2023.07.31 放送
正岡子規は、明治時代に活躍した、松山出身の俳人です。新しい時代に合わせて俳句を革新し、現在の俳句の基礎をかたちづくりました。この句は、当時まだ珍しかったアイスクリームを詠んでいます。アイスクリームを一口食べたら、暑さでくたびれた心と体が一気によみがえりました。百年以上も前の句ですが、この気持ち、今でもあざやかに伝わりますね。夏の実感が強く刻まれた一句です。
(監修:神野)
2023.07.28 放送
前書きに「松山市三津、みなと祭」と、あります。三津の渡しで有名な三津は、漁港でもあります。漁火は、魚を漁船へ誘い集めるために燃やす火。花火が揚がるまでの、暗く静かな海の情景を「漁火」で美しく描き出しました。間もなく、漁火は華やかな花火にかき消されます。今年の三津の花火大会は、8月5日開催予定だそうです。
(監修:谷)
2023.07.27 放送
炎昼は、文字通り燃えるような夏の午後のことです。その昼は過ぎて、夕刻の頃でしょう。城の石垣を成す石は、まだ思いがない熱さで、この人を驚かせました。例えば、松山城の美しく聳える剥き出しの石垣が、眼前に迫るようです。生物学者で俳人の作者は、明治43年、松山市生まれ。東北大学に入学以降は、仙台を離れなかったそうです。
(監修:谷)
2023.07.26 放送
未来のことがわからないのは、その通りなのですが、「未来へ賭けて」という言葉が、とても力強く心に響きます。未来には希望ばかりでなく、どこか不安も見え隠れしています。その不安を消すように、今日まっすぐ開く日傘。自分の未来に向かって開くこの句の日傘の、なんと広々と明るいことでしょう。
(監修:谷)
2023.07.25 放送
夕凪は、夏の夕方、風が絶えひどい暑さになる海岸地方の現象で、瀬戸内が特に有名です。海と陸の気温がほぼ等しくなって、気圧がつりあうため起こります。せっかくの旅が、三日間ともに悲惨な暑さだったようです。「夕凪地獄」の表現が、読者の同情を誘います。作者は石田波郷に師事した人で、愛媛にゆかりの深い俳人でした。
(監修:谷)
2023.07.24 放送
ナイターは、主にプロ野球の夜間試合を言います。英語ではナイト・ゲームです。夏は暑いので、夜間に行うのですが、照明に芝のグリーンが映えて独特の雰囲気に包まれます。まさにこの句の気分。座席に着くと、敵の応援陣ともなんとなく一体感が生まれて、試合が始まれば、皆で船出です。「乗るみたい」に、わくわくする気持ちが出ています。
(監修:谷)
2023.07.21 放送
戦争はすべてを奪い何も生まないということを歴史が証明しているはずなのに、人類はなぜ、過ちを繰り返してしまうのでしょう。もたらされた平和も束の間で、戦争の足音は少しずつ近づいてきます。短夜という季語を基盤とし、平和もまた短いものだと提示することで、人類のあり方を問い直しました。短夜の灯に、世界を思い、平和を祈ります。
(監修:神野)
2023.07.20 放送
リュウグウハゼは、北海道から九州まで、広く生息する海の魚です。岩場に産みつけられた卵から、小さな稚魚たちがわらわらと忙しく孵化します。人間にはなかなか目にすることのできない夜の海の神秘が、言葉の力で再現されました。こんなにぎやかな短夜も、地球には存在するのですね。
(監修:神野)
2023.07.19 放送
物価高も重なり生活費も上がり、お金のかかる子育て世帯には厳しい夏です。夜泣きする子をやっと寝かしつけた短夜、家計簿をつけていたら、今晩三度目の夜泣きの声が。ただでさえ短い夏の夜が、小さな赤ん坊がいると、もっともっと短く感じます。どうか少しでも、睡眠時間がとれますように。現代の日本をリアルにとらえた一句です。
(監修:神野)
2023.07.18 放送
モヒートは、文豪ヘミング・ウェイも愛した、キューバ生まれのカクテルです。ラム酒にミントを潰して炭酸水を注げば、夏にぴったりのさわやかな一杯が出来上がり。暑さでほてった短夜、バーで一杯目を飲み干して、もう一杯オーダーします。モヒートの爽快感が、短夜をひんやりと涼しく醒ましてくれます。
(監修:神野)
2023.07.17 放送
北海道をひとりで旅しているのでしょう。明けてゆく夏の夜、摩周湖を目指して歩いてゆきます。少し休憩したくなったら、栄養補給に持ってきたバナナをかじります。目覚めはじめた生きものたちの気配を感じつつ、湖のほとりに着くころには、静かに夏の朝日が差してきます。旅情ゆたかな短夜です。
(監修:神野)
2023.07.14 放送
夏の短夜も、誰とどう過ごすか、さまざまな可能性があります。とある短夜、家族で膝をつき合わせ、家業の畑の行く末について語り合ったのでしょう。考え抜いた結論として、農業を継ぐことにしました。きっぱりと述べる言葉の力強さが、決意の深さを物語ります。
(監修:神野)
2023.07.13 放送
ノクターンはピアノ曲の形式で、夜を思う曲、夜想曲と訳されます。短夜のバーでノクターンを聞きながら、マドラーでドリンクをかき混ぜているのでしょう。マドラーでノクターンのしらべそのものを溶いていると表現したところに、芳醇な詩が香ります。静かなひとときを楽しむ、大人の短夜です。
(監修:神野)
2023.07.12 放送
夏休みを利用して、車で瀬戸内を旅しているのでしょうか。それとも、何らかの事情で車中泊を余儀なくされているのでしょうか。夕凪のあとも風がやんだまま、べたっと暑い夜もあります。車の中で簡易的に眠りにつく短夜、瀬戸内のおだやかな波音が、耳元まで静かに寄せてきます。
(監修:神野)
2023.07.11 放送
夏の夜は、時間が短いことに加え、暑くて寝苦しいので、すぐに終わってしまいます。とはいえ、ただでさえ体力の落ちている夏、夜の間に何とか栄養をとりたいものです。お鍋を汚すと洗うのが面倒なので、鶏肉のささみにレンジでさっと火を通し、ほぐして食べます。さあ、あとは眠るだけ。明日へ向かって、少しでも回復しますように。
(監修:神野)
2023.07.10 放送
夏は太陽が高く、昼の時間が長いので、その分、夜が短くなります。和歌では、夜に会えたのにすぐ朝が来て帰らなければならないと、逢瀬のはかなさを詠む季語でした。恋人の部屋で一夜を過ごしたあと、眠る恋人を置き、そっと帰ります。外からドアを施錠し、鍵をポストに入れます。短夜は終わったのだと、ほのかな切なさが寄せてきます。
(監修:神野)
2023.07.07 放送
「恋語る」と、まず始まって、後に出てくるのはその場所のみです。椰子の木がある南の国の出来事でしょうか。乾いた明るい海風が吹きわたる椰子の幹がベンチなら、飾らない心のままの言葉で、恋を語り合えそうです。季語はありませんが、夏ならではの開放的な気分をもたらしてくれる一句です。
(監修:谷)
2023.07.06 放送
初蝉は、その年に初めて鳴く蝉のことです。まだ細い鳴き声ながら、空気を破るように本格的な夏の到来を告げてくれます。「初蝉ですよ」と、傍らの人が教えてくれたのでしょう。鳴き声を聞きとめたい、という気持ちが、辺りのすべての音を消してしまいました。盛夏は目の前、もうすぐ一斉に蝉が鳴き始めます。
(監修:谷)
2023.07.05 放送
町内会費か何か。集金に訪ねると、その家は、決まってきゅうりをくれるというのです。集金という仕事、あるいは役回りがもたらしてくれる、すてきなおまけ。きっとその日に採れた、新鮮なきゅうりでしょう。玄関口で交わす言葉も聞こえてきそうです。まだ集金が残っていたら、ちょっとばかり荷物になりますが。
(監修:谷)
2023.07.04 放送
ビールを楽しみに、家にたどり着いた。あるいは、ふろ上がりにはビール、とるんるんの気分で冷蔵庫を開けたところでしょうか。ビールを飲むささやかなひと時を楽しみに働いた一日に「信じられない」結末が待っていました。「ビールないビールがない」の畳みかけは、痛恨の極みと言った感じ。わが身のように、共感します。
(監修:谷)
2023.07.03 放送
季語「緑陰」は、明るい夏の陽射しの中の、緑がしたたる木立の陰を言います。木陰の木漏れ日が、きれいです。その中へ入っていく、ワンピースの女性。直線裁ちは、型紙不要な簡単な服で、いかにも涼しそう。「緑陰」「直線裁ち」「ワンピース」の三つの言葉だけで成った、まるで印象派の絵のような一句です。
(監修:谷)
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