2020年8月の俳句

  • 四五人の 声が田を行く 厄日かな

    2020.08.31 放送

    作者:黛執

    今日は二百十日。立春から二一〇日目で、早稲が花をつける時期と重なるため、農家では台風などの大風を恐れて「厄日」とも呼ばれます。十日後の二百二十日も同様です。風を鎮めるための風祭の行事も、各地に伝わっています。この句は、話しながら田を見廻っている農家の人々。どうやら稲は順調に成育しているようです。

    (監修:池内)

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  • 化膿した地球を 燦々と花火

    2020.08.28 放送

    作者:山根大知(松山東高校)

    この夏、俳句甲子園と並行して開催された「センバツ!全国高校生即吟俳句選手権」で最高点を獲得した一句です。「化膿した地球」が意味するのは、世界がウイルスに苦しむ現状でしょうか。人間による環境破壊でしょうか。かつて花火は疫病退散の祈りをこめ打ち上げましたが、この夏は軒並み花火大会も中止となりました。燦燦と輝く幻の花火に、地球の今、人間の今を思います。

    (監修:神野)

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  • 泥棒も 浪人生も 花火かな

    2020.08.27 放送

    作者:飯尾久翔(済美平成)

    この夏、俳句甲子園と並行して開催された「センバツ!全国高校生即吟俳句選手権」で特別賞に選ばれた一句です。四十分の作句時間で、お題の「花火」を用い、即興で詠みました。泥棒も浪人生も、この社会から少しはみ出した存在です。社会に対して疎外感を覚える人たちにも、花火は平等に、光をこぼします。みんなに優しい、夏の夜です。

    (監修:神野)

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  • 口笛が 消えゆく孤島 冷奴

    2020.08.26 放送

    作者:塩見將門(今治西高校伯方分校)

    今年の俳句甲子園で優秀賞に選ばれた一句です。「口笛が消えゆく孤島」、どんなさすらいの舞台かと思いきや、実は冷奴のことでした。皿の上にぽつんと浮かぶ冷奴を、孤独な島に見立てたのでしょう。あるいは、本当に誰もいない島で、一人、冷奴を食べているのかもしれません。明るい口笛が、切ない夕べに消えてゆきます。

    (監修:神野)

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  • 無言を以て 緑蔭をわかちあふ

    2020.08.25 放送

    作者:伊藤恵一(松山東高校)

    今年の俳句甲子園で優秀賞に選ばれた一句です。緑蔭とは、青葉が作る木陰のこと。日差しを避けて緑蔭にいる二人は、言葉を交わすことなく、ただ風に吹かれています。その無言の涼しさこそが、緑蔭を分かち合うことなのだと、哲学的に捉えました。ソーシャルディスタンスを保つ今だからこそ、この句の程よい距離感が、心にしみわたります。

    (監修:神野)

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  • 太陽に 近き嘴 蚯蚓を垂れ

    2020.08.24 放送

    作者:田村龍太郎(海城高校)

    今年の第23回俳句甲子園で最優秀賞に選ばれた一句です。輝く太陽の光を浴び、一羽の鳥が悠々と飛んでゆきます。その嘴には捕らえた蚯蚓が垂れていました。生きるために蚯蚓を食らう、力強い鳥の生きざま。人間社会の混乱とかかわりなく、この世界をめぐり続ける命のありようを、神話のようなおおらかさで、堂々と詠み上げました。

    (監修:神野)

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  • 草の香に むせびつつ 虫送りけり

    2020.08.21 放送

    作者:はりまだいすけ

    稲の害虫を駆除するため、村の人々が集まって松明をともし、鉦や太鼓を打ち鳴らしながら田の畦道をめぐり、村境や川などへ害虫を送り出すのが「虫送り」です。かつては、この季節の農村の重要な伝統行事でしたが、農薬の普及で害虫が減ったこともあり、次第にすたれて来ました。この句は「草の香にむせびつつ」というフレーズが、虫送りの有り様を生き生きと描いています。

    (監修:池内)

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  • 落つる音 きつとあるはず 桐一葉

    2020.08.20 放送

    作者:宮谷昌代

    桐の葉は大きく、この葉が風に誘われて舞い落ちる風情に秋を感じる、というのが「桐一葉」という季語の由来です。単に「一葉」とか「一葉落つ」でも、桐の一葉を意味します。俳句では桐の葉が一枚ずつゆるやかに落ちる様や、他に横たわる姿がよく詠まれますが、作者は大地に触れる際の音を聞きとめようと、耳を澄ましています。

    (監修:池内)

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  • 蜩の声が 身ぬちを透けてゆく

    2020.08.19 放送

    作者:綾野南志

    夏の終りから秋にかけて、カナカナカナとよく響く声で鳴く「蜩」は、斑点のある黒っぽい体に透明な翅のある中形の蝉です。深い森や林の中を好み、明け方や夕方によく聞かれる澄んだ鳴き声は蝉の中でもっとも美しいと言われます。作者は、蜩の金属音のような澄んだ声が、身の内を透き通ってゆくようだと感じているようです。

    (監修:池内)

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  • 次の田も 畦の露草 踏まぬやう

    2020.08.18 放送

    作者:若井新一

    秋の朝、朝露に濡れながら可憐な花を凛と咲かせる「露草」。その透きとおるような藍色は、しみじみと秋を感じさせます。日本中の野や道端に見られ、昔は布を染めるのにも使われました。「月草」「青花」「蛍草」など、いろいろな呼び名があります。作者は、畦を美しく彩っている露草を踏まないよう、注意しながら、田を見廻っています。

    (監修:池内)

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  • 朝顔の 引き寄せてゐる 空の紺

    2020.08.17 放送

    作者:塩川京子

    蔓が支柱や垣根にからんで伸び、朝早くにラッパ状の花を開き、午前中にしぼむ「朝顔」。真夏から咲きますが、俳句では秋の季語です。千年以上もの昔、薬草として中国から伝わり、美しい花を愛でるために盛んに植えられるようになりました。花の色は赤、白、紫など多彩ですが、俳句に詠まれるのは何故か紺の朝顔が多いようです。この句のいうように、澄んだ空の色が朝顔にはいちばん似合うのかもしれませんね。

    (監修:池内)

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  • 新涼や 踏切越えて 寿福寺へ

    2020.08.07 放送

    作者:森田純一郎

    今日は立秋。暦の上では秋に入りました。「新涼」は、立秋を過ぎて、夏とは違うしみじみとした涼しさを感じることを表す季語。そんな新涼の季節に、関西にお住まいの作者は鎌倉までお出かけになりました。駅を出て踏切を越えた先に臨済宗の寿福寺があります。もとは源義朝の屋敷であったこのお寺には、高浜虚子のお墓があります。新涼の清々しい気分で、虚子の墓をめざしている一句です。

    (監修:池内)

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  • まさをなる 空へ祈るや 原爆忌

    2020.08.06 放送

    作者:黒川悦子

    75年前の今日八月六日、広島にウランを用いた原子爆弾が、同じく九日には長崎にプルトニウムを用いた原子爆弾が投下されました。人類への初めての核兵器使用であり、いずれも多くの死傷者を出しました。暦の上では六日が夏、九日が秋なので、「原爆忌」は歳時記により夏の季語のものと秋の季語のものがあります。いずれにせよ「原爆忌」は、季節の情趣などではなく、ひたすら平和を祈る日でありたいものです。

    (監修:池内)

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  • 草田男の 万緑の海 泳ぎたし

    2020.08.05 放送

    作者:河野薫

    見渡すかぎりの深い緑色となる真夏の草木の生命力を表す季語が「万緑」。中村草田男が<万緑の中や吾子の歯生え初むる>と詠んでから、季語として定着しました。この句の万緑は、魚類の繫殖・保護のために海岸に植えた魚付林でしょうか。海に映える緑を見ていると、魚といっしょに泳ぎたくなります。今日八月五日は草田男忌。昭和58年のこの日、草田男は82歳で亡くなりました。

    (監修:池内)

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  • 灯を消して 波の音聞く 晩夏かな

    2020.08.04 放送

    作者:川崎陽子

    文字どおり夏の終りを表す「晩夏」は、旧暦六月の別名でもある季語です。今日は旧暦六月十五日。まさに晩夏の最中です。まだまだ暑い盛りですが、夏の日射しにもやや翳りが感じられ、自然は秋の兆しを見せ始めています。夜、海に面した部屋の明かりを消して波の音を聞きながら、夏の疲れによる倦怠感の中で、過ぎゆく夏を惜しんでいる心の感じられる一句です。

    (監修:池内)

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  • 羅や 遺品少なくしておかむ

    2020.08.03 放送

    作者:大石悦子

    透けて見えるほど薄い絹の生地で仕立てた夏の着物を「羅」といいます。透き通っている様が蝉の翅のようだ、というので「蝉の羽衣」とも呼ばれます。七月から八月にかけて女性の外出着として用いられ、見るからに涼しげです。作者は今年82歳の方。羅に袖を通しながら、ご自身の身辺も、この羅のようにすっきりと整理し、物を少なくしておきたいと、考えておられるようです。

    (監修:池内)

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