こちらのページでは、視聴者の皆様から応募いただいた俳句をご紹介しています。
毎月ご応募いただいた俳句から5句を選び、EBC Live News「きょうの俳句」のコーナーで放送させていただきます。
2025.04.25 放送
輪郭を曖昧に滲ませる朧の中では、彼の世との境目もあやふやに感じます。この世を去り、次の世へ生まれ変わるまでの待ち時間、立ち込める朧の闇が濃く深くなるところを想像しました。転生にも待ち時間があるという発想がユニークです。深い朧の中にいるとき、ふと、今生の不確かさに思い至ります。
(監修:神野)
2025.04.24 放送
松山には、日露戦争の捕虜収容所がありました。捕虜となったロシア兵のうち、約六千人が松山に送られたといいます。松山で生涯を終えたロシア兵たちの墓は、彼らの故郷である北を向いて建てられました。草も霞んでそよぐ夜、朧の奥に滲む故国を、魂は恋うているでしょうか。
(監修:神野)
2025.04.23 放送
感熱紙とは、熱を感知して印刷する紙です。おなかの中の赤ちゃんの様子を映したエコー写真も、たいていは感熱紙で渡されます。ぼんやりとした暗がりの中に白く浮かび上がる命の輪郭は、朧夜の中で、より一層不思議な存在感を帯びて光ります。感熱紙は劣化も早く、その儚さが、瞬間の尊さをとどめます。
(監修:神野)
2025.04.22 放送
人魚姫が魔女の力を借りて人間になったように、いま人間として暮らしている「元人魚」がいたとしたら。ふだんは人魚だった頃を忘れていても、朧の夜には、海を懐かしみ歌を口ずさむでしょうか。私のとなりにいる人も、もしかしたら元人魚かもしれません。それぞれの出自を抱き、私たちは生きています。
(監修:神野)
2025.04.21 放送
お風呂上がりでしょうか。春の夜、子どもの耳にクリームを塗ります。指にすくったクリームのやわらかい感触も、子どもの耳たぶのふっくらとした弾力も、夜を包む朧の質感とゆるやかに繋がります。朧という曖昧模糊な空間に、ふと、子育てというもののよるべなさをも思います。
(監修:神野)
2025.04.18 放送
仕事や学校の帰り、カラオケで歌を歌ってストレスを発散します。外へ出れば、すっかり夜。春らしく、風景も朧に霞んでいます。さっきまでの余韻を引きずって、カラオケを出ても、自然と歌が口をつきます。日常の片隅にある人間模様を、朧の気配がおおらかに包み込みます。
(監修:神野)
2025.04.17 放送
各国の神話に見られる世界樹は、世界をかたちづくる一本の樹です。世界の中心にあって、天と地を支えていると考えられていました。現実と幻想の境目が曖昧になる朧の夜には、神話の世界樹が、本当に存在するような気もしてきます。朧は、世界樹をあふれる、あたたかな樹液なのかもしれません。
(監修:神野)
2025.04.16 放送
朧の夜、草も霞んで見えるのが「草朧」です。習い事の帰りでしょうか。弟と一緒にバスを待ちながら、グミを食べています。あたりはもう暗いので、不安な心もあるのでしょう。グミのやわらかな弾力に、朧もまたぷよぷよしているのだろうかと、その質感を想像します。気を付けて、おかえりなさい。
(監修:神野)
2025.04.15 放送
朧の夜のどこかに、成長途中の少女がいます。蛹の時間を経て昆虫が羽化するように、いつかは少女もモラトリアムの時間を脱ぎ捨て、大人になります。朧の闇の中、少女がまるで光を放っているように感じました。朧という季語のもつ光の感覚を生かし、少女の不思議な存在感が写し取られています。
(監修:神野)
2025.04.14 放送
春は空気中に水蒸気が多く、風景もぼんやりと霞んで見えます。そのさまを、昼は霞と呼び、夜は朧と呼びます。月や星も、街のともしびも、闇に滲みます。朧の夜、海に生きるジュゴンへ思いを馳せました。ジュゴンの淡い色を月の色だと感じたことで、海を照らす朧月のひかりまで見えてきます。
(監修:神野)
放送ではご紹介できなかった俳句を「佳作句」として少しだけご紹介。
朧を行く紙飛行機や父危篤
バニラの香まとふ式神きて朧
竜宮のやうに朧の牛丼屋
月朧姉の海馬よ応答せよ
乗りすごして朧ミントガムからい
恐竜の爪の跡かも岩朧
草朧星の寝息のそこここに
草朧飲みかけの白湯だつた水
先客はオッペンハイマー星おぼろ
指よごしナンやぶりゐる朧かな
草朧幌より出づる牛の尻
灯朧を昆布だし匂ふ母屋かな
AIに慰められて朧の夜
保湿クリームを鼻にちよんと朧
芍薬甘草湯おぼろに溶けてゆく
背文字なき綴本より朧の香
セロ賢治ヴィオロンはトシ灯の朧
月朧セラミックなる胡椒挽
異世界であの子は勇者朧月
鏡台のひきだし堅し朧の夜
紹興酒を砂糖のほむら朧濃し
前髪を切る朧夜の梳き鋏
103朧の空室105
月朧コロッケ十円だった頃
指で溶く朧月夜の胡粉かな
朧夜へさっと手紙を開け放つ
旅の荷をベッドにひろぐ朧かな
エジプトの香油を髪に朧の夜
もう寝ようすべて朧のせいにして
江ノ島の潮風甘し夕朧
岩礁に波打つ音や月おぼろ
もう一度水を含ませ朧描く
朧なる篝火シテの留拍子
窯出しや三日三晩の朧月
曲がり来る最終バスや海朧
あんぱんのやうにやはらか朧月
おぼろ夜にぐりぐりけずるえんぴつを
楠の樹齢三千鐘朧
おぼろおぼろ甘き実家のたまごやき
迂回路を抜けて奥能登街朧
朧夜のメトロノームの止まりさう
朧夜に一羽の鴉歩きをり
解体の生家の記憶さへおぼろ
朧夜や遠くポランの広場の音
横笛のくちびる朧震わせて
たましひのこゑもれさうな朧の夜
朧影らうらう駆くるハムスター
シスターの行く朧夜の軽井沢
花朧しづかに龍の悪阻めく
白光の硝子の疑卵庭朧
朧夜の臨時ニュースの生臭し
黒松のばつさり伐られ朧の夜
AIのフェイク動画と朧の夜
モナリザの目に膨らんでゆく朧
朧ゆく電車や顔無しと出逢ふ
飼育舎のマウス朧の夜と知らず
閉校の雲梯ぶらさがり朧
朧夜やまだ余白ある設計図
朧夜や遺影の眼みな輝きぬ
氷川丸を巨岩とまがふ海朧
核禁止不参加朧朧かな
朧なる渋谷太々しき鼠
貝塚の崩れゆくごと朧かな
劇場の幕間のワイン星朧
朧の夜波の音せる乾燥機
また地震にふるへ朧の夜となりぬ
グーグルマップ東京は朧めく
終バスを逃し朧のロータリー
昆布締めの鰈を削ぎし朧かな
通り皆チェーン店なる町朧
狼は神使とならむ朧の夜
朧を味方に付け古民家ホテル
朧とは鳥の子色の月明り
神様の時給はなんぼ朧月
山火事の消えて佇むおぼろかな
朧夜のガス燈照らす足湯かな
コロツケのために遠回り朧
朧夜のステンドグラス越の月
ケアマネとして父を看取るや朧めく
パスワードの心当たりが尽く朧
聖堂に絵硝子灯る朧かな
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。
・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。
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