2019年6月の俳句

  • 淡々と 生きて跨ぎし 茅の輪かな  

    2019.06.28 放送

    作者:能村登四郎

    六月の終わりの夏越の祓は、半年分のけがれを祓い、残り半年も健やかに過ごせるよう祈る行事です。神社に編まれた茅の輪をくぐると、心身が清らかになると考えられてきました。淡々と生きる日々の小さな区切りとして、人々は茅の輪をくぐり、また生活へ戻ってゆきます。淡々と平凡な生活が送れるのもまた、茅の輪のご利益かもしれません。

    (監修:神野)

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  • 胸中を 風の吹く日や てんとむし 

    2019.06.27 放送

    作者:城倉吉野

    胸のうちに風が吹くというのは、感覚的な表現です。懸念事項が片付いて涼しい気分でしょうか。それとも、何かが終わってしまって、少しさびしい心地でしょうか。天道虫は夏の季語。まぶしい太陽を目指す姿は、一途ですがすがしいものです。生活に追われる日々、たまには天道虫を見つめる余裕を持ちたいですね。

    (監修:神野)

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  • みつしりと 水の断層 キャベツ切る

    2019.06.26 放送

    作者:辻美奈子

    夏のキャベツの充実感を、「水の断層」という素敵な言葉で切り取りました。みっしりと層をなすキャベツの葉の一枚一枚が、水のようにみずみずしいのです。キャベツのあの重さは、水の重さだったのですね。日常の食材も、言葉の力を使って、俳句に料理することができます。さあ、みなさんの冷蔵庫には、今どんな食材がありますか?

    (監修:神野)

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  • 夕暮は たたみものして 沙羅の花

    2019.06.25 放送

    作者:矢島渚男

    沙羅の木は、白い花びらが黄色い蘂を包んだ、涼しげな花を咲かせます。花のかたちが椿に似ているので、夏椿とも呼ばれます。暑さの落ち着いた夕暮れに洗濯物を取り込み、畳んで片づけているのでしょう。夕方の風が心地よくて、ふと外に目をやると、沙羅の花もすっきりと風に吹かれています。隣り合わせの自然と生きる、静かな人の暮らしです。

    (監修:神野)

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  • さくらんぼ 洗う間近に 子の睫毛

    2019.06.24 放送

    作者:花谷和子

    さくらんぼは、その愛らしく輝く姿から、赤い宝石とも呼ばれます。キッチンでさくらんぼを洗っているのでしょう。小さな我が子も、そばでじっと見つめています。水を弾くさくらんぼも、子どもの睫毛も、はつらつとして初々しいですね。さあ、このあと一緒にさくらんぼを食べる、笑顔の時間が待っています。

    (監修:神野)

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  • 思ひきり 噴水の伸び 梅雨晴間

    2019.06.21 放送

    作者:福井隆子

    梅雨の最中に、半日か一、二日、ぽっかりと気持ちよく晴れることがあります。「梅雨晴」あるいは「梅雨晴間」と言います。現在は五月の晴天を言うことが多い「五月晴」も、本来は、梅雨晴間を指す言葉でした。梅雨晴間の空へ向かって思いきり伸び上がる噴水。梅雨どきの貴重な晴天を喜ぶ思いがこめられた、気持のいい一句です。

    (監修:池内)

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  • 燕の子 親の来るまで 行儀よく

    2019.06.20 放送

    作者:太田寛郎

    家の軒などに巣を作った燕は、四月頃と六月頃の二度産卵します。今は六月に生まれた二番子が育っている季節です。一つの巣に五羽ほどの「燕の子」は、親燕の運んでくる餌をもらって成長します。行儀よく並んで待っていた燕の子が、我先にと大きな嘴をあけて餌をもらう姿は、何とも愛らしいものです。やがて大きくなって巣立ち、飛ぶ練習に励み、芦原などでの集団生活を経て、秋には南方へと渡ります。

    (監修:池内)

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  • 混み入りし 藪を抜け出で 今年竹

    2019.06.19 放送

    作者:前澤宏光

    春から初夏に生え出た筍は、皮を脱ぎながらぐんぐん伸びて若竹となります。今年生まれた竹なので、「今年竹」ともいいます。青々と丈を伸ばした今年竹は、竹藪の中でもすぐに目につくほどの、みずみずしい姿で風にそよぎ、日射しに揺れています。この句は、「混み入りし藪を抜け出で」という描写で、今年竹の若々しい季節感を表しています。

    (監修:池内)

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  • まだまろき 仔牛の角や 柿の花

    2019.06.18 放送

    作者:野中亮介

    柿は梅雨のころ黄色を帯びた白い花をつけます。若葉にまぎれて目立たない「柿の花」は、ひとひらふたひらと木の下に落ちているのを見つけて、花が咲いていたのに気づくこともあります。花のあとには、青い小さな実がつきます。この句は、今の牛が飼われている農家でしょう。生えはじめたばかりの仔牛の角と柿の花。どちらも、やがて来る豊かな稔りの季節を思わせます。

    (監修:池内)

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  • 波が波追うて真白や 明易し

    2019.06.17 放送

    作者:岩井英雅

    六月に入ると、松山の日の出は五時前。四時には、もう空が明るくなってきます。このように早々と明ける夏の夜を「短夜」、夜明けの風情に重心を置いた季語では「明易し」といいます。この句は港の情景でしょうか。満ちてくる波を追うように、さらに満ちてくる波。波と波がぶるかって真っ白なしぶきを上げながら、夜明けを早めているかのようです。

    (監修:池内)

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  • 枕木に 柔らかな雨 かたつむり

    2019.06.14 放送

    作者:奈良香里(松山市)

    線路に敷かれた枕木に雨が降っています。古く乾いた枕木が雨に濡れ、木の匂いを取り戻してゆきます。雨に誘われて這い出てくるかたつむりも、のびのびと気持ちよさそう。退屈に思える雨の日々も、今日の雨は柔らかいなあなどと捉えてみると、変化が感じられていいですね。「柔らかな雨」という詩的な表現が、やさしく世界を包み込みます。

    (監修:神野)

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  • さびしからん 蝸牛 目を仕舞うとき 

    2019.06.13 放送

    作者:武智しのぶ(埼玉県)

    かたつむりが突き出した目をしまうときには、きっとさびしい気持ちだろうと心を寄せました。童謡で「角出せ槍出せ頭出せ」と意気揚々に歌われるかたつむりですが、その逆の消極的な姿を掬い上げたのが新鮮です。やわらかく仕舞われる彼の目には、どんな景色が映っているのでしょうか。俳句は、かたつむりの気持ちにもなれる、やさしい詩です。

    (監修:神野)

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  • 専攻は ギリシャ哲学 かたつむり

    2019.06.12 放送

    作者:山田由美子(愛知県)

    哲学は、人間とは何か、生きるとはどういうことかなど、この世界の不思議について、思考を武器に突きつめる学問です。ソクラテスもプラトンもアリストテレスも、古代ギリシャの偉大な哲学者でした。ゆっくりゆっくり、答えを探しながら進む思考は、かたつむりの歩みにも似ています。かたつむりもまた、ものいわぬ哲学者なのかもしれませんね。

    (監修:神野)

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  • クレヨンの「はだ色」消えてかたつむり

    2019.06.11 放送

    作者:向井桐華(松山市)

    かつてクレヨンの定番だった「はだ色」。しかし、特定の色だけを肌色と呼ぶのは人種差別につながるとの指摘から、今では「うすだいだい」や「ペールオレンジ」など、別の名前で呼ばれています。かたつむりの肉も、かつての「はだ色」です。かたつむりを描こうとしたとき、はたと「はだ色」が消えたことに気がついた、小さな気づきの一句です。

    (監修:神野)

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  • 葉の裏や 米粒ほどの蝸牛

    2019.06.10 放送

    作者:中矢長宗(松山市)

    庭木の手入れをしていたのでしょうか、ふと葉っぱの裏を見ると、生まれたばかりのかたつむりの赤ちゃんがいたのです。米粒ほどの小ささでありながら、そのかたちはすでに立派なかたつむり。葉っぱの裏で一生懸命、生きているのです。上五の「や」の切れ字が、命の不思議にはせた思いの深さを物語ります。

    (監修:神野)

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  • あぢさゐのはじめは 眠り誘ふ色

    2019.06.07 放送

    作者:吉田成子

    「紫陽花」の咲く季節になりました。梅雨に入るころに咲き始め、梅雨が上がるころに花期を終えるのが紫陽花。花びらのように見えるのは四枚の萼で、その中心に小さな花があります。花の色は白から緑、青、紫と微妙に変化するので「七変化」とも呼ばれます。作者は、咲きはじめの淡い色を「眠り誘う色」とい感じながら紫陽花を愛でています。

    (監修:池内)

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  • あめんぼの輪と 雨の輪と 梅雨に入る

    2019.06.06 放送

    作者:菅野孝夫

    きょう六月六日は二十四節気の芒種。そして四国地方平年梅雨入りのころです。日本列島の南方に停滞する梅雨前線によってもたらされ、一か月あまり雨が続きます。昔の和歌や俳諧では「五月雨」として詠まれています。池の水にあめんぼが描いた輪と並んで、降り出した雨が作る水の輪。水面をクローズアップすることで、「梅雨入り」を映像化している一句です。

    (監修:池内)

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  • 木の瘤が 動くとみれば 青葉木菟

    2019.06.05 放送

    作者:赤塚五行

    フクロウ科の夏鳥で、青葉の茂るころに渡って来て産卵するのが「青葉木菟」。全長30センチほどで、丸坊主のような頭と鋭い嘴が特徴です。低い山の林や神社の森などに住み着いて、昆虫、小鳥、蝙蝠などを捕えて食べます。青葉のころの夜、ホーホーと二声ずつ鳴く声は、物悲しく聞えます。この青葉木菟は、木の瘤かと思うほど茂った木を一体化しているようです。

    (監修:池内)

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  • 昏れきらぬ 水面に光る 初蛍

    2019.06.04 放送

    作者:白岩敏秀

    宵の水辺を、蛍が飛び交う季節となりました。光を発する昆虫である蛍は、どこか神秘的な感じがあり、昔から蛍の光に恋の思いを託した歌が詠まれてきました。実は蛍の光は雄と雌の求愛の信号なのです。その夏はじめて見る蛍が「初蛍」。まだ暮れきらない、夕明かりの残る水の上を、明滅しながらゆっくりと飛んでいます。

    (監修:池内)

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  • しばらくは 水に動かず 囮鮎

    2019.06.03 放送

    作者:依田善朗

    鮎は、またの名を香魚といわれ独特の香りをもつおいしい川魚です。六月に入ると、全国の川で次々に鮎漁が解禁されます。鮎の漁法の中でも最も一般的なのが、鮎の縄張りの習性を生かした友釣り。友釣りに使われるのが「囮鮎」です。釣り師の竿の先に着けられた囮鮎が、まるで獲物を待ち構えるかのように、水の上に静まり返っています。

    (監修:池内)

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