2018.07.31 放送
夕立のあとなどに、太陽と反対側の空に現れるのが七色の「虹」。空中の水滴を通りぬける光の屈折によって生まれる現象です。光の色は外側から赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と並んでいます。虹は四季を通じて現れますが、夏に多く、特に夕立のあとの東の空に立つ虹は、目の覚めるような美しさです。作者はそんな「夕虹」を、一人ベンチに座って仰いでいます。
(監修:池内)
2018.07.30 放送
「花火」は、江戸時代に川開きの呼び物として様々な仕掛けが工夫され、独自の発達をしました。夜空に華やかに開く美しさと、一瞬にして消えてゆくはかなさが、夏の風物詩となっています。お盆の行事としても打ち上げられたため、歳時記によっては、夏と秋の両方に載っていることもあります。この句は、花火が終ったあとの夏の夜空の、しっとりとした美しさに注目しています。
(監修:池内)
2018.07.27 放送
私の夏帽子が、風に飛ばされて畦道を転がってゆきます。その行く先は、どこまでもふるさとでした。帰郷したときのよろこびか、故郷を出てゆきたい青春の鬱屈か。夏帽子を追いかけている風景そのものが、郷愁を強く駆り立てますね。どれだけ離れようとしても、ついに振り切ることのできないもの、それが故郷なのだと、語りかけてくる名句です。
(監修:神野)
2018.07.26 放送
雨あがりの空に虹を見つけると、特別な気分になりますね。でも、消えてしまえばなんだか寂しくて、手持ちぶさたになります。それで何となく、冷蔵庫をのぞいてみたりする、そんな人間心理をするどく捉えました。虹という非日常から、冷蔵庫という日常への、無意識の移ろい。人はこんなふうにして、虹のあとの世界を生きているのかもしれません。
(監修:神野)
2018.07.25 放送
たしかに、こういう海の家、ありますよね。看板の絵も文字も下手で、店主はいるのかいないのか分からなくて、そのおおらかさがまさに海の家です。作者は二十代の若手俳人。この句は、俳句甲子園の決勝に発表されて、話題になりました。簡潔な内容に簡潔な文体が、こころよく響きます。日本のどこかに必ずある、なつかしい風景です。
(監修:神野)
2018.07.24 放送
第18回俳句甲子園の最優秀賞に選ばれた一句です。スタートを告げる号砲が鳴ると、スタンバイしていたランナーが、一気に駆け出しました。アスリートを「一塊の日焼」と即物的に表現したのが大胆ですね。夏の日ざしのもとで躍動する肉体が、なまなましく描き出されました。劇的な瞬間をとらえた、フォトジェニックな一句です。
(監修:神野)
2018.07.23 放送
一年を二十四の季節に分けた二十四節気、今日から大暑です。一年でもっとも暑さが厳しく感じられる時期に、パスポートをたずさえて、外国へと旅立ちます。行き先は、南の島か、北欧か。「軽く」の一語に、暑い日本を逃れて旅先へと心弾ませる、解放感が託されています。みなさんはこの夏、どこへ旅をしたいですか。
(監修:神野)
2018.07.20 放送
「夕焼」は四季を通じて見られる現象ですが、夏は夕方の時間が長く、特に壮大で美しいことから夏の季語とされています。壮大な夕焼を、俳句ではこの句のように「大夕焼」ともいいます。夕方、港に錨をおろした船から、水を排出する音が響いています。沖合の西の空には、みごとな夕焼が広がっています。きっと明日は晴天となることでしょう。
(監修:池内)
2018.07.19 放送
暑さのために皮膚の汗腺から吹き出る分泌物が「汗」。皮膚のほぼ全体から出て、蒸発することで体の熱を奪い、体温調節をしています。真夏には、室内でじっとしていても、一日3リットルの汗が出ます。この句は、幼子を胸に抱くお母さんの姿。滲み出る汗は、自分のものか、わが子のものか。何とも幸せそうな母と子の姿です。
(監修:池内)
2018.07.18 放送
葛粉を水で溶き、砂糖を加えて透明になるまで煮て練り固めて冷やしたのが「葛練」。これをうどんのように細く切ったものが「葛切」で、黒蜜と黄粉、抹茶などをかけて食べます。透き通った涼しげな姿と、喉越しの弾力と冷たさが愛される伝統的な夏の和菓子です。そんな老舗の味を、今出来のスイーツなんかと一緒にしてくれるな、という一句です。
(監修:池内)
2018.07.17 放送
垂直に切り立つ断崖を流れ落ちる水が「滝」。その涼しさを愛でて夏の季語となったのは比較的新しく、明治以降のことです。俳人にとっての滝は、その荘厳な眺めと涼気を味わうもの。作者は何度も後退りしながら、滝の景観を仰ぐのに一番よいポジションを探っています。
(監修:池内)
2018.07.16 放送
今日は海の日。今が旬の海の幸といえば、何といっても「鱧」ではないでしょうか。鱧は主に西日本の浅い海で獲れる鰻に似た魚で、大きさは1メートル以上もあります。小骨が多く、鱧の骨切りは料理人の特技とされています。酢の物、鱧鮨、天ぷら、つけ焼き、鱧ちりなど豪華な鱧料理が勢ぞろいしました。スマホなんかいじっている場合ではありませんよ。
(監修:池内)
2018.07.13 放送
光年は、天文学で星と星との距離を表すときに使う単位です。浴衣の人が、夜空を見つめながら、光年というはるかな距離に思いをはせています。そのまなじりは深く、瞳には輝く星々が。藍浴衣の藍色が、夜空の深い藍色とひびき合って、しずかな時空を作り出しました。浴衣という日常の衣類から、雄大な宇宙へと発想を広げた、格調高い一句です。
(監修:神野)
2018.07.12 放送
ビールジョッキを両手でつかみ、豪快にあおる浴衣の人。解放感あふれる姿に、見ているこちらまで気持ちよくなります。ビールも浴衣も夏の季語なので、ビールを「ジョッキ」と言い換え、浴衣を主役として存在感を強めたのも巧みです。湯上りの道後散策か、ビアガーデンの一風景か。暑い夏を迎え撃つ、力強さにあふれています。
(監修:神野)
2018.07.11 放送
幼稚園での行事のひとつ、お泊り保育は、子どもにとっても家族にとっても、一大イベントです。当日に子どもが着る浴衣を、日々の仕事や家事の合間をぬって、少しずつ手作りしているのです。もしかしたら、夜に作業を進めながら、すやすやと眠る寝顔につぶやいているのかもしれません。子どもに語りかける優しい口調に、愛を感じますね。
(監修:神野)
2018.07.10 放送
浴衣を着て、くつろいだ気分で出かけた先で、仕事関係の人と会ったのでしょう。浴衣はもともと、湯上がりに着たり寝間着にしたりと、プライベートな空間で親しまれてきた衣服です。その浴衣を、パブリックな仕事の場面と取り合わせたのがユニークでした。名刺交換というありふれた風景も、浴衣によって涼やかにいろどられます。
(監修:神野)
2018.07.09 放送
腰骨の位置が高く、すらりと背の高い、スタイルのいい娘さん。浴衣の帯を締めるのも、おのずと高い位置になります。さっそうと浴衣を着こなす姿に、ほれぼれしますね。時代とともに、日本人の体形も変わってゆきますが、浴衣を着て夏を涼しく過ごすスタイルは、変わらず続いてゆくことでしょう。
(監修:神野)
2018.07.06 放送
蒸し暑い日本では、夏は暮らしのすべての場面で「涼しさ」が欲しい季節です。朝夕の風のあるひとときや、暑い日中でも木陰や風通しのよい縁側などで感じられる涼しさは、まことにありがたいものです。そんな涼しさを求める行為を「涼み」「納涼」といいます。涼しさの中にいて、より涼しくなるよう、無意識のうちに立膝をしている姿です。
(監修:池内)
2018.07.05 放送
「ビール」は一年を通して飲まれますが、冷えたのを一気に飲む爽快さは、やはり夏ならではのものです。近ごろは女性にも愛好されています。この句はビヤガーデンの情景でしょう。よく冷えた生ビールが、ほどよく泡立っている大ジョッキが運ばれて来ました。ビール大好きの作者は、「ビールの泡の到着」を大歓迎しているようです。
(監修:池内)
2018.07.04 放送
七月初めから九月末頃まで、枝先に紅色の花を咲かせる「百日紅」は、ミソハギ科の落葉高木です。樹皮が滑らかで、木登り上手の猿でも滑るというのが名前の由来。漢名で百日紅(ひゃくじつこう)と書くのは花期の長さにちなんでいます。花の色には紅だけでなく、白もあります。この句は、百日紅の白花や紅花が、咲いては散り、散っては咲く風情を描いています。
(監修:池内)
2018.07.03 放送
わが国で初めて「ラムネ」が発売されたのは、今から146年前の明治五年だそうです。ラムネは英語のレモネードが語源で、炭酸水に甘味とレモン香料を加えたもの。飲むときに、瓶とガラス玉が触れ合う音が涼しげで、いかにも庶民的です。この句は、ラムネの玉の転がる音を「昔日の音」と詠んで、古きよき時代を懐かしんでいます。
(監修:池内)
2018.07.02 放送
風通しのよい縁側や軒に吊るし、その音色の涼しさを楽しむ「風鈴」。クーラーなどない昔から、夏の暑さをしのぐために愛用されてきたものです。風鈴の素材には金属、ガラス、陶器などがあります。この句は部屋の窓辺に吊るされた風鈴でしょうか。日が暮れても、あえて電灯を点けず、夜風に鳴る風鈴の音を満喫している、作者の姿が見えるようです。
(監修:池内)
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