2023年1月の俳句

  • 朝練へ 雪のスナック街抜けて

    2023.01.31 放送

    作者:斉藤志歩

    夜は賑わっていたスナック街も、朝は打って変わって静かです。雪の日ならなおさら、ふだんとは違った雰囲気でしょう。近くに住んでいる若者が、部活動の練習のために、早朝のスナック街を抜けていきます。日常はそこかしこに遍在するのだと、さわやかに教えてくれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 仕舞ふとき スケートの刃に 唇映る

    2023.01.30 放送

    作者:岩田奎

    冬を代表するスポーツ、スケートも冬の季語です。ひととおり滑り終わり、スケート靴を脱いで仕舞うとき、持ち上げた靴の刃に、唇が映りました。スケートを終えたあとの唇は、血行がよく、赤さを増しているでしょう。ほんの一瞬の出来事ですが、忘れられない映像として、なまの命を刻みこみます。

    (監修:神野)

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  • 好きな絵に 戻りてきたる 毛糸帽

    2023.01.27 放送

    作者:中西夕紀

    美術館の光景でしょうか。見えなくなっていた毛糸帽を被った人が、また舞い戻って来ました。一枚の絵の前に、今度は深く佇んでいる気配です。「好きな絵」と察したくらいですから、目の輝きや表情も浮かんでくるようです。「絵は好きなものを見ればいいんだ。」という、前衛芸術家赤瀬川原平さんの言葉を思い出しました。

    (監修:谷)

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  • 寒椿 老いてますます 従わず

    2023.01.26 放送

    作者:中原幸子

    思わず笑ってしまう、痛快な一句です。老年になってからは、何事も子に任せておくのがよいという慣用句「老いては子に従え」を踏まえています。ますます従わないと言い放ったところに、頑固(がんこ)というより老人のカッコ良ささえ感じます。若い人の心配をよそに、老いの境地を謳歌するのです。寒椿の凛とした姿と重なります。

    (監修:谷)

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  • もう戻れない マフラーをきつく巻く

    2023.01.25 放送

    作者:黛まどか

    心に期したことは「もう戻れない」こと。戻れないのは、今過ごしていた場所やあるいは人間関係かも知れません。彼と私なのかも。「戻らない」ではなく「戻れない」に、強さの中の悲しみも湧いてくるようです。ぎゅっと巻くマフラーは、その決心をさらに強く、でも暖かく包んでくれているようです。

    (監修:谷)

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  • 星座解く音 水鳥の目覚める音

    2023.01.24 放送

    作者:木村和也

    冬は、星が一番きれいに見えると言われます。オリオン座、ふたご座などが冬の代表的な星座です。その星座がほどけていく音は、すなわち水鳥の目覚める音であると、この句は言っています。どちらも、聞こえるはずのない音です。でも夜明け前、耳を澄ませてみたら、はるか宇宙のその音が聞こえそうな気がします。

    (監修:谷)

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  • 大寒の しゃわしゃわ洗う 洗濯機

    2023.01.23 放送

    作者:井上さち

    寒さが最も厳しい大寒は、今年は1月20日でした。以降2月3日までつづく寒中は、寒さに油断が出来ません。大寒と関係なく、洗濯機の中は軽やかに動きます。「しゃわしゃわと」が、気持ちよさそうに洗っている水の動きを表現しています。覗いてみたい気になりますが、蓋を開けると止めてしまいますね。

    (監修:谷)

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  • 大根炊く 家族今生だけのもの

    2023.01.20 放送

    作者:石浜西夏(大阪)

    大根を炊いているとき、ふと、この家族と一緒にいられるのは今の人生に限ったことなのだなあと、思いをめぐらせました。どんな家族も、この世に生きているあいだの、束の間の存在です。だからこそ、ともに過ごす時間が、かけがえがなく尊いのです。いっしょに大根を食べる当たり前の日常を、大切に過ごしたいものです。

    (監修:神野)

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  • 涙拭いて すきとほるまで 大根煮る

    2023.01.19 放送

    作者:緒方朋子(北海道)

    こらえきれない気持ちがあって、涙を流してしまうこともあります。そんな日でも、人は生きていくために、何かを食べなければいけません。涙を拭いて、台所に立って、大根を煮ます。大根が透けてゆくほどに、私の心の淀みも、透明に消えてゆくよう。誰にも見せない涙の風景を、静かに書きとりました。

    (監修:神野)

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  • 震度は三 大根の煮崩れてをり

    2023.01.18 放送

    作者:しまのなまえ(八幡浜)

    震度三だと、そこまでではないにせよ、揺れをたしかに感じる強さです。大根が煮崩れたのは、まさか、地震で揺れたせいだったりして。それだけ柔らかく煮上がった大根が見えてきます。大根を煮るいつもの日常にも、災害は隣り合わせなのだという事実に気づかされます。

    (監修:神野)

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  • 大根へ 隠し包丁 辞表書く

    2023.01.17 放送

    作者:小川さゆみ(埼玉)

    大根を煮るとき、下ごしらえに隠し包丁を入れます。輪切りの片面に切れ込みを入れることで、火の通りがよく、味がしみこみます。大根を鍋に煮ながら、テーブルで辞表を書いているのでしょう。提出まで辞表を隠し持つひそやかさが、隠し包丁の「隠し」の言葉と響き合います。どの日常にもドラマはあるのだと思い出させる一句です。

    (監修:神野)

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  • 風呂吹大根 阿波の麦味噌 土佐の柚子

    2023.01.16 放送

    作者:じゅうめい(松山)

    大根のレシピはさまざまですが、厚切りで煮て柚子味噌などをかけたのが、風呂吹き大根です。 熱いうちにふうふう冷ましながら食べるので、その名がつきました。柚子味噌を作るのに、徳島の麦味噌と高知の柚子を使って、四国らしい風呂吹き大根の出来上がりです。この大根はきっと、愛媛産ですね。

    (監修:神野)

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  • 大根の 花が見たくて 抜かず置く

    2023.01.13 放送

    作者:藤本加奈子(松山)

    大根は抜くもの、食べるものだと思っていましたが、花が見たいから、抜かないで畑でそのまま育てるという発想に驚きました。大根は、白や淡いむらさきのすこやかな花を咲かせます。畝の大根のうち、一本だけは残して咲かせる、そんな風に畑の時間を楽しむ姿が、いきいきと伝わる一句です。

    (監修:神野)

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  • 大根焚く 家なき若者のために

    2023.01.12 放送

    作者:立部笑子(愛知)

    大根は、比較的手に入りやすい価格で、一本でもたっぷりと量があるので、庶民の味方の野菜です。貧困に陥って住む家のない若者たちのために、少しでも腹の足しになるよう、炊き出しをしているのでしょう。自己責任と切り捨てるのではなく、社会の責任として受け止める姿勢が、大根のやさしい甘さと重なります。

    (監修:神野)

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  • 大根の煮えて 満月よりも丸

    2023.01.11 放送

    作者:ぞんぬ(神奈川)

    大根は、生のままでサラダにしたり、すりおろして和えものにしたりと、調理法もさまざま。そんな中でもやはり、シンプルな煮物は、王道のおいしさです。輪切りにした煮大根の断面を、作者は、満月よりも丸いと褒めたたえました。美しい月になぞらえることで、大根の存在がぐっと輝きます。

    (監修:神野)

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  • 大根を洗うや ホースから氷

    2023.01.10 放送

    作者:渡部茂由子(久万高原)

    畑から抜いた大根は、土がたっぷりついています。その土を洗い流そうと屋外の蛇口をひねると、ホースの中が凍っていたので、水が氷ごと飛び出しました。それだけ、冬の冷え込みが厳しいということです。寒い中での農作業のおかげで、私たちの食卓にも大根が届きます。

    (監修:神野)

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  • 帰りしな寄りよ 大根抜くけんね

    2023.01.09 放送

    作者:はくたい(今治)

    大根は、冬の食卓に欠かせない野菜です。畑から抜いたばかりの大根は、どっしりと立派で、みずみずしさも抜群です。親しい人を訪ねたとき、また帰りに寄りなさい、大根を抜いて用意しておくからね、と声をかけてもらいました。伊予弁を詠みこんだことで、人の心のあたたかさが、やわらかく伝わります。

    (監修:神野)

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  • 松とれて ながく怠けし 頭を叩く

    2023.01.06 放送

    作者:能村登四郎

    元日から七日までを「松の内」と言います。この間、門松を立てておきます。その時期が終わり、門松をとるのが「松とれて」です。正月気分を払って、日常に戻らなくてはなりません。仕事、学校など身辺が動き始めます。正月の余韻の残る心身にはっぱをかけているのです。もちろん、他人のではなく自分の頭を叩きます。

    (監修:谷)

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  • おかがみの 裏の荒地を いつくしむ

    2023.01.05 放送

    作者:櫂未知子

    「おかがみ」は、鏡餅のこと。正月に大小二個を重ねて神仏に供えます。日が経つと、だんだんと乾いてひび割れてきますね。裏を返したその姿を「荒地」と、大胆に表現しました。思わず裏側をなでて、いとおしむ気持ち、わかる気がします。その後は、神への供え物のお下がりを食べて、今年の幸福と長寿を祈ります。

    (監修:谷)

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  • 福寿草 影三寸の 日向哉

    2023.01.04 放送

    作者:正岡子規

    福寿草は、その縁起の良い名前から正月の飾り物として珍重されます。三寸、すなわち一〇センチほどの茎に黄色い花を咲かせます。寒中のけなげな花が、日向に小さな影を作っています。子規の病床には沢山の仲間が集まって、俳句を作り議論をしました。子規もまた、日向のような人でした。今年、日向のような場所があちらこちらに生まれますように。

    (監修:谷)

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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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