2022年2月の俳句

  • 昨日句会 ありし畳や 二月尽

    2022.02.28 放送

    作者:山口誓子

    今日で二月も終わりです。俳句にも「二月尽」という季語がありますが、ようやく寒さがゆるみ、春らしい日が来るのを実感できる時期です。昨日は大勢が集まってにぎやかに句会をした和室も、今日はがらんと静かです。来客の翌日の寂しさに、慌ただしい二月が過ぎてゆく寂しさを重ねました。

    (監修:神野)

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  • 薄日さすとき 紅梅の翳りけり

    2022.02.25 放送

    作者:松林朝蒼

    単に梅とだけいえば、白梅のことです。白梅よりやや遅れて咲くのが「紅梅」。白梅の清らかな姿に対し、紅梅にはあたたかく艶やかな風情が感じられます。白梅が凛とした男性なら、紅梅にはたおやかな女性の趣があります。紅梅のなかには、幹や枝の髄まで紅色を帯びているものもあるといわれます。薄日がさすとき紅梅が薄れて見えるのも、紅梅ならではの風情ではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 雪嶺は いつも遠くに 不器男の忌

    2022.02.24 放送

    作者:武藤紀子

    二月二十四日は松野町生まれの俳人・芝不器男の忌日「不器男忌」。映像感覚ゆたかな写生で抒情俳句に新風を吹き込みました。特に<あなたなる夜雨の葛のあなたかな>が、虚子の名鑑賞を得て、昭和五年わずか26歳で夭折。その生涯は<彗星のごとく俳壇の空を通過した>といわれました。この季節、まだ雪の残る山並を遠くに眺めつつ、不器男を偲んでいる一句です。

    (監修:池内)

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  • 末黒野に また新しき 広さあり

    2022.02.23 放送

    作者:星野高士

    早春の風のおだやかな日に、野原の枯草を焼くのが野焼。土地を肥やし害虫を駆除する焼畑農法の一種です。野焼をしたあとの野を、焼野あるいは「末黒野」といいます。末黒の下には新しい生命が待機しており、間もなく新芽が萌え上がって来ます。広々とした末黒野は単なる焼け跡とは違い、新しい期待を抱いた季語なのです。

    (監修:池内)

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  • 味覚とは 不思議なものよ 蕗の薹

    2022.02.22 放送

    作者:池田啓三

    早春、まだ冬の名残のある土手や畑の隅に、土をもたげて萌黄色の姿を見せるのが蕗の花芽、すなわち「蕗の薹」です。何枚もの葉に、菊のような小さな花が包まれています。刻んで蕗味噌にしたり、丸ごと天ぷらにして味わう蕗の薹は、まさに早春の味。本来なら嫌われるようなほろ苦さが、何よりの早春の味覚として喜ばれるのも、人の味覚の奥深さといえるのかもしれません。

    (監修:池内)

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  • 畦道を 野猫が駈けて 春一番

    2022.02.21 放送

    作者:波戸岡旭

    今年も春一番の吹く頃となりました。「春一番」は、立春後、初めて吹く強い南風です。もとは日本海の漁師が呼んでいた風の名が、気象用語としても季語としても、広く使われるようになりました。略して「春一」ともいいます。春一番には、いち早く春を連れてくる風といった五感があります。畦道を駆けてくる野良猫も、春の到来を喜んでいるようです。

    (監修:池内)

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  • 猫の恋 大福ふたつ 買ひ求む

    2022.02.18 放送

    作者:藤田瞬(松山市)

    猫はにぎやかに恋をしているけれど、人間は穏やかに大福を食べて過ごしたりする、春ののんびりした時間を描きました。大福は、一つではなく二つ。誰かと食べるのだとしたら、その二人もかつては、燃える恋を経てきたのかもしれません。大福の甘さが、恋の甘さを、ほんのりと思い出させます。

    (監修:神野)

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  • 恋猫に告ぐ 黄昏を待たず行け

    2022.02.17 放送

    作者:そまり(新居浜市)

    春になって恋に夢中になる猫を「恋猫」といいます。この句は、恋猫に強くメッセージを送っています。黄昏の時間を待つなんてまどろっこしいことはせず、今、相手のもとへ行きなさい。タイミングが遅れたせいで、手に入らない恋もあります。恋猫へ向けられたエールは、私たち人間の心にも、まっすぐ響きます。

    (監修:神野)

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  • 猫の恋 番くるわせの 大相撲

    2022.02.16 放送

    作者:石野桂子(西予市)

    大相撲で、ときに予想を大きく覆す、番狂わせの一番があります。格下の力士が横綱を打ち負かすように、猫の世界でも、ときに番狂わせの恋が生まれます。いかにも負けそうに見えた猫が、ここ一番で力を発揮して、恋をものにしたのでしょう。誰にだって可能性は残されているのだと、勇気の湧いてくる一句です。

    (監修:神野)

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  • 猫の恋 STAFF ONLYのロープ

    2022.02.15 放送

    作者:木染湧水(広島県)

    コンサートなどのイベントが開催されるのでしょう。会場に、スタッフオンリーの黄色いロープが張られています。その中は、関係者以外は立ち入り禁止のはずですが、恋する猫はお構いなし。黄色いロープをくぐって、自由に出入りしています。にぎやかな場面を介して、猫の恋の傍若無人なありようを切り取りました。

    (監修:神野)

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  • 猫の恋 潮に饐えたる 番屋かな

    2022.02.14 放送

    作者:北藤詩旦(北海道)

    春は、猫の恋の季節です。猫たちは昼夜を問わず、喧嘩をしたり奇声を発したり、目の前の恋に打ちこみます。番屋とは、漁師の宿泊する小屋です。海の香りがとっぷりと染み込んだ番屋にも、恋する猫たちがうろつきます。ふだんは魚を求めて屯しているのでしょう。大きな海を背景に、人の暮らし、猫の暮らしが交差する一句です。

    (監修:神野)

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  • 建国の日や チョコレートよく売れる

    2022.02.11 放送

    作者:仁平勝

    今日は建国記念日です。なぜチョコレートがよく売れるのかというと、バレンタインデー直前だから。建国の日よりもバレンタインのほうが盛り上がる、現代日本を面白く見つめました。しかし、チョコレート売場がにぎわうのも日本のゆたかさの象徴だとしたら、これも、建国の日にふさわしい風景だといえるでしょう。

    (監修:神野)

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  • 躓きてより 白梅がよく匂ふ

    2022.02.10 放送

    作者:田邉大学

    春が来ると、さきがけて咲く梅の花は、春告草とも呼ばれています。まだひんやりとした二月の空気に、清らかな香りが漂います。梅の林を歩いていたら、根っこに躓いたのでしょうか。ハッとしたあと、世界との距離が一気に縮まって、梅の香りもより近く感じます。春の兆しを、感覚的に引き寄せました。

    (監修:神野)

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  • 木の芽山 ぐわらんぐわらんと 土讃線

    2022.02.09 放送

    作者:櫛部天思

    春を迎え、芽吹きはじめた山のことを、木の芽山といいます。春の息吹が満ち始めた四国の山道を、香川から高知へ抜ける土讃線が、がらんがらんと音を立てて走ってゆきます。その音の力強さに、新しい季節の近づく鼓動や、土地の持つエネルギーが生まれます。早く感染状況が落ち着いて、自由に旅のできる春となりますように。

    (監修:神野)

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  • たぶん春の風邪だと思ふ 思ひたい 

    2022.02.08 放送

    作者:加藤静夫

    春は寒暖差が大きいので、体調を崩しやすい季節です。特に、コロナ禍では、風邪の症状が出ると、一気に緊張が走ります。この句も、コロナ以後に詠まれました。今、調子が悪いのは、多分ただの春の風邪だ、コロナではないと思いたい……そのハラハラした気持ち、分かります。どうか、体調にはくれぐれも気を付けて過ごしましょう。

    (監修:神野)

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  • 母マスク子マスク 歩く おなかすく 

    2022.02.07 放送

    作者:塩見恵介

    マスクは冬の季語ですが、コロナ禍では日常の風景となりました。お母さんと子どもが、二人してマスクをしています。寒い風の中を歩けば、おなかもすいてきて、少し心細くなりました。「マスク」「歩く」「おなかすく」と韻を踏んだことで、二人の歩くリズムも感じます。おうちに帰って、おなかいっぱい、あったかいごはんが食べられますように。

    (監修:神野)

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  • 立春の 朝の大気の 澄みに澄む

    2022.02.04 放送

    作者:岡田日郎

    今日は二十四節気の「立春」。まだ寒さが厳しいとはいえ、梅の莟はふくらみ、春一番が吹くのも間もなくと思われます。体感的には寒中の厳しい寒さの名残をとどめながら、意識としては暖かい春の訪れを喜んでいる。そんなところが「立春」の季節感なのかもしれません。この句の作者は登山家tpしても知られた方。山の澄み切った大気の中で、立春の朝の気分を満喫しておられるようです。

    (監修:池内)

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  • 鬼たちの いきいきとゐる 追儺かな

    2022.02.03 放送

    作者:前田攝子

    今日は節分。節分という季節の大きなつなぎ目の夜には、神様が入れ替わるわずかの隙間につけこんで、邪悪な鬼どもが暴れると考えられました。それを追い払う行事が、「追儺」。追儺の「儺」は鬼を追うことで、訓読みでは「鬼やらい」といいます。古くは桃の弓に芦の矢をつがえて放ち、鬼を射ました。今ではもっぱら豆を撒いて鬼を追います。鬼の役が生き生きしていてこその追儺ではないでしょうか。

    (監修:池内)

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  • 葉牡丹の 一つ一つに 大き空

    2022.02.02 放送

    作者:涼野海音

    江戸時代に伝わった球を結ばない種類のキャベツを、観賞用に改良したのが「葉牡丹」。白や赤紫の葉が、牡丹の花を思わせるところから名づけられました。花の少ない冬の花壇には欠かせないものとなっています。日本で作られたものは、特に美しいといわれます。葉牡丹の上に広がる晴れた大空は、春がもうそこまで来ていることを感じさせてくれます。

    (監修:池内)

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  • 木といふ木 命やしなふ 二月かな

    2022.02.01 放送

    作者:西嶋あさ子

    今日から二月。あと三日で寒が明け、暦の上では春を迎えます。まだしばらくは寒さが続きますが、梅の花が香り、鶯の初音が聞こえるのも、もうすぐです。一日一日と日は長くなり、日の光にも春を感じる。「二月」とは、そんな季節です。葉のある木も、葉を落としてしまった木も、新しい芽吹きのための生命力をじっくりと養っている。二月とはそんな季節なのかもしれません。

    (監修:池内)

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(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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