2024年4月の俳句

  • 行く春の 大樟木を 抱きに行く

    2024.04.26 放送

    作者:土谷倫

    「行く春」は、終わろうとする春のことで、愛惜の心が込められています。大きな樟木は散歩途中にある親しい木なのでしょう。「抱きに行く」という大胆な表現で、この人の拠り所となっていることが伝わります。春は人が異動する季節。卒業、入学、退職、転勤など。さまざまな変化に心が揺れ動くとき、受け止めてくれる大樟木です。

    (監修:谷)

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  • 父がまづ 走つてみたり 風車

    2024.04.25 放送

    作者:矢島渚男

    色紙やセルロイドなどで作られた花形の風車は、春の風をはらんで回転する、心引かれる玩具です。走ると風が起こって回り出します。風車を買ってあげた父は、子どもに見せてあげようと、まず自分が走ってみせました。子どもがはしゃぎ出す姿が目に浮かびます。でも、なんだか父の方が喜んで、ずっと走っている気配です。

    (監修:谷)

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  • 汐干潟 うれし物皆 生きて居る

    2024.04.24 放送

    作者:正岡子規

    潮の満干の差が大きい四月頃は、海辺が遠くまで干上がり、貝や磯物を採りに出かける「潮干狩り」を楽しみます。きょうの句、広がる砂浜に蠢く生き物たちの、きらきらした命を感じています。そして思わず「うれし」と言葉に出ました子規が私たちを、春の干潟へと誘ってくれているようです。

    (監修:谷)

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  • 紫雲英田に こころ忘れて 来てしまふ

    2024.04.23 放送

    作者:野木桃花

    春の田を一面に埋めるピンクの花、紫雲英。れんげ草ともげんげんなどとも呼ばれます。緑肥として植えられたものですが、子どもの頃には花に埋もれて寝ころんだり、首飾りや冠を編んで頭にのせたりもしました。あれほどすてきな記憶はないようにさえ思います。あの頃の自分の心を見つけに、どこかの紫雲英田を探しに行きたくなりました。

    (監修:谷)

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  • 水晶の ごとくに群れて 夕遍路

    2024.04.22 放送

    作者:野見山朱鳥

    祈願のため、四国霊場八十八箇所を巡る遍路。暖かくなる三月から五月にかけて見かけるようになります。歩く人、自転車、またバイクで巡る人もいます。どの手段でもそれとわかる装束を身につけています。群れているのは、夕暮れにたどり着いたお寺でしょうか。「水晶のごとく」という措辞が、お遍路さんの祈りの姿を際立たせて、胸を打ちます。

    (監修:谷)

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  • 永き日のアロワナ 古代まで泳ぐ

    2024.04.19 放送

    作者:青井えのこ(東京)

    アロワナは、南アメリカや東南アジアの淡水に棲む魚です。恐竜の時代の地層に化石が発見され、太古から姿を変えない古代魚としても知られています。永遠を感じさせる日永の光の中、大きな体をうねらせ、アロワナが泳いでゆきます。時空を超え、古代までさかのぼってゆきそうな、はるかな後ろ姿です。

    (監修:神野)

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  • 札所から 札所へと漕ぐ 日永かな

    2024.04.18 放送

    作者:神野睦子(松山)

    四国八十八か所のお遍路を、自転車で巡礼しているのでしょう。札所にお参りしたら、また次の札所を目指して、軽快に漕ぎ始めます。日も永くなってきたので、一日をたっぷり使えます。自転車を使って、コンパクトかつスピーディーに、春のお四国を駆け抜けます。

    (監修:神野)

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  • 救援食待つや 日永のラマダーン

    2024.04.17 放送

    作者:中村 彰正(久万高原)

    イスラム教には、日中の飲食を断ち、神様に祈りを捧げる、ラマダーンという期間があります。ガザに住む人の多くも3月にラマダーンを迎えましたが、停戦を呼び掛ける声に応じず、イスラエル軍は攻撃を続けました。救援物資の食料も満足に行き渡らないガザ。人々の無事を祈り、日本にできることを考えます。

    (監修:神野)

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  • 永き日の 犬が振り向く度に 撮る

    2024.04.16 放送

    作者:恵勇(千葉)

    犬にレンズを向け、振り向くたびにベストショットを狙ってシャッターを切ります。人間と違って、犬はじっとポーズを決めてくれません。「振り向く度に撮る」というせわしない表現が、はつらつと動く犬や、それに振り回される人間の姿を、いきいきと描き出しています。

    (監修:神野)

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  • 珈琲にひよ子 日永の美容室

    2024.04.15 放送

    作者:春野ぷりん(新潟)

    美容室でパーマやカラーを施す待ち時間に、ちょっとしたお菓子を用意してくれたのでしょう。コーヒーと一緒に出てきたのは、福岡発祥の銘菓「ひよ子」です。日永の穏やかな明るさと、ひよこの形をしたお菓子のなつかしさとがぴったり。心がほっこりあたたかくなるサービスです。

    (監修:神野)

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  • 寝返りで 赤子日永を 使ひ切る

    2024.04.12 放送

    作者:徳永晴樹(松山)

    まるで永遠に続きそうな春の午後、赤ちゃんがころり、またころりと寝返りをします。まだ立ったり喋ったりできない赤ちゃんは、とにかく今は寝返りばかり。日永を使い切るという表現がユニークですね。飽きもせず繰り返される赤ちゃんの動作にも、不思議な達成感が生まれます。

    (監修:神野)

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  • 永き日や シベリア抑留 語らぬ父

    2024.04.11 放送

    作者:近藤義久(松山)

    第二次世界大戦終結後も、シベリアに不当に抑留され、厳しい労働を課せられた人々がいました。飢えと寒さに追い詰められながらの強制労働は、筆舌に尽くしがたい苦しさだったでしょう。平和な日永のひだまりの中、かつての辛い記憶を語らない父の、寡黙な胸の内にふと思いをはせます。

    (監修:神野)

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  • ンジャメナに 続く日永の しりとりよ

    2024.04.10 放送

    作者:鈴白菜実(東京)

    ンジャメナはチャド共和国の首都です。しりとりは「ん」がつくと負けと言われますが、この世界には「ん」から始まる言葉もあるんですね。「ンジャメナ」の名前を出せば、しりとりはまだまだ終わりません。日の永くなった春の午後、ンジャメナという奥の手を使い、どこまでも言葉のリレーが続きます。

    (監修:神野)

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  • 宇和海と 日永と サニートラックと

    2024.04.09 放送

    作者:櫻栄二(愛南町)

    サニートラックは、昭和の時代に人気を博した、小型のボンネットトラックです。春の午後、宇和海に面した道を、レトロなサニートラックが走ってゆきます。リアス式海岸をくいくいと曲がるたび、車のボディが海の光にきらっと輝きます。「と」で並列させたことで、軽快なリズムも生まれました。

    (監修:神野)

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  • 薄皮の剥けぬ 日永のゆでたまご

    2024.04.08 放送

    作者:葦屋蛙城(新潟)

    春になると日暮れが遅くなり、少しずつ昼の時間が長くなります。一番昼が長いのは夏ですが、季節の変化をしみじみ感じることから、日永は春の季語です。ゆでたまごの薄皮が剥けないことも、なんとなく許せてしまう、穏やかな春の午後。つるんとした玉子の肌に、春の光が輝きます。

    (監修:神野)

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  • 木琴は 胃にやさしかり 鳥帰る

    2024.04.05 放送

    作者:松本勇二

    秋に北方からやってきた渡り鳥が、春になって帰ってゆくときの情景が、季語「鳥帰る」です。時空の広がりの中に、残る寂しさも広がっていきます。そんな空の下、地上では寂しさを紛らすように木琴を叩いている人が。木琴は、子どものころから親しい楽器です。バチが弾む、木の鍵盤の音色は、大人の疲れた胃にも確かに優しいですね。

    (監修:谷)

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  • ぷっくりと桜餅 ぷっくりと私

    2024.04.04 放送

    作者:佐々木麻里

    うっすらピンク色の餅に、巻かれた桜の葉の香り。まさに桜時の気分をそのまま表出したような和菓子です。ぷっくりした桜餅を前に、心もぷっくりふくらんできたのでしょう。あるいは、すこし気になっていた自分のぷっくりした身体が、桜餅と同化した気分。「よかったわ」と、肯定できたうれしい瞬間でしょうか。

    (監修:谷)

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  • 山又山 山桜又山桜

    2024.04.03 放送

    作者:阿波野青畝

    桜の季節になると口をついて出てくる、シンプルでリズムの良い今日の俳句です。山にぽっぽと現れてくる桜色のかたまりは、春そのもののような気がします。いつもは注目していない山々に、目を見開きます。山桜また山桜と指さしながらわくわく眺めます。あるいは、山道を桜の木に触れながら歩いてみたくなりませんか。

    (監修:谷)

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  • 花の雨 夜の巷の 雨である

    2024.04.02 放送

    作者:九里順子

    花の雨は、桜時に降る冷え冷えとした雨のこと。 この人は、夜の巷、すなわち町中にいて雨にあいました。でも意識の中の桜が、目に浮かんでいるのでしょう。雨に花の匂いも混じっている気配です。「花の雨」の雅を「巷の雨」と俗っぽく言い放ちました。目の前に桜は無くても、桜の季節が人々の生活を包んでいます。

    (監修:谷)

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  • いつぽんの 大きく暮れて 花の寺

    2024.04.01 放送

    作者:角川春樹

    俳句では、単に「花」といえば桜のこと。「大きく暮れて」が、寺の境内を占める桜の大きさを想像させます。老木でしょう。日が暮れていく中、大きな一本の桜の雄々しさと、憐憫のようなものを感じます。一方で、老木ながら失わない華やぎを「花の寺」という言葉が伝えます。愛媛では、例えば久万高原町の法蓮寺の桜を思い起こすでしょうか。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題「葉桜(はざくら)」の
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
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