2020年2月の俳句

  • 落椿 また落椿 また夕べ

    2020.02.28 放送

    作者:山田佳乃

    椿は散るときに、花ひとつが丸ごと、ぽとりと落ちます。地面に落ちた椿の花が「落椿」。ひとつ、またひとつと落椿が増え、気がつけばまた今日も暮れてゆきます。「また」という言葉を「夕べ」に重ねたのが面白いですね。あっという間に過ぎゆく日々を、ぼんやり見つめる不思議な気分。日暮れの時間のあやしさに、椿の花がまたひとつ、静かに木を離れます。

    (監修:神野)

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  • 芽吹くもの 汝が名を述べよ 大空へ

    2020.02.27 放送

    作者:吉野秀彦

    春は芽吹きの季節。新しい季節へと、草や木の芽がぐんぐんふくらんでゆきます。この句は、そんな小さな木の芽草の芽たちに呼びかけました。芽吹くものたちよ、大空へ向かって、あなたの名前を述べなさい。そうしたらきっと、空は太陽の光をこぼし、めぐみの雨を与えてくれるでしょう。大空を目指して伸びてゆく、芽吹きの力を感じる一句です。

    (監修:神野)

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  • 音楽は さよりの動きにて ドアへ

    2020.02.26 放送

    作者:原ゆき

    さよりは、ほっそりした銀色の体をもつ、春が旬の魚です。身は淡白で、刺身、焼き物、干物など、さまざまに食卓を彩ります。この句は、部屋の中からドアへと洩れてくる音楽の流れを、海の中をしなやかに泳ぐさよりの動きになぞらえました。きらりきらりと光るさよりのように、音楽もまた、なめらかに弧を描きながら、しらべを輝かせます。

    (監修:神野)

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  • 納税や 辛夷のつぼみ 尖り出す

    2020.02.25 放送

    作者:鍵和田秞子

    今年も確定申告の期間が始まりました。納税のための作業に追われる日々、ふと辛夷の木を仰ぐと、春に向け、つぼみがつんつん尖り始めているのを見つけました。その向こうには、春めいてきた青空も。数字と向き合う窮屈さからひととき解放され、ささくれだった気持ちもほっと一息。大きく背伸びをしてまた一歩、新しい春へと歩き出します。

    (監修:神野)

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  • 茶筒抜く スポンと 春の声したる

    2020.02.24 放送

    作者:高橋白崔

    さて、お茶でも淹れようか。茶筒を抜いたとき、スポンと音がしました。その音の思いがけない明るさに、春の訪れを感じたのです。茶筒の音を「春の声」と言いなしたのがユニークですね。日の永くなってきた縁側で、のんびりお茶を飲みながら、ほころびはじめた木の芽を眺めます。日常の何気ない暮らしの中に、季節のはなやぎを見つけた一句です。

    (監修:神野)

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  • 海苔篊に 影の過ぎゆく 着陸機

    2020.02.21 放送

    作者:斎藤朗笛

    海苔は海中の岩などについて育つ藻類全般を指しますが、おもに養殖のいわゆる浅草海苔のことです。海の浅いところに「海苔篊」と呼ばれる竹を立てて網を張り、この網に生えて成長した海苔を採取します。海苔採りの最盛期にあわせ、「海苔」も「海苔篊」も春の季語です。この句の養殖場は空港の側にあるのでしょう。着陸する旅客機が海苔篊にくっきりと影を落としてゆきます。

    (監修:池内)

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  • 海光を 塗しと傾ぐ 蕗の薹

    2020.02.20 放送

    作者:関森勝夫

    蕗は日本原産の多年草で、野や山や庭先などに自生しています。春先、地下茎を伸ばし、土をもたげて萌黄色の花芽をのぞかせます。これが「蕗の薹」で、早春らしい香りとほろ苦さがあり、天ぷらや蕗味噌にして風味を楽しみます。この句の蕗の薹は海を臨む段々畑の一角に生えたのでしょうか。海からの照り返しを眩しがるかのように傾いた姿を見せています。

    (監修:池内)

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  • 春浅し ひかりとなりて 野の流れ

    2020.02.19 放送

    作者:松本三千夫

    今日は二十四節気の雨水。立春から半月が過ぎても、まだ風は冷たく本格的な春にはまだ遠い季節です。「春浅し」は「早春」とほぼ同じ意味ですが、季節の移り変りを人間の体感を通してtpらえようとする意識の感じられる季語です。この句は、野の川の流れに見るきらめきに、「春浅し」の季節感を鋭敏に感じ取っています。

    (監修:池内)

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  • うつくしく猛りて 野火の走る走る

    2020.02.18 放送

    作者:増成栗人

    早春の晴れて風の穏やかな日に、野や土手の枯草を焼き払うのが「野焼き」。「野火」は野焼きの火を指す季語です。野を焼くのは害虫を駆除するとともに、灰が肥料となって山菜や牧草の成育を助けるため。焼畑農法の名残ともいえるでしょう。勢いよく燃え盛ってゆく野火の色を、作者はうつくしいと感じています。「走る走る」というリフレインが、火の強さと速さを具体的に表しています。

    (監修:池内)

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  • 薄氷の真ん中 水のまま氷る

    2020.02.17 放送

    作者:木附沢麦青

    春になって暖かくなったと思うと、また寒さが戻ってきて薄々と氷が張ることがあります。これを「薄氷」「薄氷」といいます。こうした氷は日が当たると解けて、解け残った薄い断片も流れて消えてゆきます。「薄氷」という季語には、淡くはかない風情が感じられます。真ん中に水を閉じ込めたままに氷っている薄氷。こまやかな観察から生まれた一句です。

    (監修:池内)

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  • いぬふぐり咲くや 「地球は青かった」

    2020.02.14 放送

    作者:竹本桂子(久万高原町)

    世界初の宇宙飛行に成功したガガーリンは、無事に帰還したとき、宇宙から見た地球の印象を「地球は青かった」と表現しました。水の地球の、青く輝く美しい姿。あらためて、この星にたくさんの命が生きていることの奇跡を思います。その大地に今、春が来て、いぬふぐりが咲きはじめました。その花の色は、ガガーリンが見た地球の青に、きっとよく似ています。

    (監修:神野)

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  • いぬふぐり 生きねば生きねばと 蒼い

    2020.02.13 放送

    作者:越智敦子(松山市)

    いぬふぐりは、春のはじめの地べたに、小さな青い花をいくつも咲かせます。かわいらしいいぬふぐりも実は、まだ冷たい風の中で「生きねば生きねば」と心を奮い立たせているのかもしれません。野道にしゃがめば、一生懸命に咲くいぬふぐりの姿に、人間も力をもらえます。春本番もすぐそこ。あたたかい日差しを夢見て、もう少し、もう少し。

    (監修:神野)

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  • 鍵っ子の 待てる日暮れや 犬ふぐり

    2020.02.12 放送

    作者:藤本ちどり(今治市)

    働く親の帰りを待つ子を、自宅の鍵を持ち歩くことから、鍵っ子といいます。学校が終わった放課後、いぬふぐりの咲く公園や野道で、ぶらぶら時間をつぶします。気がつけば暗くなってきました。まだ帰ってこないのかな……寂しさの募る日暮れに、いぬふぐりの小さな花が、静かに優しく寄り添います。

    (監修:神野)

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  • 花束を 賜るならば いぬふぐり

    2020.02.11 放送

    作者:武智しのぶ(埼玉県)

    もし花束をもらうなら、みなさんなら、どんな花を希望しますか。バラ、百合、ひまわり……たくさんある花の中で、作者はいぬふぐりを選びました。いぬふぐりは地べたに咲く小さな花ですから、なかなか花束にはできません。ていねいに摘んで束ねる真心が必要です。いぬふぐりの素朴な輝きを愛する、作者の願望をとじこめた一句です。

    (監修:神野)

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  • ラヂオから 晴れの予報や いぬふぐり

    2020.02.10 放送

    作者:佐藤めぐみ(松山市)

    いぬふぐりは、春のはじめに、道端や野原に顔を出す雑草の花です。踏まれても踏まれても、空色の小さな花を咲かせます。ラジオから流れてくる、今日の天気予報は晴れ。見上げれば、いぬふぐりの花とおんなじ、ほがらかな春の青空が広がっています。思わず嬉しくなって心が弾む、明るい一日のはじまりが描かれました。

    (監修:神野)

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  • 白魚の 目玉もつとも 泳ぎけり

    2020.02.07 放送

    作者:小島健

    「白魚」は体長10センチほどの半透明の細長い魚で、煮たり蒸したりすると真っ白になります。これが白魚の名の由来です。春先、海から河口に入って産卵するのを待ち構えて捕るのが白魚漁です。昔から白魚は味よりもその姿を愛でられる魚。細長く美しい体と黒点のような目玉が印象的です。そんな目玉をクローズアップすることで、泳ぐ白魚の姿を描いた作品です。

    (監修:池内)

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  • 恋猫の 星座ゆるがすやうなこゑ

    2020.02.06 放送

    作者:田中春生

    猫の繁殖期は年に数回ありますが、最も激しく発情する早春の猫の行動を表すのが「猫の恋」あるいは「恋猫」という季語です。牝猫が発情して落ち着かずうろうろすると、それに誘われて牡猫が集まり赤ん坊のような鳴き声で牝に迫り求愛します。その独特の鳴き声は、まさに空にきらめいている星座をゆるがせるのでは、と思わせるほどの激しさです。

    (監修:池内)

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  • 梅二月 日差し放さぬ 大藁屋

    2020.02.05 放送

    作者:野木桃花

    新暦の二月は、寒が明けたとはいえまだ寒さも厳しく、春の実感が乏しい季節。そんな寒さの中でも、梅の花が清らかな香りを漂わせ始めると、やっぱり早春がやって来たんだな、としみじみ感じます。この句は、そんな二月の季節感を「梅二月」という季語で表しています。梅の香るなか、大きな藁葺きの屋根に降り注ぐ早春の日差し。懐かしい日本の風景です。

    (監修:池内)

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  • 見なれたる 山河の弾み 春立てり

    2020.02.04 放送

    作者:森野稔

    今日は二十四節気の一つ「立春」。「春立つ」「春来る」ともいいます。今日からいよいよ春。寒さはまだまだ厳しいとはいえ、梅や椿は咲き始め、日の光も春らしい色合いを帯びて来ます。「春立つ」という思いで眺めると、長年見なれたふるさとの山や川までも、心做しか春の喜びに弾んでいるように見えます。

    (監修:池内)

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  • 人はみな 鬼が大好き 福の豆

    2020.02.03 放送

    作者:布川直幸

    今日は節分。明日はいよいよ立春です。節分の夜、鬼は外、福は内と唱えながら煎った大豆を撒くのが「福の豆」。「鬼の豆」ともいいます。鬼とは恐ろしい姿で人に祟りをする怪物で、想像以上の物の怪です。節分の行事に登場するお面をつけた鬼などは、豆を打たれて逃げまどう哀れで滑稽な存在ですが、この鬼がいてこその豆撒きです。こうしてみると、私たちは実は鬼が大好きなのかもしれませんね。

    (監修:池内)

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