2021.12.29 放送
十二月も押し詰まった一年の終わりを「年の暮」といいます。昼はよく晴れ、夜も雲に隠れることなく月が出て、天気のよい一日。晴れていると、新しい年を迎える準備もはかどります。太陽や月のめぐりを間近に感じながら、心もおのずと整ってゆきます。来年こそは、曇りなく日々の送れる一年となりますように。
(監修:神野)
2021.12.28 放送
二〇二一年も、あと数日を残すばかりとなりました。この年末の感慨を、俳句では「数え日」といいます。新年を迎える準備で、さらに慌ただしくなる合間に、ふと空を見上げます。木々は葉を落とし、雲も薄れて、いつも以上に空が大きく見えました。今年もあとわずか。堂々と大きな空を前にして、年を送る覚悟が生まれます。
(監修:神野)
2021.12.27 放送
十二月は、年末に向けて、特に忙しい月です。働いて、働いて、日記にも仕事のことばかり。気がつけば年も暮れ、日記のページも残りわずかとなりました。年の瀬には一年の日記を書き終えるので、「日記果つ」は冬の季語です。慌ただしい中でも、小さな休息を大切に、残りわずかの今年の日々を乗り切りましょう。
(監修:神野)
2021.12.24 放送
今日はクリスマス・イブです。プレゼントを運ぶサンタクロースは、今ごろ海を渡り、日本を目指しているころでしょうか。この句は、サンタさんも煙草が吸いたくて休憩することもあるのでは、と想像を広げました。相棒のトナカイがサンタの脇を角でつついて、そろそろ行くよと促します。どうか素敵な夜となりますように。メリー・クリスマス!
(監修:神野)
2021.12.23 放送
「お祈りをしたのです」でも「しました」でもない、「したです」という舌足らずな表現が印象的です。個人的な祈りを思わせ、切実な印象を与えます。冬はホットコーヒーやホットティーなど、温かい飲み物が欲しい季節です。寒い夜に体を温める、寝酒としてのホットウイスキーでしょうか。小さな祈りを抱きながら、そっと眠りにつく冬の夜です。
(監修:神野)
2021.12.22 放送
今日は冬至です。一年でもっとも昼が短いころで、太陽の力が弱まるため、無病息災を願う慣習が残っています。冬至の日には、お粥や南瓜を食べたり、柚子湯に入ったりします。ぷかぷかと浮く柚子をお風呂に沈めれば、ぽんと水面に飛び上がります。はつらつとした柚子の動きに元気をもらって、さあ、明日も頑張りましょう。
(監修:神野)
2021.12.21 放送
ポストまで手紙を出しに行く途中、雪の積もった橋の上から、川を見下ろしました。冷たい水の中では、魚が生きて泳いでいます。何気ない生活の合間に、命のたくましさを見つけた瞬間を、逃さず俳句に詠みとめました。これから出す手紙の言葉も、雪を越えて、誰かのもとへいきいきと届くのでしょう。
(監修:神野)
2021.12.20 放送
冬は温かい食べ物の嬉しい季節です。焼藷も、冬の季語。寒風の中で手にする焼藷は、冷たい手をぬくめてくれ、ホッと心がなごみます。二つに割れば、その両方の断面から、ほかほかと湯気が生まれました。その湯気の発見によって、冬の寒さと、ほかほかの焼藷の実感が、言いとめられています。
(監修:神野)
2021.12.17 放送
栽培目的で種や接穂をとるための木を「母樹」といいます。すぐれた苗を育てるために、成長のよい木が選ばれます。樹齢が千年にもなる母樹は、さぞ立派でしょう。そして、その木を育てる山は、何億年もの単位でそこに在り続けます。人間の時間をはるかに超える、木の時間、山の時間。眠る山が抱き込む遥かさに、自然への畏怖が沸き上がります。
(監修:神野)
2021.12.16 放送
十二月は蜜柑の収穫シーズンです。俳句で「山眠る」という季語がありますが、冬のはじめの蜜柑山は、まだまだ眠りません。育てた蜜柑を採り終えて、山から明るい橙色が消えたとき、はじめて、蜜柑山はうとうとと眠りにつくのでしょう。愛媛を代表する蜜柑を通して、季語と向き合い、リアルな山の姿を捉えました。
(監修:神野)
2021.12.15 放送
冬の山を擬人化した季語「山眠る」を踏まえて、逆に、眠れない私の孤独を描き出しました。木々や鳥のにぎわっていた山も、冬はしーんと静まり返っています。まるで、山にまで置き去りにされたよう。不眠に悩む日々、眠れぬ夜の寂しさが深まります。どうか少しでも、おだやかな眠りが訪れますように。
(監修:神野)
2021.12.14 放送
星雲とは、宇宙の塵やガスが雲のように見えるものです。光が渦を巻くさまは、宇宙の不思議を思わせます。作者は自分の指先の指紋から、星雲を連想しました。いわれてみればどちらも、不思議な渦を巻いた自然の造形物です。眠る山の上に冴え冴えと広がる夜空を、てのひらの上に感じている、宇宙とつながる一句です。
(監修:神野)
2021.12.13 放送
俳句では、山を擬人化した季語があります。芽吹きの春は「山笑う」、みずみずしい夏は「山滴る」、紅葉の秋は「山装う」。そして、冬の山の静まり返った様子を「山眠る」といいます。眠る山を横目に、インスタントラーメンにお湯を注ぎます。簡単な食事でやり過ごす時間に、厳しい冬の深い沈黙を感じます。
(監修:神野)
2021.12.10 放送
冬の日ざしを浴びながら、じっと動かずに暖まるのが「日向ぼっこ」。「日向ぼこり」ともいいます。この語源は「ほっこり」だと考えられます。南に面した縁側など、風のない日は家の中より暖かく、天国の気分です。作者は今年95歳を迎えられた方。まさに超とつく後期高齢の全身を、ほっこりと暖めてくれる日向ぼっこを楽しんでおられます。
(監修:池内)
2021.12.09 放送
きょう十二月九日は「漱石忌」。夏目漱石は大正五年のこの日、49歳で亡くなりました。松山で創刊された「ホトトギス」に高浜虚子のすすめで『吾輩は猫である』、ついで『坊つちゃん』の愛読者なのでしょう。この頃は赤シャツとか野だいこなどというあだ名のある先生はいなくなったな、と思いながら。文豪・漱石を偲んでいます。
(監修:池内)
2021.12.08 放送
落葉樹は冬に入ると葉をすっかり落としてしまいます。いわば裸の状態ということから、「裸木」または「枯木」といいます。枯木といっても枯れて死んでしまったのではなく、一年の生産の営みを終えて、来たるべき春の芽吹きに備えているのです。よく見ると、葉を落として身軽になった枝々には、脈々と新らしい生命力がみなぎっているようです。
(監修:池内)
2021.12.07 放送
「おでん」の名は煮込み田楽から来ています。かつては関東炊きとも呼ばれました。醬油味のたっぷりの汁で大根、蒟蒻、竹輪、すじ肉などを煮込んだものに辛子をつけて食べる風味は、居酒屋や屋台で燗酒とともに味わうのが何よりのもの。「おでん酒」という季語も、そこから生まれました。お酒もほどよくまわり、色っぽい話題も佳境に入って来ました。作者は松山市にお住まいの俳人。「渋柿」主宰です。
(監修:池内)
2021.12.06 放送
甘藷を石焼きなどにする「焼芋」は、江戸時代の18世紀末に始まったといわれます。栗よりうまい十三里などと、その甘さは栗とよく比べられます。熱々でほっこりとした焼芋は、冬の寒い日には何よりの御八つですね。今年95歳になられた作者も、焼芋がお好きなようです。二つに割った熱々の焼芋を、さあどちらから齧りつこうかと見くらべています。
(監修:池内)
2021.12.03 放送
すみれの花は、冬の寒さの中でも、日当たりのよい場所に、むらさきの可憐な花を咲かせます。一方、台所では、ひじきを煮ています。日向の冬すみれと、日差しに煮え上がるひじきと。「輝いて」と美しく表現することで、料理をするさりげない生活の場面にも、冬の光の尊さが満ちてきました。
(監修:神野)
2021.12.02 放送
冬には風邪がはやるので、マスクも冬の季語です。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、マスクは私たちの日常となりました。マスクをしていない人がいたら、なぜつけないのかと、つい目で追ってしまうことも。感染予防を心掛けるほどに、どこか周囲への監視も厳しくなるのかもしれません。コロナ禍の人間心理を鋭くとらえた一句です。
(監修:神野)
2021.12.01 放送
今日から十二月です。もう年の瀬だと思うと、いつもの風景も、どこか忘れがたい輝きに満ちてきます。葉を落とした木は枝を広げ、冬を立ち尽くします。夜には空気も冴え冴えと澄み、星も冷たく光ります。立ったまま星に向かい合う木は、どこか切実な印象で、私たち人間の知らない、命の世界を垣間見せます。
(監修:神野)
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