたのに出さないままの一通の手紙。何か問題を抱えたまま、秋に別れを告げようとしているのでしょうか。微妙な心理の感じられる一句です。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 遊びゐて ある日にはかに 冬支度

    2020.11.04 放送

    作者:市場基巳

    秋も終るころになると、冬の寒さ対策や雪への備えなど、様々な準備に心がせかされてきます。そのための実際の作業や心持ちをひっくるめて「冬支度」「冬用意」といいます。冬用の衣類や寝具、暖房器具、さらに雪国では雪吊りや家まわりの対策など様々です。うっかり日を過ごすうちに、気がつけばもう冬がそこまで来ていました。慌てふためきながら冬支度にとりかかっている姿を詠んでいます。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 俳句こそ 一の自分史 文化の日

    2020.11.03 放送

    作者:上田日差子

    きょう十一月三日は「文化の日」。「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ため制定された国民の祝日です。文化の日にあたり、作者はご自身の歩みを振り返っています。昭和時代を代表する俳人の一人であった父・上田五千石の詩精神を受け継ぎ、ポエジーのある俳句をめざして来られました。そうした俳句こそ、自分史そのものだという、著名な女流俳人ならではの自負の感じられる作品です。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める
  • 釣橋を渡る 全山紅葉晴

    2020.11.02 放送

    作者:野見山ひふみ

    晩秋の日本列島を鮮やかに彩る「紅葉」。寒さや霜にあうことで、落葉樹の葉が赤や黄色に染まる現象です。音読みで「コウヨウ」ともいいます。山裾にかかる釣橋を渡りながら見上げると、山はすべて美しい紅葉に被われ、その上に青々とした晩秋の空が広がっています。「紅葉晴」という季語が、まことに快く感じられる一句です。

    (監修:池内)

    音声で俳句を聞く/止める

テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

7月のお題「風鈴」の
応募は締め切りました

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

個人情報の取り扱いについて

頂いた個人情報は、優秀句に選ばれた方への事前連絡並びに記念品をお送りする際にのみ使用させて頂きます。

俳句の応募はこちら

メールアドレスからの応募: 応募先メールアドレス

ハガキからの応募:
〒790-8537 テレビ愛媛「きょうの俳句」係

すべての俳句を聞く
掲載されている句がランダムで再生されます
すべて聞く/止める

最新の俳句

バックナンバー

pagetop