2021年5月の俳句

  • 万緑と万緑結ぶ 赤い橋

    2021.05.31 放送

    作者:池田啓三

    野も山も見渡すかぎり緑一色。夏の大地にみなぎる植物の生命力を表す季語が「万緑」。もとは漢詩の中の言葉ですが、中村草田男の作品で広く知られ、季語として盛んに使われるようになりました。この橋は両岸に緑ゆたかな林のある大河に架けられたものでしょうか。赤い橋が両岸の万緑をいっそう際立たせ、この季節ならではの躍動感あふれる情景です。

    (監修:池内)

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  • 城山や 筍のびし 垣の上

    2021.05.28 放送

    作者:柳原極堂

    極堂は、松山中学時代からの、正岡子規の友人です。松山の地から、子規の俳句革新をサポートしました。この句は、松山城を散策して詠んだのでしょう。城山の石垣の上に、にょきっと伸びた筍を見つけました。そびえる石垣の、さらに上へ、筍の生命力を介して、空の奥行きが描き出されています。

    (監修:神野)

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  • 豆ごはん 俤に声なかりけり

    2021.05.27 放送

    作者:川嶋一美

    えんどう豆を炊き込んだ豆ごはんは、夏の食卓を明るく彩ります。素朴な味は、なつかしさも呼び覚まします。その人と豆ごはんを食べたことを思い返すと、おもかげだけがまぶしく光り、声はありません。音を伴わないのに、映像だけはやけに鮮やか。思い出すたびに、輪郭がやわらかくぼやけてゆく、記憶の感覚を言いとめました。

    (監修:神野)

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  • 青葉冷え 小鳥に頭痛 あるかしら

    2021.05.26 放送

    作者:遠藤由樹子

    初夏に入り、木々の緑の濃くなるころ、ふっと冷えこむことを「青葉冷え」といいます。気温の変動が激しいと、体調も崩しやすいものです。作者も頭痛を覚えつつ、外を見ているのでしょう。青葉に遊ぶ小鳥も、人間のように頭痛を感じたりするのかしら。涼しげに見える小鳥にも、抱えるつらさがあるのかも。まぶしく日がさしたら、どうか、痛みも和らぎますように。

    (監修:神野)

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  • へのへのの僕と もへじな君の夏

    2021.05.25 放送

    作者:塩見恵介

    ひらがなを使って顔を書く「へのへのもへじ」。「へのへのの僕」も「もへじな君」も、作者が作り出した謎たっぷりの表現です。かっこよくは決められないけれど、どこか憎めない親しさをもつ二人なのでしょう。夏が来れば、つかみどころのない僕と君にも、化学変化が起きるでしょうか。意味を超えて心がくすぐられる一句です。

    (監修:神野)

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  • しろがねの 鈴振るごとく 山清水

    2021.05.24 放送

    作者:西宮舞

    山や野の湧き水は、清水と呼ばれ、夏の季語になっています。ひんやりとした涼しさが、暑さに疲れた心身を、ホッと癒やしてくれます。山を流れる清水のさまを、まるでしろがねの鈴を振るようだと表しました。銀色に輝く水が、鈴の音のように軽やかに、こんこんと湧きつぎます。美しい比喩の立ち上げる、清らかな風景です。

    (監修:神野)

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  • すこやかな声湧き出づる 麦生かな

    2021.05.21 放送

    作者:櫨木優子

    「麦生」は、麦が生育している姿やその場所を表す夏の季語です。きょうは二十四節気の小満ですが、古くはこの日を麦生日ともいい、穂の伸びた麦が熟す頃とされていました。麦生から湧き出ているのは遊んでいる子供たちの元気な声でしょうか。あるいは黄金色に熟した麦の命の声なのかもしれません。作者は大洲市にお住いの俳人です。

    (監修:池内)

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  • 朴の花 見るといふより 逢ひに行く

    2021.05.20 放送

    作者:奥名春江

    朴はモクレン科の落葉喬木で高さは20メートルにもなります。初夏に咲くやや黄色みを帯びた白い「朴の花」は、下からはよく見えませんが、高みや、谷を隔てて眺めると大きな杯のような姿を空に浮かべています。姿も美しいのですが、芳ばしい香りも魅力です。「見るといふより逢ひに行く」という表現に、作者の朴の花への限りない思いの籠められた一句です。

    (監修:池内)

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  • 山の子の 草笛高く 森の奥

    2021.05.19 放送

    作者:湯本牧人

    草や木の葉を唇にあてて吹き鳴らすのが、「草笛」です。簡単なようでなかなか難しく、はじめは何とも奇妙な音しか出ません。唇の使い方や呼吸の加減を身につけると、それらしいメロディーが吹けるようになって来ます。たった一枚の草の葉で奏でる、哀愁を帯びた曲。山育ちの子が奏でる草笛の音が、森の奥から響いています。

    (監修:池内)

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  • こぼしては足す 豆飯の水加減

    2021.05.18 放送

    作者:土肥あき子

    えんどう豆や蚕豆を炊き込んだご飯が「豆飯」。白い米と豆の緑との対照が鮮やかな、日本の初夏ならではの味覚です。豆の色が映えるように、出汁をしつこくせず薄い塩味で仕上げます。作者は水加減にも神経を使っているようです。水をこぼしたり足したり、細心の注意を払って火に掛けました。きっと、おいしい豆飯が炊きあがったことでしょう。

    (監修:池内)

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  • 本尊を排し 百花の牡丹見る

    2021.05.17 放送

    作者:川内雄二

    初夏を豪華に彩る「牡丹」は、中国原産の落葉灌木で、昔はおもにお寺に植えられました。この句のお寺も牡丹寺と呼ばれる牡丹の名所なのでしょう。まずはご本尊にお参りしたあと、境内の随所に咲き誇る多種多様な牡丹の花を見て楽しんでいます。作者は松山市にお住いの俳人。俳句雑誌「紅日」主宰です。

    (監修:池内)

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  • 驢馬も人も キャベツを食みて 平和な日

    2021.05.14 放送

    作者:藤尾裕子(福岡県)

    ロバは昔から家畜として重宝され、人間とともに暮らしてきました。おだやかな夏のある日、ロバの餌にキャベツをやり、人間も同じく、キャベツを料理して食事にします。ロバも人間も同じものを食べ、のんびりと過ぎてゆく平和な時間。動物と人が共存する生活の、心のゆたかさを思います。

    (監修:神野)

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  • タンメンの キャベツの芯の 甘さかな

    2021.05.13 放送

    作者:松田夜市(松前町)

    タンメンは、たっぷりの野菜を具材に、塩味のスープでいただく麺料理です。もやしやにんじんとともに欠かせないのが、キャベツです。葉の部分だけでなく、芯までスライスして炒めたのでしょう。キャベツの芯のやさしい甘みが、あっさりしたスープとよく合います。余すところなくキャベツを味わう一句です。

    (監修:神野)

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  • キャベツぽろぽろ 初バーガーを 食らう吾子

    2021.05.12 放送

    作者:中村彰正(久万高原町)

    はじめはミルクを飲んでいた赤ちゃんも、離乳食を経て大きくなり、ハンバーガーに挑戦する年頃になりました。小さな口をいっぱいに開け、かぶりつきます。上手に食べられず、キャベツをぽろぽろとこぼしてしまうのも、かわいらしいですね。フレッシュなキャベツが、人生はじめてのハンバーガーを輝かせています。

    (監修:神野)

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  • 切口の 大樹の如き キャベツ買ふ

    2021.05.11 放送

    作者:加島一善(新居浜市)

    店に積まれたキャベツの中から、特においしい一個を選ぶには、どこを見ればよいのでしょう。みずみずしい葉の色や、手にとったときの重み。そうして決めたキャベツは、まるで大樹のように、切り口が立派でした。大地からたっぷりと栄養を吸い上げた茎の太さに、キャベツのたくましさが表れています。

    (監修:神野)

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  • 朝靄の 箱にきゅきゅっと 鳴くキャベツ

    2021.05.10 放送

    作者:百瀬はな(長野県)

    今では一年中、店頭に並ぶキャベツも、俳句では夏の季語です。生のままサラダにしたり、煮てスープにしたり、食卓に欠かせない野菜です。この句は出荷の場面でしょう。高原の朝は、ひんやりと靄が立ちこめます。箱に詰めるとき、キャベツがきゅきゅっと新鮮な音を立てました。ぎっしりと命の詰まったキャベツです。

    (監修:神野)

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  • 四国とは 背伸びの子象 風すずし

    2021.05.07 放送

    作者:橋本直

    四国の形を、まるで背伸びする子象のようだと見立てました。すうっと伸びた佐田岬が、鼻の部分でしょうか。初夏を過ぎ日差しが濃くなると、さっと吹く風の涼しさに、心が休まります。作者は八幡浜市出身。のびやかな子象にたとえ、気持ちのよい季語を添えて、四国への軽やかな愛を表現しました。

    (監修:神野)

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  • かたばみを咲かすな 莢をつけさすな

    2021.05.06 放送

    作者:竹村翠苑

    かたばみは、庭や道端に、黄色い小さな花を咲かせます。畑に生えると厄介な雑草で、かたばみのはびこる畑は、痩せた土ともいわれます。畑を守るには、咲かせないよう、莢をつけ種を撒き散らさないよう、草引きが必要です。作者は大正十一年生まれ。季節とともに生きてきた農業の日常を、いきいきと切り取りました。

    (監修:神野)

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  • さみどりの 蜘蛛透きとほる 立夏かな

    2021.05.05 放送

    作者:小島健

    今日は立夏です。暦の上では今日から夏。そう思って世界を見渡せば、あれやこれやが夏の始まりを告げているように感じます。さみどり色の蜘蛛が日差しに透き通っているのも、どこかういういしく、立夏の気分にぴったりです。みなさんは今日、どんな夏の兆しを見つけましたか。

    (監修:神野)

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  • サスペンダー赤く 五月の森に入る

    2021.05.04 放送

    作者:西村和子

    五月になると、春に芽吹いた木々が、すがすがしく葉を広げます。そんな五月の森に、誰かが入っていきました。サスペンダーが見えるのだから、ジャケットは暑くて脱いだのでしょう。若葉の緑と、サスペンダーの赤と、色彩の対比もあざやかです。森の深さが、これから始まる夏の奥行きを感じさせます。

    (監修:神野)

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  • 憲法に 鋼の勁さ 麦熟るる

    2021.05.03 放送

    作者:宮坂静生

    今日は憲法記念日です。憲法は、国の基本方針を定めた規範です。日本国憲法は、戦争をしないと宣言し、戦後の平和を支えてきました。憲法の解釈をめぐり、議論が交わされていますが、憲法に鋼のような強靭さがあれば、麦は熟れ、国は栄えるでしょう。憲法の力を信じ、人間の生きる力を信じた一句です。

    (監修:神野)

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テレビ愛媛ではみなさまから
俳句を募集しています!

5月のお題は
「葉桜(はざくら)」 です

応募フォーム、メールアドレス、ハガキの中からご応募ください。メールアドレス、ハガキでのご応募は、お題を含む俳句(ふりがな)・氏名(ふりがな)・住所・電話番号・メールアドレスを記載してお送りください。一人何句でも応募可能です。選ばれた俳句は、EBC Live News「きょうの俳句」コーナーでの放送のほか、テレビ愛媛のホームページ等で紹介します。作者の氏名(ペンネームの場合はペンネーム)、お住いの市町名(ジュニアの場合は学校名)も紹介されます。
(採用された方には放送日を事前に連絡し、記念品を贈らせていただきます。)
※俳句の募集は、毎月第2月曜日、午後6時から開始します。

応募規約

・応募作品は未発表で、ご自身の作品(著作権がご自身にある作品)に限ります。
・他人の作品に著しく類似、または他人の作品の盗用など、第三者の権利を侵害する可能性があると判断した場合は、応募の対象外とします。
・テレビ愛媛は応募作品による権利の侵害等に対し、一切の責任を負いません。

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