2021.03.31 放送
ライオンといえば、鋭い眼光を思い浮かべます。しかし、この句に詠まれたのは、眼力が弱く頼りないライオンでした。俳句で「花」といえば桜のことです。「花の雨」とは、桜に降る雨を指します。日本の花を代表する桜も雨に沈む日があるように、百獣の王ライオンだって弱い姿も見せるのです。誰しもがもつ弱さに、やさしく寄り添う一句です。
(監修:神野)
2021.03.30 放送
「春眠暁を覚えず」といいますが、春の朝は心地よく、つい寝過ごしてしまいます。そんな「朝寝」が春の季語です。朝が来たのに気持ちよさそうに寝ている姿を、ふと、大往生のようだと見なしました。命を終えるそのときが、朝寝のように安らかだったら。うららかな春にふと、未来を想像した一句です。
(監修:神野)
2021.03.29 放送
海彦と山彦は、日本の神話で、釣針をめぐって仲違いした兄弟です。結局、仲直りできないまま、運命に引き裂かれました。そんな二人を、作者は花見の宴に誘います。明るく人を引き寄せる、桜の力を信じているのでしょう。犬猿の仲の二人も一時休戦。ともに桜を見て時を分かち合えたら、何かが変わるかもしれません。
(監修:神野)
2021.03.26 放送
今年は全国的に桜の開花が例年より早いようです。桜は日本の国家であり、日本の四季を代表する花。数百もの種類がありますが、いちばんポピュラーなのは明治初期に作られた染井吉野でしょう。この句は、校庭にひっそりと咲く桜。学校がしづまり返っているのは、春休みのせいか、それともコロナ禍で臨時休校となっているのか。松山地方も、桜の花の盛りを迎えようとしています。
(監修:池内)
2021.03.25 放送
春は卒業の季節。ほとんどの学校の卒業式に欠かせないのが「蛍の光」「仰げば尊し」などの「卒業歌」の斉唱。卒業歌には、新しい人生へ踏み出す喜びと同時に、長く親しんだ先生や学友と別れる淋しい思いがこめられています。コロナ禍での飛沫防止のため、一同で歌うのをやめて予め録音された卒業歌を静かに聴いているという、今年の卒業式の情景を詠んだ一句。作者は松山市にお住まいの俳人です。
(監修:池内)
2021.03.24 放送
日本で冬を過ごした渡り鳥が、春になって北の地へ帰ることを「鳥帰る」といいます。大型の鶴、白鳥、鴨、雁などから、鶫、鶸、椋鳥などの小鳥まで、色々な鳥が、整然と隊列を組んだり、騒々しく群れ飛んだりしながら帰って行きます。鳥たちのいなくなった山河は、心なしか淋しく感じられます。また秋に戻るまで、自然を大切にして欲しいと、鳥たちが私たち人間に言い残しているかのようです。
(監修:池内)
2021.03.23 放送
女王蟻を中心に雄蟻、働き蟻が秩序ある社会全体を営む蟻。地中の巣で冬を越した蟻が、春になって地上に姿を現すことを「蟻穴を出る」といいます。二十四節気の啓蟄の頃に穴を出はじめた蟻も、今や活発に出入りして餌を運んでいます。そんな蟻の生態を、じっくりと観察している一句。作者は松山市にお住まいの俳人。「子規新報」編集長です。
(監修:池内)
2021.03.22 放送
南から燕が渡って来る季節です。今年初めて見る燕を、「初燕」「燕くる」といいます。新鮮さの感じられる季語です。家の軒先などに巣を作って雛を育て、町や田園を飛び交う燕は、日本人に最も親しまれている野鳥です。まず青空の一角に鳴き声がして、愛らしい姿を見せた初燕。瑞々しさあふれる一句です。作者は東温市にお住まいの俳人。「櫟」主宰です。
(監修:池内)
2021.03.19 放送
明日は春分です。昼と夜の時間がほぼ等しくなる日で、お彼岸の中日にあたります。冬が過ぎ、まだ寒い早春の日々も過ぎ、やっと太陽のぬくもりを実感できる春分がやってきました。これからぐんぐん暖かくなってゆくことを、私たちの真上に輝く太陽が、さんさんと教えてくれます。
(監修:神野)
2021.03.18 放送
私たちが生きるこの世は「仮の世」とも呼ばれます。すべてのものは生まれて消える、かりそめの世界だという言葉です。明るく黄色いミモザの花は、明日のことなど知らないかのように、一心に咲きます。その作りものめく美しさも含めて「仮の世らしく」と表現しました。はかない仮の世ならば、全力で咲き尽くそうと、今を輝くミモザの命です。
(監修:神野)
2021.03.17 放送
今日から春のお彼岸です。子規はこの句に「母の詞自ら句になりて」と前書きをつけました。子規が「春やのに寒いのう」とつぶやくと、一緒にいた母が「毎年よ、彼岸の入りに寒いのは」と答えたのでしょう。その言葉がちょうど575だったので、子規は俳句として書きとめました。俳句は生活の中にある身近なものだと教えてくれるエピソードです。
(監修:神野)
2021.03.16 放送
木々がいっせいに芽吹くころ、さわやかに吹く風のことを「木の芽風」といいます。仕事の休憩でしょうか、家事や育児の合間でしょうか。働かせていた頭をひととき休め、耳を澄ませれば、鳥の声や木々のざわめきが聞こえてきます。気分転換の方法を、さりげなく教えてくれる一句です。
(監修:神野)
2021.03.15 放送
宮城県の俳人・高野ムツオさんが、この春、発表した俳句です。三千六百五十日とは、一年三百六十五日の十倍。東日本大震災から十年経ったことを、一日の単位で換算しました。震災後を、一日また一日と、噛み締めながら来たのだと分かります。蘆牙とは、水辺の蘆が鋭く芽を出すことです。過去を忘れず生きる思いを、新たな春の芽吹きに託しました。
(監修:神野)
2021.03.12 放送
黙々とゆくお遍路さんは、何を考えながら歩いているのでしょう。家族のこと、友人のこと、亡くなった誰彼のこと。来し方のあれこれを思い返す心の動きは、いわれてみれば、長い長い手紙を書いているようなものかもしれません。ここにいない人を思って、一歩一歩、お遍路さんの旅路は続いてゆきます。
(監修:神野)
2021.03.11 放送
四国には、お遍路さんに無償でお茶を出したり宿を提供したりする「お接待」の文化が根付いています。暗くなりはじめた夕暮れ、歩き遍路を見かけたので「車に乗っていきますか?」と声をかけたのでしょう。お遍路さんは、だんだん、ありがとう、と言って助手席に乗りました。一期一会、静かに春の夕べを分かち合う、ゆたかなひとときです。
(監修:神野)
2021.03.10 放送
コロナ禍の自粛の日々では、旅行も不要不急とされがちですが、遍路は単なるレジャーとも違います。人はそれぞれに切実な思いを抱えながら、遍路道を歩きます。さまざまなことがままならない世の中ですが、遍路へ出たいと願う心は、どうか咎めないでほしい。作者の願いに、深く頷く一句です。
(監修:神野)
2021.03.09 放送
松山空港には、お遍路さん用の更衣室が用意されています。遠方から飛行機で来たお遍路さんも、その場で白装束に着替え、順礼の旅を始めることができます。長い年月、お遍路さんを迎えてきたおもてなしの気持ちは、こんなところにも。遍路が文化として根付いているからこその一場面を切り取りました。
(監修:神野)
2021.03.08 放送
四国八十八か所をめぐる「遍路」も、実は春の季語です。春になると気候がよくなり、白装束のお遍路さんの姿も増えてきます。この句は歩き遍路でしょう。決められた霊場だけでなく、野道に埋もれかけた仏さまにも手を合わせる、敬虔な姿勢。誰に認めてもらうでもなく、ただ黙々と祈り歩く、お遍路さんらしい姿をとらえました。
(監修:神野)
2021.03.05 放送
今日は二十四節気のひとつ「啓蟄」です。冬のあいだ土の中で冬籠していた虫や畦などが、春の気配に目覚めて、穴を出て地上に出て来るという言葉。虚子の頃から季語としても詠まれています。作者は啓蟄を大きくしました。歩く速度を早めて運動量を高めると同時に、地上に出て来た虫たちを踏みつける確率を減らそうとしているのでしょうか。
(監修:池内)
2021.03.04 放送
春の野の花といえば「たんぽぽ」ですね。古くは「ふじな」「たな」と呼ばれましたが、万葉以来の和歌などには全く登場しません。江戸時代後期に、「鼓草」とも呼ばれる花の形から鼓の音を連想して子供が言いだした「たんぽぽ」が通り名となり、俳句にも詠まれるようになりました。白い花もありますが、たんぽぽといえば明かりの点ったような鮮やかな黄色い花が印象的ですね。
(監修:池内)
2021.03.03 放送
きょう三月三日は雛祭。雛人形を飾り、女の子の幸せを願う日です。桃の節句ともいい、本来は桃の花の咲く旧暦三月の行事でした。愛媛では今も桃の花の咲く月遅れで雛祭を祝う所が多いのは、理にかなっているのかもしれません。この句はお雛さまを飾っている女性の姿でしょうか。雛人形を一体ずつ手のひらに乗せて、お顔や衣装を確認しています。雛人形への、やさしい愛の感じられる一句です。
(監修:池内)
2021.03.02 放送
野原や畦などに土筆が顔を出す季節です。古くは、「つくづくし」といい、この句のように親しみをこめて「つくしんぼ」とも呼ばれます。土筆は杉菜の胞子茎で、地下茎でつながっています。「ほうしこ」という名も、そこから来ているのでしょう。姿勢の良いものから摘まれた土筆は、袴を取り除いて茹で、和え物や佃煮、酢の物などにすると、春ならではの風味が味わえます。
(監修:池内)
2021.03.01 放送
きょうから三月です。「三月」といえば、寒い日もあれば暖かい日もありながら、次第に本格的な春へと向かう季節。「暑さ寒さも彼岸まで」という諺も思い浮かびます。一日の中での寒暖差が大きく、一日に季節が二度巡ってくるのでは、と思われることさえあります。早朝と午後の温度差という、この季節の有り様を端的に捉えた一句です。
(監修:池内)
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