2019年11月の俳句

  • 寒いなあ コロッケパンの キャベツの力

    2019.11.29 放送

    作者:小川楓子

    木枯らしの冷たさが身にしみるこのごろ、「寒いなあ」とつい呟いてしまうこともありますよね。お昼にコロッケパンを買って、噴水の見えるベンチに座ったりして。大きな口でかぶりつくと、コロッケの隙間に挟まったキャベツの新鮮さが、あらためておいしく感じられます。さあ、しっかりエネルギーを補給して、この冬も乗り切ってゆきましょう。

    (監修:神野)

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  • やすまざるべからざる風邪なり 勤む

    2019.11.28 放送

    作者:竹下しづの女

    寒い冬には、風邪がはやります。この句の「やすまざるべからざる」は二重否定。休まないわけにはいかないほど風邪をこじらせたのに、仕事を休めなくて勤めに出ているのです。明治生まれのしづの女は、夫を亡くしたシングルマザー。図書館で働きながら、五人の子どもを育てました。労働の辛さを吐露したこの句は、現代の私たちにも、深い共感を呼び覚まします。

    (監修:神野)

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  • 新しき辞書 寒林のにほひせり

    2019.11.27 放送

    作者:筒井龍尾

    新しい辞書をひらくと、すがすがしい紙の匂いが。作者はそれを、寒い冬の林の匂いだと捉えました。紙の原材料は木ですから、それはその通りなのですが、季節を冬に限定したことで、言葉の意味を知りたいと願う切実さや、めくったときの緊張感が伝わります。寒い冬、ときには辞書をめくり、言葉の林へ分け入るのも、乙な過ごし方ですね。

    (監修:神野)

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  • 落葉みな 夕日まみれよ ボブ・ディラン

    2019.11.26 放送

    作者:大高良

    冬になると、木々は葉を落とし、沈黙の季節を迎えます。散り敷いた落葉には、夕日があまねく照り渡り、夜が来るまでのひとときを、茜色に染め上げます。ボブ・ディランはアメリカのミュージシャン。答えは風の中と歌った彼の曲を口ずさみながら、風に舞う落葉の中で、ふと来し方を振り返ります。

    (監修:神野)

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  • 冬空を 緋色の靴の 落ちくるか

    2019.11.25 放送

    作者:山西雅子

    ぴんと張りつめた冬の青空を見つめていると、ふと、真っ赤な靴が落ちてきそうな幻想がよぎりました。アンデルセンの童話「赤い靴」を思い出す人もいるでしょう。にぎやかな季節が過ぎ去り、静けさに満ちた冬だからこそ、ドラマチックな出来事を期待してしまうのかもしれません。何かが起きそうな緊張感に満ちた、冬のある日の一句です。

    (監修:神野)

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  • 木枯や 星より先に家灯る

    2019.11.22 放送

    作者:井桁衣子

    冬の初めに吹く強い北風が「木枯」。文字通り木を枯らしてしまう風で、この風が吹くと、枝にある木の葉が吹き落されてしまいます。真冬の風ほど冷たくはありませんが、ヒューヒューという風音が冬の訪れを告げているようです。木枯の吹くころは、日が暮れるのもめっきり早くなります。空の星が見えるより先に、家々には明りが灯されています。

    (監修:池内)

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  • 波郷忌や 大榾焚いて 我ら酌む

    2019.11.21 放送

    作者:小島健

    きょう11月21日は松山生まれの俳人・石田波郷の忌日「波郷忌」です。中学時代から俳句を学んだ波郷は、若くして水原秋桜子に才能を認められ、56歳で亡くなるまで昭和の俳壇で活動し、抒情的でみずみずしい作風で人間探求派と呼ばれました。今年は50回目の波郷忌。波郷の流れを汲む俳人である作者は、盛大に焚火をして酒盛りをしながら、酒好きで酒豪としても知られていた波郷を忍んでいます。

    (監修:池内)

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  • 一鍬の 泥の重たし 蓮根掘

    2019.11.20 放送

    作者:川内雄二

    蓮の地下茎、つまり蓮根を収穫する作業尾が「蓮根掘」。「蓮掘」「蓮根掘る」ともいいます。秋のうちにも掘られますが、お歳暮用や正月用に収穫することが多いので、蓮根掘は冬の季語となっています。最近は機械掘りも行われますが、元来蓮根掘は寒さがつのる蓮田での泥まみれの作業です。鍬に載っている泥の重さが、蓮根掘という農作業の厳しさを表している一句です。

    (監修:池内)

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  • 山茶花の 水に映りて 水に散り

    2019.11.19 放送

    作者:小圷健水

    冬の初めに咲く「山茶花」は、ツバキ科の常緑樹。椿に似ていますが、花は椿より小ぶりで、はかなげに咲き、はかなげに散ります。花びらが地に散り敷く姿にも、寂しげな風情が感じられます。五弁の花の色には紅、白、薄紅などがあります。この句は、池のほとりに咲いている山茶花。作者はまず水に映る花の姿を愛で、つづいて散って水面を漂う風情を愛でています。

    (監修:池内)

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  • ふりかへるたびに しぐれてきたりけり

    2019.11.18 放送

    作者:岩岡中正

    冬の初めに降る通り雨を「時雨」といいます。降る範囲は狭く、降り出したかと思えばすぐやんで青空が見えたりします。山沿いの地方に多い現象で、とくに京都の時雨は古くから短歌や俳句によく詠まれています。この句は、作者が外出先で遭遇した時雨でしょうか。まるで追いかけて来るかのように、振り返るたびに雨足をつのらせています。

    (監修:池内)

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  • 朱鷺ぐんと 羽広げたる 時雨虹

    2019.11.15 放送

    作者:ぐ(神奈川県)

    冬のはじめに時雨がつくる虹のことを時雨虹といいます。パラパラと雨が降ったあと、暗かった空がさらりと晴れ、朱鷺が羽を広げて飛び立ちました。朱鷺は白い鳥ですが、翼を広げると、ほのぼのとあたたかい桃色の羽根が見えます。時雨ののちの、青空と虹と朱鷺の羽。移ろいゆく冬の景色が見せた、瞬間の色彩の美を詠みあげました。

    (監修:神野)

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  • 時雨るるや ジャム煮る横に 眠る猫

    2019.11.14 放送

    作者:渡部茂由子(久万高原町)

    天気の変わりやすい冬の一日、出かけるのはやめて、家の中でジャムを煮て過ごしています。いつもは元気な猫も、今日はおとなしく、すぐそばで寝息を立てています。おだやかな生活の時間。部屋に満ちてゆく果物の甘い香りが、さみしい外の時雨の気配を、しずかに遠ざけてくれます。

    (監修:神野)

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  • 朝見の時雨も 虹を立てにけり

    2019.11.13 放送

    作者:薬師神裕樹(西予市)

    天皇に拝謁することを朝見といいます。新しい天皇の即位の礼が行われた先月二十二日、東京では雨が降っていましたが、儀式のさなかに晴れ間が訪れ、大きく虹がかかりました。日本文化の中でゆたかに詠み継がれてきた時雨の季語が、脈々と息づく日本の歴史を思わせます。現実の偶然を巧みに掬い上げ、訪れる時代を、格調高く寿ぎました。

    (監修:神野)

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  • 日時計の 三時を濡らす 時雨かな

    2019.11.12 放送

    作者:石口孝治(八幡浜市)

    日時計とは、太陽のつくる影を使って時間を計る装置です。公園のオブジェとして、あちこちで見かけますね。日差しが薄くさびしくなった冬、ふと気が付けば、日の光のかわりに、時雨が日時計を濡らしています。午後三時に時雨が降ったという出来事を、日時計を通して表現したことで、空間の広がりのある一句となりました。

    (監修:神野)

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  • オルガンの 響きしづかに 初しぐれ

    2019.11.11 放送

    作者:向井桐華(松山市)

    冬のはじめの通り雨を、時雨といいます。降ったかと思うと晴れ、また降り出し、世界は刻々とさびれてゆきます。初時雨は、その冬になってはじめて降る時雨のこと。初時雨の降る中、誰かがオルガンを弾いています。オルガンの響きのなつかしさが、過ぎ去った季節を振り返らせ、冬の訪れを静かに告げています。

    (監修:神野)

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  • 歳時記を繰る指静か 冬に入る

    2019.11.08 放送

    作者:藤木倶子

    きょうは二十四節気の立冬。俳句では「冬立つ」「冬に入る」ともいいます。暦の上では、きょうから立春の前日までが冬です。厳しい冬を迎えるという緊張感があるのが「冬に入る」という季語です。静かに歳時記を繰る指先に、冬に入る気配を感じているという俳人ならではの一句。作者は、昨年10月25日に87歳でお亡くなりになりました。

    (監修:池内)

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  • 烏瓜 へうへうとして 吹かれたり

    2019.11.07 放送

    作者:瀬戸美代子

    ウリ科の多年草で、野原や萩に自生し、蔓を伸ばして木や竹にからみながら成長するのが「烏瓜」。夏の夜に咲いた白い花は、やがて瓜に似た実となり、晩秋のこの時期には朱色の卵ほどの実が枯れ色の藁にぶらさがっています。思わず藁を手繰り寄せて取ってみたくなります。この句は「飄飄として」という表現が、空中で風に吹かれる烏瓜の風情を、みごとに描いています。

    (監修:池内)

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  • 黄落や そらのあをさの やるせなし

    2019.11.06 放送

    作者:関成美

    銀杏、欅、櫟などの黄色に染まった葉が散ることを「黄落」といいます。代表的なのが銀杏並木の黄落。色づいた葉がびっしりと地面を彩るさまも印象的です。特に晴れた青空のもとの黄落は、美しさと同時にやるせなさを感じさせます。この句、中七、下五の平仮名表記が、見た目にも「黄落」を際立たせているようです。

    (監修:池内)

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  • 山顚を覗かせて雲 秋深し

    2019.11.05 放送

    作者:安原葉

    冬に入る少し前、秋もいよいよ深まった感じを表す季語が「秋深し」。背景には深閑とした静けさがあり、自然にも人の思いにも、淋しさや物の哀れの感じられる季節です。この句の山顚とは山のいただき、山頂のこと。高い山が山頂をわずかに覗かせて、厚い雲に被われている情景に、作者は秋の深まったことを実感しているようです。

    (監修:池内)

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  • 独り蹴る 轆轤の軋む 夜寒かな

    2019.11.04 放送

    作者:小暮陶句郎

    晩秋になると、日中は暖かでも夜は冷えこみ、忍び寄るような寒さを感じるようになります。そんな秋の夜の寒さを表すのが「夜寒」という季語です。作者は陶芸家としても活躍しておられる方。独りで夜更けまで轆轤を蹴って作品作りに励みながら、日中は感じなかった寒さに、しみじみと秋の深まりを感じています。

    (監修:池内)

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  • ハイオク満タン 石鎚山は 紅葉晴

    2019.11.01 放送

    作者:松森向陽子

    車のガソリンを満タンにして、今日はドライブへ。行き先は、石鎚山です。スカイラインを走れば、山は紅葉のただなか。空はよく晴れて、絶好のドライブ日和なのでしょう。「ハイオク満タン」という言葉のリズムのよさが、これから始まる小さな旅への期待感を伝えてくれます。週末、ちょっと遠出して、木々の色づきはじめた秋を堪能するのもいいですね。

    (監修:神野)

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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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