2021.02.26 放送
小説家の夏目漱石は、多くの友人や弟子に慕われました。生来の江戸っ子気質からか、面倒見がよく、親友の正岡子規も、学生時代からずいぶん世話になったようです。漱石を頂点として人々が山脈をなし、新しい文学、新しい社会を切りひらきました。春霞の風景を見晴るかすまなざしに、はるかな日本の歴史を思います。
(監修:神野)
2021.02.25 放送
春になって、木の切り株や根元から生えてくる新しい芽を、蘖といいます。みなさんは、蘖という漢字、書けますか? あまりなじみがなく画数も多いので、書こうとすると、自然と大きな字になるのでしょう。その大らかな筆運びが、春のうららかな気配も連れてきます。文字を通して、机の上でも、季節は感じられるのですね。
(監修:神野)
2021.02.24 放送
鶯は春告げ鳥の異名をもちます。ホーホケキョと鶯の声が聞こえると、寒い冬をこえ、春が来たのだと嬉しくなります。未来を思えば、来たるべき春も近づき、鶯の存在も、ぐっと身近に感じられます。コロナ禍でままならないことも多い日々ですが、未来を思い、鶯を待ち、なんとか今を乗り越えましょう。
(監修:神野)
2021.02.23 放送
幹や枝が地を這うように伸び、さながら龍が伏しているような梅の木を「臥龍梅」といいます。樹齢を重ねた臥龍梅に、その枝が折れてしまわないよう、木の柱を立て支えます。同じ木でも、梅は美しい花を咲かせるけれど、支える柱は花をつけません。縁の下の力持ちとして、ぐっと世界を支える存在に、心を寄せました。
(監修:神野)
2021.02.22 放送
2月22日は「にゃんにゃんにゃん」で猫の日です。そして春は、猫の恋の季節でもあります。虎も猫も、生物学上は同じネコ科に分類される動物です。猫がライバルを威嚇する表情も、パートナーへ近づくしなやかな動きも、さながら小さな虎のよう。いじらしいほどに懸命な猫の恋、小さな体にみなぎる春のエネルギーが爆発します。
(監修:神野)
2021.02.19 放送
春先、雪間などに萌え出た蕗の花芽を見つけると、春の天使に会ったような嬉しさを感じます。この花芽が「蕗の薹」で、何枚もの葉に、菊に似た小さな花が包まれています。蕗の薹には早春らしい香りとほろ苦い風味があり、丸ごと天麩羅にしたり、刻んで蕗味噌にしたりして味わいます。春に大地から萌え出る蕗の薹。その苦い風味こそ、まさに大地の恵みといえるのではないでしょうか。
(監修:池内)
2021.02.18 放送
今日は二十四節気の雨水。二月半ばを過ぎ、梅の花も咲きそろう頃です。梅は春を知らせる花といわれ、他の木の花に先がけて香りの高い花を咲かせます。この句は鉢植えの梅で、「金梅」「盆の梅」として句に詠まれます。盆の梅は、日の当たる場所へ自由に移せられるので、日光に恵まれやすく、次々に莟をふくらませては花を開いています。
(監修:池内)
2021.02.17 放送
春先、晴れて風のない日に、火を放って野原の枯草などを焼くのが「野焼」。野焼の火を「野火」といいます。野焼には害虫を駆除し、灰が肥料となって土地を肥やし、草木の成長を促す効果があります。古代の焼畑農業のなごりといわれています。この句、火を放った後に風が出て来たのでしょう。野火がどこをめざすのか分からない勢いで、燃え広がっています。
(監修:池内)
2021.02.16 放送
春になっても、寒さが戻り薄々と氷が張ることがあります。「うすらい」あるいは「うすごおり」といいます。これも日が当たると解けて、氷の切れ端が流れて消えてゆきます。解け残った薄い氷が日にきらめくのも、春先らしい風情です。薄氷の表面に見える模様は、川面を吹く風が残していったものでしょう。薄氷をじっくりと観察している一句です。
(監修:池内)
2021.02.15 放送
立春の後の寒さを「春寒」「春寒し」といいます。春なのに寒い。そんな気候を経て、だんだん本格的な春となって行きます。ニュースなどでよく聞く「パンデミック」とは、世界的に流行している病を意味する英語です。コロナ禍の終息が待たれるこの春だからこそ、春寒の気候のなかで、パンデミックという言葉に注目せずにはいられないのではないでしょうか。
(監修:池内)
2021.02.12 放送
畑での農作業の風景です。肥料の入った袋を開けるのに、そばにあった鎌を使って切り裂きました。あるもので済ませながら、てきぱきと作業を進めてゆく、慣れた手つきがあざやかですね。聞こえてくるのは鶯の声。振り返れば空は青く、山は芽吹き、春の里山のほがらかな風景が広がります。
(監修:神野)
2021.02.11 放送
大きな味噌樽の鎮座する蔵は、天井が高く、そのぶん神棚も高いところにあるのでしょう。あるとき、味噌蔵の中まで、今年はじめての鶯の声が聞こえてきました。蔵の神様も、初音を聞いて、にっこり喜んだかもしれません。暗く静かな蔵の中を対比させたことで、鶯の命の明るさが引き立ちました。
(監修:神野)
2021.02.10 放送
ホーホケキョ、鶯の声が聞こえてきました。ハッと視線をあげて窓の外を見れば、世界はもう春。もうそんな季節かとしみじみ眼鏡をかけ直した、無意識の行動を俳句にすくい上げました。さりげない日常の場面にも、季節は平等にめぐってきます。かけ直した眼鏡に、やわらかな春の光があふれます。
(監修:神野)
2021.02.09 放送
年を重ね、デイサービスに通うことになった父。施設まで送る途中、どこからか、鶯の鳴き声が聞こえてきました。その明るさは、踏み出した新たな一歩を応援してくれているよう。父と私の緊張も、ふっとほぐれます。どうか来年も、その次の春も、まだまだ元気で、一緒に鶯の声を聞けますように。
(監修:神野)
2021.02.08 放送
その年はじめて聞く鶯の声を「初音」といいます。鶯の別名は春告げ鳥。初音を聞くと春が来たことを実感します。松山城は、天守閣へ登るのに、ロープウェイとリフトが用意されています。そろそろ初音のころだからと、さえぎるもののないリフトを選びました。春や昔、十五万石のお城下で、新しい春を探す、小さな旅です。
(監修:神野)
2021.02.05 放送
自由律俳人の山頭火は、放浪の旅の折々に、野山の風景を句に詠みました。この句も、季節と出会った喜びにあふれていますね。「さいてくれた」と感謝の気持ちをこめた表現に、寂しい冬を耐えてきた時間がしのばれます。すみれやたんぽぽ、季節のめぐりを喜ぶことで、ときに厳しい人生の日々にも、やわらかな光が差しこみます。
(監修:神野)
2021.02.04 放送
氷は冬の季語ですが、薄氷は春の季語。立春を過ぎたころに薄く張る氷を指します。一方、非時とは、時を超えて在り続ける、永遠を意味します。はかなく過ぎ去る一日の時間の中に、実は永遠が内包されているとしたら。この瞬間を淡く消えゆく薄氷の光が、過ぎゆく時のきらめきを見せてくれます。
(監修:神野)
2021.02.03 放送
一年を二十四の季節に分けた二十四節気、今日から立春です。まだまだ寒い日は続きますが、梅やすみれが咲きはじめ、光の具合にも春らしさが感じられるようになります。立春が来れば、草が萌え出て、ときには虹もかかり、野原がまるではしゃいでいるかのよう。春を迎えた大地の喜びを、ほがらかにおおらかに詠み上げました。
(監修:神野)
2021.02.02 放送
今日は節分です。冬から春へ季節が移る立春前日。年神が入れ替わるすきに、鬼が入りこもうとするので、豆を撒き追い払います。結核を患い療養所で暮らしていた波郷は、見舞いにきた妻を詠みました。夫の無事を祈って豆を撒く妻が、しみじみと微笑ましい句です。コロナ禍の節分、会いたくても会えない大切な人にも、どうか無事に春が訪れますように。
(監修:神野)
2021.02.01 放送
白菜と、人間の「ぼくら」を比べ、白菜のほうに軍配を上げました。大きく育った立派な白菜を前に、気おくれしているのでしょうか。堂々と鎮座する白菜も、立派ではない「ぼくら」も、この世界をかたちづくる欠かせないひとかけらです。白菜を食べ、ほどほどに力を抜きながら生きてゆくのも、日々をこえてゆくコツなのかもしれません。
(監修:神野)
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