2018年3月の俳句

  • 人の世を きびしくさせて 鳥帰る

    2018.03.30 放送

    作者:保坂伸秋

    秋に日本へ渡ってきて冬を越した渡り鳥は、春になると北方の繁殖地へ帰って行きます。雁、鴨、鶴、白鳥など大型のものから、鶫、鶸、花鶏などの小鳥まで、種類は多種多様。俳句では、それらをまとめて「鳥帰る」といいます。整然と群れを組んで帰る鳥も、ばらばらと賑やかに帰る鳥もあります。この句、「人の世をきびしくさせて」に帰る鳥たちに名残を惜しむ心が込められています。

    (監修:池内)

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  • 青春の日を また拾ひ さくら貝

    2018.03.29 放送

    作者:遠藤若狭男

    「さくら貝」は、ほぼ日本全国に分布している二枚貝。古くは「花貝」と呼ばれ、食用ではなく貝殻の桜色を愛でて、和歌や俳句に詠まれてきました。浜辺に点々と打ち上げられた姿は、桜の花が散っているような美しさです。青春の日の大切な思い出を秘めた桜貝。その桜貝を拾った作者は、青春の日をまた取り戻したような感慨に浸っています。

    (監修:池内)

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  • 水音に 水はあつまり 初桜

    2018.03.28 放送

    作者:菊田一平

    春になって初めて咲く桜の花を「初花」あるいは「初桜」といいます。寒い冬を越えてやっと目にした桜の花には、とりわけ大きな感動があるのでしょう。古くから和歌や俳句に多く詠まれています。これは川の合流するあたりの岸部に咲いた初桜でしょうか?水音が初桜の存在を知らせているようです。愛媛でも、そろそろ初桜の見られる頃です。

    (監修:池内)

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  • 蛇穴を出て 全長を持て余す

    2018.03.27 放送

    作者:渡辺純枝

    土の中で冬眠していた蛇は、春らしさの増す三月下旬ごろには地上に姿を現します。俳句では「蛇穴を出る」といいます。冬眠中の蛇は、何十匹もが絡み合って暖をとっているといわれています。そのため穴からではじめは動きが鈍く、伸ばした全身を持て余しているようにも見えます。(でも間もなく蛙、鼠などの餌を求めて活発に動き始めます。)

    (監修:池内)

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  • 赤ん坊の 名をまた問ひて あたたかし

    2018.03.26 放送

    作者:宮田正和

    春になって、私たちが「暖か」と感じるのは気温が15度くらいになった時だといわれます。「暖か」は、春になったことを端的に表す季語です。こうした客観的な気温とは違う心理的な暖かさも、俳句にはよく詠まれます。赤ん坊の名を何度も問いながら、新しい命の誕生を祝福しているこの句には、まさに心理的な暖かさがあふれています。

    (監修:池内)

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  • 土曜日はよい日 お八つにさくら餅

    2018.03.23 放送

    作者:歌原蒼苔

    月曜から金曜までは平日で慌ただしいし、日曜は翌日から新しい週が始まります。一番ゆったりした気分で過ごせるのは、きっと土曜日の午後。おやつに桜餅を買って、なにも考えずに青空を見て過ごします。作者の蒼苔は、正岡子規の親戚でした。昔の人も、こんな風に週末を楽しんでいたのですね。

    (監修:神野)

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  • もう欲しくなし 風船も恋人も

    2018.03.22 放送

    作者:渡部州麻子(松山市)

    かつては欲しいと思ったこともあった風船も恋人も、今はもう要らない……大人になったドライな気分を一句にしました。風船と恋人という異質なものを並べたのがユニークですね。恋人とは、ふわふわと頼りなくて、手放せば青空へ消えてゆく、風船のようなものなのかもしれません。

    (監修:神野)

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  • 春分の 滑り台より 眼鏡の子

    2018.03.21 放送

    作者:桜井博道

    今日は春分の日です。一日の、昼と夜の長さが、だいたい同じころ。午後の日差しもたっぷり味わえるようになりました。この句は、春分の日の街角の風景を、スナップ写真のように切り取りました。のびのびと楽しそう。春の日差しに、滑り台も子どもの眼鏡も、きらきら光っています。

    (監修:神野)

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  • はくれんを 好きな理由を 思ひ出す

    2018.03.20 放送

    作者:藤井あかり

    ハクレンとは木蓮の仲間で、3月から4月にかけて大きな白い花を咲かせます。青空がよく似合う、清らかな木の花です。好きな理由を思い出したのは、季節がめぐって、今年またハクレンに出会ったから。忘れていた大事なことを思い出したときの、ハッとした感覚を、一句に閉じ込めました。

    (監修:神野)

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  • 彼岸みち いま踏切の あきしかな

    2018.03.19 放送

    作者:久保田万太郎

    今年もお彼岸の季節がやってきました。彼岸とは向こう岸のこと、ご先祖さまのいる極楽を意味します。お彼岸の墓参りに行く途中、遮断機の下りた踏切に足止めされました。踏切は、こちら側とあちら側を分けるもの。遮断機が上がった向こう側に、彼岸の世界が広がります。

    (監修:神野)

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  • さざなみは ほほえみの波 はつつばめ

    2018.03.16 放送

    作者:角谷昌子

    愛媛にも燕がやって来る頃です。その春、初めて見る燕を「初燕」といいます。燕は春に南方から日本各地へ渡って来て、家の軒などに巣を作って子育てをし、秋にはまた南へ帰って行きます。この句は、長い空の旅をして日本の沿岸にたどりついた初燕。磯のさざ波も、ほほ笑むかのように初燕を歓迎しています。

    (監修:池内)

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  • 身ぶるひをして たんぽぽは 絮飛ばす

    2018.03.15 放送

    作者:青柳志解樹

    「たんぽぽ」は、誰にも愛されるキク科の多年草。(昔は白い花もありましが、この頃は帰化種の黄色い花が多くなってきました。)野原や道ばたなど、いたる所で日を浴びて咲いています。タンポポの実は白い毛をまとっており、風に乗って飛ぶことで種子を散布します。これが「たんぽぽの絮」です。たんぽぽは、絮を飛ばすために身ぶるいをしているのかもしれませんね。

    (監修:池内)

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  • 陽炎を 指差せば 指かげろへり

    2018.03.14 放送

    作者:的場秀恭

    春の日ざしの中で、遠方のものがゆらいで見える現象が「陽炎」。日光で地面が熱せられ、水蒸気が立ち昇って空気の層が乱れるため、向こうの風景が屈折して見えるのです。古くは「かぎろい」と呼ばれました。「あっ、陽炎だ」と、向うを指し示した指の先までもゆらゆらと見えています。春らしい、のどかな情景です。

    (監修:池内)

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  • あれが虚子詠みし遠山 笑ふかな

    2018.03.13 放送

    作者:櫛部天思

    この句の遠山は、高浜虚子が<遠山に日の当りたる枯野かな>と詠んだ松山市街の東北に見える山と思われます。虚子の句は大街道に近い、当時の玉川町から奥道後方面を眺めての作。虚子が見た時は、冬景色でしたが、今は木々の緑に包まれて朗らかに笑っているかのようです。(「山笑う」が季語。作者は松山市にお住いの俳人。「櫟」副主宰です。)

    (監修:池内)

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  • 遠ざかるほどに色濃く 柳の芽

    2018.03.12 放送

    作者:小圷健水

    早春に芽吹く萌黄色の柳の新芽が「柳の芽」です。ことに枝垂れ柳の鞭のような細い枝に点々と芽が吹いて、川風に揺れる姿は春の訪れをまざまざと感じさせます。近くで見るとまばらな柳の芽も、遠ざかるについれて色濃く見えます。やがて春が深まると、艶やかな緑の「青柳」となり、水辺を美しく彩ります。

    (監修:池内)

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  • 金曜日が好きで 韮・鯖・浅蜊買ふ

    2018.03.09 放送

    作者:正木ゆう子

    一週間頑張って、ようやく明日はお休み、だからきっと金曜日が好きなのすね。さて、今夜はどんな料理を作ろうかな。夕飯の買い物を楽しむ気分が「にら・さば・あさり」と食材を三つ並べたリズムに表れています。ちょっと癖のある食材なので、白ワインなど一緒に買って、大人の金曜日となりそうです。

    (監修:神野)

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  • 引力は 藍色である 春の雨

    2018.03.08 放送

    作者:森川大和

    見えるはずのない引力を、藍色であると断定した、ユニークな発想です。深い藍色の、吸い込まれそうな奥行きに、海の色や地球の色を思います。空から雨が降るのも、引力に引き寄せられてのこと。地球をめぐる水と、そこへ働く引力の不思議に、ひととき思いをはせる、春の一日です。

    (監修:神野)

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  • 札所まで 雨の遍路を 送りけり

    2018.03.07 放送

    作者:渡部千代子

    春になると、気候もよくなりお遍路さんも増えるので、遍路は春の季語になっています。あいにくの雨の中、傘を持たないお遍路さんに声をかけ、濡れないように、次の札所まで送ってあげたのです。これも、お接待のひとつのかたち。札所までの道のりに、どんな話をしたのでしょうね。

    (監修:神野)

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  • 山笑ふ 山にかくれて ゐる山も

    2018.03.06 放送

    作者:黒岩徳将

    「山笑う」が春の季語、草木が芽吹きはじめた山の明るさを表します。見えている山はもちろん、かくれて見えない小さな山も、みんな芽吹いて笑っているはず。光の当たらない存在へも思いをはせた、やさしい俳句です。この世界のすみずみにまで、春はたしかに訪れるのです。

    (監修:神野)

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  • 春の屈伸 縦にドアをば 拭く乙女

    2018.03.05 放送

    作者:中村草田男

    うら若き乙女が、掃除に励んでいます。縦長のドアを拭くため、雑巾を縦に動かすので、おのずと膝を曲げたり伸ばしたり。「春の屈伸」という表現が大胆ですね。躍動する肉体の若々しさ、掃除にいそしむ健やかさに、素直に春を感じたのでしょう。まぶしい光に満ちた一句です。

    (監修:神野)

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  • 日がにこにこ 赤き椿と白椿

    2018.03.02 放送

    作者:市場基巳

    「椿」は大昔から日本各地に分布していた常緑高木。『万葉集』以来、詩歌の題材として最も愛されてきた花の一つです。(園芸品種は数百種類もあるといわれます。中でも)代表的なのが赤椿と白椿。椿が五弁の花を開き、やがてポトリと落ちる姿は、日本の春ならではの風情です。お日さまも、そんな椿の花をにこにこと見守っています。

    (監修:池内)

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  • 初蝶の ごつんと土に 止まりけり

    2018.03.01 放送

    作者:太田土男

    その春、初めて見かける蝶を「初蝶」といいます。(種類は限定しませんが、紋白蝶や紋黄蝶などの淡い色の蝶であることが多いようです。)ふいに目の前に現れる初蝶は、驚きとともに春になった喜びを感じさせてくれます。これは農作業をしている作者の前に現れた初蝶。まだ頼りない飛び方のため、止まり方もぎこちないようです。

    (監修:池内)

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