2017年9月の俳句

  • 今日のこと 妻と話して 夜長かな

    2017.09.29 放送

    作者:阿部静雄

    秋分を過ぎると、夜は昼よりも長くなり、夜の長さは一夜ごとに伸びてきます。「夜長」という季語には、暑い夏を越して涼しい夜が長くなるのを喜ぶ心が感じられます。秋の夜長をしみじみと実感するのは、夜もだいぶ更けた頃ではないでしょうか。今日一日の出来事を奥さんと語り合っている作者。長年連れ添ったご夫婦らしい、夜長の情景です。

    (監修:池内)

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  • 貝割菜の ひとつひとつが 息を吐く

    2017.09.27 放送

    作者:二川茂コ

    「貝割菜」とは、大根・蕪・小松菜などの種を蒔き、芽を出した双葉が二、三センチに伸びた頃のこと。二枚貝が口を開いた形に見立てた可愛らしい呼び名です。これからどんどん間引かれて行くのですが、秋蒔きの野菜のはしりという新鮮な季節感があります。間引かれる貝割菜の1本1本の、みずみずしい生命力に注目している作品です。

    (監修:池内)

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  • この月よ をちかた人に まどかなれ

    2017.09.22 放送

    作者:久保より江

    今日のこの月が、遠くにいる人にも、丸くおだやかに見えますように。世界のみんなとわかちあいたい、月の美しさです。久保より江は、夏目漱石が松山で下宿した、愚陀仏庵の大家の孫。当時小学生のより江は、漱石と子規さんによくかわいがられました。一緒に月を見た夜もあったでしょうか。

    (監修:神野)

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  • 流星に 二度と戻れぬ 空のあり

    2017.09.21 放送

    作者:櫂未知子

    流れ星は秋の季語。大気が澄み、星がきれいな季節になりましたね。今日の句は、流れ星の立場で詠まれています。星は、ひとたび流れたら、もう二度と、空へは戻れません。その一瞬は、二度とないきらめきなのです。人もまた、戻れぬ過去を心に抱いて、流れ星を仰ぎます。

    (監修:神野)

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  • 少年の バッグに小犬 秋彼岸

    2017.09.20 放送

    作者:八木林之助

    今日から秋のお彼岸です。ご先祖様に感謝して、墓参りをし、おはぎを供えます。少年のかばんから顔を出すのは、なんと小犬。捨てられていたのを放っておけず、拾ってきたのでしょうか。少年も小犬も、これからの未来を生きる存在です。ご先祖様が、見守ってくれるでしょう。

    (監修:神野)

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  • 子規忌の夜 保育器の中の弟

    2017.09.19 放送

    作者:福島県会津高校 白井駿助

    今日は俳人・正岡子規の亡くなった日です。子規は病気と闘いながら、俳句を生まれ変わらせるため、命尽きるまで書き続けました。今日の句は、今年の俳句甲子園の作品です。全身全霊で生きた子規も、保育器の中で必死に生きる幼い弟も、私たちに命の尊さを教えてくれます。

    (監修:神野)

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  • 老人へ ペンギンが来る 雲は秋

    2017.09.18 放送

    作者:坪内稔典

    伊方町出身の俳人、坪内稔典さんの俳句です。齢を重ね、覚束なくなった足取りを、よちよち歩くペンギンと重ねた、発想が軽やかですね。飛べないペンギンも、遠くへ行けない老人も、一緒に雲を仰ぎます。今日は敬老の日。みなさんは、だれと、どんな雲を見ましたか。

    (監修:神野)

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  • 牧柵ヘ 径行き止まる 大花野

    2017.09.15 放送

    作者:藤木倶子

    秋の草花が咲き乱れている野原が「花野」。朝露が降り、霧に濡れ、秋の日射しを浴び、花野をいろどる草花はじつに多彩です。秋の七草をはじめ、竜胆、吾亦紅、露草など、華やかな中にも秋らしい哀れ深い情趣を感じさせます。(川原、高原など、どこでも花野といえますが、)この句は広々とした牧場。牧柵目指すように一筋の小道が伸びています。

    (監修:池内)

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  • 秋はかく 身に添ふ風の たちにけり

    2017.09.14 放送

    作者:岩井英雅

    残暑の中で、ふと秋を感じさせる一筋の風から、晩秋の冷たい風まで、どれも「秋風.」ですが、共通しているのは身に沁みるようなもの寂しさをともなう季語であるということです。この句は、秋風を「身に添う風」と捉えたのがポイント。秋の深まりとともに、吹く風も徐々に人に寄り添って来るように感じられます。

    (監修:池内)

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  • 蓑虫の 風に育ててもらひをり

    2017.09.13 放送

    作者:江崎紀和子

    「蓑虫」は、蓑蛾という蛾の幼虫です。木の葉や枝を糸で綴り合わせた、蓑のような袋の中で暮らし、枝にぶら下がって越冬します。その姿が哀れに見えるため、『枕草子』では「鬼の子」とされています。この句は、枝で吹かれる蓑虫を「風に育ててもらひをり」とやさしく見守っています。作者は東温市にお住まいの俳人。俳句雑誌「櫟」主宰です。

    (監修:池内)

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  • 雀来て 竿の朝露 みな揺るる

    2017.09.11 放送

    作者:波戸岡旭

    大気中の水蒸気が気温の低下によって水滴となって姿を現したものが「露」。秋の夜間や明け方に最も多く見られる現象で、朝は特に「朝露」と呼ばれます。日があたると消えてしまうので「露の命」などと、はかないものの誓えにも用いられます。物干し竿に降りた朝露を、留まった雀が揺らしています。朝日にきらきらと光るのが見えるようです。

    (監修:池内)

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  • 山の温泉や 裸の上の 天の川

    2017.09.08 放送

    作者:正岡子規

    秋は大気が澄んで、星がきれいに輝くので、天の川も秋の季語になっています。山の露天風呂に入り、裸で仰ぐ夜空の星。あかりのない山の中なら、ふだん見ている町の空と違って、天の川がくっきり見えるでしょう。大自然に心が吸われてゆくような、解放感あふれる一句です。

    (監修:神野)

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  • きんき煮る 甘き匂ひも 白露の夜

    2017.09.07 放送

    作者:原裕

    今日は二十四節気の白露、大気が冷えて、露が降り始めるころです。きんきは、脂ののった白身魚。煮つける鍋が、台所に甘い匂いを満たし、とってもおいしそうです。冷えた外気と、湯気でぬくもった室内との温度差が白露という季節の変化を実感させます。

    (監修:神野)

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  • 勉強部屋 覗くつもりの 梨を剥く

    2017.09.06 放送

    作者:山田弘子

    部屋にこもって勉強している我が子のために、作者は梨を剥いています。梨を夜食に差し入れ、部屋に入る口実に使うつもりなのです。梨がおいしい季節になりました。秋の夜長、剥いた梨をきっかけに、家族とゆっくり言葉を交わしてみるのもいいですね。

    (監修:神野)

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  • 縄とびの 縄を抜ければ 九月の町

    2017.09.05 放送

    作者:大西泰代

    にぎやかな夏も終わり、九月が訪れた町の落ち着きを、縄とびを跳び終わったときの感覚と重ねました。必死で縄とびを跳ぶように、あっという間に過ぎた日々。わたしたちはいつの間に、大人になってしまったのでしょう。誰もがどこか大人びている、そんな九月の町です。

    (監修:神野)

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  • 桔梗の つぼみは星を 吐きさうな

    2017.09.04 放送

    作者:西村麒麟

    秋の七草のひとつ・桔梗は、紫や白の可憐な花を咲かせます。はなびらのかたちは、まるで星のよう。ふっくらとふくらむつぼみの中に、星がひそんでいたとしたら。花がひらくとき、ポンと星が飛び出して、しずかな秋を、ささやかにいろどってくれそうです。

    (監修:神野)

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  • 朝日子に 稲の花穂の 立ちにけり

    2017.09.01 放送

    作者:鈴木厚子

    秋の初め、まだ緑色のまっすぐな稲の穂先に、やわらかい緑色のノギガラが無数につき、それが割れて薄緑色の小さな花が姿を現します。「稲の花」は晴れた日の朝のうちに開き、午前中に受粉が終わります。花粉の寿命はわずか二、三分といわれます。「朝日子」と親しみをこめて呼ばれている太陽も、稲の受粉をやさしく見守っているようです。

    (監修:池内)

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テレビ愛媛ではみなさまから
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5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

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・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
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