2025年11月の俳句

  • バス待ちつつ 顔確かめる 冬の朝

    2025.11.28 放送

    作者:山中 宏

    冷たい冬の朝には、通勤や通学のバスを待つ時間が長く感じられて、辛いものです。この人の動作、わかる気がします。だんだんと、顔の感覚がなくなりこわばってきたのでしょう。思わず手で、自分の顔を触ってみました。在る在る、ちゃんと顔の凹凸が。ユーモラスな表現で、寒さの実感を伝えます。

    (監修:谷)

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  • 冬蝶を 口もていちどならず吹く

    2025.11.27 放送

    作者:三橋敏雄

    単に「蝶」だと春の季語ですが、冬に見かける蝶を「冬の蝶」と言います。数も少なくなって、いかにも弱弱しく飛んでいます。じっと止まっていて死んだようになっていることも。息を吹きかけたら再び飛びはしないか、と小さな風を送ってみます。一度ならず試みました。果てかけている冬蝶に、命を吹き込むかのようです。

    (監修:谷)

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  • マフラーに 星の匂ひを つけて来し

    2025.11.26 放送

    作者:小川軽舟

    そろそろマフラーが欲しくなる頃。以前は襟巻と呼ばれ、文字通り襟元に巻く防寒が主な目的でした。今では、冬のオシャレの必須アイテムです。星のきれいな夜の待ち合わせ。マフラーに星の匂いを付けて来たのは、男性か、それとも女性の方?。どちらにしても、このロマンチックなマフラーに、顔を寄せてみたくなります。

    (監修:谷)

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  • オリンピック 騒ぎすみたる 小春かな

    2025.11.25 放送

    作者:吉屋信子

    「小春」は陰暦十月で、今の十一月から十二月にかけての時期です。晴れて春のように暖かい日を「小春日和」と言います。作家であり、高浜虚子に師事して俳句を作った作者の年代から、一九六四年の東京オリンピックを詠んだのでしょう。十月十日から二十四日までの開催でした。日本中の興奮がおさまった小春の陽気を、静かに味わっています。

    (監修:谷)

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  • あす毀す生家や 梅の帰り花

    2025.11.21 放送

    作者:森田 玲香(松前)

    父母を見送り、実家も今は空き家です。思い出の詰まった場所ですが、維持管理も大変なので、取り壊すことに決めました。明日、工事が始まります。最後に訪れた生家の庭に、梅の帰り花を見つけました。梅の木も、これが最後だと分かっているのかもしれません。家族の記憶のしんがりに、帰り花が静かに輝きます。

    (監修:神野)

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  • マカロニを 茹でて木皿へ 帰り花

    2025.11.20 放送

    作者:藤橋一憲(松山)

    帰り花の咲くころは、冬に入って風も冷たくなってきます。さっとマカロニを茹で、木皿へうつして簡単に食事にします。マカロニのあたたかさがホッと嬉しく、木皿の優しい手触りも、ぬくもりを伝えてくれます。庭の帰り花を見やりながら、なんでもない一日を丁寧に暮らすひとときです。

    (監修:神野)

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  • フィクションの様な休戦 帰り花

    2025.11.19 放送

    作者:しまのなまえ(八幡浜)

    10月、ガザの停戦合意が報じられました。しかしその後も、イスラエルの攻撃はやまず、人道危機は続いています。休戦は望ましいことですが、どこか信じられなくて、フィクションのようだと感じたのでしょう。この平和への一歩が、いっときの帰り花として消えてしまわぬよう、冬の日差しに願います。

    (監修:神野)

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  • 保護猫の ミルクの時間 帰り花

    2025.11.18 放送

    作者:えな(西予)

    捨てられたりして飼い主と暮らせなくなった保護猫を、引き取って育てることにしました。まだ幼いので、食事の時間にはミルクを用意します。人間を警戒する猫の怯えを、受け止めながら向き合います。寒い冬にも優しく帰り花が咲くように、つらい環境に耐えた猫にも幸せが訪れますように。

    (監修:神野)

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  • 日溜りの 移る早さや 帰り花

    2025.11.17 放送

    作者:塩野谷慎吾(千葉)

    あたたかに感じる小春日和でも、季節は冬です。太陽の光も、気が付けばすぐかげり、ひんやりと冷たい風が吹いてきます。刻々と移ろう冬の日が、わずかに差し来るそのぬくもりに、帰り花はそっとひらきます。冬を輝くささやかな命の光を、しずかに掬い上げました。

    (監修:神野)

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  • 星になり風になり 今 返り花

    2025.11.14 放送

    作者:松山帖句(松山)

    星になって、風になって、いま返り花としてここに在るのは、誰の魂でしょうか。この世を去っても、姿を変え、ときには返り花となって、大切な人のそばに咲くこともあるのかもしれません。季節外れになぜか一輪咲く花が、誰かのメッセージのように思えることもあります。思いが静かに世界を巡ります。

    (監修:神野)

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  • 海底に 月を描く子や 帰り花

    2025.11.13 放送

    作者:七瀬ゆきこ(三重)

    子どもがお絵描きをしています。魚たちが遊んでいる楽しい絵でしょうか。それとも、海の底に沈んだ誰かを思っているのでしょうか。海なのに月を描く、子どもの独特の想像力が、不思議な世界を作り出しました。帰り花が、海の底の月のように、ぽつんと白く光っています。

    (監修:神野)

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  • 利休帽の樗堂 躑躅の 忘れ花

    2025.11.12 放送

    作者:やぎ じゅうめい(松山)

    栗田樗堂は江戸時代に活躍した、伊予の俳人です。50歳を過ぎ、余生を心ゆたかに過ごすための庵を、松山市内に結びました。現存する樗堂の肖像は、風流に利休帽をかぶっています。草庵で俳諧に遊んだ樗堂。その庭の躑躅は、冬のはじめに、帰り花を咲かせることもあったでしょうか。

    (監修:神野)

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  • 廃校に 猫の溜まり場 帰り花

    2025.11.11 放送

    作者:井上和美(砥部)

    もう使われていない学校のひと隅、グラウンドの桜の下や裏門のつつじの脇などに、猫がよく集まっています。あたたかい日ざしにひらく帰り花には、ここから冬が深まってゆく厳しさも潜んでいます。猫たちにも、冬の寒さが待っています。束の間の日だまりを分かち合う、やすらぎのひとときです。

    (監修:神野)

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  • 石の家に ぼろんとごつんと 冬がきて

    2025.11.07 放送

    作者:高屋窓秋

    今日は立冬。今年の夏の過酷な暑さが、心身に刻まれたままに、冬を迎えた気がします。「ぼろん」は転げ出たような、「ごつん」は重い塊が当たる感じ。冬の到来を二つのオノマトペを並べて表現しました。石の家は、素朴でもありモダンなイメージでしょうか。ごつんとやってきたこれからの長い冬を、大切に過ごしたい気分です。

    (監修:谷)

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  • 行く秋の ゴリラ見にいく 日に印

    2025.11.06 放送

    作者:中林明美

    「行く秋」は、過ぎ去っていく秋を惜しむ心が込められている季語です。日が短くなり寒さが増します。そんな頃、ゴリラに会いに行きたくなったのですね。行く日を決めてカレンダーに印を付けました。どうしてゴリラなのか。ゴリラは暖かそうですし、人間に最も近い分類群だそうですから、一緒に秋を惜しみたい気持ち、わかる気がします。

    (監修:谷)

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  • 海を見て 青き蜜柑の 手に匂ふ

    2025.11.05 放送

    作者:水原秋桜子

    蜜柑は冬の季語ですが、青蜜柑は秋で、黄色く熟れる前の蜜柑です。まだ皮も硬くて酸っぱく、それだけに柑橘らしい芳香を放ちます。人気のない秋の海に佇んでいると、さっき剥いた青蜜柑の匂いが、手に残っているのに気付きました。青く澄んだ海だけが広がる寂しい光景です。蜜柑の青い匂いが鼻の奥にきゅんと痛い、青春を感じます。

    (監修:谷)

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  • 芋煮会 流派家元 ありにけり

    2025.11.04 放送

    作者:辻 桃子

    芋煮は、山形など東北地方の郷土料理で、十月頃に河原に大鍋を据えて、里芋・牛肉・茸などを煮込みます。愛媛でも芋炊きで親しまれ、秋の親睦の行事です。まるで稽古事のように、鍋の作り方を表現しているのがユニークです。「流派家元」と言われると、背筋をしゃんと伸ばして芋を煮ていそうです。もちろん、具材にもこだわりがあります。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

1月のお題は
「日脚伸ぶ(ひあしのぶ)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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〒790-8537 テレビ愛媛「きょうの俳句」係

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