2024年3月の俳句

  • さくら咲き 語尾のやさしき 伊予言葉 

    2024.03.29 放送

    作者:加倉井秋を

    桜だよりが聞こえ始めると、今年は何処の桜を訪ねようかと、頭を巡らせます。この人は伊予、すなわち愛媛の桜を愛でているようです。桜の下でかわされる伊予の言葉に、思わずにっこり。「きれいけん来とーおみや」、「もう、お行きな」あるいは「はよお食べ」などでしょうか。きょうの句は、昭和四十三年の作ですから、語尾に「なもし」もあったでしょうか。

    (監修:谷)

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  • 生け花の ぽんと一役 葱坊主

    2024.03.28 放送

    作者:住田五月

    収穫を済ませて残しておいた葱が、伸びた花茎の先端に細かい白い花を球状につけます。その様子を「葱坊主」と呼んでいます。この葱坊主、現在は生け花に一役かっているようです。紫色など品種改良されたものもあるとか。華やかな花の中に放り込むような「ポンと一役」が、親しくてユーモラスな名にぴったりの楽しい表現です。

    (監修:谷)

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  • わが墓を 止り木とせよ 春の鳥

    2024.03.27 放送

    作者:中村苑子

    春になり草木が萌え始めると、いろいろな鳥が姿を見せ始めます。「鳥帰る」「鳥の巣」「囀り」「鳥交る」も春の季語で、野鳥の活発な動きがわかります。願わくば、わが墓には春の鳥が来て欲しい。止まり木にして囀ってくれたらどんなにすてきだろう、という句。 生きて今、春を迎えて喜びに満ちる鳥たちに呼びかけています。

    (監修:谷)

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  • 多い目に 御飯を炊いて 花菜漬

    2024.03.26 放送

    作者:稲畑汀子

    花菜漬は菜の花が蕾のうちに摘みとって、浅く塩漬けしたもの。京都の名産の一つですが、家庭でも作れます。付け合わせやお茶漬けに合います。食卓にのぼる日は、白いご飯がいつもよりも美味しく、家族のおかわりも必至。葉の緑色に蕾の黄色がかった色彩もきれいで、素朴な白いご飯に映えます。デパートの地下などに、花菜漬を探しに行きたくなります。

    (監修:谷)

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  • 木の芽日和 慶事あるらし 村人の

    2024.03.25 放送

    作者:森田雷死久

    春に芽吹く木の芽を「木の芽」といいます。木の芽日和は芽にとって都合の良い天候のこと。ぐんと伸びていきそうな好天です。そんな日に、この村によろこび事があるようなのです。結婚式でしょうか。村中で祝う風景が、あたたかく描かれています。この句の句碑が松山市平田町の常福寺にあります。作者は正岡子規門の僧侶でした。

    (監修:谷)

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  • 風ですか 囀ですか 大欅

    2024.03.22 放送

    作者:岡野 未由子(宇和島)

    囀る鳥の声は、自然のさまざまな音と調和しています。風なのか囀りなのか分からないほどに、一体となって春の空気に溶け込んでいます。振り返ったとき、そこには大きな欅の木が、ただ揺れていました。人間も大いなる自然のふところに生きているのだと、ふと気づかせてくれる一句です。

    (監修:神野)

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  • 囀は 明日を待つ声 墓石拭く

    2024.03.21 放送

    作者:山内佑資(伊予)

    囀りとは何か、一般的な説明ではなく、自分の感覚で語り直したところに、詩が生まれました。囀りというのは明日を待つ声なのだと思うとき、今日の悲しみと明日への希望がひたひたと寄せてきます。墓石を拭き、親しいその人を偲びながら、囀りに顔を上げ、今日へと向き直します。

    (監修:神野)

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  • 囀や もう来ないはず B29

    2024.03.20 放送

    作者:宮崎泉(静岡)

    B29は第二次世界大戦において、アメリカ軍が日本への空襲に用いた大型の戦闘機です。当時を知る世代にとっては、今もなまなましい記憶。囀りのにぎやかな音量にふと、かつての戦闘機の気配を思い出しました。「はず」の一語に不安がよぎります。囀りをおだやかに聞くこの平和が、続きますように。

    (監修:神野)

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  • さへづりの 音楽準備室に 鍵

    2024.03.19 放送

    作者:四條たんし(愛知)

    学校の音楽準備室には鍵がかかっていて、開けるまではしーんと静かです。春になるとその周りを、鳥たちの囀りがにぎやかに包みます。外の光の明るさと室内の暗さとが、春の陰影を作り出しています。鳥には囀りがあり、人間には音楽があります。音のあふれる春本番まで、あともう少し。

    (監修:神野)

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  • 陸酔いの 足に囀 こそばゆし

    2024.03.18 放送

    作者:北欧小町(東京)

    長い時間船に乗って揺られると、降りてもまだ体が揺れているように感じることがあります。これが「陸酔い」です。陸に降りると、新しい町の風景が新鮮に飛び込んできます。鳥の囀りも、水の上にはなかったものです。ふわふわとした足のこそばゆさが、むずむずとした春の感覚を呼び覚まします。

    (監修:神野)

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  • 手術後の 猫の鼾と 囀と

    2024.03.15 放送

    作者:堀川絵奈(西予)

    手術を終えたばかりの猫が眠っています。体に負担がかかっているからか、鼾もいつもと違って聞こえます。そこにやさしく、囀りがかぶさってきました。生命力たっぷりの鳥の声が、猫の回復力にも刺激を与えそうです。しっかり眠って癒して、また元気な姿を見せて、と願います。

    (監修:神野)

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  • 囀りの中へ 休職明けの空

    2024.03.14 放送

    作者:渡辺香野(高知)

    事情があって休んでいた会社に復帰するときは、やはり不安や緊張が伴うものです。そんな朝、外へ出ると気持ちのよい空が広がっていて、鳥たちがいきいきと鳴きかわしていました。私も自然と心が前向きになり、春の光と風の中へ一歩踏み出します。囀りのエールを胸に、新しい日々、きっと大丈夫です。

    (監修:神野)

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  • 補聴器を外して 囀りの間近

    2024.03.13 放送

    作者:岩ア 久美(松山)

    補聴器は、聴力を補い、より聞こえやすくするための器具です。補聴器を外したとき、音は聞こえにくくなるはずですが、作者は囀りをむしろ近くに感じたといいます。補聴器を介さないことで、囀りと直接つながれたような心地がしたのでしょう。しばし囀りに耳を預ける春のひとときです。

    (監修:神野)

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  • 囀へ飛び出す ジップラインの児

    2024.03.12 放送

    作者:星月彩也華(四国中央)

    ジップラインとは、アウトドアアクティビティの一つです。山や森に渡されたワイヤーロープにぶら下がり、滑車を使って滑り降ります。大自然を大胆に感じるぶん、挑戦には勇気も必要です。それでも覚悟を決めて飛び出してゆく子どもの背中に、囀りが力強くひびきます。

    (監修:神野)

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  • 囀りや ひかりはふくらんで 満ちる

    2024.03.11 放送

    作者:馬越貴英(今治)

    春になると、鳥たちも恋をして、にぎやかに鳴きかわします。これが「囀」です。うぐいす、雲雀、目白、四十雀……。たくさんの鳥たちが囀るさまに、こちらの心も明るくなります。囀りがどんどん勢いを増すように、光もまたふくらみ輝き、この世界に春が満ちてゆきます。

    (監修:神野)

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  • 家挙げて 土筆の袴 とる夕

    2024.03.08 放送

    作者:寒川鼠骨

    土筆を見つけて摘み始めると、時間を忘れて一心にのめり込んでいきます。いつの間にか袋はいっぱいに。「家挙げて」は、まんざら大袈裟な表現ではありません。夢中で摘んだあとは、食卓に上るまでの手間が待っていますから。一本一本の袴を外していけば、家族みんなの指先が真っ黒に。作者は子規門下の俳人で、子規亡きのちも、子規の作品、著述の編集などにつとめました。

    (監修:谷)

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  • わが齢を 妻の追ひくる 水草生ふ

    2024.03.07 放送

    作者:勝又一透

    春は池や沼、川などの水温が上昇して、様々な水草が生え始めます。野山の芽吹きと呼応して、水辺も青々としてきます。年下の妻が、自分の年に追いついてくるように思えてしまう、という感慨の句。春の水草のように生き生きと活動する妻が、眩しく映ります。夫は仕事に疲れている?妻の存在がだんだん大きくなってきました。

    (監修:谷)

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  • 鶯や 地球の朝を 掃いてるねん

    2024.03.06 放送

    作者:平きみえ

    「はいてるねん」は、関西弁です。朝の鶯の鳴き声に親しく応えているようで、楽しいです。地球の朝を掃いているという、誇らしげな言い方が、可笑しくもあります。春を象徴し、日本人に最も親しまれている鶯の鳴き声は、どの鳥の声よりもくきやかに耳に響いてきます。朝ならひときわです。「地球の朝」と、言いたくなります。

    (監修:谷)

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  • 春空に 鞠とどまるは 落つるとき

    2024.03.05 放送

    作者:橋本多佳子

    「鞠」は、現代でいえば球、ボールです。春空に上がるのは、まず野球のボールを思い浮かべるでしょうか。とどまるのは、ボールにとって一番高くまで上がったところです。それは、すなわち、落ちる時だという、ちょっと切ない発見です。のどかにかすむ春の空から落ちてくるボールと自分が、一体化するような気分です。

    (監修:谷)

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  • 一寸ゐて もう夕方や 雛の家

    2024.03.04 放送

    作者:岸本尚毅

    昨日、三月三日は桃の節句、雛祭りです。愛媛では四月三日に行う地域も多く、しばらく飾り雛を楽しめそうです。「雛の家」は、雛飾りをしてある家のこと。すぐにいとまするつもりが、いつのまにか日が暮れかかっていました。雛人形談議が尽きなかったのか、あるいは普段とは違う華やいだ部屋で、世間話が弾んだのでしょう。

    (監修:谷)

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  • 春宵や 卵抱きし 十姉妹

    2024.03.01 放送

    作者:水谷砕壺

    「春宵」は、春の穏やかな一日が暮れて、まだ夜の更けないころです。蘇東坡の「春宵一刻直千金」という言葉で知られる、どこか華やぐ雰囲気も持っています。そんな宵と、卵を抱いた十姉妹を取り合わせた句。大切に飼ってきた鳥が、命を育み始めました。卵を抱いたいたいけな鳥を、春の宵が包み込んでいるようです。

    (監修:谷)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題「葉桜(はざくら)」の
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応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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