2024年1月の俳句

  • 卵酒飲めば 怖かつたと分かる

    2024.01.31 放送

    作者:野名紅里

    突然の出来事に遭遇したとき、その瞬間は状況をのみこむのに精いっぱいで、感情が麻痺していたのでしょう。卵酒は冬の季語。日本酒に卵を溶いて煮立たせた、あたたまる飲み物です。部屋でひと息ついたとき、硬直した心がほどけ、素直な感想が遅れてきました。人間心理を的確に言葉にした一句です。

    (監修:神野)

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  • 雪達磨 乾びし枝の 残りけり

    2024.01.30 放送

    作者:中西亮太

    雪だるまという季語を俳句に詠むとき、どんな場面を切り取るでしょうか。この句は、雪だるまの体が溶けてしまったあとに着目しました。残ったのは、手を模していた枝ばかり。その枝がすっかり乾いてしまったところを描くことで、雪が消えてしまったあっけなさがありありと迫ります。

    (監修:神野)

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  • カフェオレの 皺さつと混ぜ 雪くるか

    2024.01.29 放送

    作者:浅川芳直

    カフェオレの表面に張った膜をさっとかき混ぜ、舌触りを整えてから口をつけます。カフェオレのクリーミーなブラウンと、降るかもしれない雪の白さ。あたたかさと冷たさの対比も効いています。「皺」という言葉が、表面の膜の質感を繊細に伝えます。ふと外部へ心を向ける、ゆたかなひとり時間です。

    (監修:神野)

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  • 焼き芋の ような人だが 好きなんだ

    2024.01.26 放送

    作者:山岡和子

    思わず笑ってしまいます。「芋」は、都会風でない野暮な人をいうときなどに使われることがあります。一方で、多くの人の好物でもあります。焼き芋はスーパーの店頭でも売られていて、いい匂いに思わず引き寄せられます。恰好悪くて暖かくて・・・。焼き芋のような人だからこそ好きなんだ、といいたいくらいです。

    (監修:谷)

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  • 人間が 猫に加はり 日向ぼこ

    2024.01.25 放送

    作者:山田弘子

    路地や空き地に、数匹の猫がたむろしているのを見かけます。冬の日向では目を細めて、気持ちよさそうにじっとしています。猫の縄張りのようなその場所へ、人間が交りました。風のない日だまりは、家の中より暖かいことがありますから。猫は内心うるさがったかもしれません。それとも我関せずに、くつろいでいた気もします。

    (監修:谷)

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  • 福助の お辞儀は永遠に 雪がふる

    2024.01.24 放送

    作者:鳥居真里子

    福助といえば、裃姿で正座する頭の大きいお人形でおなじみです。幸福を招くと言われる縁起物です。人形の姿勢が変わらないのは当たり前なのですが、それを「永遠に」と表現したことで、つつましくも愛らしいお辞儀が、いっそうくっきりと目に刻印されます。雪もまた、永遠にふり続くかのようです。

    (監修:谷)

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  • ふくろふの 森をかへたる 気配かな

    2024.01.23 放送

    作者:西山小鼓子

    梟は夜行性で、私たちの目に触れる機会は少ないのですが「夜の哲学者」などと呼ばれ親しみのある動物です。毎夜聞いていた鋭い鳴き声。ゴロスケホーホーの声が聞こえなくなりました。別の森に移り住んだのか。森が空っぽになったような寂しさが残ります。作者小鼓子は明治四十二年生まれ。高浜虚子の「ホトトギス」で活躍しました。

    (監修:谷)

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  • 水仙や 青戻りつつ 日本海

    2024.01.22 放送

    作者:林 桂

    水仙は一重、八重があり匂いがよく、清楚な花です。早春酷寒の頃咲くのは白い水仙。黄水仙は春に咲きます。水仙の花が咲き始める頃には、厳冬の日本海にも青い色が射し戻ってくるのでしょう。モノクロームの海が、だんだん色を帯びていく映像が浮かびます。海に色を取り戻させる、水仙の明るさを感じます。

    (監修:谷)

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  • 沢庵を噛んで 日本を諦めず

    2024.01.19 放送

    作者:平良嘉列乙(千葉)

    現代の日本には、問題が山積みです。右肩上がりの時代は遠く過ぎ去り、未来への明るい展望が見えづらい社会。それでも、沢庵を噛みしめ、日常に踏ん張って、ぐいと前を向きます。この国で生きていくことを諦めない意志の強さが、日本をよい方へ変えてゆくことを信じて。

    (監修:神野)

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  • AIに負けて 沢庵噛み砕く

    2024.01.18 放送

    作者:藤橋一憲(松山)

    人工知能AIの発達は目覚ましく、さまざまな場面で人間の力を凌駕しつつあります。人間がAIに負ける場面も、どんどん出てくるでしょう。それでも、負けて悔しい感情や、沢庵を嚙み砕く身体は、人間ならではのものです。沢庵の味わい深さが、人間らしさを強く引き出します。

    (監修:神野)

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  • 赤本に ラインマーカー 新沢庵

    2024.01.17 放送

    作者:織部なつめ(高知)

    赤本は、大学別に分けられた過去の入試の問題集です。志望する大学の赤本を読みこみ、しっかり勉強しているのでしょう。冬、受験に向けて追いこみの時期に、沢庵を噛んで、さあもうひと頑張り。出来たばかりの新沢庵は新鮮で、きりっと頭が冴え、力をもらえそうです。

    (監修:神野)

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  • 拉致の子は食ひたい 母の沢庵を

    2024.01.16 放送

    作者:佐藤茂之(岩手)

    北朝鮮に拉致され、日本に還れなくなった若者へ、心を寄せた一句です。遠い故郷を恋いながら、母の漬けた沢庵をもう一度食べたいと願ったこともあるでしょうか。暮らしに根差した沢庵だからこそ、日常の懐かしさを強く実感させ、失われた人生の重みを物語ります。

    (監修:神野)

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  • お茶請けのたくあん 尼寺の子犬

    2024.01.15 放送

    作者:村瀬ふみや(北海道)

    お茶を飲むときに一緒に食べるものを「お茶請け」といいます。甘いお菓子やしょっぱいおせんべいなど、お茶請けもさまざま。沢庵の塩気も、お茶請けにぴったりです。尼寺で漬けた沢庵でしょうか。どこからか受け入れた子犬も遊び、ほがらかな冬の昼のひとときです。

    (監修:神野)

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  • 沢庵や 四女に生まれ 百弐歳

    2024.01.12 放送

    作者:やぎ じゅうめい(松山)

    昔は兄弟の数も多く、大家族が当たり前でした。四女として生まれ、にぎやかに育ち、艱難辛苦を乗り越えて、百二歳まで長生きした一人の女性。時代は変わっても、沢庵は変わらぬおいしさです。沢庵という暮らしの食べ物が、すこやかな長寿を明るく寿ぎます。

    (監修:神野)

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  • 三回忌 汁粉に添えて 沢庵を

    2024.01.11 放送

    作者:藤田明(松山)

    三回忌の法要のあと、集まった親しい人との場面でしょう。お汁粉をいただいて、ひと息つきます。添えられていたのは、沢庵。甘いスイーツに、塩気のあるものをちょっと添えると、甘さが引き立ちます。誰かの手作りの沢庵なのでしょうか。生前の面影を語りながら、懐かしさがこみあげます。

    (監修:神野)

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  • 愛ほどの 沢庵石の 重さかな

    2024.01.10 放送

    作者:今林義和(福岡)

    沢庵がしっかり浸かるよう、重しとして、樽の蓋の上に石を載せます。これが沢庵石です。ずっしりとした沢庵石の重たさを、愛情になぞらえました。この愛もまた、簡単には動かしがたい、重たく深い愛なのでしょう。愛をたっぷりこめた沢庵、おいしく漬かりますように。

    (監修:神野)

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  • 沢庵や トラック来れば 揺るる家

    2024.01.09 放送

    作者:石塚彩楓(埼玉)

    国道などに沿った家だと、大きなトラックが通れば、地面の振動を感じます。古い家なら、その揺れも、よりはっきりと迫るでしょう。沢庵は、生活感を強く感じさせる素材です。その沢庵を詠むことで、日常の時間のリアルが、さりげなく言いとめられています。

    (監修:神野)

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  • 沢庵の 程よく漬かる 峡の昼

    2024.01.08 放送

    作者:佐々木一美(宇和島)

    干した大根を、糠と塩で漬けたのが沢庵です。冬野菜の大根の保存食として、長く日本の食卓で愛されてきました。山あいの集落で手作りされている沢庵でしょう。浸かり方が浅すぎず、古漬けでもなく、ちょうどよい味わい。静かにうなずくとき、山峡の昼の空が、穏やかに輝きます。

    (監修:神野)

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  • 初句会 浮世話を するよりも

    2024.01.05 放送

    作者:高浜虚子

    「初句会」は、今年初めて行う句会のことです。浮世話は世間話のことですが、世間の噂をするよりも、句会でわいわいと俳句の批評をし合う、その方がずっと楽しいよ、と言っています。持ち寄った俳句には、新年を迎えた気分や暮しぶりが詠み込まれています。いつもとは違った晴れやかで新たな空気の場が生まれます。

    (監修:谷)

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  • ぬぐはれてある 黒板や 事務始

    2024.01.04 放送

    作者:五十嵐播水

    「筆始」「読始」「鍬始」など、事始めは何事によらず一年の幸いを祈りつつ最初に行うことを言います。三箇日が終わり、今日から仕事始めの人が多いでしょうか。普段なら出張先、会議などの予定がびっしりと書き込まれた黒板、あるいはホワイトボード。昨年の内に、きれいに拭われていました。初めての書き込みから、この一年の事務仕事が順調に運びます。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題「葉桜(はざくら)」の
応募は締め切りました

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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