2018年10月の俳句

  • 下戸なるは この世の無念 新走り

    2018.10.31 放送

    作者:木内怜子

    今年とれた新米で造った酒が新酒。この句のように「新走り」ともいいます。現在は寒造りが盛んで、新酒が出廻るのは二月頃ですが、かつては新米をすぐに醸造したので、新走りは秋の収穫の喜びと直結した秋の季語となっています。作者はお酒が苦手な方のようです。新走りの香りの漂う中で嬉しそうに利酒をしている人を見て、下戸に生まれたことを口惜しがっています。

    (監修:池内)

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  • ひよんの笛 二つ目のよく鳴りにけり

    2018.10.30 放送

    作者:松浦加古

    瓢の木とも呼ばれる柞という常緑高木にできるのが瓢の実。実といっても、実体は秋に柞の葉で作られる虫瘤、アリマキの巣です。虫が出たあとにあいた穴に口をつけて吹くと、ヒョウヒョウと鳴るので「ひょんの笛」と呼ばれています。柞の下で拾ったひょんの笛。一つ目はどうしても鳴りませんでしたが、二つ目を吹くとヒョウヒョウとよく鳴りました。

    (監修:池内)

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  • 太き棹 しならせてゐる 吊し柿

    2018.10.29 放送

    作者:田正子

    渋柿の皮を剝き、日に干すのが「吊し柿」。剝くときに蔕を残しておき、細い縄に吊して日当たりのよい軒下などに干します。日光と風を受け、柿は三週間ほどでよく乾き白い粉が噴き出します。好みにより柔らかめのもの、硬めのものも珍重されます。この句は、太い棹が撓るほどぎっしりと干された吊し柿。日本の農村らしい晩秋の光景です。

    (監修:池内)

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  • 林檎煮る ワインも 北の国のもの

    2018.10.26 放送

    作者:村重香霞(松山市)

    北の国でとれた林檎を、同じく北の産地のワインで煮て、コンポートを作っているのです。同じ風土で育った食材は、相性がいいと言いますね。体も心も温かくしてくれる、手作りの一品。みのりのゆたかさを存分に楽しむ姿勢は、いかにも秋らしく、充実した時間です。こんな風に週末が過ごせたら素敵なのですが。

    (監修:神野)

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  • 亭主より 女房ほしき 秋のくれ

    2018.10.25 放送

    作者:稲垣きくの

    稲垣きくのは明治生まれの女性俳人。威張るだけで役に立たない夫なら要らないから、家庭を切り盛りして助けてくれる女房がほしいと、ずばりと言い放ちました。秋の日暮れはつるべ落とし、仕事や家事もなかなか片付きません。ああ、もう一人、女手があれば……切実ながらもどこか滑稽味のある、本音の一句です。

    (監修:神野)

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  • 眼球は おのれ映さず 葛の花

    2018.10.24 放送

    作者:岡田一実(松山市)

    松山在住の若手俳人の作品です。眼球は自分自身の姿を映さないというのは当たり前のことですが、あらためて言われると、孤独で満たされないことのようにも思えます。自分を見つめることは叶わぬまま、ただ葛のはびこる荒野を眺めている時間の、言いようのないさびしさが満ちてくる一句です。

    (監修:神野)

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  • 霜降や 鳥の塒を 身に近く

    2018.10.23 放送

    作者:手塚美佐

    一年を二十四の季節に分けた二十四節気、今日から「霜降」です。 霜降とは霜が降りるころという意味で、これまでに増して寒くなり、露が凍って霜に変わります。肌寒くなってどこか心細い気分のとき、ふと、鳥たちが身を寄せ合うねぐらを、自分の身近に感じました。鳥も人間も、同じ命として、これからの寒さに向かいます。

    (監修:神野)

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  • 皿小鉢洗つて伏せて十三夜

    2018.10.22 放送

    作者:鈴木真砂女

    秋のお月見は二回あります。一つは十五夜、もう一つは十三夜です。昨夜は十三夜。秋も深まったころの、満月に少し足りない欠けた月に、日本人は美しさを見出しました。夕餉の皿や小鉢を洗い終え外に出ると、肌寒い夜空に、さえざえと月が輝きます。日常の中でも季節のめぐりを忘れない、ゆたかな心を感じる句です。

    (監修:神野)

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  • 家包む 刈田の甘き香りかな

    2018.10.19 放送

    作者:鈴木厚子

    稲刈りが終ったあとの田んぼが「刈田」。刈株だけが点々と並ぶ眺めは、がらんとしたもの淋しさと、広々とした解放感を同時に味わえる、日本の晩秋ならではの情景です。この句は、一軒の家を囲むように広がっている刈田。刈田に残された稲や藁の甘い香りが、家を包んでしまうかのように漂って来ています。

    (監修:池内)

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  • 何もかも さらりと流し 秋刀魚焼く

    2018.10.18 放送

    作者:大竹多可志

    「秋刀魚」は日本の秋を代表する味覚の一つ。夏のうちは北海道付近にいますが、九月ごろ南下を始め、十月には紀州沖にまでやって来ます。獲れたてを塩焼きにして柚子や酢橘をかけ、大根おろしで食べるのが一番です。揉め事や心配事はさらりと流して、いそいそと秋刀魚を焼いている、という一句。作者も秋刀魚が大好きなのでしょう。

    (監修:池内)

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  • 菊の日の もつとも遠き山はどれ

    2018.10.17 放送

    作者:大峯あきら

    今日は旧暦の九月九日。最もめでたい陽の数である九が重なるので「重陽」、また菊の花の盛りでもあるので「菊の日」「菊の節句」ともいいます。古くは「登高」「高きに登る」といって、山や丘などの高い所に登り、菊の花を浮かべた「菊の酒」を飲む風習もありました。作者は、この日登るならどの山かな、などと考えながら遠くの山を眺めています。

    (監修:池内)

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  • 鳳凰に 結べる稲穂 秋祭

    2018.10.16 放送

    作者:鈴木太郎

    「秋祭」は、収穫した稲をお供えして神様に感謝する祭です。都市でも行われますが、本来は農村の祭であったと考えられます。この句は、御輿の天辺にある鳳凰に結びつけられた稲穂をクローズ・アップすることで、豊作を祝う秋祭の華やぎを描いています。愛媛県内もいろいろな秋祭がありますが、今日からその一つ新居浜の太鼓祭りが始まりました。

    (監修:池内)

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  • 九十三 どんぐり見れば すぐ拾ふ

    2018.10.15 放送

    作者:岩崎健一

    櫟、楢、樫などのブナ科の落葉樹の木の実を、まとめて「どんぐり」と呼びます。皮が堅く、熟しても皮が剝けず、下半分はお皿の形の殻斗に包まれています。どんぐりは地面にころがり、よく弾み、まるで元気のいい子供のようです。幾つになっても童心を失わない作者は、93歳を過ぎた今も、どんぐりを見れば拾わずにはいられないようです。

    (監修:池内)

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  • 青空へ 腕つきあげて 捨案山子

    2018.10.12 放送

    作者:宮本幸子(東京都)

    案山子が畦に捨てられ、傾いています。その腕が、ぴーんと、青空へ突き上げられているように見えました。その姿は、つとめを果たした英雄のようで、従来のあわれなイメージを打ち破ります。秋の深まる青空のもと、ふり絞った気骨を見せつける、堂々たる案山子の最後です。

    (監修:神野)

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  • 捨案山子 ころがる石を 見てをりぬ

    2018.10.11 放送

    作者:片山一行(松前町)

    稲刈りが済んで役目を終えた案山子は、引き抜かれて畦や道ばたに転がされます。これが捨案山子です。寝かされた案山子の視界には、石がごろごろ転がります。ボブ・ディランの名曲「ライク・ア・ローリング・ストーン」では、道ばたの石を、社会から見放された存在として歌いました。案山子も石も忘れられた者として、静かに哀しみをたたえます。

    (監修:神野)

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  • 「余所見せず行けよ」 案山子ののたまへり

    2018.10.10 放送

    作者:山内佑資(松山市)

    物思いつつ畦道をゆくと、案山子が自分に語りかけてきたように感じました。「のたまへり」は尊敬語で「言う」という意味、身分の高い人に使う言葉です。庶民的な案山子と「のたまふ」のギャップが面白いですね。「余所見せず行けよ」と励ます案山子は、故郷のおさななじみのよう。案山子の親しさを、かろやかに表現した一句です。

    (監修:神野)

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  • 後継ぎは 海を渡りぬ 夕案山子

    2018.10.09 放送

    作者:栗田修次(松前町)

    農業を継ぐはずだった息子は、海を渡って海外へ。もうこの田んぼを継ぐ後継ぎもいないのだなあと、しみじみ見渡す夕暮れに、案山子がぽつんと立ち尽くします。海の向こうで元気にやっていてほしいと、子の幸せを願いながら、自分の代で田んぼをしまうさびしさも、やはり真実。複雑な思いが、夕焼けの金色に溶けてゆきます。

    (監修:神野)

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  • 道草や 案山子に 覚えたての九九

    2018.10.08 放送

    作者:直木葉子(東京都)

    小学生が学校帰りに道草をして、畦道で案山子に、掛け算の九九を披露しています。覚えたてで、嬉しいのでしょう。田んぼで鳥を追い払うために立てる案山子と、友だちのように接する純真な姿が、ほほえましいですね。子どもの成長の日々に案山子が当たり前に存在することの、あたたかさを思い出させる一句です。

    (監修:神野)

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  • 小鳥来る 少し大きな鳥も来る

    2018.10.05 放送

    作者:小西昭夫(松山市)

    「小鳥来る」は、秋にやってくる渡り鳥のうち小型の鳥を表す季語。鶸、連雀、花鶏、鶲、菊戴など多種多様な小鳥たちです。秋の深まりとともに、山から里へ下りてくる小鳥もいます。また、どんぐりを好む懸巣や、佐田岬で見られる刺し羽など、小鳥よりは少し大きな野鳥もいます。そんな日本の秋の鳥の生態を明快に詠んだ一句。作者は松山市にお住いの俳人です。

    (監修:池内)

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  • 手をこぼれ 土に弾みて 零余子かな

    2018.10.04 放送

    作者:藺草慶子

    自然薯、長薯などの葉のつけ根にできる、球のような形の実が「零余子」です。茹でたり炒ったりして酒の肴にしたり、炊き込んでむかご飯にしたりします。いかにも秋らしい野趣に富んだ食感が楽しめます。この句は、薯の蔓を引いて零余子を採っている情景でしょう。ひとりでに地にこぼれて散らばる零余子の姿が、まことに生き生きと描かれています。

    (監修:池内)

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  • 打たれたる 石に艶ある 添水かな

    2018.10.03 放送

    作者:染谷秀雄

    田畑を荒らす鳥や獣を追い払うために、水の力を利用して大きな音を出す仕掛けが「添水」。その音から「ばったんこ」ともいいます。竹筒の中央に支点を置き、片方に水を受けます。水が反対側へ流れ出ると、竹筒は軽くなって撥ね返り、先端が下に置かれた石を強く打って音を出します。この句は、何度も打たれ続けている石に注目しています。

    (監修:池内)

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  • 葡萄食う 葡萄の里に集まりて

    2018.10.02 放送

    作者:深見けん二

    秋に実る果物の代表的なものの一つが「葡萄」。その栽培の歴史は古く、紀元前一五〇〇年ごろのエジプトの壁画に、収穫と葡萄酒造りの様子が描かれています。日本でも十二世紀には甲州葡萄が誕生。現代では種なし葡萄など多くのすぐれた品種が生み出されています。これは葡萄園に出かけて、秋の一日を葡萄狩に興じている人々です。

    (監修:池内)

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  • 赤い羽根 日記にはさみ 今日終る

    2018.10.01 放送

    作者:井桁衣子

    きょう十月一日は、共同募金の始まる日。昭和二十二年にフラナガン神父の勧めで九州で始まり、全国に広がりました。街頭などで募金をし、寄付をした人に「赤い羽根」が渡されるので、赤い羽根募金と呼ばれます。集まった資金は福祉事業に役立てられます。募金をして貰った赤い羽根を、作者は此見よがしに胸に刺すことなく、そっと日記にはさんでいます。

    (監修:池内)

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