2024.07.31 放送
正岡子規は、明治時代に活躍した、松山出身の俳人です。夏嵐とは、青葉を吹きわたる強い風です。外から風がザアッと吹きこみ、机の上に積んであった紙がいっせいに飛ばされました。生い茂る木々の緑と、紙の白さと、色の対比があざやかです。子規が目指したのは、作者の見たものを読者も追体験できる、感覚的な俳句でした。この句も、映像の力で、夏の勢いやすがすがしさを伝えています。
(監修:神野)
2024.07.30 放送
幹や枝が、猿も滑りそうにつるつるしているのでこの名前が付きました。文字通り、夏から秋口まで百日近く咲きます。花や葉が笑うように揺れ動くので「くすぐりの木」とも呼ばれます。 どの枝となく、撓んで揺れているのは、誰かが幹をこっそりくすぐっているのかも。白やピンクなど、よく見るとしわくちゃな花の下に、そっと行ってみたくなります。
(監修:谷)
2024.07.29 放送
帰省は、郷里に帰って、父母の安否をうかがうこと。夏休みを利用することが多いので、夏の季語になっています。この靴は、学生か新入社員のようです。たどり着いた安堵とうれしさで、家の中に駆け込んだ模様。玄関に脱ぎ捨てられた靴を見ての家族の感慨が「船ほどの靴」。家を離れたわずかの間の成長ぶりに、目を見張りながら、揃える靴です。
(監修:谷)
2024.07.26 放送
帷子は、麻などで仕立てた真夏用の単衣の着物のこと。一茶の時代は、生糸で作った生絹でした。染帷子といっていろいろな色の帷子があったそうです。この句の帷子は、文字通りの空色。新調したのでしょう。今日の青空をそのまま身に纏ったような、ふわりとした気持ちの良さが伝わります。一茶の涼やかな表情までも。
(監修:谷)
2024.07.25 放送
溌剌としたお母さんが目に浮かびます。両側に小さい子どもを連れて、今日も忙しく出かけます。日傘はオシャレで、紫外線カット効果も帽子より大きいです。でも帽子なら、二人の子どもに両手が空けられる。二児の母であることが、帽子の方が好きと宣言させたのかも。夏帽子がよく似合うお母さんです。
(監修:谷)
2024.07.24 放送
万葉歌人、山部赤人は「湯はしも、さはにあれども、島山のよろしき国」と、伊予を詠みました。温泉はたくさんあるけれども、島や山の姿のすばらしい国伊予の温泉と、讃えています。今日の俳句の作者・谷野予志は昭和に愛媛で活躍しました。松山平野を湯の国と表現して、雄大な景色です。歴史を絶やさず、道後温泉本館が五年半ぶりに全館営業を再開しました。
(監修:谷)
2024.07.23 放送
イソップ物語の「アリとキリギリス」にあるように、蟻は夏に一番活発に働きます。組織化された生活を営んでいて、働き蟻は穴を掘り、餌を運び、幼虫の世話をします。蟻は考えてはいけない、と言われているようで、ちょっとかわいそう。人間も同じく、うかうか考え込んでいると、怠け者に見えているのかも知れません。
(監修:谷)
2024.07.22 放送
合歓の花は、刷毛のような形で咲き、ほんのり紅い花を開きます。日暮れになるとその葉を静かに閉じて就眠するので、この名が付きました。恋人か、親友か、「君」は大切な人のようです。二人でいた時とは違う自分に戸惑う気分、わかる気がします。うろつくこの人を、合歓の花が包んでいるようです。この句、作者の妻の逝去の後に作られました。
(監修:谷)
2024.07.19 放送
学校やイベントで、風鈴作りに挑戦したのでしょう。作って来た風鈴は、失敗してしまったのか、うまく音が鳴りません。それでも、せっかくの手作りの風鈴だから、吊るして飾ります。風に揺れているさまを見ていれば、音は鳴らなくても、嬉しくて、じんわりと涼しさが吹き過ぎてゆきます。
(監修:神野)
2024.07.19 放送
(監修:)
2024.07.18 放送
風鈴にも、硝子や陶器、鉄など、さまざまな素材があります。吹く風も、ときには強くときには優しく、天気や時間によっても変わります。風鈴の音も一期一会です。風鈴が風の形を覚えないのは、吹いてきたそのときの風を柔軟に受け止めるためかもしれません。さて、今日はどんな風が吹くでしょうか。
(監修:神野)
2024.07.17 放送
かつての戦時中には、武器を作るため、家庭にある鉄製のものを供出する命令が出されました。今は穏やかに風に鳴る鉄風鈴も、世が世なら、回収されて銃弾にされたかもしれません。この鉄風鈴が銃弾となる時代が、もう来ませんように。風鈴の静かな音色が、平和への祈りを、涼しくひびかせます。
(監修:神野)
2024.07.16 放送
風鈴も、吊るしたままだと、少しずつ汚れます。そのささやかな汚れを布で拭って、もう一度、風にかけてやります。すると、風鈴の音が、拭う前と違って、また新鮮にひびきました。ささやかな音の変化を敏感に受け取り、いっそう清らかに、涼しさが澄みわたります。
(監修:神野)
2024.07.15 放送
風鈴の鳴る部屋で、冷たい緑茶を用意しました。お湯を沸かさず、水出しでゆっくり作った緑茶を、よく冷やしていただきます。あさみどりに透けた色も、ひんやりと涼しげです。ちりん、ちりん、風鈴の音も心に風を吹かせます。暑い夏ですが、工夫しながら、なんとか体と心を整えて過ごしたいものです。
(監修:神野)
2024.07.12 放送
部活動のマネージャーの主な仕事は、選手のサポートです。汚れたユニフォームなどを洗うのもその一つなのでしょう。靴下は洗濯ばさみで留めてゆき、ついでに風鈴も吊るします。ちりん、ちりん。風に揺れるソックスと風鈴が、夏の片隅にまぶしく光ります。
(監修:神野)
2024.07.11 放送
夏の雨が降る昼は、木々の緑も濃く匂い、室内も陰影が深くなります。風鈴の鳴る音が雨音に混じって遠く聞こえ、近くには触れられそうな距離にその人の唇があります。唇に触れるか、それとも。しっとりとした緊張感を、風鈴が涼しく彩り、結末は雨の彼方へ溶けてゆきます。
(監修:神野)
2024.07.10 放送
松山城下のロープウェイ街では、夏の風物詩として、毎年、砥部焼の風鈴を吊るしています。外国からの旅行客でしょうか、かたことの日本語でロープウェイ乗り場への行き方を尋ねています。日本の夏も暑いですが、砥部焼の風鈴の涼しい音色に耳を傾け、松山城へさあ、おいでなもし。
(監修:神野)
2024.07.09 放送
素足になることも多い夏には、足の爪にカラフルなペディキュアをほどこすのもおしゃれです。ペディキュアを塗り、乾くのを待つ間、手持ちぶさたでぼーっと、風鈴の音を聞いています。生乾きでまだつやつやしている爪に、まばゆい日差しが照り映えます。この夏、素敵な思い出ができますように。
(監修:神野)
2024.07.08 放送
風鈴は、ちりんと鳴る音の涼しさを楽しむ鈴です。日本の夏には欠かせないアイテムで、俳句でも夏の季語として詠み継がれてきました。軒先に吊るした風鈴の下で、飼っている犬が回覧板を齧っています。風鈴と回覧板と犬、何気ない日常をかたちづくるものたちが、のびのびと過ごす、夏の一日です。
(監修:神野)
2024.07.05 放送
電話で手がふさがって、蚊に刺された方の足を、もう片方の足で打ってやっつけようとしています。なんとなく身に覚えもあって、笑ってしまいます。相手の話は延々続いていますが、蚊に苦戦しているので上の空かも知れません。作者の変哲は俳号で、本名は小沢昭一。昭和から平成にかけて、ラジオ、映画、演劇などの幅広い分野で活躍しました。
(監修:谷)
2024.07.04 放送
サイダーをうっとりと見つめている句です。サイダーって繁に、つまり隙間のないくらい泡を立て続けているものだなあ、と。周りの樹々に染まったような薄みどりに、心を奪われているようです。さっきまでの雑念も泡とともに消えて。この句からは、例えばユーミンの「海を見ていた午後」など思い出します。サイダーの中にも貨物船が見えてきそう。
(監修:谷)
2024.07.03 放送
梅雨の時期は、新緑の頃でもあります。青梅雨と呼ぶと、樹々がこぼす雨を思って、ほのかに明るい気持ちになります。仏間は、普段から父の居場所なのでしょう。青梅雨の音を聞きながら新聞を広げたり、あるいはスマホを見ているかも。父はぽつんと寂しそうですが、傍に先祖を感じて心落ち着く時間なのかも知れません
(監修:谷)
2024.07.02 放送
夏の季語「涼し」は、「いろいろの折りに涼しさを見出して、暑さをまぬがれるこころのもの」と、歳時記が解説しています。段ボールの解体は、意外と厄介です。格闘という感じで、汗が噴き出すことも。終わってみると、段ボールは広がって一枚の紙に。なんだか涼しい気分になりました。伸びきった段ボールもせいせいして、涼しそう。
(監修:谷)
2024.07.01 放送
噴水は涼感を与えるものとして、俳句では夏の季語としています。噴水にも小さな虹がかかることがあり、遭遇すると得した気分になります。その虹を鳥がくぐっていくという、すてきな光景です。鳥が足繁く戻るのは、作りかけている巣。燕は六月終わりころまで巣作りします。命を育む巣に、虹色が混じっているでしょう。
(監修:谷)
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